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2011年2月

2011年2月28日 (月)

般若寺水仙:2月中  *満開*

今日は雨、いよいよ2月は終わります。暦の上では冬は今日限り、明日からは春です。この「般若寺水仙花だより」は今日をもって終了し、明日からは「コスモス寺春の花だより」として続けます。今年の冬は大変厳しい寒さに悩まされました。北国は記録的な大雪で困られたことでしょう。屋根の雪下ろしで事故に遭われた方も多数あったようで雪国の大変さには恐れ入ります。皆様の無事回復と雪解けが早く訪れることを祈念いたします。

〔俳句〕

「水仙や 小川は音を 調へて」   岩本茂

「真直ぐに 意思通す児や 水仙花」 鈴木庸子

「折れてなほ 水仙花を 開きけり」 中原敏雄

〔和歌〕

「むめの花 さくとしらずや みよしのの

山にともまつ 雪のみゆらん」

貫之・風雅64

「梅の花が咲くとも知らないでか、吉野山では、まだあとから雪が降って来ないかな、と待っている残雪が見えるようだよ。」

・ともまつ雪=友待つ雪。あとから降り加わるのを待っている残雪。

〔釈教歌〕

「草も木も たねはひとつを いかなれば

二葉三つ葉に めぐみそめけん」

大僧正行尊・風雅2052

「草も木も、同じ種から生まれると言う点は同一であるのに、どういうわけで二葉のもの、三葉のものというように違った形で芽を出しはじめるのだろう。(その種の性格によって生ずる形も違うのだ。人間も同じことだ)」

・法華経薬草喩品の心を詠む

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2011年2月27日 (日)

般若寺水仙:2月中   *満開*

今日も晴れです。まだ2月なのに陽春と言っていいような暖かさ。水仙は完全に満開、おそらく今日が最後の日曜日でしょう。もう人の気は梅のほうに移っています。梅が満開になれば桜へと人気は移り気です。明日から天気は下り坂で寒気が戻ってくるそうです。行ったり来たりの春模様ですね。

今日の庭作業は前からの山あじさいの植え替え、午前はぽかぽかと陽だまりが心地よかったのですが、午後は暑いです、きっと日焼けします。700鉢の大半は終ったのところで3割は枯れていました。弱って小さくなったのもありこのシーズンはあまり花が咲かないかもしれません。その分初夏咲のコスモスで埋め合わそうと、いまコスモスに専念しています。きれいな花を咲かせますのでよろしく。

〔俳句〕

「道端に 買うて大束 水仙花」  村上すみ子

「水仙の 駅に来てゐる 通り雨」 高田令子

「香の失せて 壷に溢れし 水仙花」 蔵本博美

〔和歌〕

「まきもくの ひばらの山の ふもとまで

春の霞は たなびきにけり」

藤原基俊・玉葉19

「巻向の檜原山の麓まで、まあすっかり、春霞はたなびいてしまったよ。」

・まきもく=大和の歌枕、巻向山。

奈良県桜井市三輪

山東北に連なる。檜が群生するので「檜原の山」という。

〔釈教歌〕

「くさぐさの 草木のたねと おもひしを

うるほす雨は ひとつなりけり」

権大納言行成・風雅2051

「多種類の草木の種からそれぞれの植物は生育するものと思っていたが、それをうるおし育てる雨は、ただ一つのものであったよ。(仏説の恵みもそれと同じだ)」

・くさぐさ=種類の多いこと。色々。さまざま。

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2011年2月26日 (土)

般若寺水仙:2月中   *満開*

二日前に続いて般若寺を詠んだ俳句の二作目は正岡子規の句です。

 「般若寺の つり鐘ほそし 秋の風」

この句がいつごろ詠まれたのか定かではありませんが、子規の有名な「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の句と同じ頃ではないかと思われます。「柿食えば」の句は般若寺から1キロほど南の手貝町にあった「對山楼」という旅館に逗留して大和路を巡ったとき作られました。旅館の裏庭にあった柿の木の実を食していたところ、近くの東大寺から鐘の音が聞えてきたそうです、最初は「鐘が鳴るなり東大寺」としたそうですが、色々推敲の上、法隆寺としたほうがのどかな風情があるということでこの句にしたという裏話があります。子規が訪れた頃の般若寺は、明治初期の廃仏毀釈のあと無住寺となり荒れはて寂れていました。「釣鐘ほそし」と言う語からその雰囲気が読み取れます。なお、句に出る釣鐘は現存のもので、美術的価値が認められ戦争供出を免れ残ったそうです。この鐘は元来、本山の西大寺奥の院にあったものを、当時の西大寺長老佐伯弘澄師が当寺を兼務されていたとき、廃仏で失われた鐘の補充として持ってこられました。歴史の変遷を感じさせる釣鐘です。

〔俳句〕

「月光に 浮上や丘の 水仙花」  村上昌子

「水仙を すらりと活けて 寺厠」 羽賀恭子

「月魄の 鎮もり始む 水仙花」  西村純太

〔和歌〕

「みちのべや 竹吹くかぜの さむけきに

春をまぜたる 梅がかぞする」

伏見院御歌・風雅63

「この道のほとりでは、竹を吹く風は肌寒いのに、しかしそこに[春]を交えるような、梅の薫りがするよ。」

  みちのべ=道のほとり。道ばた。

  春をまぜたる=寒風の中の梅の香に春を感じる気持。

〔釈教歌〕

「法の雨は あまねくそそぐ 物なれど

うるふ草木は をのがしなじな」

法成寺入道前摂政太政大臣(藤原道長)・風雅2050

「仏の教えは、雨のように衆生に平等に説かれているものだけれど、雨にうるおって生長する草木に大小それぞれの差別があるように、教を受ける衆生にもその根性によりそれぞれの差別が生ずるのだ。」

  法華経薬草喩品の心を詠む。仏の説く法は誰にも平等であるが、各人の本来の資質により三乗五乗の区別を生ずる。そのすべてを導いて一仏乗に入らしめるのが法華経であると説く。三草二木の譬。

  法の雨=仏法の恵みを雨にたとえる。

  うるふ=うるおう。ぬれる。

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2011年2月25日 (金)

般若寺水仙:2月中   *満開*

水仙の花はこのところの陽気で満開、花が開ききったという感じです。今年は本当におそい花でした。

梅もそろそろ満開になってきました。但し白梅です。紅梅や豊後梅はこれからです。豊後梅は咲く時期がおそく木が大きいのでよく桜と間違われます。花は少し桃色がかっていて果実は杏のように大きいです。花も実もある重宝な梅です。

