般若寺水仙:12月~2月
晴天が続き暖かいですね。秋の終わりが近づいて一日一日が貴重になって来ました。もみじの名所はさぞや賑わっていることでしょう。
奈良では古来もっとも有名なもみじの名所は龍田の山川です。春は佐保姫、秋は龍田姫と言われるほどに万葉人から愛され、多くの古典文学、特に和歌に詠われてきました。般若寺のマー様が龍田の近くの出身なのでよく龍田の事を聞きます。車で国道25号線を法隆寺から大阪に向かって走ると龍田川の西に高さ50メートルほどの小山があり、聞いてみるとあれが三室山だそうです。歌枕で大変有名なもみじの名所です。
百人一首の業平の歌(17)
「ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川
からくれないに 水くくるとは」
ならどなたもご存知でしょうが、平安朝の王朝貴族にとってあこがれの地だったのです、龍田は。
でも今は残念ながら少し興ざめな景色が目立ちます。どうして京都の嵐山のように景観保全が出来ないのでしょうか、龍田のほうが古いもみじの名所なのに。みなさん一度お出かけくださいませ。
近くの吉田寺さんもお忘れなく、重要文化財の多宝塔と桜もみじがきれいですよ。
〔俳句〕
「水仙や 古鏡の如く 花をかかぐ」 松本たかし
「みなねむり 水仙だけが 知っている」 窪田丈耳
「水仙花 身辺つねに 清潔に」 角直指
〔和歌〕
「あわれしる 人にみせばや 山ざとの
秋の夜ふかき ありあけの月」
菅原孝標女・玉葉697
「情趣のわかる人にこそみせたいものだ。山里の秋の夜が更けて、空にかかる有明の月を」
〔釈教歌〕
「世にこゆる ちかひの舟を たのむ哉
くるしき海に 身はしづめども」
丹羽経長・玉葉2638
「他の諸仏の願にもはるかに勝る、阿弥陀仏の誓願による、彼岸への渡し舟の力をひたすら頼むよ。生死輪廻の苦しみに満ちたこの世の海に、我が身は沈んでいるけれども。」
・ 世にこゆるちかひ=超世の悲願。他の諸仏の願にくらべても超絶した、阿弥陀四十八願。またその中心である、第十八願、念仏往生の願。
・ ちかひの舟=弘誓の船。仏の衆生済度の誓願を、船が人を載せて向こう岸にわたすのにたとえる。
・ くるしき海=苦海。生死輪廻の苦悩が果てしなく広がっている世界を海にたとえる。
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