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2011年6月

2011年6月30日 (木)

初夏のコスモス   6・30

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》は本日まで、

2ヵ月後の9月になれば秋のコスモスが咲きますのでしばらくお待ちねがいます。

  今咲いている花:ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:夾竹桃、百日紅、百合、紫苑

6月最後の日になりました。6月は「みな月」といいますが、文字通り水の無い「水無月」で終りました。このまま梅雨が終わると、夏場の水は大丈夫でしょうか。当寺では毎日井戸水を活用しています。今のところ水圧もあり問題ないです。しかしあまり晴天が続くと干上がる恐れがあります。一度雨がほしいですね。いま水生植物の全盛期です、花もよく咲かせています。

〔俳句〕

「夜を曇り 瀬々に河鹿の 声きそふ」 篠田悌二郎

〔和歌〕

「月や出づる 星のひかりの かはる哉

         すずしき風の 夕やみの空」

           伏見院御歌・風雅391

「月が出るのだろうか。(今まで強く輝いていた)星の光が変って来たことだ。涼しい風の吹く、夕闇の空よ。」

〔釈教歌〕

「夢覚めむ そのあか月を 待つほどの

         闇をも照らせ 法のともし火」

          藤原敦家朝臣・千載1210

「やがて弥勒菩薩が出現して迷いの夢から覚めるでしょうが、その暁を待つ間の闇夜を、この書写した法華経の功徳によって、仏法の灯火で照らして下さい。」

  そのあか月=竜華の暁。釈迦の入滅後五十六億七千万年の未来にこの世に下生して竜華樹の下で説法し、救済するという、その下生の暁。

  法のともしび=仏教語「法灯」を和らげた歌語。仏教の真理・教説が、生者の冥暗・蒙昧を消して明照する喩え。ここでは法華経の喩え。

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2011年6月29日 (水)

初夏のコスモス   6,29

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:夾竹桃、百日紅、鬼百合

九州南部では梅雨が明けたそうです。こちら近畿でももうとっくに梅雨明けしたような晴天続きです。だんだん湿度も下がり暑さの質にも変化が見えてきました。でもまだ6月です。この先どうなるのでしょうか。このまま夏が延々と続くのか、それとも意外と秋の訪れが早まるのか、少し気がもめるところです。78月は秋のコスモスを育てることに全力投球です。

〔俳句〕

「石も木も 眼に光る 暑さかな」 向井去来

〔和歌〕

「あまの原 雲井は夏の よそなれや

         みればすずしき 月の影哉」

         前右衛門督基顕・玉葉384

「あの雲のいる空というものは、夏とは無縁な場所なのだろうか。見ればいかにも涼しい月の姿であるよ。」

〔釈教歌〕

「薪尽き けぶりもすみて 去りにけむ

         これや名残と 見るぞかなしき」

          セン西上人・千載1209

「釈尊の荼毘の薪も燃え尽き、その火煙も消え去ったあと、この真舎利をその涅槃に入った名残と拝見するのは悲しいことだ。」

  天王寺にまいりて舎利を拝みたてまつりてよみ侍ける。

・釈迦在世時に教えを受けられなかった残念さを、仏舎利に接した感慨として歌う。法縁歌。

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2011年6月28日 (火)

初夏のコスモス   6・28

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:夾竹桃、百日紅、鬼百合

連日35度をこえる気温、もう海水浴が始まっていてもおかしくない温度です。しかしどこも海開きはまだのようです。毎年梅雨が明けるころ、7月7日ごろに設定されているところが多いようです。

「まだ水の 四肢に重たく 海開き」豊田淳応

異常な高温と少雨のため、紫陽花はもうだめです。花が大きくなり色づき始めこれからという時にこの天気です。紫陽花にとっては最悪です。それに引きかえ暑くてもコスモスはよく咲いています。暑さにも強いです。他方、高温と充分な日照のおかげで秋咲き用の苗がどんどんと大きくなり植え替えを待っています。そのため7月に予定していた刈り取りを早めています。刈り取ったあとすぐ耕して新苗を定植していきます。厳しい暑さの中の野外作業は難行苦行です。

〔俳句〕

「蛍とぶ まだ薄闇の やわらかき」 能村登四郎

〔和歌〕

「まだよひの 月まつとても 明けにけり

           みじかき夢の むすぶともなく」

    

            後鳥羽院御歌・風雅390

「「まだよひながら明けぬるを」という、その遅く出る月を待っているうちに、いつの間にか夜は明けてしまった。短い夏の夜の夢を見る程のひまもなくて。」

  参考「夏の夜はまだよひながら明けぬるを

雲のいづこに月宿るらむ」(古今166深養父)

〔釈教歌〕

「入る月を 見るとや人の 思ふらん

          心をかけて 西に向へば」

       堀河入道左大臣俊・千載1208

「山の端に入る月を見ていると人は思うだろうか。私が極楽往生を一心に念じて西方に向っているので」

・「月に寄せて極楽を念ず」という心を詠む。

  見る=風雅の心で見る。

  心をかけて=極楽浄土への往生を心にかける。

  月=阿弥陀如来の象徴。

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2011年6月27日 (月)

初夏のコスモス   6,27

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:夾竹桃、百日紅、鬼百合

昨日、当寺の歌碑・句碑を訪ねて30数人の方が見えられました。俳句の会の人達らしく、お一人先生のような方が居られました。碑ができてまだそれほどの日数が経っていませんのに、今は情報の伝達は早く、一月ほどで知れわたったようです。一般に俳句の趣味を持っておられる方は多く、年配の人から若い人まで幅広いです。皆様どうぞいい句を作ってください。

〔俳句〕

「青づたや 露台支えて 丸柱」 杉田久女

〔和歌〕

「夕附日 よそにくれぬる このまより

         さしくる月の 影ぞ涼しき」

      法皇(後宇多院)御製・玉葉383

「夕日の暑苦しさはもう関係ないように暮れはててしまった木の間から、さして来る月の光の、何と涼しいことよ。」

〔釈教歌〕

「月影の 常にすむなる 山の端を

         へだつる雲の なからましかば」

          藤原国房・千載1207

「月が澄みきった光で照らしているという山の端を、隔てて見えなくする浮雲が無かったらよいのにと思う、丁度そのように、釈迦は入滅後も常に霊鷲山上に真如の月としてあるというのに、衆生の迷いの雲に隠されていることだよ。」

