« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »

2011年4月

2011年4月30日 (土)

春の花だより   4・30

  今咲いている花:山吹、白山吹、八重桜、しゃが、

日本桜草、紫雲蘭

  これから咲く花:山あじさい、梅花うつぎ、てっせん、

おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

般若寺を詠んだ俳句の句碑、第5作目と第6作目が出来上がりました。今回は著明な俳人のものではなく、般若寺を叙景する素直な句を選びました。

「般若寺や ほとけの庭に 秋ざくら」

「般若寺の 石仏かざる 水仙花」

出来の良し悪しは別にして花と仏の浄刹、般若寺の秋と冬の季節を表現しています。

〔俳句〕

「ふるさとを 忘れな草の 咲く頃に」  成島瓢雨

〔和歌〕

「色ふかく にほへる藤の 花ゆえに

       残りすくなき 春をこそ思へ」

        源公忠朝臣・玉葉278

「濃く美しい色に咲いている藤の花を見るにつけて、残り少なくなった春を、つくづく惜しく思います。」

〔釈教歌〕

「濁りなき 亀井の水を むすびあげて

       心の塵を すすぎつるかな」

       上東門院・新古今1926

「濁りのない亀井の水を手にすくいあげて飲んで、心を汚す塵を洗い清めたことよ。」

  詞書:天王寺の亀井の水を御覧じて。

  むすびあげて=手にすくいあげて飲んで。

  心の塵=心の穢れ。

Img_3375

Img_3435

Img_6031

Img_6049

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月29日 (金)

春の花だより   4・29

  今咲いている花:山吹、白山吹、八重桜、しゃが、

日本桜草、紫雲蘭

  これから咲く花:山あじさい、梅花うつぎ、

てっせん、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

見頃・5月下旬~7月上旬

今日から3連休、長い人では10日の連休の方もあるでしょう。普通なら行楽にこころが浮き立つ時期なのですが、今年は大震災の災禍がまだ進行中です。特に原発は終息の目途が立っていません。日本全体に重苦しさが充満しているようです。しかし今日という日、今年という年は一度きりです。悔いのないように人生を活かしてください。春を満喫するのも大事なことです。命の息吹あふれる自然の中へ出かけましょう。

〔俳句〕

「クローバーの 野やうきうきと 衣の裾」柴田白葉女

〔和歌〕

「おしと思ふ 人のこころし をくれねば

        ひとりしもやは 春のかへらむ」

皇太后宮俊成・風雅299

「春の去るのを惜しいと思う人間の心が、遅れずについて行くから、たった一人でなんか、春は帰って行くわけじゃありませんよ。」

  詞書:やよひのつごもりに、「花はみな四方のあらしにさそはれてひとりや春のけふはゆくらん」と法印静賢申して侍りけるに。

  静賢=藤原通憲(信西)男。法勝寺執行。平治の乱により安房配流(1159)。

〔釈教歌〕

「われだにも まづ極楽に 生れなば

        知るも知らぬも みな迎へてん」

僧都源信・新古今1925

「わたしだけでも、まず極楽に生れたならば、知っている人も、知っていない人も、皆、極楽に迎えよう。」

Img_3375

Img_3435

Img_6031

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月28日 (木)

春の花だより   4・28

  今咲いている花:山吹、白山吹、八重桜、しゃが、

利休梅、日本桜草、紫雲蘭

  これから咲く花:山あじさい、梅花うつぎ、

てっせん、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

ゆうべは久しぶりの大雨でした。そして今朝はうすら寒いです。それもそのはず、奈良はきのう275度の夏日でしたから一気に20度ほど下がっています。春は変化の大きい季節です。コスモスにとっては雨と高温は生育にプラスとなりました。草も一緒に大きくなっています。野草の一種に紫雲蘭と呼ばれるリナリアの野生種があります。当寺の石塔の広い壇上に自生し、石畳の隙間から毎年薄紫色のかわいい花を見せてくれます。植えた覚えはないので、きっと小鳥が運んできたのだと思います。

〔俳句〕

「白華蔓 菩薩の慈悲を 偲ばせて」  坂井健

〔和歌〕

「ぬれてをる 藤の下かげ 露ちりて

        春やいくかの 夕ぐれの雨」

           前大納言基良・玉葉277

「雫に濡れながら折る、藤の花の下陰にも露が散って、あの業平の歌さながらに、春はもうあと何日か、と名残惜しく思われる日の、夕暮の雨よ。」

〔釈教歌〕

「南無阿弥陀 仏の御手に かくる糸の

        をはり乱れぬ 心ともがな」

           法円上人・新古今1924

「南無阿弥陀仏と唱えて、み仏のみ手にかける糸のように、臨終の時に乱れない心でいたいものだ。」

・糸=五色の糸。臨終に、その糸を阿弥陀如来の像の手にかけ、端を持って極楽浄土への迎えを念じた。

Img_6065_2

Img_3375

Img_3435

Img_6031

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月27日 (水)

春の花だより   4・27

  今咲いている花:山吹、白山吹、椿、八重桜、しゃが、

利休梅、日本桜草

  これから咲く花:山あじさい、梅花うつぎ、てっせん、

紫雲蘭、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

         見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

今年の山吹の花は少し遅れて咲きました。例年は今頃散り始めているのにこれから満開を迎えます。約一週間後れです。他の花でも、藤やぼたん、石楠花はまだだそうです。やはり春先の寒さが影響しているのかもしれません。いっぽう当寺の早咲きコスモスは少し早いです。種を播くのを早めたので開花も早まったのかも。背は低いですが花が大きいので存在感があります。「日本最古のコスモス名所」の名に恥じないよう美しく咲かせたいと思います。

〔俳句〕

「築土草 春蘭けたれば 咲く薊」  水原秋桜子

〔和歌〕

「行きてみん 深山がくれの をそざくら

        あかず暮れぬる 春の形見に」

藤原長能・風雅297

「行ってみようよ、山奥にひっそりとかくれて咲く遅桜を。十分味わい切らないうちに終ってしまった春の形見として。」

〔釈教歌〕

「寂莫の 苔の岩戸の しずけきに

      涙の雨の降らぬ日ぞなき」

日蔵上人・新古今1923

「ひっそりとした、苔の生えている岩の住まいが静かなので、涙の雨の降らない日がないことだ。」

Img_3375

Img_3435

Img_6031

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月26日 (火)

