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2012年3月

2012年3月31日 (土)

般若寺 春の花だより   3・31

◎梅: 紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 

・レンギョウ、沈丁花、山茱萸、黄水仙 ≪見ごろ≫

・椿: ≪見ごろ≫

 

◎山吹: ≪つぼみ≫

 

・桜、シャガ、紫雲ラン、などは4

・鉄線、矢車草、空木、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス、などは6

 

 

*弥生、3月も月末となりました。寒い三月もここ二日ばかりは暖かく、きのうなど脱皮するように服を次々と脱ぎ捨てました。この春初めて寺の庭に黄蝶が飛ぶのを見ました。いよいよ春まっさかりですね。

 

二日前から早咲コスモスの植え替えを始めました。寒い寒いと思っていても、自然は季節が移っています。苗床のコスモスは10センチを超え、このままでは少し窮屈になり、早く庭に植え付けてほしそうでした。

実は一週間前から植え替えの時期を見計らっていました。ようやくあたたかくなった一昨日から植え付け作業を開始しました。まだ弱々しそうな苗なので丁重に扱ってやらねばなりません。

 

それからこの時期、まだまだ霜の降りるおそれがあります。毎日霜注意報に気を付けています。注意報が出た時は霜よけシートをかぶせます。そして朝にはまたシートを外してやります。おそらく4月の中ごろまではこの繰り返しだと思います。

 

秋のコスモスは猛暑の中大きくなりますから水やりが大変です。それに比べて早咲コスモスは水の心配はいりません。水やりと霜よけ、どちらにしても愛情こめて世話をしてあげることです。それが花を美しく咲かせる秘訣です。

 

6月のコスモスを楽しみに、これから2か月間世話をします。

 

 

〔短歌〕

 

「遊びつかれ 夕日流らふる 縁台にて

さくら餅を食めば 何かさびしも」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「行き過ぎて 尚連翹の 花明り」中村汀女

 

〔和歌〕

 

「山桜 この夜のまにや さきぬらし

朝けの霞 色にたなびく」

 

伏見院御製・玉葉136

 

「山桜は、この一晩の間に、すっかり咲いてしまったらしい。早朝の霞が、今朝は花の色になってたなびいているよ。」

 

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2012年3月30日 (金)

般若寺 春の花だより   3・30

 

◎梅: 白梅 ≪終わり近し≫

紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 

・レンギョウ、沈丁花、山茱萸、黄水仙 ≪見ごろ≫

・椿: ≪咲きはじめ≫

 

◎山吹: 黄色一重咲、白山吹、黄色八重咲 ≪つぼみ≫

 

・桜、シャガ、紫雲ラン、などは4

・矢車草、鉄線、空木、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス、などは6

 

*今日から45日まで奈良西ノ京、薬師寺の「花会式」です。正式には「修二会」とか「薬師悔過(けか)」といいます。

薬師寺は天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を祈って建立発願した寺で、天皇の没後、持統天皇が藤原京に建立され、平城遷都により現在地へ移転しました。

修二会は旧二月に修される法会のことで、悔過は本尊薬師如来に罪過を懺悔し救いを求める法会のことで、国の安泰、五穀豊穣、万民豊楽を祈願されます。

 

花会式の由来は、嘉承2(1107)堀川天皇が皇后の病気平癒を薬師如来に祈願したところ、たちまち霊験があったので、お礼に造花10種を献じ、これを12瓶に分けて飾ったのが起源とされています。その10種の造花とは、梅、桃、桜、椿、百合、藤、杜若、山吹、牡丹、菊です。

 

いろんな方が俳句を詠んでおられます。

 

「おぼろ夜を 金堂灯る 花会式」水原秋桜子

 

「日光月光 瑠璃光如来 花会式」窪田あさ子

 

 

〔短歌〕

 

「榧(かや)の木と 接骨木(にわとこ)並べり 春さりて

にわとこ芽ぐみ 榧ぢぢむさき」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「つくつくし 摘々行けば 寺の庭」野梅

 

〔短歌〕

 

「春になる 桜の枝は なにとなく

花なけれども なつかしきかな」

 

西行法師・風雅140

 

「春の気配のきざして来る桜の枝は、どこがどう変わったとも見えないが、花はまだないけれどもなつかしく思われるよ。」

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2012年3月29日 (木)