・『法華経』寿量品の心を詠む。

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2011年6月26日 (日)

初夏のコスモス   6・26

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百日紅、夾竹桃、鬼百合

まだ6月だというのに7月末の最も暑い盛夏のようです。紫陽花の花もこれから咲こうという時にあまりの暑さに萎れてしまいました。いまコスモスの植え付けを始めました。早朝に植えて水をやり黒い遮光ネットですっぽりと覆っています。この時期、こんなに水遣りをするのは今までに無いことです。

〔俳句〕

「夏蝶の 息づく瑠璃や 楓の葉」 水原秋桜子

〔和歌〕

「夕立の 風にわかれて ゆく雲に

        をくれてのぼる 山のはの月」

 後京極摂政太政大臣(後京極良経)・風雅389

「夕方の晴れ方に吹く風に送られて、山から別れて行く雲に遅れて、今しも昇って来る、山の端を出る月よ。」

〔釈教歌〕

「求めても かかる蓮の 露をおきて

         憂き世に又は 帰るものかは」

           清少納言・千載1206

「自分から求めても懸かりたい、このように有り難い蓮の露だというのに、それをさし置いて憂き世にまた帰ったりするものですか。」

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2011年6月25日 (土)

初夏のコスモス   6・25

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:鬼百合、夾竹桃、百日紅

埼玉県で398度を記録したようです。去年の記録的猛暑を思い出します。今年は一体どんな記録破りが生れるのでしょう。節電が叫ばれています。でも自然の猛威には太刀打ちできないでしょう。昼間は省エネの生き方を模索する夏となるでしょう。

この暑さの中、秋のコスモスを植えつける準備をしています。色々な作業工程がありますが、苗と水が重要です。このまま梅雨が上れば夏最盛期は水不足に悩まされそうです。平穏な気候を望みます。

〔俳句〕

「山寺の 樋よく詰まる 竹落葉」 河野美奇

〔和歌〕

「夕やみの 鵜川のかがり くだし過ぎて

         あらぬ蛍ぞ またもえて行く」

          大江宗秀・玉葉381

「夕闇のこめた川面を鵜舟の篝火が漕ぎ下って行き、今度は篝火ならぬ蛍が、また燃えるような光を放って飛んで行く。」

・あらぬ=全然違う。無関係の。

〔釈教歌〕

「おほぞらの 雨はわきても そそがねど

          うるふ草木は をのが品々」

           僧都源信・千載1205

「大空の雨は差別をつけて降り注ぐわけではないが、それによって潤う草木はそれぞれ色々の種類によって異なることだ(仏法の恵みには差は無いのだが、受け手には違いが生ずる)。」

・『法華経』薬草喩品の心を詠む。

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2011年6月24日 (金)

初夏のコスモス   6・24

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、百日紅、                               

連日、梅雨が明けたような晴天、きびしい暑さが続きます。36度を超えたところもあります。熱中症にはご用心を。

般若寺句碑14作目は夏の俳句です。

 「大塔宮 在せし寺や 百日紅」 小牛

前にご紹介した句です。大塔宮は「だいとうのみや」とも「おおとうのみや」とも読みます。護良親王は「もりよし」とも「もりなが」とも読みます。比叡山に出家し尊雲法親王と名のり座主を務められましたが、父後醍醐の軍事クーデター「元弘の乱」では自ら僧兵を率い戦に出でまし、その後鎌倉幕府を打ち倒す活躍を見せられました。般若寺では「唐櫃」に隠れ難を逃れ、吉野熊野へ落延びられたそうです。この碑は赤く咲くさるすべりの側に立っています。。

〔俳句〕

「柿の花 土塀の上に こぼれけり」 正岡子規

〔和歌〕

「夏の夜は いはがきし水 月さえて

        むすべばとくる 氷なりけり」

          賀茂重保・風雅388

「夏の夜は、岩の間からしたたり落ちてたまる清水に月が冷たく映って氷のよう、しかもそれは手ですくうととけてしまう氷なのだ。」

  いはがきし水=垣のようにたたみ上げた岩からにじみ出る清水。

  むすべばとくる=「むすぶ」は手で水をすくう事。水に映る月光は氷のようだが手ですくえば水になってしまう事を、「結ぶ」「解く」と言葉をあやなした技巧。

〔釈教歌〕

「世の中は 皆仏なり をしなべて

        いづれの物と 分くぞはかなき」

         華山院御製・千載1204

「この世は永遠の昔から、釈迦仏の遍満する世界なのだ。一般の仏家の議論に、どの身の物と区別するのは愚かなことだ。」

  三身如来を観ずる心を詠む。三身は法身、応身、報身を謂う。

  皆仏なり=久遠実成の釈迦に、十方遍満の仏の姿を見る考え方。

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2011年6月23日 (木)

初夏のコスモス   6・23

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草

  これから咲く花:睡蓮、百合、百日紅、夾竹桃

いま野生の枇杷が実を鈴なりにつけています。実は食べるとけっこうあまいのですが、種が大きくて実の部分は少しだけですから人気はありません。枇杷はどちらかと言うと葉の方に利用価値があります。最近は枇杷茶がよく知られます。

昔から寺に枇杷の木が植えられているのは漢方薬の材料として必需品だったのです。また梅の実も大きくなってきました。木の下には早くも熟した実がいっぱい落ちています。以前は今の時期は梅干つくりに精を出したものですが最近はもっぱら梅ジュースです。暑くなって来ると外仕事が忙しくなります。汗をかくのも気持ちいいものです。疲れたときに梅ジュースはもってこいです

〔俳句〕

「かたばみの 花の宿にも なりにけり」 乙二

〔和歌〕

「くれの雨に かはせの水や まさるらん

         はやくぞくだる かがり火のかげ」

          右大臣(二条道平)・玉葉380

「夕暮の雨に、川瀬の水が増したらしいな。速力早く下流に下って行く、鵜舟の篝火の光よ。」

〔釈教歌〕

「定め成き 身は浮雲に よそへつつ

        はてはそれにぞ 成り果てぬべき」

          前大納言公任・千載1203

「定めのないこの身は、しばらくの間に変化生滅する浮雲に喩えているうちに、最後は荼毘の煙になり、ほんとうに浮雲になってしまうのであろう。」

・『維摩経』十喩の九番目「浮かべる雲の如し」を詠む。

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2011年6月22日 (水)

