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2011年3月

2011年3月31日 (木)

コスモス寺 春の花だより   3・31

  今咲いている花:椿、レンギョウ、沈丁花、白木蓮、樒

  これから咲く花:桜、山吹、利休梅、しゃが、桃、牡丹、

 八重桜、黒蝋梅、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

今日で3月は終わりです。でも陰暦ではまだ227日です。旧の立春からかぞえたら二十日余りです。春には違いありません。

人間には寒く感じられても、自然の営みは確実に春の時を刻んでいます。桜も各地で咲き出しました。これから花の季節です。昔は「花」と言えば桜のことで、「花の寺」と言えば京都の桜の名所、勝持寺を指したのですが、近年はいろんな花の名所ができてどれもこれも花の寺を名乗っています。当寺も以前は花の寺と称した事がありましたが、紛らわしいので今はコスモス寺と言うことにしています。本家の勝持寺さんに少しは遠慮をしてもいいのでは、と考えております。それにしても花の寺が多すぎる嫌いがありますね。何でもかんでも花の寺と言っていいのでしょうか。もっと歴史を大切にしてほしいですね。反省。

〔俳句〕

「うららかや 話やめては 僧掃ける」  星野立子

〔和歌〕

「山桜 この夜のまにや さきぬらし

朝けの霞 色にたなびく」

伏見院御製・玉葉136

「山桜は、この一晩の間に、すっかり咲いてしまったらしい。早朝の霞が、今朝は花の色になってたなびいているよ。」

〔釈教歌〕

「世をてらす ひかりをいかで かかげまし

けなばけぬべき 法のともし火」

花園院御歌・風雅2083

「闇の夜を照らすその光を、どうやってかき立て、明るくすることができようか。消えるなら消えてしまいそうな、仏法の燈火を。」

  かかげ=灯心を掻き立てて燈火を明るくする意。

  法のともし火=「法灯」の訓読。仏法を、現世の闇を照らす燈火にたとえて言う。

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2011年3月30日 (水)

コスモス寺 春の花だより   3・30

  今咲いている花:椿、レンギョウ、沈丁花、白木蓮、樒

  これから咲く花:桜、山吹、しゃが、桃、牡丹、八重桜、

  梅花うつぎ、利休梅、黒蝋梅、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

弥生、3月もあと2日となりました。普通でしたら冬が終わり春の楽しい季節なのに、3・11のあの大震災のため痛ましい春でした。被災地ではまだまだ災害の最中です。そこへ原発の放射能問題が輪を掛けて災害をひどくしています。原子炉は冷却装置が働きません。放っておくと原子炉格納施設が融けてしまい高レベルの放射能が出て来ます。それを冷ますために注がれた1万トンの水が、更に汚染源となっています。このままでは海が汚染され世界的な問題に広がりそうです。何とか発電所内で収められないのでしょうか、ここ数日が山かもしれません。風向き次第では100200キロ圏まで放射能汚染が拡大しそうです。無事終息へ向うよう、私達はもう祈るしかありません。

〔俳句〕

「若草に やうやく午後の 蔭多く」  山口誓子

〔和歌〕

「春になる 桜の枝は なにとなく

花なけれども なつかしきかな」

西行法師・風雅140

「春の気配のきざして来る桜の枝は、どこがどう変わったとも見えないが、花はまだないけれどもなつかしく思われるよ。」

〔釈教歌〕

「みな人の 心のうちは わしの山

たかねの月の すみかなりけり」

前大僧正道玄・風雅2082

「すべての人の心の中は、霊鷲山の高嶺に澄む月のような、清らかな御仏の住む所なのだ。」

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2011年3月29日 (火)

コスモス寺 春の花だより   3・29

  今咲いている花:椿、レンギョウ、沈丁花、白木蓮、樒

  これから咲く花:桜、山吹、しゃが、桃、牡丹、八重桜、

 梅花うつぎ、利休梅、黒蝋梅、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

毎日、降霜が続いています。コスモスの苗は二重に保護シートを被せている所は無事ですが、最初一重だけしか掛けていなかったところはほぼ全滅です。全体の3分の1はまた植え替えなければなりません。毎年のことながら今年は特に寒さが厳しいです。4月が目の前にやってきていると言うのに、この辺では数日前氷点下4℃の日もありました。苗は多いめに育てているので何回でも植えつけられるからいいですが。いよいよ「ど根性コスモス」になってきました。

〔俳句〕

「つくつくし 摘々ゆけば 寺の庭」  野梅

〔和歌〕

「花なれや かすみのまより 初瀬山

はつかにみゆる 峯のしら雲」

従二位家隆・玉葉134

「ああ、あれは花なのだなあ。初瀬山にかかる霞の間から、わずかに見える山の上の白い雲のようなのは。」

〔釈教歌〕

「むかしより 鷲のたかねに すむ月の

いらぬにまよふ 人ぞかなしき」

前大僧正慈鎮・風雅2081

「昔から永遠に、霊鷲山の高嶺に住しておられる御仏は、入ることのない月のように世を照らしておられるのに、それを悟らず長夜の闇に迷う人々が、本当に悲しいことだ。」

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2011年3月28日 (月)

コスモス寺 春の花だより   3・28

  今咲いている花:椿、わびすけ、レンギョウ、沈丁花、

白木蓮、樒、

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、八重桜、

梅花うつぎ、利休梅、黒蝋梅、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

山吹と言えば太田道灌の伝説が良く知られています。道灌が狩りに出て雨に降られ、とある粗末な家に雨具の蓑を借りようとしたところ、その家の娘さんが山吹の一枝を差し出しました。道灌はその意味が分らず腹を立てていたら、家来の一人が山吹の歌を教えました。それは『後拾遺和歌集』にある醍醐天皇の皇子兼明親王の次の和歌でした。

「七重八重 花は咲けども 山吹の

       みのひとつだに なきぞかなしき」

娘さんはこの歌を知っていて、山吹が実らないことと蓑一つもない貧しい暮らしを掛けて山吹の枝を差し出したのでした。道灌は自分の不明を恥じ、以後勉学に励み教養を身につけたということです。江戸時代に流布した話で、以来山吹と言えば太田道灌と連想されています。しかしこの和歌が兼明親王の作であることを知る人は少ないです。

〔俳句〕

「菜の花や 月は東に 日は西に」  蕪村

〔和歌〕

「人もなき 深山のおくの よぶこ鳥

いく声なかば たれかこたえん」

前大納言尊氏・風雅128

「人一人いない、深山の奥の喚子鳥よ。幾声鳴いたからといって、一体誰が答えてくれるだろうか。(答える者はいないよ)」

〔釈教歌〕

「心ざし ふかくくみてし ひろ沢の

ながれはすゑも たえじとぞ思ふ」

後宇多院御歌・風雅2080

「私が仏道への志を心中深く立てて学び、灌頂を受けた真言宗広沢流の法流は、末々までも長く絶える事はあるまいと思う。」

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2011年3月27日 (日)

コスモス寺 春の花だより   3・27

  今咲いている花:椿、わびすけ、豊後梅、レンギョウ、

沈丁花、白木蓮、樒

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、

梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

「世の中は 常なきものと 我が愛づる 

山吹の花 散りにけるかも」(正岡子規)