タンポポの花を見つけました。まだ花の軸が短いです。

最後に昨日、蕗の薹の天ぷらをいただきました。春を味わうにはこれが一番ですね。

〔俳句〕

「水仙を 手折りてくれし 尼僧かな」  野口光江

「水仙の 花のたかさに 屈みけり」   海村禮子

「水仙の よろめく崖や 人もまた」   泉田秋硯

〔和歌〕

「春日野に まだうらわかき さゐたづま

つまごもるとも いふ人やなき」

常盤井入道前太政大臣(西園寺実氏)・玉葉17

「春日野に萌え出た、まだ若々しい春草よ。「さいたづま」というその名にめでて、「私の大切な妻がここに隠れている」と言う人もないのかい、あの昔の物語のように。」

  春日野=大和の歌枕。

奈良市

春日大社周辺一帯の野。

  うらわかき=若く初々しい。

  さゐたづま=イタドリの古名。また春の若草一般をもいう。「妻」を導く。

〔釈教歌〕

「われぞうき いそぢあまりの 年ふとも

めぐりあふべき 別ならねば」

二品法親王尊円・風雅2049

「この経にいう窮子よりも、私こそ本当に悲しいことだ。たとえ五十年余りたったとしても、めぐり逢う事の期待できる、父君との別れではないのだから。」

・尊円が父君の伏見院を偲び法華経信解品を詠まれた歌。

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2011年2月24日 (木)

般若寺水仙: 2月中   *満開*

ここ23日はちょっとぬく過ぎます。16度とか18度とかで4月の陽気、桜が咲く気温です。このまま一気に春最中となるのでしょうか。このままでは人間の体が季節の動きについて行けません。

コスモスの苗床も急な暑さで温度管理がむつかしいです。日中晴れておればビニールトンネルの中は30度を越えます。昼ごろビニールをめくり温度を下げ、夕方また寒気を防ぐためビニールとネットをかけてやらねばならず、世話が大変です。でもその甲斐あってコスモスの芽は双葉から本葉に変わってきました。いよいよこれからが育苗の本番です。朝霜に気をつけねばなりません。毎日です。

国華園に注文した不織布「愛菜シート」400メートル巻がきのう届きました。これがあれば霜対策は万全です。忙しくなります。

〔俳句〕

「水仙や 筧の水の 細りをり」  青木陽子

「水仙の 香りほのかに 厨窓」  青木政江

「水仙や 医業支えし 薬箱」   井口淳子

〔和歌〕

「春の色は 花ともいはじ かすみより

こぼれてにほふ 鶯のこゑ」

後京極摂政前太政大臣(後京極良経)・風雅60

「[春]を最もよく象徴するものは(「桜」というのが当然でもあろうが)、いや、桜とも言うまい。霞の間から漏れて一人艶やかに聞える鶯の声こそは、実に「春」そのものだ。」

  春の色=春を代表する美しさ。春の精粋。

  にほふ=艶やかに映える。

〔釈教歌〕 

「五十まで まよひきにける はかなさよ

ただかりそめの 草のいほりに」

前大納言尊氏・風雅2048

「五十年もあちこち迷い歩いて来た心浅さよ。(父の傍らまで来ていながら気づかず)ほんの仮住まいの草庵にぼにゃりしているなんて。(仏の教えはすぐ手近にありながら、気づかず道を求めないで無常の世に迷っているのはそれと同じだ)」

  五十まで=窮子の譬による。

  草のいほり=窮子が父に認められ財産の管理まで任されながらなお門外の草庵に暮らしていたとの本文により、無常を悟らず俗世にとどまっている事をいう。

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2011年2月23日 (水)

般若寺水仙: 2月中   *満開*

般若寺には有名な俳人が詠まれた俳句がいくつか残されています。古いものでは芭蕉の門人向井去来の句、

「散りたまる 花や般若の 紙の向き」です。

これは旧暦325日(現在は425日)に執り行われていた鎌倉時代からの伝統法要「文殊会式」の様子を読んだものだと思われます。「花」は桜、但しそのころはソメイヨシノはありませんから山桜か八重桜だと思われます。現に今もお会式には八重桜が満開です。「般若の紙」とは般若経の経本のことを言っているのでしょう。ただ、般若寺では「大般若経」の転読ではなく、「一切経」を転読していました。去来さんが間違えたか、その当寺大般若経を転読していたのかは分かりません。大般若経は600巻ですが、一切経は5500巻あり7日間かけて読みました。転読は経本を全部読むのではなく経題を大きな声で読み上げ、そのあと折れ本を宙に高く掲げ左手から右手の表紙へ受けて閉じていきます。「紙の向き」は開かれた経本が風に吹かれて宙に舞ってかたむく様子をいっていると思います。この句から、桜の花の散る下での厳かな中にもなごやかな法要の様子が髣髴としてよみがえります。いずれこの句を石碑にして残す予定です、お楽しみにお待ちください。

〔俳句〕

「水仙を 生けて一日を つつしめり」  神蔵器

「水仙の 風雅の真を 香りけり」    大橋敦子

「水仙に 由比が浜辺の 沖明かり」   阿部ひろし

〔和歌〕

「里人や わかなつむらし 朝日さす

三かさののべは 春めきにけり」

前大納言為家・玉葉15

「里人は若菜を摘んでいるらしいな。朝日のうららかにさす三笠山の麓の野原は、すっかり春らしくなって来たよ。」

・三かさ=大和の歌枕。

奈良市

春日大社の後方の三笠山。「さす」は「笠」の縁語。

〔釈教歌〕

「年ふれど ゆくゑもしらぬ たらちねよ

こはいかにして 尋ねあひけん」

前参議経盛・風雅2047

「多くの年を経たけれども、行方も知れずにいた父親よ。子供はどうやって、尋ねあて、逢うことができたのだろう。(父親の方が子を思い続けていたから逢うことができたのだ。仏も同様に、はぐれた子のような我々衆生に、あちらから成仏の証しを下さる)」

・法華経信解品を詠む。長者窮子の譬を説き、声聞にも成仏の記別が与えられた喜びを述べる。

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2011年2月22日 (火)

般若寺水仙: 2月中   *満開*

昨年から続けてまいりましたこのブログ「般若寺水仙花だより」は今月いっぱいで終了いたします。月が替わって31日からは「コスモス寺春の花たより」と題をかえて続ける予定です。春は梅、桜、山吹、射干、連翹、牡丹、鉄線、空木、躑躅、菖蒲、など百花繚乱の季節です。そして春の花が終るころ紫陽花が咲きはじめ、同時に早咲きコスモス(般若寺では「初夏のコスモス」と言っていますが)が見頃を迎えます。ただいま咲いている花の情報をできるだけ丁寧にきめ細かくお伝えしてまいりますので、よろしくお付き合い下さいませ。

〔俳句〕

「風なくて 書斎の水仙 淋しかろ」  大橋敦子

「口笛の 花弁とがらせ 水仙花」   増田明美

「水仙や 次に咲かんと する莟」   森戸柚斎

〔和歌〕

「梅の花 さけるをかべに 家居せば

ともしくもあらじ 鶯のこゑ」 

読人しらず・風雅55

「梅の花の咲いている岡のほとりに家を営んで住んで居れば、不足することもあるまいよ、鶯の声に。」

  万葉集1820

  家居=家に住むこと。

  ともし=乏しい。少ない。

〔釈教歌〕

「おどろかで けふもむなしく 暮れぬ也

あはれうき身の 入りあひの空」

慶政上人・風雅2046

「世間無常の道理にはっと気づく事なく、今日も仏道に励まずに空しく暮れてしまうようだ。ああ、この情ない身が終末に近づいているのを象徴するような、入相の鐘の響く空よ。」