春の花だより   4・26

  今咲いている花:山吹、白山吹、椿、八重桜、

しゃが、利休梅、日本桜草

  これから咲く花:梅花うつぎ、山あじさい、

てっせん、紫雲蘭、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

         見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

きのうと打って変わり今日は穏やかな天気、気温もどんどん上がり23度もありました。動くと汗ばんでくるような初夏の気候です。それでまだ早いかもしれませんがコスモスの霜よけシートを外す準備をしました。手順は先ず番号付けです。何しろ30数箇所に分かれているので来年のことを考えて保存しなければなりません。場所によって全て長さが違うのです。配列地図を作り番号木札を取り付けます。それから風にまくられないようにクリップや石、土で押さえてあるのをはずします。そして白と黒2枚のシートを丸めて紐でくくります。最後にアーチ型の支柱を抜き取り束ねます。これで終了。まだ霜の心配はあります。昔から「八十八夜の別れ霜」と言って523日ごろまでは霜があるそうです。まあ大丈夫でしょう。もうシートを突上げる高さになっているのも沢山ありますから。花も次々咲いてきましたし。

〔俳句〕

「絵馬落ちて 裏返しなる 杉菜かな」  原月舟

〔和歌〕

「花鳥の 色ねもたえて 暮るる空の

      霞ばかりに 残る春かな」

権中納言公雄・玉葉275

「花と鳥の、色も声音も絶えはてて、暮れて行く空の霞だけに、わずかに残っている春の情趣よ。」

〔釈教歌〕

「しるべある 時にだにゆけ 極楽の

        道にまどえる 世の中の人」

菩提寺講堂柱の虫食い歌・新古今1922

「導きのある時にだけでも、それに導かれて行きなさい。極楽浄土への道に迷っている、世の中の人よ。」

Img_3435

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月25日 (月)

春の花だより   4・25

  今咲いている花:山吹、白山吹、椿、八重桜、

しゃが、利休梅、日本桜草

  これから咲く花:梅花うつぎ、山あじさい、

てっせん、紫雲蘭、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

今日は御本尊文殊菩薩様のおまつりです。「三人寄れば文殊の智恵」とことわざに云われるように、文殊様はわたし達に正しい生き方を教え智恵を授けて下さる仏様です。今日がその御縁日です。朝から雨風が強く法要も危ぶまれたのですが午後には嵐も収まり、寒いながらも無事執行出来ました。やはりご本尊様のおかげだと思います。山吹も満開直前の状態で散ることもなく、この分だと週末の連休は一番の見頃だと思います。

〔俳句〕

「げんげ田や 花咲く前の 深みどり」  五十崎故郷

〔和歌〕

「なにとなく みるにも春ぞ したはしき

        しばふにまじる 花の色々」

      後伏見院御歌・風雅292

「何という事なしに 、見るにつけて暮れて行く春が惜しまれる。芝生にまじり咲く、名も知れぬ花の色とりどりの姿よ。」

〔釈教歌〕

「法の舟 さしてゆく身ぞ もろもろの

神も仏も われをみそなへ」

 智証大師・新古今1921

「仏法を目ざし求める舟に掉さしていく身なのです。諸神も諸仏も、お見守りください。」

  法の舟=仏法を求めて海を渡る舟。

  さしてゆく=掉さしていく。仏法を目ざしていく。

  みそなへ=「みそなはせ」。ご覧になってお守りください。 

Img_3375

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月24日 (日)

春の花だより    4・24

  今咲いている花:山吹、白山吹、椿、八重桜、しゃが、

利休梅、日本桜草

  これから咲く花:梅花うつぎ、山あじさい、てっせん、

紫雲蘭、おがたまの木

  早咲きコスモス:咲き始め・5月上旬

見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

あした425日は当寺の御本尊文殊菩薩様の御縁日、「文殊会(もんじゅえ)」です。別名「一切経転読供養(いっさいきょうてんどくくよう)」とも云います。昔は旧暦325日から一週間執り行われていました。文殊様の徳を讃え、仏教の経典全て、5500巻を転読(経題を読み上げる)し、ご先祖様の供養と諸願成就を祈念する法要です。今は昔の盛大さはありませんが、法要の趣旨は変わりません。鎌倉時代の伽藍復興と興正菩薩による御本尊造顕以来750年、連綿と続く真言律宗きっての伝統行事です。いつからかこの法要に合わせて山吹の花が植えられました。当寺は今「コスモス寺」として世に知られますが、40年前までは「やまぶき寺」と呼ばれていました。文豪森鴎外も山吹に魅かれて当寺を訪うています。山吹はいま満開です。この法要は花とゆかりがあるようで、先日建碑された芭蕉の門人向井去来の句、

 「散りたまる 花や般若の 紙の向き」

はこの文殊会、一切経転読の法要の様子を詠まれています。

法要は明日午後1時半から、午前中には塔婆回向と所願成就のご祈祷、護摩供は11時ごろからです。

〔俳句〕

「花あけび うち仰ぎゐて 湯ざめかな」 宮野小提灯

〔和歌〕

「花はちり 鳥はまれなる 比にしも

       さくやまぶきは 心ありけり」

        前大僧正仁澄・玉葉271

「桜は散り、鶯の声もほとんど聞かれなくなってしまった頃に、ちょうど咲く山吹は、いかにも思いやり深い感じだなあ。」

〔釈教歌〕

「阿ノク多羅 三ミャク三菩提の 仏たち

        わが立つそまに 冥加あらせたまへ」

伝教大師・新古今1920

「最上の智恵を持たれる、み仏たちよ。わたしの入り立つこのそま山に、冥加をお与えください。」

  立つそま=そま山は材木を伐り出す山。ここでは比叡山をさす。

・冥加=目に見えない仏の加護。

Img_3435

Img_3375

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月23日 (土)

春の花だより   4・23

  今咲いている花:山吹、白山吹、椿、八重桜、しゃが、

利休梅、日本桜草

  これから咲く花:梅花うつぎ、山紫陽花、

てっせん、紫雲蘭、おがたまの木

  初夏咲コスモス:咲き始め・5月上旬

         見頃・5月下旬~7月上旬、5万本

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

        こさめなかるる はるはきにけり」

これは会津八一の歌、春の代表作です。春は雨が似合います。きのうに続いて今日も雨です。一雨ごとに季節は進み自然の息吹が高まります。桜が終っても春の百花はこれからです。いま雨が降るごとに山アジサイの蕾はふくらみ、コスモスはすくすくと伸び上がっています。自然は命の宝庫、わたし達の命もその一部、大切にしたいものです。