初夏のコスモス   6・22

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草

  これから咲く花:睡蓮、百合、百日紅、夾竹桃

雨が上がり晴れ間が見えるとほっとします。しかし気温は30度近くあり蒸し暑さは格別です。外でちょっと動くだけで汗がふき出します。今が梅雨のまん中なんでしょう、この晴れ間もつかの間のことで天気は下り坂です。

きのう近くのホームセンターを覗くと、苗売り場に朝顔のポット苗がありました。今どき園芸の売り場では聞きなれない外国名の花ばかりで、昔からなじみのある花は珍しいです。朝顔のような平凡な花はかえって貴重です。朝顔を育てるのは何年ぶりかです。花が少なくなる時期、涼しげに庭を飾ってくれる花を大切に育てたいものです。

〔俳句〕

「木いちごの 熟れしあはれを まのあたり」 後藤夜半

〔和歌〕

「山水の いはもるをとも さよふけて

        木のまの月の 影ぞすずしき」

          前大僧正道意・風雅386

「山川の水の、岩間を漏って来る音も夜更けの風情になって、木々の間からさす月の光がいかにも涼しいよ。」

〔釈教歌〕

「ここに消え かしこに結ぶ 水のあはの

         憂き世に廻る 身にこそありけれ」

          前大納言公任・千載1202

「ここで消えたかと思うとあそこで結ぶ水の泡のように、はかなく憂き世の迷いの中に輪廻転生するわが身なのであったよ。」

・『維摩経』十喩の二番目「此の身は水の泡の如し」を詠む。

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2011年6月21日 (火)

初夏のコスモス   6・21

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、百日紅、夾竹桃、秋海棠

初夏のコスモスもそろそろ終わりが近づいてきました。今年も去年と同じように

「ありがとうコスモスさん、しばしの別れまた逢う日まで」と銘打って、コスモスの花をご進呈いたします(無料)。

日時・71日~7

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春の5月から珍しくも大きな花を咲かせ、見る者を驚かせ楽しませてくれた花が終わるのはさみしいことですが、新しい命が育つためには仕方のないことです。秋咲きは9月から11月までを予定しています。7月には入れば新苗を植えつけます。それまでのあと10日間は初夏のコスモスは鑑賞できますのでご希望の方はお出かけくださいませ。

〔俳句〕

「野の雨は 音なく至る 夏薊」 稲畑汀子

〔和歌〕

「大井河 う舟のかがり ほの見えて

        くだすやなみの よるぞ知らるる」

          亀山院御製・玉葉378

「大井河に、鵜舟の篝火の光がほのかに見えて、流れを下り行くにつれ、舟べりに波の寄るのまで、夜ながらはっきりそれと知られる。」

・大井河=山城の歌枕。

京都市

の嵐山の麓を流れる桂川の上流名。

・よるぞ=波の「寄る」ことに「夜」をかける。

〔釈教歌〕

「闇晴れて 心の空に 澄む月は

        西の山べや 近くなるらん」

           西行法師・新古今1978

「煩悩の迷いがすっかり消えて、わたしの心の空に澄んで見えている真如の月は、西方極楽浄土が近くなっていることを知らせているのであろうか。」

  「観心」を詠む。心の本性を明らかに見きわめること。

  月=真如の月。宇宙万物の平等・無差別の真理。「月」は「闇」「空」の縁語。

  仏道修行の結果、心の本性を明らかに見きわめるという「観心」を、自身の世界のことと感じられるようになっていた作者の喜びが響き出ている。釈教の歌の結びにふさわしい作である。明日からは定家の父、藤原俊成撰になる『千載和歌集』の釈教歌を学びます。千載集は釈教歌を最初に部立てした勅撰集です。時代は遡ります。

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2011年6月20日 (月)

初夏のコスモス   6・20

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、百日紅、夾竹桃、秋海棠

今日もふったりやんだり典型的な梅雨空です。朝から秋海棠と桜草の草取りをしました。最初は傘がなくても良かったのに途中からきつく降られ全身濡れてしまいました。

般若寺句碑の第13は秋のコスモスです。

  「般若寺に コスモス咲くや 秋高し」 明瑛

厳しい夏の暑さが去りようやく秋めいてコスモスが咲き出した頃、見上げれば空はすっかり秋の青空、ぬけるような青い空に小さな雲が二つ三つ浮びます。秋の空を「天高し」とも言います。作者は無名の人、冥界の方です。般若寺とコスモスが詠み込まれているので選ばせていただきました。

〔俳句〕

「白日の 額の藍こそ 淡淡し」 馬場移公子

〔和歌〕

「しげりあふ 庭の梢を 吹き分けて

         風にもりくる 月のすずしさ」

       前関白右大臣(鷹司師平)・風雅382

「茂りあう庭の梢を吹き分ける風につられて、葉末の間々から洩って来る月の光の、なんと涼しいことよ。」

〔釈教歌〕

「昔見し 月の光を しるべにて

        今宵や君が 西へゆくらん」

            セン西上人・新古今1977

「昔、この世で見た月の光を道案内として、今宵、君が西方極楽浄土へむかっていくことであろうか。」

  『法華経』薬王品の「即往安楽世界」を詠める。

  法華経の教えを聞いてそのとおりに修行するならば、命が終ってのちただちに安楽な極楽浄土に行くことができるであろう、の意。

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2011年6月19日 (日)