般若寺 春の花だより   3・29

◎梅: 白梅 ≪散りはじめ≫

紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 

・レンギョウ、山茱萸、沈丁花、黄色水仙≪見ごろ≫

・椿: ≪咲きはじめ≫

 

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪つぼみ≫

 

・桜、シャガ、紫雲ラン、などは4

・矢車草、鉄線、空木、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス などは6

 

 

*春の天気は荒れ模様、晴れから曇り、一転、雷と突風を伴って激しい雨、夜間は冬の寒さ、と変化に富んでいます。

 

山吹はつぼみが目立ってきました。山吹には三種類あり、花は先ず一重の黄色が咲き、次に白山吹、これも一重です。この二種は実(種子)がなります。最後に黄色の八重が咲きます。こちらは実がなりません。

山吹といえば、太田道灌と村娘の山吹の枝をめぐる話が有名です。これは八重咲山吹です。

この話に出てくるのは次の和歌です。

 

「七重八重 花は咲けども 山吹の

みのひとつだに なきぞあやしき」

 

これは勅撰和歌集、『後拾遺集』(1154)の中務卿兼明(かねあきら)親王(914987)の作です。親王は醍醐天皇の第16皇子、教養豊かで書も三蹟に数えられています。

その詞書に依れば、小倉山の山荘へ訪ねてきた人が帰りに雨が降ってきたので蓑を借りたいと言ったところ、親王は蓑ではなく山吹の小枝を差し出しました。客はその意味が分からず後日文をよこして教えを乞うたとき、親王が返書につけたのがこの歌でした。

最後の「あやしき」は江戸時代には「かなしき」に変えられたようですが、あやしきは「無いことが申し訳ない」や「礼儀にはずれている」という意味です。

 

山吹は日本の野山に自生していたので身近な花として万葉集にもよく詠まれています。また江戸時代には「山吹色」といえば「黄金」「小判」のことを意味しました。

 

〔短歌〕

 

「片空へ よどむ黒雲 下びにて

正面(まとも)の夕日に 遠光(とおひか)る梨花」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「若草に やうやく午後の 蔭多く」山口誓子

 

〔和歌〕

 

「花なれや かすみのまより 初瀬山

はつかにみゆる 峯のしら雲」

 

従二位家隆・玉葉134

 

「ああ、あれは花なのだなあ。初瀬山にかかる霞の間から、わずかに見える山の上の白い雲のようなのは。」

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2012年3月28日 (水)

般若寺 春の花だより   3・28

 

◎梅: 白梅 ≪散りはじめ≫

紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 

・レンギョウ、沈丁花、山茱萸、黄色水仙≪見ごろ≫

 

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

 

・桜、椿、シャガ、紫雲ラン などは4月

・矢車草、鉄線、空木 などは5月

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

 

*今日も晴れ、やっと春らしい陽気になりました。

 

そろそろ庭に草が目立ってきたなと思っていたら、きのう草取りの作業奉仕がありました。人数は二人です。草はまだそれほど大きくなっていませんのでクワで削っていただきました。ご奉仕有難うございました。おかげで庭もすっきりしました。

 

二日前、唐招提寺から郵便封筒が届きました。何だろうと封を切ってみると、

「解脱上人貞慶和尚八百年御遠忌 釈迦念仏会法要」の案内状でした。

 

4月14日に奈良国立博物館東新館において営まれる法要への参列依頼のご案内でした。

解脱上人が始められた釈迦念仏会の「慶長14年(1609)の諸寺結番事」という掛け軸が唐招提寺に残ってています。今回そこに記載された寺院の僧衆を集められるそうです。当寺もぜひ参列させていただきたいと思っています。

 

私はうっかりというか、恥ずかしながら上人の御遠忌のことを見落としていました。

 

800年御遠忌を記念して奈良国立博物館で特別展があるのです。

調べてみると、この4月7日から5月22日までの会期です。

タイトルは「解脱上人貞慶―鎌倉仏教の本流―」です。本展では、唐招提寺の「国宝・金亀舎利塔」、浄瑠璃寺の秘仏「重文・吉祥天立像」、海住山寺の「国宝・五重塔扉絵」、大和文華館の「重文・笠置曼荼羅」をはじめ、上人ゆかりの仏像、画像、文書などが一堂に展観されます。