〔俳句〕

「雨に咲く 山吹の黄の めさむる黄」  山本岬人

〔和歌〕

「ちりうける 山のいはねの ふぢつつじ

        色にながるる 谷川の水」

         永福門院・風雅288

「散り浮いている、山の岩の根方あたりの藤やつつじの花が、美しい色どりとなって流れて行く、谷川の水よ。」

〔釈教歌〕

「蘆そよぐ 潮瀬の波の いつまでか

       浮世の中に 浮びわたらん」

行基菩薩・新古今1919

「蘆のそよいでいる潮瀬の波のように、いつまで、はかない世の中にさまよい続けるのであろうか。」

潮瀬=潮の流れる所。

浮世=はかない世。無常の世。

浮びわたる=さまよい続ける。

Img_6031

黒姫↑

Img_3375

大虹↑

Img_3435

黄冠↑

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月22日 (金)

春の花だより   4・22

  今咲いている花:山吹、椿、八重桜、利休梅、ぐみ、

しゃが、まゆみ、日本桜草

  これから咲く花:梅花うつぎ、山紫陽花、黒ロウバイ、 

    てっせん、おがたまの木

  初夏咲コスモス:咲き始めは5月上旬、

見頃は5月下旬~7月上旬、5万本

早咲きコスモスの開花予測を訂正します。きのう初花を報告いたしましたが、調べてみるとてみると全体に100をこえる蕾が見つかりました。背丈はまだ低いです。せいぜい3040センチぐらいです。しかし種まきは2月初めでしたからもう3ヶ月ほど経っています。花が咲いてもいい頃です。今年の春は低温が続いたので背丈が大きくなれないままにに花を準備したのかもしれません。5月に入れば初夏の季節です。きっと暖かい日がやってくるでしょう。

〔俳句〕

「川波に 山吹映り 澄まんとす」  高浜虚子

〔和歌〕

「桜ちり 春のくれ行く 物思ひも

      わすられぬべき 山吹の花」

皇太后宮大夫俊成・玉葉270

「桜が散り、春が暮れて行くのを惜しむ憂鬱さも、思わず忘れてしまいそうな程美しい山吹の花よ。」

〔釈教歌〕

「山深く 年経るわれも あるものを

      いづちか月の 出でてゆくらん」

智縁上人夢歌・新古今1918

「山に深く籠って年を過ごしているわたしもいるのに、そなたは、月が出ていくように、どちらへ出ていくのであろうか。」

・ほうきの国大山にある大山寺の地蔵菩薩が、山を出る智縁上人に名残を惜しんだ歌。

Img_6031

Img_3435_2

Img_3375_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月21日 (木)

春の花だより   4・21

  今咲いている花:椿、八重桜、利休梅、山吹、ぐみ、

         しゃが、まゆみ、日本桜草、

  これから咲く花:黒ロウバイ、てっせん、おがたまの木

梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

きょう早咲きコスモスの一番花を見つけました。小さなピンクの花です。今朝は霜が降りていたので保護シートの外に植えた分はだめになったのではないかとあきらめていたのに、どっこい根性コスモスは健在でした。朝見回ったときはしんなりとしていたのが、気温上昇とともにしっかりと葉を伸ばしました。もう苗が大きくなっているのと気温が0度以下ではなかったのが幸いしました。これから23番の花が控えています。6月開花は早まるかもしれませんが予想は難しいです。

〔俳句〕

「山吹の 茎にみなぎり 来し青さ」   細見綾子

〔和歌〕

「やまぶきの 花の露そふ 玉河の

        ながれてはやき 春の暮哉」

後鳥羽院御歌・風雅281

「山吹の花に置く露も加わる、清らかな玉川の流れの早さのように、月日もとどまらず流れて、早くも迎えた春の暮であるなあ。」

・玉河=井手の玉川。

〔釈教歌〕

「なにか思ふ なにとか嘆く 世の中は

        ただ朝顔の 花の上の露」

清水観音御歌・新古今1917

「何を思うのか、どうだというので嘆くのか。世の中は、まったく、はかない朝顔の花の上に置く、はかない露のようなものだ。」

Img_3375

Img_3435

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月20日 (水)

春の花だより   4・20

  咲いている花:椿、山桜、利休梅、山吹、ぐみ、

しゃが、まゆみ、日本桜草

  これから咲く花:八重桜、黒ロウバイ、てっせん、

おがたまの木、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

ふつうの桜はほぼ終り八重桜が咲き出しました。薄い桃色と濃い桃色の二種類があります。濃いほうは名前は分りません。薄いほうは天然記念物になっている「奈良八重桜」の子孫です。ずい分前に地元のバス会社奈良交通から記念木として寄進されたものです。淡いピンクの上品な花です。元木は東大寺知足院に健在です。奈良の桜は終りましたが吉野山はこれからだと思います。当寺の早咲き秋桜は5月下旬から咲き始め6月には見頃を迎えます。 

〔俳句〕

「八重もまた 散る山吹と なりしかな」  荒木玉章

〔和歌〕

「やえにのみ ありと見えつる 山吹の

        ここのへちかく さきにける哉」

         壬生忠見・玉葉269

「八重だとばかり思って見ていた山吹が、まあ九重の宮中近く咲いたことよ。」

〔釈教歌〕

「なほ頼め 標茅(しめぢ)が原の させも草

       わが世の中に あらん限りは」

        清水観音御歌・新古今1916

「やはり、わたしを頼みにしなさい、そのように悩ましくても。わたしがこの世の中にいるであろう限りは。」

  なほ=やはり。

  させも草=蓬のこと。灸の材料。そのようにも、の意をきかせる。

Img_3435

Img_6114

Img_3375

Img_6065

Img_6031_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月19日 (火)

春の花だより   4・19

今咲いている花:椿、山桜、利休梅、山吹、ぐみ、しゃが、

         まゆみ、日本桜草

  これから咲く花:八重桜、黒ロウバイ、てっせん、

おがたまの木、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

久方ぶりの雨でほっとします。この春はよく乾燥が続きました。花粉かほこりか分らない空気の汚れが目立ちました。くしゃみが出たり、眼がかゆくなったりいろんな症状がありました。庭にも水遣りが欠かせません。この雨で一服できそうです。でも雨があると雑草もはびこります。しばらく庭から離れられません。