初夏のコスモス   6・19

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、百日紅、夾竹桃、

よく降ります。せっかくの日曜なのに足元が悪いですね。予報では南海上にあった梅雨前線が北上し列島を覆っているため45日は雨模様です。いま全国的に大雨の被害と同時に放射能が心配の種です。東京では所によって高い数値が測られています。徐々に放射能問題が大きくなってきました。大量の汚染水の浄化はニュースになっていますが、大元のメルトダウンした核燃料はこの先どうなるのか誰も言わないような気がします。情報は正直に委しく公表してほしいと思います。こんなさなか、点検のため休止していた他の原発の再稼動が計画されています。原発に代わる自然エネルギーを早く取り入れることが第一の仕事なのに、政府は目先の電気確保を理由に原発を再開しようとしています。安易な再開によって次世代エネルギー開発は絵に描いたもちとなってしまうのでしょうか。

〔俳句〕

「夏草や 兵共が ゆめの跡」  芭蕉

〔和歌〕

「かがり火の かげしうつれば ぬばたまの

           よかはの底は 水ももえけり」

貫之・玉葉377

「篝火の光が映ると、まっ暗な夜の河の底は、水まで燃えることよ」

〔釈教歌〕

「立ち入らで 雲間を分けし 月影は

         待たぬけしきや 空に見えけん」

           西行法師・新古今1976

「門内に立ち入らないで、雲間を分けて過ぎた月の光は、待っていない様子が、空に見えたからでしょう。」

  贈歌への返し。待たぬ=月の光を待っていない様子。贈歌の作者が待っていない様子だとおもわれた、の意を暗示。

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2011年6月18日 (土)

初夏のコスモス   6・18

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、百日紅、夾竹桃、秋海棠

当寺では睡蓮を5鉢、未草(ひつじくさ)を25鉢育てています。今は咲き始めの状態で日に日に花数を増やしてきました。ひつじ草の植え替えは春の間に済ませたのですが、睡蓮は株も鉢も大きいので手を付けられませんでした。するとどんどん大きくなって、葉を横に張れなくて窮屈そうに上にのびあがってきました。鉢植えであっても葉っぱの間から水面が少し見える程度がよいので、思い切って1鉢を大きいのに替えてやりました。すると翌日からのびのびと葉を伸ばしています。ひつじ草は花の色はうす黄味がかった白だけですが、睡蓮は花も大きく(といっても78センチ程度)白のほか濃い桃色もあります。これから花が少なくなる夏場に庭の点景を作り出してくれる水花たちです。

〔俳句〕

「木洩日の 七宝散れる 額の花」 尾崎光尋

〔和歌〕

「雨はるる 軒のしずくに 影みえて

          あやめにすがる 夏のよの月」

後京極摂政前太政大臣(後京極良経)・風雅381

「雨の晴れるにつれて、軒の雨滴にその光が映って、さながら葺いた菖蒲に取りすがるかのように葉の縁で輝いている、夏の夜の月よ。」

〔釈教歌〕

「西へゆく しるべと思ふ 月影の

         空頼めこそ かひなかりけれ」

          待賢門院堀河・新古今1975

「西方極楽浄土へ行く案内者だと思っていたあなたの空約束は、まことにかいのないことでした。」

・訪れようと約束していながら、訪れないで、月の明るい門前を素通りして行った西行法師を、月影に見立てて恨んだ作。親しみをこめた、心にくい即興歌である

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2011年6月17日 (金)

初夏のコスモス   6・17

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、ひつじ草、睡蓮

  これから咲く花:百合、夾竹桃、百日紅、秋海棠

般若寺の句碑第12作目は夏の句です。

「般若坂 いくさがたりに 夏の塔」 沙波

「般若坂」は奈良から京都に通じる京街道の出口に当る奈良山越えの坂を云います。寺の絵図では北側に描かれ、京都側から奈良へ来て入口の坂です。しかし時代によりその位置は変化しているようで、奈良から般若寺へ至る南の坂も般若坂であったようです。古来合戦の場でありました。壬申の乱では飛鳥の大海人軍と近江の大友軍が戦った「奈良山の戦」をはじめ、平家の「南都攻め」、南北朝の「般若坂の戦」、応仁の乱、戦国時代の「三好・松永の戦」、さらには宮本武蔵の「般若坂の決闘」と、戦さを語るには事欠きません。句の作者は真夏に汗をふきふき坂を上って般若寺にたどりつき、石塔の前に立って歴史に思いを馳せられたのでしょう。

〔俳句〕

「七変化 はじまる白は 毬なさず」 吉村虹二

〔和歌〕

「とをちより 吹きくる風の 匂ひこそ

            花橘の しるべなりけれ」

          郁芳門院安芸・玉葉376

「遠くの方から吹いて来る風のよい匂いこそは、花橘の咲いている場所を知らせる、案内役であるよ。」

  とをち=遠方。「ち」は方向を示す語。

〔釈教歌〕

「今日はいとど 涙にくれぬ 西の山

           思ひ入り日の 影をながめて」

            伊勢大輔・新古今1974

「釈迦入滅の日の今日は、いよいよ涙に目が曇って、一日が暮れてしまいました。西方極楽浄土を思い入り、西の山に入る日の光をしみじみと眺めて。」

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2011年6月16日 (木)

初夏のコスモス   6・16

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、紫陽花、花菱草

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

朝から梅雨らしい雨がふっています。しとしとと降る小雨です。この雨で山あじさいは花の盛りをむかえ、ふつうの紫陽花も色が濃くなってきました。雨の中、秋のコスモスの苗床を耕し種をまきました。少しずつ日をずらしてまいています。9月初めから11月まで2ヵ月半もの長期にわたって花を維持するには工夫と努力が必要です。夏の間が大変です。

〔俳句〕

「紫陽花の あさぎのままの 月夜かな」 鈴木花蓑

〔和歌〕

「松のうえに 月のすがたも みえそめて

           すずしくむかふ 夕ぐれの山」

           祝子内親王・風雅380

「松の梢の上に、昇って来た月の姿も見えはじめて、いかにも涼しい気持ちで相対する、夕暮の山よ。」

〔釈教歌〕

「常よりも 今日の煙の たよりにや

         西をはるかに 思ひやるらん」

            相模・新古今1973

「あなたは、いつもの日よりも、とりわけ釈尊入滅の日の今日の、火葬の煙の縁で、西方極楽浄土を遥かに思いやっていられることでしょうか。」

・二月十五日の釈迦入滅の日、涅槃会を詠む。

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2011年6月15日 (水)