境内の八重山吹の蕾が目立ってきました。この分では場所によっては4月の上旬に咲き出すかもしれません。平年では4月中旬から下旬にかけて見頃になります。当寺の昔の案内書では4月下旬から5月上旬となっています。しかしここ10年ほどはゴールデンウィークの頃は花が終っています。牡丹も同じく5月まではもちません。今年は寒い春ですが、花は早めに咲くと思われます。桜も咲き出しているところもあるというのに、とても桜見物の雰囲気ではありません。寒いのと大震災のため日本中が自粛ムードに覆われています。今年は花見の宴も控える人が多いでしょう。

〔俳句〕

「たんぽぽや 一天玉の 如くなり」  松本たかし

〔和歌〕

「しられずも 心のそこや 春になる

時なる比と 花のまたるる」

伏見院御製・玉葉128

「気のつかないうちに、心の奥底が春の気分になっているのかしら。我知らず、もう咲く頃だな、と花が待たれるよ。」

・時なる=時がそれになる。準備ができ、時節がととのう。

〔釈教歌〕

「うき世かな よし野の花に 春の風

しぐるる空に あり明の空」

前大僧正慈鎮・風雅2079

「ああ、全くこれは恨めしい世だなあ。吉野の美しい花には春の風が吹いて散らしてしまうし、時雨の降る空に、晴れていたらさぞよかろうと思う有明の月が見えかくれするよ。」

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2011年3月26日 (土)

コスモス寺 春の花だより   2・26

  今咲いている花:椿、わびすけ、豊後梅、レンギョウ、

沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

○初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

もうお彼岸が過ぎたと言うのに冬のような寒さです。今日は日差しはあるのに風が冷たく外に立っていられません。

東北では雪のようですね。避難所の皆さん大変だろうと思います。地震と津波の犠牲者は行方不明者を入れると3万人を超えると言うことです。一瞬の中に3万人の命と人生が消えてしまうなんて信じられないことです。また家を失って避難生活を強いられている人が20数万人もおられまだ食料などの救援物資も充分に届いていないようです。痛ましいことです。せめて一命を取り止められた方々にせめて温かい食事と寝床を提供してあげられないんでしょうか。そして復興再建への道筋が示されてもいい頃です。政府はもっと速やかに対策を立てるべきです。なんだかお役所仕事ってスローペースですね。早く希望の灯をともしてあげてください。

〔俳句〕

「山路来て 何やらゆかし すみれ草」  芭蕉

〔和歌〕

「なにとなく 庭の梢は かすみ深けて

入るかたはるる 山のはの月」

永福門院・風雅124

「何とはなしに、庭の木々の梢はほんのりと霞んで夜は更けまさり、入ろうとする西の空は晴れてくっきりと見える、山の端近い月よ。」

・入るかた=入る方角。

〔釈教歌〕

「さきそむる やどの桜の 一もとよ

春のけしきに 秋ぞしらるる」

永福門院内待・風雅2078

「咲きはじめる、私の家の一本の桜よ。その春の有様に、秋の実りの季節が推測できることだ。」

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つるにちにち草↑↑

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2011年3月25日 (金)

コスモス寺 春の花だより   3・25

  今咲いている花:椿、わびすけ、豊後梅、レンギョウ、

         沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花、

○初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬 57万本

連日冬の寒さで奈良では氷が張り、霜が降りています。桜は予想より後れそうです。

コスモスは庭に定植したので毎日霜対策に追われています。最初は薄い不織布を被せただけだったのですが、風が強いと押さえがきかず破れます。そこでもう一枚、斜光ネットを重ねて保護します。全長300メートルあるので掛けたり外したりが大変です。朝夕30分ほどかかります。腰が痛いです。でも初夏の頃の花を夢見て踏ん張っています。

〔俳句〕

「咲く重さ 落ちたる重さ 八重椿」  前内木耳

〔和歌〕

「くもりなく さやけきよりも 中中に

かすめる空の 月をこそ思へ」

権中納言定頼・玉葉122

「曇りなく明るく照っているのよりも、かえって、霞んだ空の月をこそはしみじみとなつかしく思うよ。」

〔釈教歌〕

「さゆる夜の 空たかくすむ 月よりも

をきそふ霜の 色はすさまじ」

花園院御歌・風雅2077

「きびしく冷え切った夜の空高く澄む月の光は冷徹そのものであるが、地上に置き加わる霜の光は、それにも増して峻厳である。」

・「眉間宝剣」という事を詠む。大自在天の三眼のうち、両眉の間にある一眼をいうか。

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2011年3月24日 (木)

コスモス寺 春の花だより   3・24

  今咲いている花:椿、わびすけ、豊後梅、レンギョウ、

沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

コスモス

いつまでも寒いです。東北の被災地はもっと寒いだろうと思います。避難所には救援の手が届いているのでしょうか。毎日氷点下の冬のよう酷寒の中、暖房もなく毛布や衣服だけで過ごしておられる方が多いと報道で知らされ、心が傷みます。また放射能の汚染が拡大して関東の人も大きな不安を覚えておられるとのことです。この近畿でも他人ごとではありません。若狭の原発からは数十キロです。安全点検をしっかりやってほしいですね。

〔俳句〕

「柳萌え うごきそめたる 石の色」  桑原志朗

〔和歌〕

「さびしさは 花よいつかの ながめして

かすみにくるる 春雨の空」

前大納言為兼・風雅117

「つくづく淋しさが身にしみるのは、[花よ、いつ咲くのか]という思いを抱いてぼんやり遠くを見やっているうち、霞にとざされて次第に暮れて行く、春雨の降る空の風情であるよ。」

〔釈教歌〕

「いづるとも いるとも月を 思はねば

心にかかる 山のはもなし」

夢窓国師・風雅2076

「出るものとも、入るものとも月を考えないから、その出入りに心をわずらわす山の端というものもない。(御仏は常住不滅でいらっしゃるのだから、その出世、入滅に心を砕く必要はないのだ)」

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2011年3月23日 (水)

コスモス寺 春の花だより   3・23

  今咲いている花:豊後梅、椿、レンギョウ、わびすけ、

沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、桃、牡丹、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

水仙はほぼ終りました。いまラッパ水仙が咲いています。白い花びらに花芯が赤や黄色のもの、花全体が黄色もあります。この水仙は花が大きいです。

コスモスの植え付けは今日で9日めです。苗はどんどん大きくなり植え替えを待っています。しかしまだまだ霜の恐れがあり、保護できる範囲でしか定植できません。去年に比べこの春は寒いです。HPの表紙には3万本と書いていますが、苗の数は5万から10万本ほどあります。秋と同じですね。

〔俳句〕

「落ざまに 水こぼしけり 花椿」  芭蕉

〔和歌〕

「あさなぎに ゆきかふ舟の けしきまで

春をうかぶる 波のうへ哉」

前中納言定家・玉葉119

「早朝の穏やかに凪いだ海面を往来する舟の様子までも、[春]そのものを浮かべているように見える、波の上の景色よ。」

〔釈教歌〕

「夜もすがら 心のゆくゑ たづぬれば

昨日の空に とぶ鳥の跡」

仏国禅師・風雅2075

「終夜、[心」というものの移りゆくあり方を考えてみると、それは昨日空を飛んで行った鳥の痕跡を今日になって尋ねるようなもので、全く量り知る事のできないものだとさとった。」