〔俳句〕

「卓の壷 山吹ちるに まかせあり」  伊丹丈蘭

〔和歌〕

「吹く風に とまりもあへず ちるときは

       やへ山吹の はなもかひなし」

        藤原興風・風雅280

「吹く風のために、とどまろうとしてもとまりきれず散る時は、八重山吹の花といっても、花びらの沢山あるかいもないことだ。」

〔釈教歌〕

「般若台に おさめをきてし 法華経も

       ゆめどのよりぞ うつつにはこし」

前大僧正慈鎮・風雅2102

「聖徳太子が、前世に般若台におさめて置かれた法華経であるが、太子が夢殿で夢の中で中国に渡り、現実に取っておいでになったのだ。」

・この歌を以って風雅和歌集の釈教歌は終ります。明日からは時代はさかのぼり、新古今和歌集の釈教歌にうつります。

Img_0858

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月18日 (月)

春の花だより   4・18

  今咲いている花:椿、山桜、利休梅、山吹、日本桜草、

         ぐみ、しゃが、まゆみ

  これから咲く花:八重桜、黒ロウバイ、てっせん、

おがたま、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

季節は確実に移ろいます。桜が終れば山吹が咲き、山吹の次にはあじさいの花。当寺では山紫陽花を植えています。元来、日本の野山に自生する種類なので夏の暑さには弱く、水が切れれば枯れてしまいます。去年は60種類700鉢育てていたのに、猛暑のため半分枯らしてしまいました。その生き延びた山紫陽花の早いものではもう蕾をつけています。「虹」とか「大虹」という種類が一番早く咲きそうです。これは花は小さいのですが、虹のような色合があります。青、ピンク、紫を併せ持った虹色の花です。人気があります。お楽しみを。

〔俳句〕

「遠くより みてゐし雨の 濃山吹」  稲畑汀子

〔和歌〕

「雪とのみ 桜はちれる このしたに

       色かへてさく やまぶきの花」

        民部卿為世・玉葉267

「雪としか見えないように、桜はすっかり散ってしまった木下に、これはまた色を変えて、美しく咲く山吹の花よ。」

〔釈教歌〕

「くもりなく みがける玉の うてなには

        塵もゐがたき 物にぞ有りける」

         かたのの尼・風雅2101

「少しの曇りもなく磨き上げた玉のような、この壮麗な御堂には、ほんの小さな塵一つもとまっている事のできないものであったよ。」

  藤原道長が建てた法成寺に参りて詠む歌。

  玉のうてな=豪華な建築物。

Img_0863_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月17日 (日)

春の花だより   4・17

  今咲いている花:椿、山桜、利休梅、山吹、ぐみ、

しゃが、まゆみ

  これから咲く花:八重桜、日本桜草、黒ロウバイ、

てっせん、おがたまの木、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

初夏の温かさ、春の花が全部咲きそうです。少しずつ咲いてくれればばよいものを、一斉です。コスモスもどんどん大きくなり苗床が窮屈になってきました。蕾がついているのもあります。霜をおそれず庭に植えつけたり、苗ポットにして販売もしています。昨日までは日に5個程度の売り上げでしたが、今日は10個も売れました。各家庭のお庭にコスモスが咲いてくれると想像すれば楽しいです。

〔俳句〕

「ほろほろと 山吹散るか 滝の音」  松尾芭蕉

〔和歌〕

「我がやどの やえ山吹は ちりぬべし

        花のさかりを 人のみにこぬ」

         藤原元真・風雅278

「私の家の八重山吹は(誰も見ないで)散ってしまうでしょうよ。こんなに見事な花の盛りを、あの方は見に来ないなんて。(ほんとにひどいわ)」

〔釈教歌〕

「ふかくそめし こころのにほひ すてかねぬ

         まどひのまえの 色とみながら」

          伏見院御歌・風雅2100

「深く愛着した、心中の美を愛でる思いは捨てるに捨てかねてしまうよ。真実ならぬ、迷いの世界における現象にすぎないと思いながらも。」

  にほひ=色が映発するような美。

  色=色界(物質・肉体に執着する世界)に起る現象。「そめ」「にほひ」は「色」の縁語。

Img_0875

Img_0872

Img_0877

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月16日 (土)

春の花だより   4・16

  今咲いている花:椿、山桜、利休梅、山吹、ぐみ、

しゃが、まゆみ

  これから咲く花:日本桜草、八重桜、黒ロウバイ、

てっせん、おがたまの木、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

いま、京都・奈良の観光地は花ざかりで春本番ですが人出は低調です。当寺もあの大震災以後まだ冬の状態が続いています。これは全国的な傾向で今年の大型連休はどこともお客さんは減ると予測されています。特に東日本は気の毒なくらいの状態です。外国人は全く来なくなったそうですし、日本人の消費抑制の傾向が観光地に大きな影響を与えています。このまま日本社会は縮んで行くのでしょうか。震災の起る前から経済の停滞と人口減少が問題となっていました。そこへこの震災が起ったのです。今が歴史の大きな転換点になっているのかもしれませんね。

〔俳句〕

「山吹も 八重の遅るる 莟かな」  後藤夜半

〔和歌〕

「さきいづる やへやまぶきの 色ぬれて

桜なみよる 春雨の庭」

         従三位為子・玉葉266

「咲きだした八重山吹の色が、雨にぬれていっそう濃く、庭面を流れる雨水に散り浮いた桜の花びらが波のように揺れ動く、春雨の庭よ。」

〔釈教歌〕

「匂へども しる人もなき 桜花

       ただひとりみて あはれとぞ思ふ」

        慶政上人・風雅2099

「美しく咲き匂っているのに、気づく人もない桜花よ。私がただ一人で見て、いとおしいと思うことだ。(経に述べられた御仏の教えも、関心を持つ人はいない。私一人、感動もし、残念だとも思う)」

Img_0854

Img_0853

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月15日 (金)