初夏のコスモス   6,15

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》 6月中、5万本

○今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

         紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

11作目の句碑が出来ました。同時に4基が出来上がったので追々御紹介いたします。

「般若寺に 返り咲く 八重山吹や」 多津良

山吹は春の花ですが、秋風が立ちしのぎやすくなった頃、枝先に一輪だけ花をつけます。よく狂い咲きですかと問われる方があります。狂い咲きはちょっと風情のない表現ではないでしょうか。此の句のように「返り咲き」と言えば夏の暑さが消え、春に帰ったような心地よさが味わえるのではないでしょうか。

〔俳句〕

「紫陽花の 雨を感じて をりし色」 山内山彦

〔和歌〕

「橘の やどりをとはば ほととぎす

        われにむかしの ことかたらなむ」

     入道前太政大臣(西園寺実兼)・玉葉373

「橘の咲いた私の家をせっかく尋ねてくれるのならば、時鳥よ、私にゆかしい昔の事を語っておくれ。」

〔釈教歌〕

「夢や夢 うつつや夢と 分かぬかな

       いかなる世にか 覚めんとすらん」

         赤染衛門・新古今1972

「夢が夢であるのか、現実が夢であるのかと、区別が分らないことよ。いったい、どのような世に覚めようとするのであろうか。」

・『維摩経』十喩の中に「此の身は夢の如し」といへる心を詠む。

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2011年6月14日 (火)

初夏のコスモス   6・14

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》 6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

連日の福島原発の報道を聞いていてなじみのある石の名が出てきました。ゼオライトです。「沸石」とも言います。汚染水10万トン余りがもう行き場を失い、タンクは満杯をこえ溢れ出そうとしています。少しでも放射能を低下させようと除去装置が作動をはじめました。その切り札がゼオライトだったのです。この石は島根県や秋田県などで産出し昔から土壌改良、汚水処理、防湿材などといろんな使い道があります。当寺では10年ほど前から島根の「出雲ライト」という商品名のゼオライトを購入しています。一回に何トンも買うので20キロ1袋900円ほどで買えました。庭の土に混ぜたり、睡蓮などの水鉢に入れます。濁っていた水は一日で透明になります。浄化力がすぐれているのです。

〔俳句〕

「均斉に 桜桃ならぶ 心安からず」 石田波郷

〔和歌〕

「こころある 夏のけしきの こよひかな

         木の間の月に 水鶏こゑして」

          後伏見院御歌・風雅377

「いかにも季節の情趣を心得ているような、夏の風情の今夜だなあ。木の間からさす月光の中で、水鶏が声を立てて。」

〔釈教歌〕

「玉かけし 衣の裏を 返してぞ

         おろかなりける 心をば知る」

          僧都源信・新古今1971

「玉をかけた衣の裏を返してみて、はじめて、自分の愚かであった心を知ったことだ。」

・『法華経』五百弟子品の心を詠む。仏性を授けられながら無知のために仏道を悟らない者が、釈迦の教化によって救われることを教える。

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2011年6月13日 (月)

初夏のコスモス   6・13

  初夏の早咲きコスモス: 《見ごろ》6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

境内の南天の花が咲きだしています。南天は冬の赤い実がよく知られ、またのど飴の薬用材料としても使われています。花は1センチほどのつぼみの時は純白で咲くと黄色が目立ちます。房状に咲いた花に実がなるのですが、雨の多い年は実は少なくまばらになります。逆に空梅雨の年は赤い実がたわわに重く垂れ下がります。冬には野鳥達の貴重な餌になります。

〔俳句〕

「橘の 花や従ふ 波三枚」  星野立子

〔和歌〕

「さみだれの 雲まの軒の 時鳥

         雨にかはりて 声のおちくる」

 

         前大僧正慈鎮・玉葉369

「五月雨の雲の晴れ間に軒近く鳴く時鳥よ。雨に代って、その声が降ってくるよ。」

〔釈教歌〕

「逢うことを いづくにてとか 契るべき

          憂き身のゆかん 方を知らねば」

           選子内親王・新古今1970

「観世音菩薩にお目にかかることを、どこでとお約束することができようか。つらい身は、悪趣のうちのどこへ行こうとするのか。その方向を知らないので。」

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2011年6月12日 (日)

初夏のコスモス   6・12

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》 6月中、5万本

  今咲いている花:山あじさい、花菱草、てっせん、

定家かずら、紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

やっぱり梅雨ですね。九州から大雨が近づいています。災害はもう結構ですね。

今日の般若寺詠句は秋の句です。

「笠塔婆 ほとりの野菊 濃かりけり」  無涯子

野菊は広辞苑では①野に咲く菊。野紺菊、野地菊など。②嫁菜の別称。とあります。境内には嫁菜も野紺菊もあります。

〔俳句〕

「石さびぬ 襞をつづれる 苔の花」 水原秋桜子

〔和歌〕

「かげしげき 木のしたやみの くらき夜に

          水の音して くゐな鳴くなり」

            永福門院・風雅376

「葉陰の深い、木の下闇の大変暗い夜に、どこかで水の音がして、水鶏の鳴くのが聞える。」

  くゐな=水鶏。水辺に住むクイナ科の鳥。初夏に、戸をたたく音に似た声で鳴く。

〔釈教歌〕

「静かなる 暁ごとに 見わたせば

         まだ深き夜の 夢ぞ悲しき」

          式子内親王・新古今1969

「静かな暁ごとに見渡すと、衆生の、まだ煩悩にとざされて、深い夜の迷いの夢から覚めないでいることが悲しいことだ。

・『延命地蔵経』の句を詠む。毎朝禅定に入り、衆生済度を念じている地蔵菩薩の心になっての作。「まだ深き夜の夢」に作者の夢も重なって、哀感を深くしている。

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2011年6月11日 (土)

初夏のコスモス   6・11

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》 6月中

5万本

  今咲いている花:山あじさい、花菱草、てっせん、

定家かずら、紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

雨が続いたのでコスモスの花は少し弱っています。今年は5月から咲き出したので花の終わりはやや早まりそうです。蕾はまだ多くあるので、花期は一応6月中と修正します。晴れてくれればまたきれいな花が見られると思います。