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2011年3月22日 (火)

コスモス寺 春の花だより   3・22

  今咲いている花:水仙、豊後梅、さんしゅゆ、椿、

わびすけ、レンギョウ、沈丁花

  これから咲く花:桜、山吹、しゃが、桃、牡丹、

梅花うつぎ、山紫陽花

ようやく雨が上がりました。春の雨と言うと会津八一の次の歌があります。

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

こさめなかるる はるはきにけり」

八一の歌の中でも代表作の一つとされています。ちょうど今頃の作でしょう。

きのう載せた蕪村の俳句  

  「春雨や ゆるい下駄借す 奈良の宿」

と双璧ではないでしょうか。古都奈良ののどかな春の雨です。

〔俳句〕

「行き過ぎて 尚連翹の 花明り」  中村汀女

〔和歌〕

「みどりこき 霞のしたの 山の端に

うすき柳の 色ぞこもれる」

花園院御歌・風雅91

「緑が一入濃い、深い霞の下に沈んでいる山の端。そこには、芽吹いたばかりの薄緑の柳の色がこもっているのだ。」

  みどりこき=霞の色は「緑」であるとされる。その霞が深く立ちこめている意。柳の「薄き」緑と対照させる。

〔釈教歌〕

「見るやいかに 山の木の葉は おちつきて

みちにあれたる 虎のまだらを」

藤原為基朝臣・風雅2074

「ごらん、これをどういうように見るかね。山の木の葉がすっかり落ちつくしてしまうと、その下道にありながら今まで気のつかなかった虎の尾羊歯のまだらの葉が、生き生きと姿を見せるではないか。」

・虎のまだらを=ウラボシ科の常緑シダの一種、トラノオシダ。山の下草として生える。

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2011年3月21日 (月)

コスモス寺 春の花だより   3・21

  今咲いている花:水仙、豊後梅、さんしゅゆ、椿、

レンギョウ、わびすけ、沈丁花

  これから咲く花:桜、山吹、しゃが、桃、牡丹、

梅花うつぎ、山紫陽花

今日はお彼岸の中日、春分の日です。

きのうから二日続きの雨です。葉を落としていた木々はいっせいに芽吹き始めました。あじさい、うつぎ、ぐみなどは薄緑の透きとおるような若葉を見せています。春雨はいのちを育む慈雨ですから、一雨ごとに葉っぱは大きくなり濃い緑の茂みになります。

しかし震災の被災地では、雨は救援作業するのに邪魔でしょうね。もう10日が経つのにまだ救援物資が届かない所があるようです。先ずは命をつないであげることです。急いで水、食料を届けてあげて下さい。

〔俳句〕

「春雨や ゆるい下駄借す 奈良の宿」  蕪村

〔和歌〕

「さほ姫の うちたれがみの 玉柳

ただ春風の けづるなりけり」

前中納言匡房・玉葉92

「春の女神佐保姫の長く垂れた髪のような美しい柳よ。それは(人が手を触れるのも憚られて)ただ春風が、櫛でとかすように静かに吹きなびかしているのだ。」

  さほ姫=佐保姫。春を司る女神。佐保は平城京の東方にあり、東は春をあらわすのでいう。

  けづる=くしけずる。髪を櫛でとかす。

〔釈教歌〕

「龍田河 もみぢ葉ながる みよし野の

よしのの山に さくら花さく」

花園院御歌・風雅2073

「龍田河には紅葉葉が流れる。吉野山では桜花が咲く。そのように、自然のあるがままの姿そのものが仏界なのだ。」

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2011年3月20日 (日)

コスモス寺 春の花だより   3・20

  今咲いている花:水仙、豊後梅、さんしゅゆ、椿、

レンギョウ、わびすけ、沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、牡丹、梅花うつぎ、

  山紫陽花

当寺の古来からの名物、山吹が蕾をつけてきました。花は四月に入ってから咲き出すと思いますが、一重咲きの黄色が一番先です。この種類は元来野山に自生していて歌枕で有名な「井出の玉川」は、谷川沿いに自然にあったのでしょうが、近代の洪水で流されてしまい、現在は新たに堤防沿いに八重咲種が植えられています。当寺では4月25日の「文殊会式」に彩りを添えるため江戸時代に植えられたそうです。一重、白山吹、八重の順に咲きます。

万葉歌に

「山吹のにほえる妹がはねず色の

赤裳の姿夢にみえつつ」(万葉集112786

〔俳句〕

「活けてまだ 椿開かず 彼岸かな」  加藤覚範

〔和歌〕

「みるままに しずえの梅も 散りはてぬ

さもまちどをに さく桜かな」

和泉式部・風雅90

「見ているうちにもう、下枝に残っていた梅の花もすっかり散ってしまった。まあ、これから先にどんなにか待ち遠しい思いをさせた上で、やっと咲くだろう桜よ。(早く咲いておくれ)」

  しづえの梅=下枝の梅。上枝から咲き散り、わずかに残った花。

  さも=いかにも

〔釈教歌〕

「我がうくる 御法はつねの ことの葉の

をよばぬうへに とけるなるべし」

入道二品親王法守・風雅2072

「私の相承した真言宗御室派の仏法は、常凡の言葉では及ばない深遠きわまる真理を、言語道断の宗教的暗示をもって説いたものであるに違いない。(ありがたいことだ)」

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2011年3月19日 (土)

コスモス寺 春の花だより   3・19

  今咲いている花:水仙、紅梅、豊後梅、さんしゅゆ、椿、

レンギョウ、わびすけ、沈丁花

  これから咲く花:桜、しゃが、山吹、牡丹、八重桜、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

地震・津波・放射能と被災地は三つの恐怖に晒されています。特に今、原発の成り行きが心配です。懸命の注水が行われていますが、うまくいくことを祈るばかりです。

今日からしばらくは春の温かさが戻ってきそうです。春の花が真っ盛りです。次々と彩りが変化していきます。中でも黄色が目立ちます。福寿草から始まって、黄梅、連翹、さんしゅゆ、と咲いてこれからは山吹が控えています。そのほかに野の花としてタンポポ、キンポウゲ、菜の花があります。黄色は春の色かもしれませんね。ちょっと待った、桃色をお忘れなく、と桜や桃に言われそうです。

〔俳句〕

「糸桜 風もつれして 散りにけり」  泊露

〔和歌〕

「うちわたす さほのかはらの 青柳も

今は春べと もえにけるかも」

坂上郎女・玉葉87

「遥かに見晴らす、広々とした佐保河の河原の柳も、今こそは春になったとばかり、青々と萌え出たことだなあ。」

  うちわたす=端から端まで届かせる意。見渡す。

  さほ=大和の歌枕。佐保。

  春べ=春の頃。

〔釈教歌〕

「そのままに だるまをしるは まことある

三国つたはる こと葉なりけり」

後宇多院御歌・風雅2071

「直接明らかに、仏道の理法を知ることができるのは、真理を述べた、天竺・震旦・本朝と、三国を経て伝わった経文の言葉であるよ。」

・だるま=達磨。梵語で、一切万法・真理・本体等の意。

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2011年3月18日 (金)