春の花だより   4・15

  今咲いている花:椿、桜、桃、利休梅、山吹、ぐみ

  これから咲く花:日本桜草、しゃが、八重桜、

黒ロウバイ、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

境内の通路に敷いてある畳一枚分の大きな古びた木の板に、次の言葉が木炭のようなもので書いてありました。

「はたけもあるおてら スゴイ!」

誰が書いたのか分りません。子供が書くような字です。炭はその辺に転がっているものを利用しのだと思います。それにしても的確に現在の寺の様子を捉えています。畑があるわけではないのですが、コスモスを育てるのに全長300メートルのトンネルシートが目立っています。白いトンネル栽培があたかも農場のように見えたのでしょう。子供の素直な感性でおどろきを表現したのでしょう。!マークがついているのを見ても子供っぽさが感じられます。この風景も霜の心配がなくなれば普通の寺に戻りますので、この畑風景もあとしばらくです。

〔俳句〕

「山吹の いと濃きありて 遠くにあり」  相馬黄枝

〔和歌〕

「鶯の きなく山ぶき うたがたも

君がてふれず 花ちらめやも」

よみ人しらず・風雅279

「鶯の来ては鳴く、山吹の花よ。本当にまあ、あの方が(来ても下さらず)手を触れもしないで花が散ってしまうなんて事があるだろうか。いや、そんな事はあり得ないよ。」

・万葉集3968

・うたがたも=本当に。けっして(・・・ない)。

〔釈教歌〕

「心をば かねてにしにぞ をくりぬる

我が身をさそへ 山のはの月」

従三位親子・風雅2098

「心だけは、前もって西方極楽浄土に思いをかけ、送ってしまっているのだよ。私の身体をも、誘って行っておくれ。山の端に今にも入ろうとする月よ。」

・にし=阿弥陀仏のおられる西方極楽浄土。

Img_0844

Img_0849

Img_0848

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月14日 (木)

春の花だより   4・14

  今咲いている花:椿、桜、桃、利休梅、山吹一重咲

  これから咲く花:山吹八重咲、日本桜草、しゃが、

         八重桜、黒ロウバイ、梅花うつぎ、

山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

〔俳句〕

「山吹の 一重の花の 重なりぬ」   高野素十

〔和歌〕

「のどかなる いりあひのかねは ひびきくれて

をとせぬ風に 花ぞちりくる」

前参議清雅・玉葉259

「のどかな入相の鐘の音は、夕暮の空に静かに響きつつ消えて行き、音もせぬ風に誘われて、一ひら二ひら、花が散って来る。」

・ひびきくれて=鐘の音が響く中で、次第にあたりが暮れて行く情景。京極派の特異表現。

〔釈教歌〕

「西をおもふ 心もおなじ 夢なれど

長きねぶりは さめぬべき哉」

如空上人・風雅2097

「西方極楽浄土を思い慕う心といっても、それも同じ迷いの夢の中なのだが、それでも至心にそれを思う事によって、無明長夜の眠りは覚めることだろうよ。」

Img_0837

Img_0842

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月13日 (水)

春の花だより   4・13

  今咲いている花:椿、桜、桃、利休梅、山吹一重咲

  これから咲く花:山吹八重咲、しゃが、日本桜草、

八重桜、黒ロウバイ、梅花うつぎ、

山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

毎朝、霜が降りています。昼間はけっこう温いのに、朝方は冬のように寒いです。一日の寒暖の差が20度近い日もあります。体調を崩しやすいですね、まだ花粉症もありますし。

寒くてもコスモスの苗は順調に大きくなっています。平均15㎝ぐらいで、中には20cmを超えるのもあります。

保護シートの中はほぼ植えつくしました。しかしまだ沢山の苗が残っているので、シートの外にも植えるつもりです。おそ霜の無いことを願います。

それからポット苗を販売しておりますので、植えてみたいと思われる方は寺までお越しください。

〔俳句〕

「濃山吹 俄かに天の くらき時」  川端茅舎

〔和歌〕

「いそのかみ 故郷にさく 花なれば

むかしながらに にほひけるかな」

中務・風雅169

「ここ、石上布留の古都に咲く桜の花だから、(都はさびれてしまっても)昔のままに美しく咲き匂っているよ。」

  いそのかみ=大和の歌枕。

奈良県天理市

石上。安康・仁賢両天皇の都の地とされ、石上神宮がある。同地布留にちなんで「古」の枕詞。

〔釈教歌〕

「しるべする 雪のみやまの けふにあひて

ふるきあはれの 色をそへぬる」

前大納言為兼・風雅2096

「禅師のお導きによって仏道を学び、釈迦が前世に雪山成道を遂げられた今日に廻りあって、古い昔の感動を改めて味わい、深く感銘しております。」

・前歌に対する返しの歌。

Img_0810

Img_0806

Img_0805

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年4月12日 (火)

春の花だより   4・12

  今咲いている花:椿、桜、桃、利休梅、山吹一重咲

  これから咲く花:山吹八重咲、日本桜草、しゃが、

八重桜、黒ロウバイ、梅花うつぎ、

山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

山吹が咲いてきました。それから野の花である「つる日々草」や「地獄の釜の蓋」の異名をもつキランソウが紫色の花をみせます。それから踊り子が輪になっているような「踊子草」、アヤメ科の白い花、「しゃが」(射干)も咲き出しました。この花は蝶が止まっているようなので、漢名では「胡蝶花」と言います。そのほか外来ですが花がピンクの姫踊子草、垣通しなども咲いています。いっせいに花が咲くとミツバチや黄蝶が忙しそうに飛び回るようになりました。春まっさかりです。

〔俳句〕

「みよし野の 杉山ふかし 華まん草」  稲畑汀子

〔和歌〕

「桜花 日ぐらしみつつ けふも又

月まつ程に なりにけるかな」

橘為仲朝臣・玉葉162

「桜花を一日中見ていて、今日もまた日が暮れ、早く月が出ないかと待つほどの時刻になってしまったよ。」

  けふも又=昨日も一昨日もそうであった心を含む。

  月まつ程=月光でなお花を観賞したい気持。

〔釈教歌〕

「ふりにける 雪の深山は 跡もなし

たれふみ分けて みちを知るらん」

法源禅師・風雅2095

「大昔の、雪の降り積った深山には足跡もない。一体誰がそこを踏み分けて、あたかも山道を知るように仏道を悟るのだろう。(それは釈迦の前世の姿なる、雪山で苦行し成道した雪山童子以外にはない)」

  雪山成道の心をよみて前大納言為兼許につかはしける。雪山成道とは大雪山(ヒマラヤ山)で、釈迦が過去世に修行を重ね、悟りを開き、成道したこと。

  ふりにける=「旧り」「降り」をかける。

  雪の深山=大雪山。

  みち=「山道」と「仏道」をかける。

Img_0198

Img_0564

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月11日 (月)