・法華経譬喩品の「不覚不知不驚不怖」の心を詠む。火宅の譬の中の、子らが火災に気づかず遊び戯れているさまを述べた譬喩品の一節。仏法に目覚めぬ衆生の譬。

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2011年2月21日 (月)

般若寺水仙:2月中   *満開*

朝は氷が張るほど寒いでした。でも日が昇るにつれ気温は上昇、無風快晴の春日です。

先日紹介した「霊石まかばら石」の後ろでは、紅梅がつぼみをふくらませ、その横の「ねこやなぎ」はネコの毛のような蕾が大きくなり3センチほどあります。普通は銀色ですがここのは少し黒みがかって光っている珍しい種類です。

水仙は観音さまの前でも満開でいま一番いいときを迎えています。

〔俳句〕

「水仙の 凛乎と立てる 心意気」  大橋敦子

「水仙の 向きの彼方此方 誕生日」 森ゆみ子

〔和歌〕

「夜もすがら 思ひやるかな 春雨に

野べのわかなの いかにもゆらん」

中務卿具平親王・玉葉14

「一晩中、思いやることだよ。この春雨に、野原の若菜はどんなに青々と芽を出しはじめることだろうかと。」

〔釈教歌〕

「心をば 三つの車に かけしかど

一つぞ法の ためしにはひく」

権僧正永縁・玉葉2045

「長者の子供等は、羊・鹿・牛の引く三つの車をほしいと思って火宅の門外に走り出たが、長者はただ一つの最高の大白牛車を、一乗仏法の証として引き与えたのだ。」

  法華経譬喩品の心を詠む。火宅の譬。

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  法=「車」の縁語「乗り」をかける。

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2011年2月20日 (日)

般若寺水仙:2月~3月   *満開*

境内をゆっくり歩いてみると冬の間、地面に張り付くように葉を残していた野草たちが動き始めたのが分かります。タンポポはまだじっとしていますが、「あかざ」「馬のあしがた」「地獄の釜の蓋」などは芽を出し葉を広げようとしています。春は地面の生え際からもやってきているんですね。

昔からちょっと名の知られた般若寺のタンポポは「日本タンポポ」が大半です。しかし油断していると「西洋タンポポ」がどんどんはびこります。外来種は何でも勢いが強いです。それで在来種を保護するため、見つけるたびに抜き取っています。見分け方は簡単で、西洋タンポポは花と葉が大きく、花の色は濃くて花弁先が少し黒ずんでい、花裏のガクが反り返っています。いま日本タンポポは絶滅の危機にあります。これを保存するには、身の回りで雑草とりをする際、日本種を残し西洋種を取り除くことです。日本タンポポが日本から消滅してしまわないようにみんなで守って上げてください。

〔俳句〕

「水仙の 香を纏ひつつ 席に着く」  稲畑汀子

「水琴の 縁に殖えつぐ 水仙花」   鈴木石花

「水仙花 俯き癖は 我にもまた」   久米憲子

〔和歌〕

「鶯の こゑものどかに なきなして

かすむ日影は くれむともせず」

前大納言為兼・風雅51

「鶯が、その声もいかにものどかな気持ちをさそうかのような調子で鳴いて、たゆたい霞む日の光は、暮れようともしない。」

・なきなして=「なす」はことさら意図あってする意。わざわざのどかなように鳴いて。

〔釈教歌〕

「妙法の ただひとつのみ ありければ

又二つなし また三つもなし」

前権小僧都源信・風雅2044

「微妙不可思議の法は、ただ一つ、大乗のみがあったのであるから、その他に二乗もなく、また三乗もないのだ。」

・法華経方便品を詠む。諸仏は悪世においては方便をもって三乗を説くこともあるが、十方仏土の中にあってはただ一乗法あるのみで、二乗も三乗もない事を説き、声聞縁覚の徒も在家者も諸仏の本願により成仏し得るとする。

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2011年2月19日 (土)

般若寺水仙:2月中  *満開*

天気がいいので朝から園芸作業をしました。日なたは暖かく着ているものを一枚脱げるほどでした。今日の作業はアジサイの植え替えです。アジサイと言っても原生種の山あじさいです。去年は鉢植えで60種類700鉢作りました。しかし普通でもこの数は大変なのに、あの猛暑の中、水を切らしたところもあってだいぶ枯れています。いま一鉢づつ抜き取って根を確かめ、生き残っているものは土を代えて植えつけます。一日50鉢が限度で、それ以上すると腰が痛くなります。今年は300鉢程度に減らそうと思います。それでも先は長いです。何とか花が咲いてくれればいいのですが。

〔俳句〕

「水仙を 活けてその香を 纏ひけり」  稲畑汀子

「水仙の 香に身を寄する 安息日」   嶋村恵美子

「会釈して 水仙の香を 残しゆく」   木下忠雄

〔和歌〕

「鳥のねも のどけき山の あさあけに

霞の色は はるめきにけり」

前大納言為兼・玉葉9

「小鳥のさえずりものどかに聞える、山の明け方に、立ちわたる霞の色はすっかり春らしくなったよ。」

〔釈教歌〕

「ちりまがふ 花のにほひを さきだてて

光を法の むしろにぞしく」

西行法師・風雅2043

「散り乱れる花の香りを前触れとして、御仏の光を、法文を説く席上にあまねく行きわたらせることだ。」

  法華経序品の心を詠む。霊鷲山において仏が無量義経を説き終わって三昧に入っている時、天から曼陀羅華が降り、大地が六種に振動した。仏は眉間のビャクゴウから光を放って東方一万八千の世界を照らし、その光の中に六道から諸仏の般涅槃のさままでを示したので、集まっていた大衆は弥勒を通じて文殊にこの奇瑞の説明を求め、文殊は仏が今日まさに妙法蓮華経を説かれるであろうと答える。法華経二十八品の総序。

  法のむしろ=法の筵。説教の場。

  しく=広く行き渡らせる。「敷く」は「筵」の縁語。

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2011年2月18日 (金)

般若寺水仙:2月中です。   *満開*

水仙の花の時期を訂正します。旧年から何度目かは分かりませんが。数日前までは3月まで見頃が続くと見ていたのですが、ここのところ雪がよく降り花がたおれたものが増えています。咲き具合からしてこれからと言えるのに惜しいことです。やはり2月いっぱいまでとしておきます。平年では水仙の開花は12月下旬から2月までで、1月には見ごろを迎えるはずでした。今年の冬はやはり異常気象の表れが顕著で花のサイクルがちぐはぐです。冬じゅう低温、大雪、乾燥と極端な気候でした。