〔俳句〕

「短夜や 駅路の鈴の 耳につく」  松尾芭蕉

〔和歌〕

「山里の ゆきには跡も いとはれき

        とへかし人の さみだれのころ」

         前大僧正慈鎮・玉葉359

「人恋しい山里でも、雪の積る冬には訪う人が足跡をつけるのを嫌がって、人が来ない方がよいと思ったこともあった。しかし今こそは尋ねて来てくれよ、友よ。この淋しく降り続ける五月雨の頃に。」

〔釈教歌〕

「いにしへの 尾の上の鐘に 似たるかな

            岸打つ波の 暁の声」

             藤原俊成・新古今1968

「昔の、山の峰の寺から聞えた鐘の音に似ていることよ。黄金の池の、岸を打つ波の暁の声は。」

  岸=極楽の黄金の池の岸

  いにしへの=過去の人間の世にいた時。娑婆にいた時。

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2011年6月10日 (金)

初夏のコスモス   6・10

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、花菱草、てっせん、

定家かずら、紫陽花

  これから咲く花:ひつじ草、睡蓮

今日からご本山の西大寺「光明真言土砂加持法会」の東京国立劇場公演に参加するためブログ係りが出張します。700年つづく南都を代表する法会で真言律宗こぞって法会を営みます。梅雨の最中で気象予報は大雨となっているのでちょっと心配です。東京で日本の仏教信仰の原点である釈迦信仰を知ってもらえるいい機会だと思います。職衆の皆さんがんばって声明に取り組んでください。

〔俳句〕

「枇杷熟れて 古き五月の あしたかな」 加藤楸邨

〔和歌〕

「我がやどの 花たちばなや 匂ふらむ

        山ほととぎす 過ぎがてになく」

         修理大夫顕季・風雅370

「私の家の、花橘がよい匂いを放つらしい。山時鳥が、ここを立ち去り難いような風情で鳴いている。」

  過ぎがてに=通り過ぎかねて。

〔釈教歌〕

「今ぞこれ 入り日を見ても 思ひ来し

            弥陀のみ国の 夕暮の空」

            藤原俊成・新古今1967

「今こそは、これが、入日を見るにつけても想像してあこがれてきた、阿弥陀如来のみ国である極楽浄土の夕暮の空であることだ。」

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2011年6月 9日 (木)

初夏のコスモス   6・9

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

紫陽花はだいぶ色づいてきました。来週ぐらいから見ごろになるかも。コスモスと紫陽花の競演です。

きょうの般若寺詠句

「焼けのこる 仏手を拝す 慈悲心鳥」 月子

この句は少し説明が要ります。まず「焼け残る仏手」とは鎌倉時代に造顕された丈六の文殊像の脇侍、最勝老人の右手首のことで、本体は戦国の兵火で失われたのですが手首だけが残っています。普段は公開されていませんが秋の秘仏公開では拝んでいただけます。大きさは30センチほどあり丈六仏の巨大さが偲ばれます。「慈悲心鳥」は時鳥の一種で、「ジュイチー」「ジュイチー」と鳴く声が「慈悲心」「慈悲心」とも聞えるところからついた名です。東アジアや南アジアに生息し温かくなると日本にやってくる夏鳥で、20センチ程度の翼長、背上面は暗灰褐色で後頚に白紋があります。昔はふつうにいたのでしょうが近年はなかなかお目にかかれません。人々に慈悲心を教えるとはお寺にふさわしい鳥ですね。

〔俳句〕

「いけかへて グラヂオラスの 真赤かな」 松葉女

〔和歌〕

「五月雨は はれんとやする 山のはに

         かかれる雲の うすくなり行く」

        今上(花園院)御製・玉葉357

「五月雨はやっと晴れようとするのだろうか。山の端にかかっている雲が、次第に薄くなって行くよ。」

〔釈教歌〕

「わたすべき 数も限らぬ 橋柱

          いかに立てける 誓ひなるらん」

         皇太后宮大夫俊成・新古今1966

「済度しようとする衆生の数も、限らないで、無数である弥勒菩薩の誓いは、どのようにお立てになった誓いなのであろうか。」

  『法華経』序品の「広度諸衆生、其数無有量」の心を詠む。広く諸衆生を済度すること(成仏させること)は数知れないであろう、の意。

  わたすべき=橋を渡す意と、済度する意をかける「橋」の縁語。

  立て=「橋柱」の縁語。

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2011年6月 8日 (水)

初夏のコスモス   6・8

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

山あじさいが一斉に咲きそろい見ごろを迎えています。「クレナイ」「深山八重紫」「清澄沢」「七段花」「伊予の薄墨」「伊予テマリ」「瀬戸の月」「虹」「黒姫」「富士の白雪」など色々あります。何れも5センチ程度のかわいい大きさで、色も青、紫、桃色、白と多彩です。ただ残念なことに純白の房が懸崖に咲く「富士の滝」は木が弱ってしまったのか花をつけていません。山あじさいは全部で60数種類あったのですが数を減らしています。また追々増やそうと思います。

〔俳句〕

「青梅の 葉蔭に見ゆる ほどになんぬ」  村上鬼城

〔和歌〕

「五月雨の はれままち出づる 月影に

          軒のあやめの 露ぞすずしき」

           法印定為・風雅367

「五月雨の晴れ間を待ちもうけてやっと出た月の光に、軒の菖蒲にかかる露が涼しく光っている。」

〔釈教歌〕

「憂きもなほ 昔のゆゑと 思はずは

いかにこの世を 恨み果てまし」

 

二条院讃岐・新古今1965

「済度しようとする衆生の数も、限らないで、無数である弥勒菩薩の誓いは、どのようにお立てになった誓いなのであろうか。」

  『法華経』方便品の「万象そのままが真理だという十如是」の中の「如是報」を詠む。善悪の縁で生じる報い。

  昔のゆゑ=前の世の悪の縁の報い。

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2011年6月 7日 (火)