コスモス寺 春の花だより   3・18

  今咲いている花:水仙、紅梅、豊後梅、さんしゅゆ、椿、

  レンギョウ、わびすけ、沈丁花

  これから咲く花:桜、シャガ、山吹、牡丹、八重桜、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

これからの一週間は春のお彼岸、きょうは彼岸の入りです。昔から「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、彼岸が終れば本格的な春がやってきます。ご先祖様に感謝をこめてお参りする祭日でもあります。今年は寒い冬が終っても巨大地震の惨禍に思いをはせると、春を喜ぶ気持ちにはなれません。日本中が悲しみと、被災者を助けてあげたいという思いで溢れています。当寺でも、ささやかながら救援の一助になればと募金箱を置いています。皆様のお志が寄せられますことをお願いいたします。

〔俳句〕

「春の山 越えて日高き 疲れかな」  正岡子規

〔和歌〕

「たが里ぞ かすみのしたの 梅柳

をのれ色なる をちかたの春」

花園院御歌・風雅87

「あれは誰の住む村里だろうか。霞のたなびく下に、梅も柳も、おのずからそれぞれの色合をほのかに見せる。遠い彼方の春景色よ。」

・をのれ色なる=誰がするともなく自然にそれぞれの彩を示す。

〔釈教歌〕

「むら雲の たえまのかげは いそげども

ふくるはおそき 秋の夜の月」

前大僧正覚実・風雅2070

「村雲の絶え間に見えかくれするその姿は、空を急いで過ぎて行くように見えるけれども、(実は動いているのは村雲の方で)夜が更けて西に傾くのは遅い、秋の長い夜の月よ。」

・因明論の「似現量」の心を詠む。

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2011年3月17日 (木)

コスモス寺 春の花だより   3・17

  今咲いている花:水仙、山茶花、紅梅、豊後梅、

さんしゅゆ、椿、レンギョウ、わびすけ、沈丁花

  これから咲く花:桜、シャガ、山吹、牡丹、八重桜、

         てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

いま当寺の駐車場の隅っこに咲く鮮やかな黄色の花が目を引きます。レンギョウです。咲き出して三日もたたないのに、あっという間に満開になりました。いまの花は中国連翹だと思います。あとから咲くのは、朝鮮と日本の連翹です。韓国では国の花となっているそうです。春の花がいっせいに咲きだしたので、見落とさないように庭を見回っています。

〔俳句〕

「空のほか 何も映らず 春の水」  高浜年尾

〔和歌〕

「なにとなく さへづる山の 鳥のねも

もののあはれは 春の明けぼの」

寂蓮法師・玉葉86

「特に何の鳥ともなくさえずりかわしている、山の小鳥の声々を聞くにつけても、物のあわれは秋の夕暮ではなく、春の曙にこそしみじみと感じられるよ。」

〔釈教歌〕

「さむるをも まつたのみだに なからまし

ながきねぶりの うちと聞かずは」

法印覚懐・風雅2069

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2011年3月16日 (水)

コスモス寺 春の花だより   3・16

      ○  今咲いている花:水仙、山茶花、紅梅、豊後梅、

さんしゅゆ、椿、わびすけ、沈丁花、

レンギョウ

  これから咲く花:桜、シャガ、山吹、牡丹、八重桜、

てっせん、梅花うつぎ、山紫陽花

今日は奈良も寒いです。一日で10度も下がるので戸惑います。被災地は雨や雪で冬のような寒さの中、水、食料、電気、情報通信が不足し、過酷な避難生活に苛まれておられ、心が傷みます。

当寺では、きのうまでの3日間にコスモスの苗を庭に定植しました。このところの陽気で苗が大きくなり、苗床の中では窮屈になってきたので思い切って植え替えました。でもまだまだ寒さは続きそうで降霜の恐れがあります。苗の上には防霜シートを被せていますので安心ですが、境内は白一色になっていてちょっと景色が異様です。きれいな花を見るためですのでしばらくのご辛抱をお願いいたします。

〔俳句〕

「風吹いて 持つ手にあまる 蓬かな」  水原秋桜子

〔和歌〕

「まどあけて 月の影しく 手枕に

梅がかあまる 軒の春風」

進子内親王・風雅85

「窓をあけて、さし入る月の光を敷くように寄り臥しているその手枕のあたりに、梅の薫りをあり余る程に漂わせる、軒の春風よ。」

・月の影しく手枕に=月光が床の上に射し、その中で手枕をして寝ていると。

〔釈教歌〕

「ながき夜の やみのうつつに まよふ哉

夢をゆめとも しらぬ心に」

寛胤法親王・風雅2068

「長い夜の闇の中の現実に思い惑うことだ。その現実と思っているのは実は長夜の夢であるのに、それを夢とも気づかない心のために。」

・成唯識論の「未だ真覚を得ざるときは、恒に夢中に処す」という法文を詠む。真如の悟りに達しない間は、常に夢の中で暮らすのと同じだ(だから仏はこれを生死長夜の闇と説くのだ)。

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2011年3月15日 (火)

コスモス寺 春の花だより   3・15

  今咲いている花:水仙、山茶花、紅梅、豊後梅、黄梅

さんしゅゆ、椿、わびすけ、ねこ柳

  これから咲く花:連翹、沈丁花、桜、シャガ、山吹、

牡丹、八重桜、てっせん、

地震のため日本列島が変動したそうです。先ず全体が西へずれ、海岸線は陥没して地面が下がり、逆に山はせり上がったそうです。地殻運動はとてつもない力を持っています。大自然を前にして我々人間は小さな存在であることを思い知らされました。しかし人間は智恵ある生き物です。心もあります。みんなで力を合わせ助け合うこともできます。列島に住む人すべてがこの悲劇を乗り越え立ち上がらねばなりません。災害を逃れた者も我がこととして協力することです。いま政府は人命救助、被災者救援が第一ですが、阪神大震災の時のような冷たい対応は許されません。自己責任とか私有財産を口実に住居再建への援助を拒むようなことがあってはなりません。いま国は緊急性のない公共工事などを中止して震災復興に取り組んでほしいです。諸外国は注目しています。先進国、経済大国の日本はどのように復興するのかと。

〔俳句〕

「犬ふぐり 星のまたたく 如くなり」  高浜虚子

〔和歌〕

「みねの霞 ふもとの草の うす緑

野山をかけて 春めきにけり」

永福門院・玉葉84

「峰にかかる春霞、麓の原に萌え出た若草の薄緑色よ、野山にわたってすっかり春らしくなったなあ。」

〔釈教歌〕

「窓のほかに したたる雨を きくなへに

かべにそむける 夜半の燈」

花園院御歌・風雅2067

「窓の外にしたたり落ちる雨音を聞く、その一方で同時に、壁を背にして静かに燃え続けている夜半の灯を見る。雨音と灯の光と、ここに一人いる私と。(別々の三者が統合されて、一つの瞑想の世界が生ずる。三つでもない、一つでもない、この忘我法悦の至境よ)」

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2011年3月14日 (月)

コスモス寺 春の花だより   3・14

  今咲いている花:水仙、山茶花、紅梅、豊後梅、

わびすけ、ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、連翹、シャガ、

         山吹、牡丹、てっせん、八重桜

地震はまだまだ続きそうです。被災された方々は身内を亡くされたり行方不明になったままの方もあり、悲しみと不安を抱え先の展望も見えず、その日無事であることだけが支えとなっているのではないでしょうか。今私達にできるのは励ましの義援金を寄せることと電気を無駄に使わないことです。東北関東は電気が足りません、外部から送電してあげることが救援にもなります。明日は我が身のつもりで震災を考えることです。