春の花だより   4・11

  今咲いている花:椿、桜、桃、利休梅、山吹一重咲

  これから咲く花:山吹八重咲、しゃが、八重桜、

日本桜草、黒ロウバイ、梅花うつぎ、

山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

花のいのちは短くてと言いますが、桜の花が散り始めました。咲きだして一週間ほどのいのちです。その潔さが好まれるのでしょうか、昔から花は桜木、人は武士とならび称されてきました。しかし春の花は色々あります。当寺ではこれから山吹の季節です。

今タンポポが満開です。そのうち踊子草や金鳳花が咲きだします。野の花もいっぱいあります。

〔俳句〕

「道端の 仏に木の芽 花のごと」   山口青邨

〔和歌〕

「花見にと 春はむれつつ 玉鉾の

みちゆき人の おほくも有るかな」

左兵衛督直義・風雅162

「花見に行くために、春は群れをなして道を行く人々の、本当に多いことだなあ。」

・玉鉾の=「道」の枕詞。三叉路や村の入口に立てた魔除けの石(玉鉾)から出たという。

〔釈教歌〕

「わたつうみを みなかたぶけて あらふとも

我が身のうちを いかできよめん」

前参議教長・風雅2094

「大海の水を全部使いつくして洗っても、私の身体の中の汚れを、どうして清めることができよう。到底不可能だ。」

Img_0179

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月10日 (日)

春の花だより   4・10

  今咲いている花:椿、桜、利休梅、桃

  これから咲く花:山吹、しゃが、八重桜、黒ロウバイ、

         日本桜草、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

花ではありませんが、赤芽柏が鮮紅色の若葉を見せ新緑の中で目立ってきました。そのほか真弓が小さな蕾を沢山つけています。マユミの花は薄い緑色で見栄えがしません。しかし、秋になると緑の四角い実が薄紅色に熟し四裂して中から赤い実がぶら下がるという変わった形になります。古代には木がねばりづよいので丸木弓の材として使われたそうで、そこからこの名が付けられています。春は桜だけではありませんね、百花繚乱です。

〔俳句〕

「こぼるるや ゆふべ明りに 花樒」  無錫

〔和歌〕

「桜花 あかぬにほひに さそはれて

春は山ぢに ゆかぬ日ぞなき」

前大納言師忠・玉葉160

「桜花の、いくら見ても見あきない色香に誘い出されて、春の季節は山へ花見に行かない日はないよ。」

〔釈教歌〕

「こと浦に くちてすててる 海士を舟

我がかたにひく 波もありけり」

俊光明照院前関白左大臣(二条道平)・風雅2093

「よその海岸に、朽ちたまま捨ててあった海士の小舟を、自分のいる海岸に引き寄せる波もあったことだ。(成仏できないものとして打捨てられていた女人達を、御仏の世界に引き寄せて下さる誓願があったとは、何とありがたいことだろう)」

  大無量寿経の女人往生願を詠む。女人を往生させるという阿弥陀仏の第三十七誓願。

  こと浦=異浦

  海士を舟=「海士」と「尼」をかける。

  我がかたにひく波=極楽に引接して下さる仏の誓願。

Img_06091

Img_06021

Img_06011

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 9日 (土)

春の花だより   4・9

  今咲いている花:椿、桜、利休梅、桃

  これから咲く花:山吹、しゃが、八重桜、黒ロウバイ、

         梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

久しぶりの雨でした。空になっていた雨水タンクは満タンになりました。乾燥が続いていた当地ではうれしい雨ですが、福島原発の周辺では放射能雨が心配です。雨にかからないように気をつけなければなりませんね。昔、米ソなどが頻繁に行った原水爆実験の頃を思い出します。放射能雨にかかると髪の毛が抜けると注意されました。放射能をかぶりすぎると原爆と同じ病気になると教えられ、子供ながらに何か判らないながらも、恐怖心を覚えたのを思い出します。その頃よく聞く言葉に、ガイガーカウンターとかストロンチウムというのがありました。今はシーベルトでしょうか。野菜や魚が食べられなくなるという社会現象は当時と同じです。どうかこの雨が放射性物質を洗い清めてくれるように、と祈るばかりです。

〔俳句〕

「囀りを やめて居る間の 枝渡り」  中村汀女

〔和歌〕

「ゆくすゑの 花かかれとて 吉野山

たれしら雲の 種をまきけん」

従二位家隆・風雅154

「将来の花がこんなにも見事になれと思って、この吉野山に、誰が白雲ともなるような桜の種をまいたのだろう。(まさかこれ程の花の名所になろうとは思いもしなかったろうに)」

  かかれとて=斯くあれとて。「白雲」の縁語「掛かれ」をかける。

  たれしら雲=「誰知ら」(誰が知ろうか)の意をかける。

〔釈教歌〕

「あさまだき 露けき花を おるほどは

玉しく庭に 玉ぞちりける」

皇太后大夫俊成・風雅2092

「朝早く、露の沢山置いた花を折る時には、極楽の宝玉を敷きつめた美しい庭に、更に露の玉が散るよ。」

Dscf5488

Dscf5490

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 8日 (金)

春の花だより   4・8

  今咲いている花:椿、桜、利休梅、桃

  これから咲く花:山吹、しゃが、八重桜、黒ロウバイ、

         梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

今日はお花まつり、お釈迦様の誕生日です。各地の寺で誕生仏をまつり甘茶が振舞われます。当寺では25日の文殊会式でおまつりします。

先日、正岡子規と水原秋桜子の句碑が立ったことをご紹介しましたが、第二弾として向井去来と高野素十の句碑が出来ました。

去来の句作は

 「散りたまる 花や般若の 紙の向き」 です。

素十の句作は

 「秋の日の 十三塔や 日は西に」 です。

小さな句碑ですので竹の柵で囲いをしています。御来寺の節はご覧下さいませ。なお制作は前回と同じく黒石材工務店にお願いしました。

〔俳句〕

「奈良七重 七堂伽藍 八重桜」  松尾芭蕉

〔和歌〕

「をちこちの 山は桜の 花ざかり

野べは霞に うぐひすの声」

永福門院・玉葉148

「遠く近くの山々は皆、桜の花ざかりである。野原には霞がたなびき、鶯の声がしきりに聞える。」

〔釈教歌〕

「のりのには 空に楽こそ 聞ゆなれ

雲のあなたに 花やちるらむ」

慶政上人・風雅2091

「法会の場で、空に音楽が聞こえることだなあ。きっと雲の彼方には、釈尊説法の時のように極楽の花が散っていることだろう。」

Img_0175

Img_0176

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 7日 (木)