3月は梅の季節、そして花といえば桜、桜にも多くの種類があります。山桜、八重桜など多種多彩です、ソメイヨシノだけではありません。

「惜しむらし 花の盛りに 雪中花」  仙花子

〔俳句〕

「雪折れの 水仙それでも 咲いて見せ」  おかたかお

「水仙や 此の畑守る 垣に添ふ」     神田一瓢

「花水仙 教師の子ども あと継がず」   井関祥子

〔和歌〕

「山ぎはに 鶯なきて うちなびき

春とおもへど 雪ふりしきぬ」

人麿・風雅45

「山のほとりに鶯が鳴いて、ああ、春だ、と思うけれど、まだ雪は降り続いている。」

  うちなびき=春、草木の茂りなびくさまから、「春」の枕詞。

  ふりしきぬ=降り頻きぬ。しきりに降っている。

〔釈教歌〕

「補陀落の うみをわたれる ものなれば

みるめも更に おしからぬ哉」

粉河寺観音御歌・風雅2042

「補陀落海を渡るように、遠国からはるばるやって来た信仰深い者であるから、その海に生える海松藻(みるめ)ならぬ、「見る目」を与えることも、一向に惜しくはないよ。」

  補陀落のうみ=インドの南海岸。そのほとりに観世音菩薩の住む補陀落山があると信じられた。

  みるめ=海藻の「海松藻」に「見る目」(視力)をかける。

  粉河寺=西国観音霊場第3番札所

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2011年2月17日 (木)

般若寺水仙:2月~3月   *満開*

今日は3月の陽気、15度まで気温上昇です。

久しぶりに早咲きコスモスの苗床に水遣りをしました。昨日までの寒さのせいかなかなか大きくなりません。無理もありませんね、外気はマイナス5度からプラス5度程度が続いたのですから。コスモスにとっての適温は15度から25度くらいです。電気や石油で加温すれば別ですが自然に任せているのですから仕方ないですね。でも小さな二葉の緑がいとおしいです。無事に育つように見守ります。春は確実に進んでいます。

「雪や雨 水仙の花 健気なり」  仙花子

〔俳句〕

「水仙の レトロ調なり 先斗町」  松田和子

「一献の ごと水仙の 香を賜ふ」  長山あや

「風もなく 穏やかな日や 野水仙」 安原葉

〔和歌〕

「春きぬと おもひなしぬる 朝けより

空も霞の 色になりゆく」

伏見院御製・玉葉5

「ああ、春が来た、と心に思い決めたその朝から、空だってほんのりとした霞の色になって行くのだよ。」

  おもひなす=考えて・・・だと決める。心の働きを示す。

  朝け=「朝明け」の約。

〔釈教歌〕

「いそげ人 弥陀のみふねの かよふ世に

のりをくれなば いつか渡らん」

聖徳太子・風雅2041

「急ぎなさい、人々よ。阿弥陀如来が諸人を極楽浄土に導いて下さる御舟の往来しているこの世のうちに。もし今乗り遅れたら、いつ苦海を渡って浄土に行けるか。(行けはしないではないか)」

  弥陀のみふね=苦界(苦しみに満ちた人間界)を「苦海」にたとえ、衆生の極楽往生を誓った阿弥陀の四十八誓願を、海を乗り切って彼岸に渡す舟にたとえる。

  のりおくれなば=衆生は人間界においてのみ、仏の教えに接して往生の機を得る。六道の中の他の界においてはその機会がない事をいう。「のり」は「乗り」と「法」をかけ、「渡らん」は「舟」の縁語。

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2011年2月16日 (水)

般若寺水仙:2月~3月   *満開*

今朝はマイナス5度でした。この冬一番の冷え込みです。氷が厚くはり霜柱が立ちました。しかし朝の寒さに引きかえ昼間は久々の春の陽気、天気は快晴です。たおれていた水仙も元気のいいのは立ち上がり、折れてしまったものは石仏様にお供えしました。花はいま見頃なのにおしいことです。

月が替われば梅や桜の季節です。春爛漫はすぐそこにやってきています。気分を変えて春を迎えましょう。

般若寺では早咲きコスモスの苗が芽を出して暖かくなるのを待っています。寒さでしもやけを起こさないよう保護養生してあげないと。私は忙しいです、振り向いている余裕はありません。

「水仙の けなげに咲ける 雪の中」  仙花子

〔俳句〕

「水仙の うつむいてゐる 自己主張」  伊勢きみこ

「水仙の 系図いちばん 上は海」    直江裕子

「水仙花 一途といふは つつましき」  田所洋子

〔和歌〕

「花鳥の なさけまでをぞ 思ひこむる

夕山ふかき 春のかすみに」

後伏見院御歌・風雅44

「(これから盛りになるであろう)花や鳥の情趣までも心ひそかに思い浮かべるよ。夕の山を深く包む、春の霞の中に。」

・思ひこむる=思いの中に籠める。想像する。

〔釈教歌〕

「待ちかねて なげくとつげよ みな人に

いつをいつとて いそがざるらん」

善光寺如来の御歌・風雅2040

「私のところへいつ来るかと、待ちかねて悲しんでいると、皆の人に知らせておくれ。一体皆、死の到来をいつと思って、そんなに呑気にしているのだろう。(早く来て極楽往生を願わないと間に合わないのに)」

  いつをいつとて=何時を限りの時だと思って。

* 『風雅和歌集』の〔釈教歌〕は『玉葉和歌集』にならい託宣歌三首から始まる。

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2011年2月15日 (火)

般若寺水仙:2月~3月  *満開*

ふたたびの雪です。昨日の午ごろから降り出した雪が夜半まで続いたようで積雪6センチとなりました。一面の銀世界となりすばらしい景色です。このように3日と空けずに雪となるのは奈良では稀なことです。寺の車は皆ノーマルタイヤなので外出できません。まあ少しがまんすればそのうち融けてくれるでしょう。水仙の花が心配です。全く雪ノ下になりました。重みで押さえつけられかわいそうです。しかしどうにもできません。笠を被せる訳にもいかず成り行きに任せておきます。前もそうでしたが、春の雪はすぐ融けてそのうち花もよみがえってくるでしょう。それにしても花の見頃は短いですね。秋のコスモスには風、冬の水仙には雪が大敵ですね。この雪は太平洋側に多く降ったようで和歌山でも何十年ぶりかの大雪となったそうです。どことも例外なく水仙の花に雪が積ったようです。各地の水仙名所の方々にとっては残念なことですね。一年かけてお世話をしてこられてこれから見頃と言う時に雪が降るなんて。これも自然界からの贈り物と考えて前向きに行きましょう。

「水仙を 筒に挿しては 香をめづる」  仙花子

〔俳句〕

「はじらひを 忘れぬ人や 水仙花」  岡垣佳子

「墨染めの 衣干しあり 水仙花」   綱川恵子

「水仙の 十本母の 忌なりけり」   竹下昌子

〔和歌〕

「花ならぬ 雪にもつらし 朝きよめ

また心あれ とものみやつこ」

藤原秀長・玉葉1014

「(落花が美しいから掃き清めるなという古歌があるが)花ではなくて雪の時も朝の庭掃除は恨めしいよ。この場合にも気をきかしてそっとしておいておくれ、主殿(とのも)寮の下役人どもよ。」

  朝きよめ=朝の掃除。

  とものみやつこ=伴の御奴。主殿寮の下役人で庭掃除などに当る者。

〔釈教歌〕

「のりのこゑに ききぞわかれぬ ながき夜の

ねぶりをさます あか月のかね」

高弁上人・玉葉2726

「仏法の真理を説く言葉として聞き、理解することができたよ。無明長夜の眠りを覚ます、暁の鐘の音を。」

詞書「夜、法文を清談するに、時うつりゆきて後夜のかねをききてよめる」

・法文=仏法の要義、要文。

・清談=世俗の名利を超越した心おきない会話。

・後夜のかね=午前4時頃に行う後夜の勤行の時刻を知らせる鐘。

*この歌が『玉葉和歌集』釈教歌の最後です。明日からは『風雅和歌集』の釈教歌に入ります。

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2011年2月14日 (月)

般若寺水仙:2月~3月   *満開*

214日はバレンタインデーです。これはAD269年ごろ殉教死したローマの司祭、聖バレンタインの記念日。この日に愛する人に贈り物をすれば思いが届くとされます。日本では1958年ごろから流行しています。キリスト教の聖日なのに、日本ではほとんどの人はチョコレートをやり取りする日と捉えています。菓子業界の宣伝が大成功した一例ですね。

一方、明日215日は仏教の開祖、お釈迦様が亡くなられた聖日で、涅槃会(ねはんえ)もしくは常楽会(じょうらくえ)と呼ばれる法要が営まれます。真言宗では明恵上人高弁さんが作った「涅槃講式」が読まれます。これは非常に音楽性豊かなもので、声明(しょうみょう)という仏教音楽の中でも最高の作品と言っていいでしょう。後世の邦楽歌謡の源流となりました。講式は漢文読み下し体で書かれているのでむつかしいですが、お釈迦様の生涯と徳をたたえ、入滅涅槃の際の仏弟子、信者たちの悲しみの様子を目の当たりに再現しています。熱烈な釈迦信仰を持っていた明恵上人の真骨頂と言えます。なお、涅槃は梵語で「ニルバーナ」の音訳で「吹き消された状態」をいい、煩悩の火が消え智恵が完成する悟りの境地を言います。また心が迷いに縛られている状態から脱して自由になる「解脱(げだつ)」と同義です。涅槃寂静(じゃくじょう)、常楽と言われる由縁です。

「雪とけて ぽたりぽたりと 水仙に」  仙花子

〔俳句〕

「水仙の とらへどころの 無き不安」  竹下昌子

「歌ふとは 輝くことや 水仙花」    松本きみ枝

「水仙や 異国の友へ 手紙書く」    松隈絹子

〔和歌〕

「春の色は 柳のうえに みえ初めて

かすむものから 空ぞさむけき」

伏見院御歌・風雅43

「春の気配は、柳の枝先に感じられはじめて、あたりはほのかに霞みつつも、空はまだ寒々としている。」

・春の色=春の雰囲気。ここでは他にさきがけて見られる柳の新芽の薄緑をさす。

〔釈教歌〕

「つたへきて 残る光ぞ あはれなる

春のけぶりに きえし夜の月」

従二位家隆・玉葉2725

「釈尊入滅後も伝えて来て、今に残っている仏舎利を拝む事こそまことに感動的である。春の煙に消えた夜の月のような、釈尊の面影の僅かに残る光が、これかと思えば。」

  舎利講の心を詠む。舎利講会は仏舎利を供養する法会。

  春のけぶり=釈尊の遺体を荼毘に付した煙。

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2011年2月13日 (日)

般若寺水仙:2月~3月   *満開*

いま境内は小鳥たちの楽園です。いろんな種類の渡り鳥が来ています。もう少し暖かくなれば北の故郷へ帰っていくので体力をつけるため食欲旺盛です。菜園のほうれん草や露座の仏様に供えた菊の花は好物らしく軸や花の芯だけを残してきれいに積みとっていきます。ただし水仙の葉や花は全く啄ばみません。ちゃんと知っているんですね、毒があることを。これがもし無毒であるなら水仙は生き残れなかったでしょう。玉葱のような球根も動物に食べられてしまったでしょう。地中海で生まれた水仙がいまのように世界中に広まることができたのは毒を持っていたからかもしれませんね。秋の彼岸花も同じ毒があります。かつては飢饉で食べる物が無くなったら最後にこれらの球根を水で晒して毒を消し食用にしたそうです。この先地球に何が起こるかわかりません、水仙、彼岸花のお世話にならないことを願います。

「小鳥たち 花を見るだけ 水仙の」  仙花子

〔俳句〕

「水仙や 空の青さを 入れて撮る」  山田孝枝

「初雪を 払ひ水仙 匂ひ立つ」    君島栄子

「水仙を ひと抱えして ひと揺すり」 坪内稔典

〔和歌〕

「しがらきの と山のあられ ふりすさび

あれ行くころの 雲の色かな」

前中納言定家・玉葉1012

「信楽の外山に霰が激しく降って、あたりの様子が荒れて行く頃の、雲の色のすさまじさよ。」

・しがらきのと山=近江の歌枕。信楽あたりの近い山。

〔釈教歌〕

「いにしえの 春のなかばを 思ひいでて

心にくもる 夜はの月かげ」

従三位泰光・玉葉2724

「その昔の、春の半ばの涅槃の有様を思い出して、悲しみの心に曇って見える、夜半の月の姿よ。」

・仏の涅槃を思って詠む。

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2011年2月12日 (土)

般若寺水仙:1月~3月  *満開*

水仙は別名、雪中花とも言います。昨日今日の景色はまさしくその名の通りですね。雪が積っている間、花は埋もれていてちょっとかわいそうです。でも雪が融ければ蕾は凛と立っています。開ききった花は折れているのもありますが今年の花は咲くのがおくれた分、まだ蕾が多いです。この時期はきまって雪が降るのでいたし方ないですね。春雪は湿っていて大きなボタン雪となるので重いけれどすぐ融けてくれるので助かります。北陸の有名な越前海岸の水仙は常に雪の下なのでしょうね。大雪に負けることなく香り高い花を咲かせてください。北国にももうすぐ春がやってきます。