今境内では豊後梅が三分咲きです。いつもお彼岸には満開を迎えます。少し桃色がかった花で木が大きいので遠くから見ると桜のように見えます。おかげで奈良はのどかな春です。平穏であることを仏様に感謝いたします。

〔俳句〕

「一天や 鶯の声 透き徹り」  川崎茅舎

〔和歌〕

「梅が香は まくらにみちて 鶯の

こゑよりあくる 窓のしののめ」

前大納言為兼・風雅84

「梅の薫りは、枕のあたり一ぱいに匂って、鶯の声を先立てて明けて来る、窓の暁の光よ。」

・いののめ=東雲。夜明け方に東の空の白む頃。またその光。

〔釈教歌〕

「すすめこし ゑひの枕の 春の夢

見しよはやがて うつつなりけり」

慶政上人・風雅2066

「盃をやりとりして、酔い伏した枕に見た春の夜の夢にすぎないと思っていたが、それはとりも直さず真実の世界であったのだ。」

・「但だ無明を指す。即ち是れ法性」という法文を詠む。無明の俗世はすなわち法性の仏国土である。

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2011年3月13日 (日)

コスモス寺 春の花だより   3・13

  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、

ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、連翹、シャガ、

       山吹、牡丹、てっせん、八重桜

東日本大地震の惨状をテレビ映像で見てそのすさまじさに言葉を失います。犠牲者の数の多さ、被災地域の広大さに圧倒されるばかりです。まだまだ全貌はわかりませんが、被災された方々への救援の手が一日も早く届くように、そして復旧へ向けて全国から手厚い義捐金が寄せられんことを心から念願します。皆さま希望をもってがんばってください。

〔俳句〕

「鶯の 身を逆さまに 初音かな」  其角

〔和歌〕

「梅の花 くれなゐにほふ 夕暮に

柳なびきて 春雨ぞふる」

前大納言為兼・玉葉83

「梅の花が紅に咲き匂っている夕暮に、柳の緑の糸が風になびいて、静かに春雨が降っている。」

〔釈教歌〕

「くちのこる 法のことの葉 吹く風は

はかなき苔の したまでぞ行く」

前大納言忠良・風雅2065

「朽ち残った卒都婆に書かれた根本真言の一文字を吹く風は、はかなく死んで苔の下に埋れた婆羅門の所まで行って、婆羅門を成仏させたことだ。」

  随求陀羅尼経(ずいぐだらにきょう)の倶縛婆羅門(くばくばらもん)を詠む。衆生のそれぞれの求願を成就させる効果のある陀羅尼(随求菩薩の真言)について説く。

  倶縛婆羅門=一生悪業のみを重ね、死んで大地獄に堕ちたが、随求陀羅尼の力により、天に生まれたという婆羅門。

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2011年3月12日 (土)

コスモス寺 春の花だより   3・12

  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、

        ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、連翹、シャガ、

      山吹、牡丹、てっせん、八重桜

昨日の地震には驚きました。最初は何か目まいを覚えたような感じで、地震とは判りませんでした。阪神大震災のときとは揺れ方が違ったのです。縦ゆれがなく船に乗っているようなゆれ方でこれは遠方で起っているなとは思いましたが、まさか東北で起った地震が奈良にも影響するなんて今までにないことです。案の定、明治以降で最大のマグニチュードを記録したようです。まだ全容は不明です。被災された方の安否が心配されます。日本列島は地震列島と言っても過言ではないことが実証されたようです。今から157年前の「嘉永・安政」の地震では関東と関西で大地震が連鎖的に3度起ったそうです。この般若寺には十三重石塔の上部3層が墜落した記録が残ります。今回の地震が他の「東海」や「東南海」「南海」のような巨大地震の引き金にならなければいいのですが。

皆様ご用心してくださいませ。

〔俳句〕

「さんしゅゆの 花のこまかさ 相ふれず」長谷川素逝

〔和歌〕

「さきぬれば 大宮人も うちむれぬ

梅こそ春の にほひなりけれ」

前大僧正慈鎮・風雅76

「咲くというと、宮廷人達も集って楽しむ。梅こそは春の栄華そのものであることだなあ。」

  大宮人=宮中に仕える人。

  にほひ=華やかに目立つもの。精粋。

〔釈教歌〕

「すみなれし やどををば花に うかれきて

帰るさしらぬ 春の旅人」

法印実澄・風雅2064

「住み馴れた家を出て、花に見とれて浮れ歩き、帰る時も忘れている春の旅人よ。(そのように、本性は仏性であるのに、目先の現象にひかれて迷い歩き、もとの仏性に帰る事も忘れている衆生のあさはかさよ)」

・「本覚流転」の心を詠む。「本覚」は大乗起信論等に説く心の本性。本来的に人間に備わった清らかな覚体そのもの。「流転」はそれを知らずして起る迷いの世界のさまよい。

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2011年3月11日 (金)

コスモス寺 春の花だより   3・11

  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、 

        ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、連翹、シャガ、

        山吹、牡丹、てっせん、八重桜

3月に入って低温が続いています。般若寺では毎日、氷が張り霜が降りています。去年の手帳を見返すと、320日の気温が257度となっていて前後も17,8度あります。今年はあと10日でそんな夏日が来るとはちょっと考えられません。去年は翌日にあわててコスモスの苗を定植したと記録しています。でも数日後霜にあたって全滅、とも書かれていました。

いま苗はすくすく育ち、大きいのでは10センチ近くになっています。いつ植え付ければいいのか悩ましいところです。今年は早くから防霜シートを用意しています。まあ大丈夫だろうと思います。

これからもし温い日が続けば植えようと思います。

〔俳句〕

「黄梅の 盛りとてなく 咲きつづけ」             開田華羽

〔和歌〕

「をしなべて 春雨ふりぬ 我が宿の

わか木の梅は はやもさかなん」

後一条前関白左大臣(一条実経)・玉葉59

「世間一帯に春雨が降っている。私の家の若木の梅よ、さあ早く咲いておくれ。」

・をしなべて=あまねく。一様に。

〔釈経歌〕

「ふるさとと さだむるかたの なき時は

いづくにゆくも 家ぢなりけり」

夢窓国師・風雅2063

「どこが故郷である、と定める方向のない時には、どこへ行く道も、わが家のある故郷に通じる道であるのだ。(そのように、これでなければと一つに執着しなければ、あらゆる動作が悟りに導く修行である)」

  「挙足下足、皆是れ道場」という法文の心を詠む。

  挙足下足=足をあげ、足をおろす、その動作の一つ一つが、皆すなわち仏道修行である。

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2011年3月10日 (木)

コスモス寺 春の花だより   3・10

  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、

ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、連翹、しゃが、

         山吹、牡丹、てっせん

般若寺詠の第四句目は高野素十(すじゅう)作です。

「秋の日の 十三塔や 日は西に」

素十(18931976)は高浜虚子の門弟で水原秋桜子、山口誓子、阿波野青畝とともに〈4S〉と呼ばれる《ホトトギス》の主要同人でした。花鳥諷詠、客観写生を主眼とする作句を行う。医学者で新潟医科大学の学長を務めた後、昭和30年代に奈良県立医大の教授で奈良に居られたそうですが、般若寺へいつ来られたのかは今のところ分かりません。