春の花だより   4・7

  今咲いている花:椿、桜、利休梅、桃

  これから咲く花:山吹、しゃが、八重桜

         黒ロウバイ、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

桜に気をとられているうちに桃の花が満開になっていました。一本だけですが長らく枝を切らなかったので大きな木です。笠塔婆の背後にあり、いい後景となっています。桃の花は桃色、当たり前ですが典型的な桃色です。この木は実もなります。ちゃんと世話をすれば食べられる大きさになります。でもすっぱそうで誰も見向きもしません。もったいないですね。何か利用法があればいいんですが。

〔俳句〕

「黒雲から 黒鮮やかに 初燕」  中村草田男

〔和歌〕

「やまざくら またれまたれて さきしより

        花にむかはぬ 時のまもなし」

         後鳥羽院下野・風雅151

「山桜よ。さんざん待ちこがれられてお前がようやく咲いて以来、花に向って見とれていない時間は、ほんのちょっとでもありはしないよ。」

〔釈教歌〕

「法の庭 ちらす紅葉は 山ひめの

      そむるもふかき えとやなるらん」

       従二位為子・風雅2090

「法要の場に散らす紅葉は、山姫が染めた深い色合、その色にあやかって深い仏縁を結ぶことになるでしょう。」

・法の庭=法要を行う場。

  山ひめ=山を守り支配する女神。

  え=縁。「枝」をかける。

Img_0167

Img_0168

Img_0169

Img_0171

Img_0173

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 6日 (水)

春の花だより   4・6

  今咲いている花:椿、桜、利休梅

  これから咲く花:山吹、しゃが、桃、八重桜、

黒ロウバイ、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

山吹の一重咲が咲き始めました。日中は本当に暖かく、この間までの寒さは嘘のようです。桜はこれから一週間が花盛りの見頃です。山吹はこれからです。一重が咲いて続いて八重咲、それからちょっと種類は違うんですが、白山吹です。

いよいよ春本番です。コスモスが咲くころはもう夏、そして梅雨です。あじさいとの競演が見ものですね。

〔俳句〕

「参籠の 一夜は明けぬ 花馬酔木」  森定南楽

〔和歌〕

「花見にと むれつつ人の くるのみぞ

あたら桜の とがにはありける」

 西行法師・玉葉144

「花見にといって、ぞろぞろ連れだって人のやって来るのだけが、せっかくの桜のたった一つの欠点だよ。」

・詞書=「しづかならんと思い侍る比、花見に人々まうできたりければ」

〔釈教歌〕

「しづみこし うき身はいつか うかぶべき

        ちかひの舟の 法にあはずは」

示証上人・風雅2089

「生死の苦海に沈んだまま過ごして来た、この辛い我が身は、いつになったら浮かぶ事ができるだろう。御仏の衆生を救って下さる誓願という、ありがたい仏法の舟に会う事がなく、乗せていただけなかったならば。」

  しづみこし=苦しみに満ちたこの世を海にたとえていう。

  うかぶ=迷いの境涯を脱して成仏する。

  ちかひの舟=仏の衆生済度の誓願を舟にたとえる。

  法=「仏法」と「乗り」をかける。

Img_0155

Img_0160_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 5日 (火)

春の花だより   4・5

  今咲いている花:椿、桜、利休梅

  これから咲く花:山吹、しゃが、桃、八重桜、

         黒ロウバイ、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

桜は今5分咲きです。もうそろそろ山吹も咲きだす頃です。今日から寒さも緩み、春の陽気がやって来そうです。しかし今日の朝はぐんと冷え込み、東北の被災地を始め各地で4月の最低気温を更新しました。この辺でも氷が張り霜で真っ白でした。いま育てている初夏咲のコスモスは何とか霜をしのいでいますが、生育は遅れています。当初、5月下旬から咲くようにと種をまき育てていたのに、この分では6月に入らないと咲かないと思います。でもこの時期にコスモスが見られるなんて昔は信じられないことでした。やはり農業技術の進歩の賜物でしょうか。人の命は有限です。私の余命が何年あるのかは分りませんが、あと10年としたら、花を10回愛ずる所を20回に増やせるのですから長生きできるような気分になれます。皆様も年二度のコスモスをお楽しみください。

〔俳句〕

「春鹿の 眉ある如く 人を見し」  原石鼎

〔和歌〕

「やどからや 春の心も いそぐらむ

        外(ほか)にまだみぬ はつ桜ばな」

前大納言為兼・風雅146

「(西園寺という)すぐれた名邸であるがために、春の来ようとする気持ちも急がれるのであろうか。よそではまだ見もしない早咲きの桜が、もう咲いているよ。」

  詞書=伏見院西園寺に御幸ありて、花の歌人々によまさせ給ひけるとき

  西園寺=現在の金閣の地にあった、西園寺北山第。家祖公経が寺院兼邸宅として造営、桜と雪の名所として代々の行幸御幸を仰いだ。伏見院当時の当主は実兼。

  やどから=「から」は原因・理由をあらわす。「西園寺」の名ゆえに西方欣求の心から「いそぐ」意と、名だたる名邸であるから春も来ることを「いそぐ」意を重ね、祝意を表したもの。

〔釈教歌〕

「ありながら きえぬとみえて かなしきは

        けふの手向の 花の白雪」

山本入道前太政大臣(洞院公守)女・風雅2088

「久遠常住ではあられながら、我々衆生の目には入滅なされたと見えて悲しい御仏のお姿は、今日、涅槃会の捧物の花の、白雪のような美しさに象徴されております。」

Img_0149

| | コメント (0) | トラックバック (0)

春の花だより   4・4

  今咲いている花:椿、桜、白木蓮、利休梅

  これから咲く花:山吹、しゃが、桃、牡丹、八重桜、

         黒ロウバイ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

境内の利休梅(りきゅうばい)が咲きだしました。この花木は中国原産でバラ科の落葉低木です。花は3,4センチ程度の梅花のような純白5弁花です。茶道の元祖、千利休の名がついているので、また利休さん好みの茶花と思いきや、意外と新しく、日本に入ったのは明治の頃だそうです。実は利休さんのご命日、利休忌の頃に咲くところから、大阪の人(名は不明)が命名したそうです。ちなみに利休忌は表千家では327日、裏千家は28日に追善茶会が催されています。ご命日は陰暦228日で、新暦では41日に当ります。