「水仙や うもれし雪に 蕾見え」  仙花子

〔俳句〕

「水仙を 抱き人込みに まぎれたる」  安達風越

「水仙花 恙なき師を よろこべり」   吉田豊子

「聞き返す 夫の口癖 野水仙」     高橋澄子

〔和歌〕

「日影さす 山のすそのの 春草に

かつがつまじる 下蕨かな」

安嘉門院四条・風雅42

「日光が暖かくさす、山の裾野の春草の中に、僅かながらまじって萌え出ている、物陰の小さな蕨よ。」

  かつがつ=不十分ながらいくらか。

  下蕨=物の下陰に生えたワラビ。

〔釈教歌〕

「けふはこれ なかばの春の 夕霞

きえしけぶりの なごりとやみん」

伏見院御製・玉葉2723

「今日はほら、春のちょうどまん中の涅槃の日。たなびく夕霞を、薪がなくなって火が消えるように涅槃に入られた釈尊の、消え去った煙の名残と眺めようか。」

  二月十五日(新暦では319日頃)、釈尊入滅の日。涅槃を詠む。

  きえしけぶり=「仏此夜滅度 如薪尽火滅」(法華経序品)により、涅槃のさまをいう。

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2011年2月11日 (金)

般若寺水仙:2月~3月  * 満開 *

とうとう降りました、初雪です。奈良では珍しくも10センチも積もりました。でも春の淡雪ですからすぐ融けました。交通には何の支障もなかったようです。雪は街も野山も田畑も全てを白くおおいつくし周りの景色を変えます。何か手品のようです。世にある汚いもの醜いものを隠してくれるので、しばらくの間、清らかな風景を味わえます。とければ終わりのはかない風景ではありますが、穢汚充満の人間界を瞬時まっさらな白紙に戻してくれそうな気がします。

雪がまた春を一歩進めてくれるでしょう。

「白雪の 水仙の花と 同化して」  仙花子

〔俳句〕

「水仙や 空へへと 湧く蕾」  三井孝子

「水仙花 受験の子等の 長き列」 山荘慶子

「水仙の 凛と亡き夫 しのばせる」 杉本綾

〔和歌〕

「ねやのうへは つもれる雪に をともせで

よこぎるあられ 窓たたく也」

前大納言為兼・玉葉1010

「寝室の屋根の上は、深く積った雪に静まりかえって音もなく、突然横さまに降り来る霰が、激しく窓をたたく音が聞える。」

〔釈教歌〕

「むなしきを きはめをはりて そのうえに

よをつねなりと またみつる哉」

前大納言為兼・玉葉2722

「 [空しい]という事を究極まで追求し終わって、その

上で、[世は常である]という事を、はじめてはっきりと認

識したことであるよ。」

・般若心経の「畢竟空」の心を詠む

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2011年2月10日 (木)

般若寺水仙:2月~3月  ** 満開 **

水仙が満開を迎えて一安心。各方面からの問い合わせに言い訳ばかりの日々でした。きのうの雨でしっとりと一息ついた状態です。雨がないのも花に影響していたかもしれません。どうぞ水仙の花を、そして香りを堪能してください。

早咲きコスモスの苗床は小さな二葉がつぎつぎと芽吹いています。一番早く播いたのは1月24日でしたから17日が経過しました。夏だったら一週間で発芽します。やはり冬場は時間がかかります。それから去年は端っこの苗が5センチに育ったところで霜にやられ、赤くなって枯れました。今年はビニールを二重に張り、その上夜間はきっちり霜よけの黒いネットを掛けています。これで霜対策はできたと思います。あとは気温が上昇した時の温度調節と水遣りです。一日も休めません、子育てやペットの世話をするのと同じです。手を抜けません、愛情を持ってがんばります。

「水仙の 花満開に 匂い立つ」  仙花子

〔俳句〕

「水仙の 一列なれば 花揃ふ」  宮津昭彦

「廃校址 なほ水仙の 咲きつげる」 松元末則

「誰が活けし 水仙なるや 無人駅」 泉田秋硯

〔和歌〕

「春もいまだ あさるきぎすの 跡みえて

むらむらのこる 野べのしら雪」

土御門院御歌・風雅41

「春もまだ日数が浅いために、野に出て餌をあさり歩く雉の踏み跡がそれとわかるほどに、所まだらに残っている野原の白雪よ。」

  あさる=食物を探す。「春もまだ浅い」の意をかける。

  きぎす=雉

〔釈教歌〕

「さめぬまの まよひのうちの 心にて

夢うつつとも なにかわくべき」

伏見院御製・玉葉2721

「悟りを開かぬ間の、迷いの中に生きている心で、これは夢、これは現実と、一体どうして判断することができようか。(悟りに目覚めぬ限り物事の真実相はみわけられないのだ)」

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2011年2月 9日 (水)

般若寺水仙:2月~3月  * 5分咲き、見ごろ。

ゆうべ遅くから雨が降り出しました。それほどの量ではなかったようです。しかし30何日ぶりかのことで、やっと乾燥注意報が解除されました。これから一雨ごとに春がすすんでいきます、でもまだ二月、行きつ戻りつの春です。

水仙の花はようやく見頃を迎えました。このところの暖かさのおかげで3,4日の間に一気に開花しました。観音石仏の前も5分咲き以上に咲いています。長らく長らく待たされました。こんなにおそい花は近年にはなかったことです。いつもならお正月から1月中が見頃なのに1ヵ月もおそくなりました。今年の気象が異常であることの一現象なのでしょうか。

「水仙は 雪を待てるか 春まだき」 仙花子

〔俳句〕

「水仙に 屈み香りを 確かむる」  堀田恵美子

「立ち込むる 匂ひ水仙 枯れながら」 ことり

「水仙の 初咲知らす 夫の声」   高木千鶴子

〔和歌〕

「風ののち あられひとしきり ふり過ぎて

また村雲に 月ぞもりくる」

従三位為子・玉葉1005

「急に吹きおこった強風のあとに、霰が一しきり降り過ぎ、そして又何事もなかったかのように、村雲の間から月光がもり出て来るよ。」

〔釈教歌〕

「たぐひなき みのりをきくの 花なれば

つもれる罪は 露も残らじ」

法性寺入道前関白太政大臣(藤原忠通)・玉葉2720

「類なく尊い仏法を聴聞するのですから、その座に供えるこの菊の花に露一つ残らぬと同様、積った我々の罪障はほんの少しも残らず生滅することでしょう。」

・きくの花=「御法を聞く」に「菊の花」をかける。「露」も「菊」の縁語。

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2011年2月 8日 (火)

般若寺水仙:2月~3月  * 3~5分咲き

昨日、夏から秋に咲く睡蓮の原生種、「ひつじ草」を植え替えました。植木鉢に植えて水鉢に沈めます。年々株が大きくなるので鉢を大きくしてやらねばならないのですが、あまり大きくすると重くて運ぶことができなくなります。また夏場は水の補給を毎日しなければなりませんのでなるべく蛇口の近くがいいです。そして日当りは大事なのですが、よすぎると水がお湯のように熱くなり花が弱ってしまいます。置く場所は午前中は日が当り午後からは日陰になるようなところが理想的です。小さくてかわいい花は大変人気があります。今年もきれいに咲かせるため、冷たい泥仕事を無事仕上げました。大鉢3杯、小鉢8杯、合計11鉢となりました。ひつじ草の花は7月から9月まで咲きます。

水仙は見ごろと言ってもいいでしょう。長らくお待たせいたしました。

「水仙に 水おいてあり 春ならん」  仙花子

〔俳句〕

「秘すれば花 その有り様に 水仙花」 本城布沙女

「曇日を 仰ぐ水仙 切りながら」   ことり

「生まれ日の 素直に在れよ 水仙花」 塩野きみ

〔和歌〕

「かつきゆる 庭には跡も みえわかで

草葉にうすき 春のあわ雪」

円光院入道前関白太政大臣(鷹司基忠)・風雅40

「降るそばから消えて行くために、庭面には積った跡も見分けられないで、ただ草葉の上にだけうっすらと置いている、春の淡雪よ。」

・かつきゆる=降るとすぐに消える。

〔釈教歌〕

「かかる樹も また花のさく ちかひあれば

我身のならむ 末もたのもし」

法印セン秀・玉葉2719

「枯れた木にも又花を咲かせるという、御仏の誓いがあるからには、自分の身のなり行く末も頼もしく、希望が持てることだ。」

・千手経の心を詠む。

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2011年2月 7日 (月)

般若寺水仙:2月~3月  * 3分咲き

境内の紅い梅の蕾がだいぶふくらんできました。白梅は少しほころんでいます。この分だと桜も早くなりそうです。と言っても3月中旬以降ですが。水仙はようやく見頃になってきました。ただ皆様お待ちかねの観音石仏の前は正直3分咲きだと思います。満開まではあと3日程度かかるでしょう。

「水仙を 写真とる人 春めいて」  仙花子

〔俳句〕

「一輪の 水仙の香に 眉上ぐる」  筒井八重子

「裏庭と 云えど原なす 水仙花」  池田かよ

「水仙の 仏間に写経 墨をする」  今井忍

〔和歌〕

「月かげは もりの梢に かたぶきて

うす雪しろし ありあけの庭」

永福門院・玉葉997

「月の姿は森の梢に傾きかかって、いつの間にかうっすらと積った雪が白いことだ、月のあるままに明けようとする庭は。」

〔釈教歌〕

「たぐひなき みのりのために おる花は

この一枝も にほはざらめや」

二条太皇太后宮摂津・玉葉2718

「くらべるものもない程尊い御法会のために折って下さいました花ですもの、「この一枝」などとご謙遜ですが、それどころか、ご寄進の花がすばらしい香りを放たないことなどありましょうか。」

・京極前関白家の法華経五十講に捧げられた仏の供花に寄せられた歌、「こころざしふかくちぎれる花なればこのひと枝もきらはざらなん」への返歌。

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2011年2月 6日 (日)

般若寺水仙:2月~3月  * 3分咲き

きのうに続いてコスモスのことを。

いま芽を出してきた早咲きコスモスは、去年より1週間早く播種したので、咲くのは5月下旬ころだと思います。本数は約3万本です。種類は「センセーション」1種類だけですが、一番コスモスらしい種類で赤白ピンクの3色に咲き分けます。呼び名を「早咲き」と言ったり「春咲き」「初夏咲き」とも言い、まだ定着していません。それだけ珍しいのですね。この時期のコスモスはアジサイと同時期で、雨が多いから葉っぱが青々としていて花の色がひきたてられます。自然条件が夏ほど過酷でなく育てるのも楽です。5月下旬から7月上旬までの花期で6月中旬が満開だろうと思います。

「コスモスの 芽を呼ぶ春や 水仙花」  仙花子

〔俳句〕

「水仙を 抱いて来し胸 香りけり」  木内美保子

「水仙を ブルーの紐で 束ねけり」  松下幸恵

「水仙の 花の律儀と 対峙せり」   西口万佐子

〔和歌〕

「朝あらしは そともの竹に 吹きあれて

山のかすみも 春さむき比」

永福門院・風雅39

「朝の強風は、裏手の竹林に荒々しく吹いて、山の霞は立ちながら、それすらも早春の寒さを身にしみて感じさせる頃よ。」

  「余寒のこころ」を詠む。

  そとも=背面。家の北側。「影面(かげとも)」(南)の対となる万葉語。単に「外部」ではない「北」の意を強く持つ。

〔釈教歌〕

「おがみつる しるしやここに とどまらむ

かみをしきてし 跡もきえねば」

高弁上人・玉葉2717

「今ここで私が西寺の塔を拝んだしるしも、ここにとどまることであろうか。昔、釈尊が御仏に逢って、髪を地に敷いてお歩かせ申したという跡も、消えずに残っているのだから。」

・西寺=

奈良市

西ノ京町の薬師寺。

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2011年2月 5日 (土)

般若寺水仙:2月~3月   * 3分咲き

ほんとうに暖かい日が続きます。

早咲きコスモスの種を播いて10日あまり、そろそろ芽が出る頃です。今日トンネル栽培のビニールをはがして水遣りをしました。でも芽は数えるほど、少しです。無理もありませんあの寒さの中ですから。1月の寒い間はじっと耐えて眠っていたのでしょう。今の陽気が来てまだ3日、昼間はビニールトンネルの中は20度を越えていますが、夜は0度です。このままこの気温が続いてくれれば数日のうちにどんどん発芽するでしょう。発芽すればしめたものです、そこからは日光と水分にめぐまれて自力で育っていきます。しかし世話するほうは忙しくなります。昼間は温度が上りすぎないよう覆いをはずして外気を入れ、夕方にはビニールを被せ霜よけネットで覆ってやらねばなりません。毎日です。

水仙は気の毒ながら新聞・テレビの話題から消えつつあります。かわって梅、桜が主役となってきました、まだまだこれから満開というのに。

「水仙は ひかえめなるや 春の庭」  仙花子

〔俳句〕

「浮世絵に 影は描かれず 水仙花」  百瀬七生子

「妻三日 留守水仙の 濃く匂ふ」   山本喜朗

「病む老いの 気配のありぬ 水仙花」 大塚民枝

〔和歌〕

「雲をいでて われにともなふ 冬の月

風や身にしむ 雪やつめたき」

高弁上人・玉葉996

「雲を出て、私について来る冬の月よ。お前も風が身にしみるのかね、雪が冷たいのかね。(そんなに人恋しげにするのは)」

  峯の坊=高山寺後山のリョウカ山上の禅堂、花宮殿。

〔釈教歌〕

「ふく風に 波のたちゐは しげけれど

水より外の 物にやはある」

権小僧都顕俊・玉葉2716

「吹く風によって、波の起伏する様子はさまざまであるけれども、それは水より外のものだろうか。(すべて同じ水の、形を変えた姿にすぎないのだ)」

・唯識論の「海の風の縁に遇ひて種々の波浪を起こすが如し」という句を詠む。すべての現実世界の現象は阿頼耶識の転じて起る識の作用である事を述べた句。

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2011年2月 4日 (金)