初夏のコスモス   6・7

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

すいかかずら、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、すいれん

昨日の暑さは消え、雨も降らず曇り空のすごし易い天気でした。今日はコスモスの種まきをしたり、秋に向けて小さな休憩所つくりに励みました。いま本堂の裏手にテントを張りっぱなしにして普段は作業場に、秋には茶店に使っています。しかしテントは仮のものですからいずれ畳まなければなりません。そこでがんばって木造の仮設小屋のようなものを建てています。大きさは4m×3mです。材料はホームセンターで木材、釘、ペンキ、補強金具を買ってきて自分で建てています。材は細いので強風で吹き飛ばされるかもしれません。でも雨や日射しは防げると思います。台風の時は、まあそのとき考えることにして、とりあえずの休憩所です。でも日陰は蚊が多いのでそう長くは坐っていられません。

般若寺詠句

「石仏は このあたりより 月見草」 稲川幸子

〔俳句〕

「はなびらの 垂れて静かや 花菖蒲」 高浜虚子

〔和歌〕

「五月雨は 晴れぬとみゆる 雲まより

           山の色こき 夕ぐれの空」

           中務卿宗尊親王・玉葉354

「五月雨はやっと晴れたな、と思われるように動き出した雲の間から、山の色が濡れて一入色濃く見える、夕暮れの空よ。」

〔釈教歌〕

「花のもと 露の情は ほどもあらじ

         酔ひなすすめそ 春の山風」

          寂然法師・新古今1964

「桜の花のもとでの、ちょっとした酒の風流は、どれほどの間もあるまい。酔いをすすめて、罪を犯させるな。春の山風よ。」

・「酒を買って飲まない、という戒め」を詠む。

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2011年6月 6日 (月)

初夏のコスモス   6・6

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

すいかずら、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

週末の土日はお天気もまずまずで、ご参詣の方も多く久しぶりににぎわいました。小さな子供を抱いた人、車椅子でご老人を連れてきてあげられた人、と皆さんのどかに花を観賞されていました。今日も梅雨はお休みのようです。久しぶりに庭作業、耕運機を動かしました。コスモスは古くなったものから植え替えをしていきます。こんどは少し珍しい種類を植えますのでお楽しみに。

般若寺詠句

「片蔭に 汗ふく女 十三塔」  小牛

〔俳句〕

「ゆふべみつ 夜を見つ野ばら 真白なり」篠田悌二郎

〔和歌〕

「たごのうらの もしほもやかぬ 五月雨に

          たえぬは富士の 煙なりけり」

           藤原清輔朝臣・風雅365

「田子の浦でいつも焼いている藻塩も焼かぬほど降り続く五月雨にも、絶えないのは藻塩の煙ならぬ、富士の煙であったよ。」

たごのうら=駿河の歌枕、田子浦。

〔釈教歌〕

「さらぬだに 重きが上に 小夜衣

         わがつまならぬ つまな重ねそ」

寂然法師・新古今1963

「そうでなくて、自分の妻でさえ罪が重いのに、その上さらに、自分の妻でない妻と関係を重ねるな。」

  「不邪淫戒」を詠む。

  小夜衣=衾、夜具。

  つま=「妻」と「褄」とをかける。

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2011年6月 5日 (日)

初夏のコスモス   6・5

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、花菱草、てっせん、

すいかずら、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

梅雨の晴れ間はほんとうに蒸し暑いです。きのうは気温も30度を超えたようです。それでも雨が降りつづくよりはいいですね。

紫陽花はやっと色づいてきたようです。今の時期はけっこういろんな花が見られます。まだ春の延長なのでしょうか。

 さて今日は第10作目の句碑を紹介します。

般若寺詠句

「獅子の背の 菩薩涼しく おがまるる」 玉骨

ご本尊の文殊様を詠まれています。作者は藤岡玉骨(18881966)、奈良県の俳人です。

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に生家があり現在記念館になっています。玉骨さんは佐賀、和歌山、熊本の各県で官選の知事を勤められ傍ら俳句を嗜まれたそうです。高浜虚子に師事し虚子から「大和の大桜」と賞賛されています。「玉骨」は梅の古木の美称です。

〔俳句〕

「きる手元 ふるひ見えけり 花菖蒲」 其角

〔和歌〕

「時きぬと おりたつたごの てもたゆく

         とるや早苗も 今いそぐ也」

           源具顕朝臣・玉葉352

「田植えの時が来たとばかり、水田に下り立つ農夫の手もだるくなる程に、早苗を取り植える作業が今や盛んに行われているようだよ。」

〔釈教歌〕

「浮草の ひと葉なりとも 磯隠れ

         思ひなかけそ 沖つ白波」

           寂然法師・新古今1962

「浮草の一葉でも、磯に隠れて取ろうと思うな、沖の白波よ。」

  「不チュウ盗戒」を詠む。

  浮草のひと葉=わずかなものでも、の意。磯隠れ=こっそりと、の意。白波=盗賊を暗示。『後漢書』にある、西河の白波谷にこもった盗賊、白波賊の故事にもとずく。

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2011年6月 4日 (土)

初夏のコスモス   6・4

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:山あじさい、てっせん、花菱草、

酔かずら、定家かずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

訂正、昨日紹介した森鴎外の歌碑は第8作目でした。今日は9番目の御詠歌の碑です。

「みほとけの めぐみもふかき 般若台

         ももの願ひを かなへ給はん」

裏に「奉納 高橋妙子」と刻んでいます。

まず、この御詠歌は果たして御本尊の文殊菩薩様に対して詠まれたものなのか、あるいは江戸時代に流行した「南都観音三十三番札所」の一札所である当寺の十一面観音様の御詠歌なのかは分りません。どの仏様にも通用できそうな詠歌です。

ただ歌にある「般若台」は般若寺の草創縁起にある高句麗僧慧灌法師が開基した時の寺の呼び名です。元来、中国の文殊の聖地「五台山」に由来する名ですからやはり文殊様の詠歌なのかも。

奉納の高橋妙子さんは

大阪市港区

ご在住のご婦人で、当寺とのご縁は寺の本堂大修復の際、浄財勧募に応じてご寄進され、それ以来30数年にわたって毎月1万円のご寄進を続けておられる篤信の信者様です。今回ご了解なく初めてみ名を刻ませていただきました。勝手な為業をおゆるしください。