〔俳句〕

「咲き満ちて こぼるる花も なかりけり」  高浜虚子

〔和歌〕

「さかりをば 猶まつ枝の 残れども

        あまた梢に 花ぞなりぬる」

前大僧正道潤・玉葉141

「盛りになるのをまだ待っている、という風情の枝も残ってはいるけれども、それにしても大多数の梢に、花がいっぱいになってしまったなあ。」

・あまた梢=沢山の梢。

〔釈教歌〕

「そのままに ながれの末を うつしても

        猶いにしえの 跡ぞゆかしき」

前大僧正良覚・風雅2087

「流祖以来の法式にそのままならって、末流の者として如法経を行っても、やはり慈覚大師の足跡が慕わしいことです。」

・前歌2086への返し歌。

Img_0131

Img_0135

Img_0132

Img_0130

Img_0128

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 3日 (日)

春の花だより   4・3

  今咲いている花:椿、桜、白木蓮

  これから咲く花:山吹、利休梅、しゃが、桃、牡丹、

八重桜、黒ロウバイ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:5月下旬~7月上旬、57万本

桜の花が見頃を迎えようというのに、花冷えと言うのでしょうか、いつまでも寒いです。夕方、日が落ちると急に温度が下がります。これでは夜桜鑑賞には適さないです。寒さに加え、どことも震災の影響もあって桜まつりはひかえめです。この春は日本中がしんみりとしているようです。被災地が一日も早く救援され元気を取り戻してほしいですね。

〔俳句〕

「日当りて 花新しき 椿かな」   清崎敏郎

〔和歌〕

「さきさかぬ 梢の花も をしなべて

        ひとつかほりに かすむ夕暮」

朔平門院・風雅144

「咲いたのもあり、まだ咲かぬのもある梢の花、すべてはただ一つのほのぼのとした色調の中に霞んでいる夕暮よ。」

  さきさかぬ=開花初期の、花と蕾のまじっている状態。

  かほり=ほのぼのとした美しさ。花の白と蕾の紅とのグラデーションの美をとらえた表現。

〔釈教歌〕

「いにしへの ながれのすゑを うつしてや

        横川の杉の しるしをもみる」

前大納言為家・風雅2086

「その昔の、慈覚大師の法流の末にならって、尊い経文を書写されるからには、三輪の杉ならぬ、横川の杉の霊験を得られることでありましょう。」

  横河=比叡山三塔の一.根本中堂(東塔)の北方にある。

  いにしへのながれ=円仁を祖とする天台宗山門派の法流。

  うつして=なぞらえて。写経の意をかける。

  杉のしるし=三輪神社、また伏見稲荷神社の神木の杉の枝を折って持ち帰り、長く枯れなければ願い事がかなうとされた。横河も杉に囲まれた聖域であるのでこれになぞらえていう。

Img_0139

Img_0141

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 2日 (土)

春の花だより   4・2

  今咲いている花:椿、桜、白木蓮、

  これから咲く花:山吹、しゃが、桃、牡丹、八重桜、

黒蝋梅、利休梅、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

桜が一気に咲きだしました。氷室神社のしだれ桜は満開です。当寺の山吹はまだ蕾ですが、あと一週間で咲くかもしれません。

42日から4日までブログ担当者が寺の所用で九州へ出張いたします。その間更新をお休みしますのでご容赦ください。帰ってきたらいろんな土産話が聞けると思います、お楽しみに。

〔俳句〕

「ふり返り 見て花の道 花の中」   稲畑汀子

〔和歌〕

「おほかたの 花のさかりも 程もあらじ

        庭の一木は さきそめにけり」

前関白太政大臣(鷹司基忠)・玉葉137

「世間全体が花の盛りになるのももう間もないことだろう。私の庭の一本の桜は、もう咲き始めたよ。」

〔釈教歌〕

「さりともな ひかりはのこる 世なりけり

        空行く月日 法のともし火」

前大僧正慈鎮・風雅2085

「いくら何でもやはり、光は残るこの世であることだ。空を行く月日と言い、仏法の燈火と言い。(いかに末法の世の暗い世の中といっても、まだ希望は残っている)」

・さりともな=いくらそうであってもね。悲観的な状況の中で一筋の希望を求める表現。

昨年のコスモス↓

Img_6748

Img_7538

今季初夏咲きポスター第一作目↓

Ko

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 1日 (金)

春の花だより   4・1

  今咲いている花:椿、桜、白木蓮

  これから咲く花:山吹、しゃが、桃、牡丹、八重桜、

黒蝋梅、利休梅、梅花うつぎ、山紫陽花

  初夏咲コスモス:6月上旬~7月上旬、5万本

41日はエープリル・フール、四月馬鹿と言います。今日の午前中は嘘をついても許されると言う西洋の習慣ですが、日本ではあまり定着しなかったようです。日本人はまじめ人間が多く、ユーモアのセンスが受け容れられないのかも知れません。しかし、心はやわらかく、ひろくありたいものですが。

4月は卯月です。これは陰暦では卯の花、すなわち空木の花が咲くところから言われるのだと思います。ちなみに53日が陰暦の4月1日です。空木はその頃咲いています。純白の花で香りもあり、清楚な雰囲気を漂わせてくれます。

当寺では梅花うつぎという種類の花が咲きます。

〔俳句〕

「木蓮の 花許りなる 空をみる(見上げる意のセン)」

夏目漱石

〔和歌〕

「めぐむより けしきことなる 花なれば

        かねても枝の なつかしき哉」

俊頼朝臣・風雅141

「(桜というのは)芽が出ようとする時からして、様子が格別な花だから、咲く前からすでにもう、その枝がなつかしく、好もしく思われるよ。」

  けしきことなる=様子が普通と違う。

  かねて=前もって。あらかじめ。

〔釈教歌〕

「いたづらに 老いをまつにぞ なりぬべき

        ことしもかくて 又くらしつつ」

慶政上人・風雅2084

「ただなす事もなく老いるのを待つ、ということになってしまいそうだ。(仏道に精進することもなく)今年もこうして漫然と暮らしていて。」

Img_8825

Img_8830

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »