花だより 11・17
奈良は遷都祭も正倉院展も終わり静かになりました。宴のあと、夢のあとのようでなんだか気が抜けたような虚脱感が漂っています。大イベントをやった奈良は来年からどうなるのか少し不安です。ある人のいわく、来年は1301年をやったらええねんがな。おっしゃるとおり。
季節はうつろいちょうど今秋から冬への境目になっています。境内を歩くと、コスモスの名残り花の下で水仙が緑の葉を伸ばし、そのむこうにすこし黄ばんだ山吹の葉が見え、その上には梅、桜、イチョウ、南京はぜ、もみじ、ケヤキなど落葉樹が黄緑から黄、赤へと毎日変身しています。
木にからまったカラスウリは真っ赤に熟しています。今年は柿の実が見えません。いつもなら野鳥が実を食べに来るころなのに。気候異変のせいでしょうか。
色づいた木や草の葉が落ちれば冬です。それまでしばしの秋を楽しみたいですね。
〔俳句〕
「水仙の 花のうしろの 蕾かな」 星野立子
〔和歌〕
「あさぎりの はれゆくをちの 山本に
紅葉まじれる 竹の一むら」
実明女・風雅680
「朝霧の晴れて行く、遠くの山の麓に、紅葉のまじった竹の一群が見えて来る。」
〔釈教歌〕
「しばの戸に あけくれかかる 白雲を
いつむらさきの 色にみなさむ」
源空上人・玉葉2635
「山中の、この庵室の粗末な柴の戸に、朝に夕にかかる白雲を、いつの日、阿弥陀仏のお迎えの紫色の雲と見なして、極楽往生できることであろう。(どうか早くそうなりたいものだ)」
・むらさきの色=紫雲の色。念仏行者の臨終に、阿弥陀仏が、二十五菩薩を従えて来迎する時、それに乗って現れるとされた、めでたい雲の色。
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