〔俳句〕

「紅梅の りんりんとして 蕾かな」  星野立子

〔和歌〕

「くれなゐの むめがえになく 鶯は

こゑの色さへ ことにぞありける」

俊頼朝臣・風雅75

「まっ赤な梅の咲く枝に鳴く鶯は、声の色合さえ特別にすばらしいなあ。」

  こゑの色=声の味わい。「紅梅」によそえて特に「色」という。

  こと=格別。

〔釈教歌〕

「雁のとぶ たかねの雲の ひとなびき

月入りかかる 山のはの松」

花園院御歌・風雅2062

「雁の一列に飛ぶ高嶺に、雲が一片、さっとなびいて、西を見れば月の入りかかる山の端に、松の姿がくっきりと見える。(このありのままの自然の姿そのものが真如――仏道の真理であることよ)」

・円覚経の「一切時に居して、妄念を起さず」の心を詠む。あらゆる時において妄念を起さず、現象をありのままに見、しかもそれにこだわらない所に悟りの世界が展開する。

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2011年3月 9日 (水)

コスモス寺 春の花だより  3・9

  ○  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、

わびすけ、ねこ柳、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、桃、連翹、

         しゃが、山吹、ぼたん

先日、本ブログで紹介した正岡子規と水原秋桜子の句碑が出来上がりました。

「般若寺の つり鐘ほそし 秋の風」 子規

「唐びとが 月をろがみし 笠塔婆」 秋桜子

の2基です。子規の句は最近手に入れた岩波文庫の『子規句集』の草稿句集「寒山落木」によると明治281019日から1030日帰京まで奈良に遊ぶとされ、その間に般若寺の句が作られています。文庫では「つり鐘ほそし」は「釣鐘細し」となっています。秋桜子の句についてはまだ調査ができていませんので、作句年代が分かりしだいお知らせします。どちらも小さな句碑で釣鐘と笠塔婆の近くにさりげなく立っています。

〔俳句〕

「紅梅の 盛りが待って いてくれし」  稲畑汀子

〔和歌〕

「鶯の けさなく時ぞ 山がつの

かきほも春に 逢ふここちする」

後鳥羽院下野・玉葉48

「鶯が今朝はじめて鳴く、その時こそ、山里に住む私の粗末な家の垣も、春にめぐり逢った実感が味わえるよ。」

・山がつのかきほ=山仕事をする身分の卑しい者の家の垣根。転じて貧しいわび住居のさま。

〔釈教歌〕

「たれもみな あたら色香を ながむらし

昨日もおなじ 花鳥の春」

花園院御歌・風雅2061

「誰も皆、ああ勿体ないこと、ただ表面的な色や香を見て一喜一憂しているのだろう。昨日の夢と同じ、まことには実体のないはかない花鳥の春であるものを。」

  円覚経の、「生死涅槃、なお昨夢の如し」の心を詠む。

  生死涅槃=衆生は本来成仏、迷悟を超越したものであるから、衆生の生死も仏の涅槃も、昨夜の夢と同じ事である。

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2011年3月 8日 (火)

コスモス寺 春の花だより   3・8

  今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、

         ねこやなぎ、黄梅 

  これから咲く花:さんしゅゆ、椿、桜、桃、連翹、

しゃが、山吹、ぼたん

今年は鶯の訪れがおそいです。この前一度だけ初鳴きを聞いたので、いよいよやって来たかと思っていたら、それっきりです。毎年一羽だけやってきて夏までずっと居つきます。初めは鳴き方は下手ですが、徐々に上手くなっていき最後は長い谷渡りまで聞かせてくれます。まだ寒いので山へ帰ってしまったのでしょうか、ちょっと心配です。じょうびたきのアイちゃんは相変わらず人の近くを飛び回っています。でもそろそろ大陸の故郷へ帰る季節がやってきました。無事に海を渡ってください。そしてまた来年も忘れずに般若寺へお越しくださいね。

〔俳句〕

「紅梅や 見ぬ恋つくる 玉すだれ」  芭蕉

〔和歌〕

「梅の花 にほひをとめて おりつるに

色さへ袖に うつりぬるかな」

中務卿具平親王・風雅73

「梅の花は、そのよい薫りを求めて折ったのに、(薫りばかりでなく)美しい色まで袖に染みついてしまったよ。」

・とめて=尋ね求めて。また「香を移し止める」意もある。

〔釈教歌〕

「のりのため 我が身をかへば 小車の

うき世にめぐる みちや絶えなん」

前大僧正覚実・風雅2060

「般若の真理、無漏空法のために身命を捨てるならば、小車の廻るように輪廻してやまない六道の迷いの世界が断ち切られて、成仏する事ができるだろう。」

  般若経の常啼菩薩の事を詠む。経には般若(智慧)に照らして観ずれば一切諸法は空であると説く。

  常啼菩薩­=般若波羅密(般若により彼岸に達する道)を求めて啼泣七夜に及んだという。

  小車=輪廻転生をたとえる。

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2011年3月 7日 (月)

コスモス寺 春の花だより   3・7

○今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、わびすけ、

ねこやなぎ、黄梅

  これから咲く花:さんしゅゆ,椿、桜、桃、連翹、

しゃが、山吹、牡丹

昨日からの雨がしとしとと降っています。寒くてもやはり春の雨ですね、一雨ごとに草木が動き出しています。

先日、佐保姫のことを書きましたが、万葉人が愛した山と川を詠んだ歌を紹介します。

「佐保山にたなびく霞みるごとに

妹を思ひ出で泣かぬ日はなし」(万葉3473

これは大伴家持が若くして逝った妻を偲んで詠んだ歌です。

「うちのぼる佐保の川原の青柳は

    今は春べとなりにけるかも」(万葉81433

こちらは大伴坂上郎女の歌です。郎女は家持の叔母さんで近世の地誌によれば、奈良から般若寺へ上って来る坂道に「坂の上」という地名があると書いてあります。万葉集きっての女流歌人がこの近くに住んでいたなんて感激です。

〔俳句〕

「東より 春は来ると 植ゑし梅」 高浜虚子

〔和歌〕

「わが宿の 梅がえになく 鶯は

風のたよりに 香をやとめこし」

中納言朝忠・玉葉42

「私の家の梅の枝に来て鳴いている鶯は、匂いを運ぶ風の案内によって、香をたずねてやって来たのかな。」

  たより=手づる。便宜。

  とめ=尋ね。

〔釈教歌〕

「法まもる ちかひをふかく たてつれば

すゑの世までも あせじとぞ思ふ」

赤染衛門・風雅2059

「菩薩たちが、陀羅尼呪を唱える事によって、法華経の説法者を守るという誓願を深くお立てになったから、法華経の教えは末の世までも衰えはしないだろうと思うよ。」

  法華経陀羅尼品を詠む。二菩薩・二天王・十羅刹女が、それぞれ、陀羅尼呪(梵語による長文の呪文)を唱えて、法華経を弘める人を守護しようと誓願する。

  あせじ=褪せじ。色が薄くならない、勢いが衰えない意。

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2011年3月 6日 (日)