〔俳句〕

「薫風の みなもとの樟 大樹なり」  福永耕三

〔和歌〕

「あすか河 ひとつ淵とや なりぬらん

         ななせのよどの 五月雨のころ」

          権中納言公雄・風雅362

「飛鳥河は、水が増して全部が一つの淵のようになってしまったろうか。さすが多くの瀬があるという七瀬の淀も、五月雨の頃には。」

〔釈教歌〕

「わたつ海の 深きに沈む いさりせで

          保つかひある 法を求めよ」

           寂然法師・新古今1961

「大海の深い所に沈んで漁りをするような、深い罪に沈む殺生をしないで、守り保つかいのある仏法を求めよ。」

・「不殺生戒」を詠む。

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2011年6月 3日 (金)

初夏のコスモス   6・3

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:花菱草、てっせん、やまあじさい、

すいかずら、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

本日、歌碑・句碑が3基建ちました。今年になって第7から第10番目になります。毎日一作づつ紹介いたします。第7番目はあの明治の大文豪、森鴎外の短歌です。軍医であった鴎外は晩年の大正7年から10年まで奈良帝室博物館(現奈良国立博物館)の館長として毎年奈良にやってきました。そのときの歌をまとめたのが『奈良五十首』です。鴎外最後の歌集として知られます。その36番目の作が般若寺の歌です。

「般若寺は 端(はし)ぢかき寺 仇(あだ)の手を

のがれわびけむ 皇子(みこ)しおもほゆ」

昨日の俳句で説明した護良親王の故事を詠んでいます。

〔俳句〕

「明暗の ここにはなくて さつき咲く」 稲畑汀子

〔和歌〕

「みがきなす 玉えのなみの ますかがみ

          けふより影や うつしそめけん」

           前大納言為家・玉葉348

「磨きぬいた玉のように清らかな玉江の波は、澄み切った鏡をそのままに、今日、55日から、物の形を明らかに映しはじめたというのだろうか。」

〔釈教歌〕

「別れにし その面影の 恋しきに

         夢にも見えよ 山の端の月」

           寂然法師・新古今1960

「お別れしてしまいましたみ仏の面影が恋しくてなりませんので、せめて夢にでもお見えになってください。山の端に隠れていった月のようなみ仏よ。」

・『法華経』寿量品の句「心に恋慕を懐き、仏を渇仰す」を詠む。

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2011年6月 2日 (木)

初夏のコスモス   6・2

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:てっせん、花菱草、山あじさい

すいかずら、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

昨日のブログ更新が遅れましてすみません。

 さて、今年の紫陽花は開花が少し遅れているようです。当寺では、山あじさいは順調に5月後半から咲き出しているのに、ふつうのアジサイは花はついているのに色づいてきません。他所も気になってテレビを注目しているんですが、あまりニュースになっていません。沖縄とか九州では咲いているんでしょうが、ここ近畿地方ではまだのようです。写真や映像は過去のものが使われることもありますから行かれる方はご用心をなさってください。

コスモスは連日の雨で花が傷められました。雨の日はごめんなさいとおじぎしています。また晴れたら新しい花がどんどん開くでしょう。いま少しお待ちねがいます。

般若寺詠句

「大塔宮 在せし寺や 百日紅」  小牛

これは『太平記』で名高い大塔宮護良親王(昔はモリナガ、今はモリヨシと読む)が当寺の唐櫃に隠れ、追手の危難を遁れられた話を題材にする。護良親王は後醍醐天皇の皇子で幕府を倒す戦に活躍され、最後は鎌倉の土牢に幽閉され最期を遂げられた。

〔俳句〕

「水無月や 青嶺つづける 桑のはて」  水原秋桜子

〔和歌〕

「やまかげや 谷よりのぼる 五月雨の

         雲は軒まで たちみちにけり」

           従二位為子・風雅359

「ここ、山陰で見れば、谷から昇って来る五月雨の雲は、見る見るうちに、軒先まで一ぱいに立ち満ちてしまった。」

〔釈教歌〕

「音に聞く 君がりいつか いきの松

         待つらんものを 心づくしに」

          寂然法師・新古今1959

「み名を聞いている君のもとへ、生の松原を経て、いつ行くことができることであろうか。西方筑紫のかなたで、心を尽して待っていられることであろうに。」

・『無量寿経』の「その仏の本願力にて、名を聞きて、往生せんと欲すれば、皆悉くかの国に到り、おのづから不退転を致す」の心を詠む。

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2011年6月 1日 (水)

初夏のコスモス   6・1

  初夏の早咲きコスモス:《見ごろ》6月~7月上旬

5万本

  今咲いている花:花菱草、山あじさい、すいかずら、

てっせん、ていかかずら

  これから咲く花:紫陽花、ひつじ草、睡蓮

きょうから6月、別名「水無月」です。これは水の無い月ではなく、「無」は連体助詞で、「~な」「~の」の意味で「水の月」ということです。田に水を引き入れることから付けられたそうです。しかしこれは旧暦の場合なので今の7月にあたります。梅雨が明けたころ陽光の下、田んぼに満々と水が張られた様子を象徴します。今現在は「さつき・五月」真っ最中、この時期の雨こそ「五月雨(さみだれ)」です。

有名な芭蕉の句、

「五月雨をあつめてはやし最上川」は「奥の細道」を旅して日本三急流のひとつ山形の最上川を下ったときに詠んだものです。529日のことだそうです。

今日の般若寺詠句、

「経櫃の かなしきえにし 露の堂」 敏子

〔俳句〕

「枝払ひ して六月を 迎ふ庭」  千原草之

〔和歌〕

「あやめふく かやが軒ばに 風過ぎて

          しどろにおつる むらさめの露」

           後鳥羽院御製・玉葉345

「五月の節句のために菖蒲の葺いてある、萱葺きの貧しい小家の軒端に風が吹き過ぎて、急に乱れてしたたり落ちる、たまっていた五月雨の雫よ。」

  しどろに=秩序なくみだれて。

〔釈教歌〕

「逢ひ見ても 峰に別るる 白雲の

          かかるこの世の いとはしきかな」

            源季広・新古今1958

「人と互いに逢っても、峰から別れる白雲のように別れるこのような世がいとわしいことよ。」

・『涅槃経』の句「合会すれば別離あり」を詠む。

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