般若寺水仙:2月~3月  *2~3分咲き

立春。昨日からめっきり春らしくなりました。やはり3月の陽気だそうですが、いつまで続くことやら、でもほっとしますね。

突如、有名な『方丈記』の序に入ります。

「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかた(泡沫)は、かつ消えかつ結びて、久しく止まる事なし。世の中にある人と住家(すみか)と、またかくの如し。」

方丈記全体に流れる鴨長明のレアリスティックな批評眼にはいつも感服させられます。

「水仙や 日はさんさんと 春立ちぬ」

〔俳句〕

「水仙の 芽の照り合へる 誕生日」  坪井洋子

「がんがんと 朝日のあがる 水仙花」 百瀬七生子

「水仙花 自由にどうぞと 角に置き」 澤浦緑

〔和歌〕

「春べとは 思ふ物から 風まぜに

みゆきちる日は いともさむけし」

伏見院御歌・風雅38

「春だとは思うのだけれど、風を交えて雪が散り舞う日は、本当に寒いなあ。」

春べ=春の頃。

〔釈教歌〕

「法の水 ふかきさとりを 種として

むねのはちすの 花ぞひらくる」

慶政上人・玉葉2715

「仏法の清らかな水の、深い悟りを種として、胸の中の清浄な心を象徴する、美しい蓮の花が咲くのだ。」

・「蓮華八葉の上に各如来有り」という事を詠む。

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2011年2月 3日 (木)

般若寺水仙:2月~3月  *2~3分咲き

きょうは節分、季節の移り変わる時。節分は本当は立春、立夏、立秋、立冬と年に4回あるのですが、立春の前の日をとりたてて言います。やはり春が待ち遠しいからなのでしょう。各地各寺社でさまざまな節分行事があり、豆まきが行われるので親しまれています。昔はいわしの頭を家の入口に飾り魔除けとしました。昔から一年の災厄をはらい冬の終わりを告げるお祭りであったのですね。旧暦ではお正月です、中国の春節をはじめアジア各国ではお正月を祝いしばらく休日となります。日本へやってくるアジアの観光客はこの時期一番多いそうです。日本では旧正月は消えてしまったようですが。それにしても一月は寒すぎましたね、これからのほうが外へ出やすくなります。水仙の花も春のあたたかさを待ちわびていたように動き出しました。

「水仙や 春待ちわびて 咲きにけり」 仙花子

〔俳句〕

「直立の 水仙にある こころざし」  塩山弓子

「取り囲む 空気にちから 水仙花」  辻直美

「水仙や 石橋つなぐ 庭と庭」   根岸美智子

〔和歌〕

「雪ふれば 道たえにけり 吉野山

花をば人の たずねし物を」

皇太后宮大夫俊成・玉葉984

「雪が降ったらすっかり道は途絶えてしまったよ、吉野山では。春は花を誰も彼もたずねて来たのだのに。」

〔釈教歌〕

「手にむすび 心におもひ 口にいふ

御法のかひは けふぞみえぬる」

二品法親王尊助・玉葉2714

「手に印を結び、心に祈念し、口に誦経しつつ、我が君のために仏法の御加護を祈った、その念願の甲斐は今日こそあらたかに見えたことだよ。」

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2011年2月 2日 (水)

般若寺水仙:2月~3月  *2~3分咲き

今日は一気に暖かくなりました。1ヵ月分飛び越えて3月になったみたいです。こんな陽気が続けば今月中ごろには水仙と梅の競演が見られるかもしれません。しかし雪国では雪崩の危険があるから急激な気温上昇は要注意だそうです。一方、南半球ではこれからサイクロン(台風)の季節だそうです。今までも洪水被害が大きいのにその上大風ではたまりませんね。こちら、日本の夏はどうなるでしょう、去年と同様な猛暑、干ばつ、集中豪雨などの可能性大です。この先一体どうなることやら。この惑星は生き物にとって段々厳しい星となっていくのでしょうか。人類の繁栄も頂点を極めれば下降線をたどるしかないでしょう。ただ今のことと同時に、未来に思いを馳せることが存続の道でしょうね。

「春めいて 水仙もつ手 あたたかし 」 仙花子

〔俳句〕

「探ね来て 梅より今日の 水仙花」  有島扇水

「姿見に 先ず水仙の 映りけり」   浜田はるみ

「空間の ねぢれねぢれて 水仙花」  小澤克己

〔和歌〕

「花や雪 かすみやけぶり 時しらぬ

ふじのたかねに さゆる春かぜ」

前大納言忠良・風雅37

「ここでは、花と見るのは雪、霞と見るのは煙なのだろうか。季節に関係なくいつも冬である富士の高嶺に、冷たく吹く春風よ。」

・花や雪=常時雪が積み噴煙の上る富士山頂の春の見立て。

〔釈教歌〕

「池水に すめるありあけの 月をみて

西の光を おもひやるかな」

たけくまの尼・玉葉2713

「池水に宿っている、澄んだ有明の月の影を見るにつけても、西方極楽浄土の弥陀の光を思いやるよ。」

・すめる=「住める」と「住める」をかける。

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2011年2月 1日 (火)

般若寺水仙:2月~3月。 *2分咲き

月が替わって「如月・衣更着」(きさらぎ)となりました。ただし旧暦(陰暦)ではまだ12月29日です。節分の日が正月元旦になります。きさらぎとは「生更ぎ」の意で草木の更生すること(いきかえる、よみがえること)を云います。2月3日の節分の翌日は立春、暦の上では春来たるです。

「はーるよこい、はーやくこい」、今年は童謡の気分が濃厚です。しばらくは寒さは緩むそうです、しかし気は緩めず過ごさねば風邪に見舞われます。

「如月や 万物の春 水仙に 」  仙花子

〔俳句〕

「水仙を 活けて心の 張り高む」  上坂渥子

「水仙花 綺麗に老いし 人と逢ふ」 中島静子

「野水仙 日なた日かげの 光かな」 鴨下昭

〔和歌〕

「雪うづむ そののくれ竹 おれふして

ねぐらもとむる むらすずめ哉」

西行法師・玉葉991

「雪がうずめてしまった庭では、呉竹も雪の下に折れ倒れて、とまり場所を失った沢山の雀が、ねぐらをさがして群れさわいでいる。」

〔釈教歌〕

「宇治川の 底にしづめる いろくづを

あみならねども すくひつる哉」

法成寺入道前摂政太政大臣道長・2712

「宇治川の底に沈んでいる小魚どもを、網ですくうのではなくて、経典の功徳をもって救済したことよ。」

  底にしづめる=「川底に沈んでいる魚」の意に、「畜生道に沈んでいる魚類」の意をかける。

  いろくづ=魚屑。魚の総称、魚の総称。

  すくひ=「網ですくい取る」意に「仏の救済」の意をかける。

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