コスモス寺 春の花だより   3・6

○今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、侘助、

ネコヤナギ、黄梅

  これから咲く花:サンシュウ、椿、桜、連翹、シャガ、

山吹(黄一重・白一重・黄八重)

寒の戻りが少し緩んだと思ったら雨になりそうです。昼間ははまだ持ちそうですが、夜からあしたは一日雨の予報が出ています。屋外の作業は今日じゅうに済ませたいと思います。山紫陽花の植え替えも竹柵の制作も終わり、これからはコスモスに専念です。

コスモスの苗はビニールトンネルの中で順調に育ち、大きいのでは5センチの高さになってきました。この分では3月中に10センチを超えます。そうなれば庭の花壇に植えつけてやらねばならず、この寒さを考えると先のことが心配です。この春は昔から言う三寒四温がはっきりしています。4月の陽気があるかと思えば、1月の氷るような寒さの到来と、メリハリがきいています。コスモスにとっては霜が大敵、どれだけ大きくなっていても一度の霜でだめになります。植えつけてからの保護が大事です。コスモス寺としては一日も早く陽春を迎えたい気分です。でも自然は気ままですから、人の気持には頓着なく暑い日も寒い日も用意しています。人間にできる事はただ、苗を愛情をもって守ってやり、一本一本丹精をこめて育てることだけです。そうすればきっと美しい花を咲かせてくれます。

〔俳句〕

「白梅の 青きまで咲き みちにけり」  小坂順子

〔和歌〕

「ひとむらの かすみの底ぞ にほひゆく

梅の梢の 花になるころ」

徽安門院・風雅70

「一つの村里にかかる霞の奥から、ほんのりと美しい色合が浮かび上がって来る。あのあたりの梅の梢が、すっかり花になる頃なのだ。」

  ひとむら=一村。一つの村全体。「一群」の意をかける。

  かすみの底=霞にこめたその奥底。

〔釈教歌〕

「おりたちて たのむとなれば あすか川

ふちも瀬になる 物とこそきけ」

平忠度朝臣・風雅2058

「身を捨て、心をこめて観世音菩薩を信じ頼るという事になれば、あの飛鳥川の淵が瀬になるという古歌のように、深刻な困難も安全にやり過ごす事ができるものだと聞くことよ。」

  法華経観世音菩薩普門品の「即ち浅き処を得ん」という法文を詠む。諸の苦難を受ける衆生が観世音の名を一心に称えると、即座にその音声を観じて苦難をまぬがれさせるという、観世音菩薩の功徳をたたえる。

  即得浅処=大水に遭って漂う人が観世音の名を称えると、直ちに浅瀬に着く事ができる。

  おりたちて=一心に何事かをする意。「川」の縁で「水中に下り立つ」意をかける。

  あすか川=古歌「世の中は何か常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」(古今933、読人しらず)を引く。

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2011年3月 5日 (土)

コスモス寺 春の花だより    3・5

○今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、侘助、

ネコヤナギ、黄梅

  これから咲く花:サンシュウ、椿、連翹、桜、シャガ、

山吹、

般若寺から西へ延びる丘陵を「なら山」あるいは「佐保山」といいます。それほど高くはなく、奈良の町からですとせいぜい50メートルほどの小高い岡で、西は不退寺のあたりで果てます。その麓を流れるのが「佐保川」です。佐保の里は大伴氏など万葉人にとって生活圏でありなじみ深く、万葉歌も多く残されています。古代から大和盆地の西、龍田山に住まう秋の女神「たつた姫」に対し、春の女神としては東の方、佐保山に住む「さほ姫」が有名です。佐保は早穂、春、草木が芽吹くことを意味します。

正岡子規の句に、

「佐保姫の もてなしあつし 独り旅」 

があります。佐保山は若葉青葉のころがお姫様の出番です。

〔俳句〕

「二もとの 梅に遅速を 愛すかな」  蕪村

〔和歌〕

「あわ雪は ふりもやまなん まだきより

またるる花の ちるとまがふに」

前大納言為家・玉葉32

「淡雪は降りやんでほしいなあ。まだ咲く時期でもないうちから待ちこがれている花が、もう散るのかと見まちがえてしまうのだもの。」

  まだき=早い時期。

  まがふ=よく似ていて見わけがつかない。

〔釈教歌〕

「ここにのみ ありとやはみる いづくにも

たへなる声に 法をこそとけ」

赤染衛門・風雅2057

「今、この御仏の前にだけ妙音菩薩がおられ、美しい音楽が鳴ると見るのか。いやそうではない、妙音菩薩はどこにでも姿を現わして、衆生のために何ともすばらしい声で法華経を説かれるのだ。」

  法華経妙音品を詠む。妙音菩薩は仏を供養し、法華経を聞くために娑婆世界のジジャクツ山に来た。そのとき百千の天の楽は自ら鳴った。仏は妙音菩薩が今ここにあるだけでなく、種々の身を現わして諸の衆生を救済すると説く。

  たへなる声に=「妙音」の訓読。

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2011年3月 4日 (金)

コスモス寺 花だより   3・4

○今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、紅梅、侘助、

ねこ柳、黄梅

これから咲く花:サンシュウ,椿、桜、シャガ、連翹、

山吹、牡丹

般若寺が詠まれた俳句の3作目は水原秋桜子の句です。

「唐びとが 月をろがみし 笠塔婆」

重要文化財・笠塔婆二基はいま境内の東側に立っていますが、昭和30年代までは十三重石宝塔の西側、楼門から見れば正面にありました。もう一つ前は門前の京街道に沿う旧般若寺墓所(中世の奈良総墓、般若野五三昧)の入口あたりにあったのです。明治の廃仏で破壊され明治20年ごろ修理再建される時、境内へ移されたのです。笠塔婆の謂れについては古来諸説があり、岩淵寺の勤操(ごんぞう)の供養碑とか平重衡(しげひら)の首塚であると言われたこともありますが、近代に入り碑文が解読され、宋人伊行末(いぎょうまつ、又は、いのゆくすえ)の子息伊行吉(いぎょうきち、又は、いのゆきよし)が弘長元年(西暦1261)一基は亡父のため、もう一基は生母のために立てたことが判明している。秋桜子さんはおそらく笠塔婆が石塔の前にあった時に来訪されたのだと思います。「唐びと」の「から」は「唐天竺」というように中国のことを指します。「をろがむ」は「拝む」です。季節は「月」を詠んでいることからやはり秋だと思います。

はるばる海を越えて来日し、多くの業績を残してくれた宋人が月を拝んで故郷をしのぶであろう、望郷の念への作者のいたわりの心が読み取れます。

〔俳句〕

「夕月や 納屋も厩も 梅の影」  内藤鳴雪

〔和歌〕

「山もとの さとのつづきに さく梅の

ひとへに世こそ 春になりぬれ」

永福門院・風雅66

「山の麓の村里の続くあたりに咲き揃った梅の、その一重咲ではないが、ただもう偏に世間は春になってしまったなあ。」

・ひとえに=「一重」と「偏へ」をかけ、「ひたすらに」の意とする。

〔釈教歌〕

「つばめなく 軒端の夕日 影きえて

柳にあをき 庭の春風」

花園院御歌・風雅2056

「つばめの鳴きかわす軒端にさしていた夕日は、やがてその光が消えて、あとには柳の青い枝を静かに動かして庭に春風が吹いている。(その静寂の景の美しさのように、薬王菩薩が我が身を焼いて仏を供養し終わった後の静けさの、何と尊くうつくしいこと)」

  法華経薬王品の「是れ真の精進なり、是を真の法をもって如来を供養すと名づく」といった心を詠んだ歌。

  つばめなく=菩薩の焼身供養の火が消えたのちの森厳な沈黙を、庭前の景によって象徴的に描く。

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2011年3月 3日 (木)

コスモス寺 春の花だより   3・3

今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、侘助、

ねこやなぎ、黄梅

これから咲く花:紅梅、サンシュウ、椿、桜、

シャガ、連翹、山吹、桃など

今日は雛まつり。陰暦で3月初めの巳の日を上巳(じょうし)の節句、別名桃の節句とも言います。しかし桃の花は4月にならないと咲きません。陰暦(旧暦)は1ヵ月ほど後れ、45日が桃の節句、ひなまつりです。新暦は節句や季節行事が皆前がかりになってずれています。よく5月の晴天を五月晴れといいますが、本当は6月の梅雨の晴れ間をさす言葉です。また今の77日の七夕に天の川が見える事はめったにありませんね。これが旧暦だったら晴天続きで毎日見えます。今の暦はちぐはぐな節句を押し付け、私たちの季節実感を混乱させているようです。

〔俳句〕

「遠つ世の 面輪(おもわ)かしこし 木彫雛」水原秋桜子

〔和歌〕

「花をそき と山の春の あさぼらけ

かすめる外は 又色もなし」

二品法親王覚助・玉葉28

「花の咲くのが遅い、外山の春の明け方の景色よ。ただ一面の霞、それ以外には別の色もないよ。(花が咲けばまたその色合も加わるのだが。)」

・と山=外山。人里に近い山。奥山・深山の対。

〔釈教歌〕

「みな人を わたさむとおもふ ともづなの

ながくもがなや よどの川舟」

正二位隆教・風雅2055

「すべての人を向こう岸に渡そうと思う舟の纜(ともづな)は、長くあってほしいよ、乗りおくれそうな私のために、淀の川舟よ。(仏の誓願によって段階的に成仏の彼岸に達するとならば、鈍根の私のためにも仏は長寿を保たれて、気長く手をさしのべていただきたい)」

  法華経分別功徳品を詠む。仏の寿命の久遠なる事を聞いて、衆生が深く信を起せば、その信と行に応じて何回かの生まれ変りを経て必ず成仏を遂げると説く。

  わたさむ=浄土の彼岸に衆生を渡そうとする意を、渡し舟にたとえていう。

  ともづな=船の艫(とも、船尾)にあって、船をつなぎ止める縄

  ながくもがなや=何回も生まれ変る間、命長く待っていてほしい意を、纜の長さによそえる。

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2011年3月 2日 (水)

コスモス寺 春の花だより   3・2

・今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、侘助、ネコ柳

・これから咲く花:紅梅、サンシュウ、椿、桜、シャガ、

連翹、山吹

春を告げる言葉に「春風」「春水」と言う語があります。これは唐の詩人、白楽天(白居易)の七言絶句「府西池」に由来します。

「柳に気力なくして条(えだ)先ず動き、

池に波文ありて氷尽(ことごと)く開く。

今日知らず誰か計会(けいかい・はからう)せん、

春風春水一時(いちじ)に来たらんとす。」

春の暖かい風と温かい水がいっときにやってきて春が開幕する喜びを詠っています。春風、春水は昔から雅号や芸名にもよく使われ、春を代表する言葉になっています。昨日から雨に続いて寒の戻りのような冷気がやってきました、皆様風を召されぬようご要心を。

〔俳句〕

「咲く梅の 遠からねども 畦絶えぬ」  水原秋桜子

〔和歌〕

「雪の色を うばひてさける 梅の花

いまさかりなり 見ん人もがな」

中納言家持・風雅65

「雪の色を取りあげてしまって、雪よりもまっ白に咲いている梅の花は、今が盛りだよ、見る人があればいいのになあ。」

うばひて=他の大切にしているものを無理に取って。梅の白さを強調した表現。

・万葉集850

〔釈教歌〕

「此の世にて 入りぬとみえし 月なれど

わしの山には すむとこそきけ」

祭主輔親・風雅2054

「この世では、沈んでしまったと見えた月――入滅なさったと見えた釈迦如来だけれど、実は霊鷲山では久遠常住不滅の仏として、澄み切った月のように常に住んでおられると聞くことよ。」

  法華経寿量品の心を詠む。如来寿量品。仏は本来久遠常住であるが、衆生をして厭怠の心を起さず仏道に励ましめるために、方便をもって涅槃に入ることを示すのであると説く。法華経全編の眼目。

  月=仏を象徴する。

  わしの山=霊鷲山。インドのマガダ国、王舎城の東北にあり、釈迦が説法した所。

  すむ=「澄む」と「住む」をかける。

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2011年3月 1日 (火)

コスモス寺 春の花だより

・今咲いている花:水仙、山茶花、白梅、侘助、ネコヤナギ

・これから咲く花:紅梅、椿、桜、連翹、山吹など

弥生三月。本日より「コスモス寺 春の花だより」として般若寺の境内に咲くさまざまな木の花や草花の情報をお届けしたします。

春爛漫、これからは自然が一番美しい季節です。花が咲いて若葉が、かがやいて最も生命の息吹、躍動が感じられる時期です。

百花繚乱と言います。冬の名残の水仙につづいて梅、連翹、桜、山吹、しゃが、てっせん、あやめ、つつじ、うつぎ、山あじさい、などなど。春の花がひとわたり咲き終わると初夏のコスモスに移ります。コスモスの生育状況についても順次ご報告いたします。

〔俳句〕

「むめ一輪 一りんほどの あたたかさ」  嵐雪

〔和歌〕

「松の雪 消えぬやいづこ 春の色に

都の野べは 霞みゆく比」

前中納言定家・玉葉20

「古歌にいう、松に積った雪が消えない深山というのは一体どこの事だろう。やわらかい春の色調に、都の野辺が一面に霞んで行くこの頃よ。」

・古歌=古今集の「み山には松の雪だに消えなくに都は野べの若菜つみけり」(19 読人しらず)

〔釈教歌〕

「名にめでて まよひもぞする をみなえし

匂ふやどをば よきてゆかなん」

藤原為明朝臣・風雅2053

「あの僧正遍昭のように、その名に魅惑されて恋心に迷ったりしてはいけない。女郎花の美しく咲く家は避けて通ろうよ。」

  法華経安楽行品を詠む。初心の菩薩が悪世において以下に法華経を説くか、との問に対し、仏が身・口・意・誓願の四安楽行に住してこの経を説くべしと教える。「若し他家に入らば、小女・処女・寡女等と共に語らざれ」の法文には身安楽行のうち、修行の妨げになる女人には親近すべからざる事を説く。

  名にめでて=遍昭の「名にめでて折れるばかりぞ女郎花我おちにきと人に語るな」(古今226)を本歌とする。

  をみなえし=文の「小女処女寡女」をたとえる。

  よきて=避きて。よけて。

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