上人はそれほど有名ではありませんが、奈良の仏教界にとっては大きな足跡を残された方です。この機会に多くの人に上人の業績を知っていただけたらと念願します。

 

 

〔短歌〕

 

「片空(かたそら)へ よどむ黒雲に 夕日さし

おどろおどろしも 春の真盛(まさか)り」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「よく見れば 薺(なづな)花さく 垣ねかな」松尾芭蕉

 

〔和歌〕

 

「人もなき 深山のおくの よぶこ鳥

いく声なかば たれかこたへん」

 

前大納言尊氏・風雅128

 

「人一人いない、深山の奥の喚子鳥よ。幾声鳴いたからといって、一体誰が答えてくれるだろうか。(答える者はいないよ)」

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2012年3月27日 (火)

般若寺 春の花だより   3・27

 

◎梅: 白梅 ≪散りはじめ≫

紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 ・レンギョウ、山茱萸、沈丁花、土佐水木≪みごろ≫

◎山吹:黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

 ・桜、椿、シャガ、紫雲ラン、などは 4月

・矢車草、花菱草、空木、などは 5月

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス、などは 6月見ごろ

 

*先日、「中の川」のことを5回にわたりご紹介いたしました。

その間の24日土曜日に、東大寺転害門の近く「手貝町会所」において「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」の発足総会がありました。私も参加いたしました。雨にもかかわらず70人近い地域住民の方が集まられました。

総会においては会則と役員人選の提案、承認があり、そのあと大阪で都市のゴミ問題を研究しておられる藤永のぶよさんの講演がありました。

「新しい時代のゴミ問題・デンマークモデルを参考に」という題で。

日本のゴミ問題の特性は、産廃ゴミが全体の72パーセントを占めていること。

そしてその処理は焼却主義でほとんどを燃やしている。焼却場の数は全国に5126ヵ所あり、世界でも突出して多い。そして最終処分の全てはパイプの出口、すなわち地方自治体が責任を負わされていること。空き缶やペットボトルにみられるように原因者である製造者責任が免責されていること、などです。

産廃ゴミを徹底して分別すればゴミは資源となる、とデンマークの例を示されました。デンマークでは原発にも石油にも頼らない国づくりを国是とし、資源→製品→消費→ゴミ→資源と循環させることで、ゴミはゴミでなくなり資源活用されているそうです。また食糧の自給にもつながっていることを教えていただきました。

どうやら奈良市の計画するゴミ焼却場は、人口の減少と市民の努力によるゴミ減量化に逆行するかのように大規模化する計画で、家庭ゴミに加えてさらに産廃ゴミを燃やそうと考えているらしい、との指摘もありました。

この際、根本的なゴミ問題解決の道を市民レベルから考え実践していく必要があることも提言されました。外国の先進的な取り組みに学び、子孫に、安心して住める街を残すため、いま百年の大計を立てる時期なのでしょう。

講演の前に少しだけ時間をいただいて、中の川に残る文化財の重要性と日本の仏教音楽・声明(しょうみょう)の源流、聖地である「中の川」の名は全国に知られた有名な地であることをお話ししました。短い時間でしたのでどこまでお伝えできたかは分かりませんが。

京都府の浄瑠璃寺、岩船寺へは1キロありません。世界遺産の東大寺、春日山原生林は2キロ圏です。般若寺も同じ距離です。煙突から半径3キロはダイオキシンをはじめ有害な塩素系ガス汚染地域です。現在のフィルターには限界があり、微細なガスは除去できないそうです。

 

〔短歌〕

「嫩芽(わかめ)ふく 春山林 しづけさをば

立ちどまりきき 立ちどまりきく」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「一鉢の すみれに心 つくすなり」佐野まもる

 

〔和歌〕

「しられずも 心のそこや 春になる

時なる比と 花のまたるる」

 

伏見院御製・玉葉128

 

「気のつかないうちに、心の奥底が春の気分になっているのかしら。我知らず、もう咲く頃だな、と花が待たれるよ。」

・時なる=時がそれになる。準備ができ、時節がととのう。

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2012年3月26日 (月)

般若寺 春の花だより   3・26

◎梅: 白梅 ≪散りはじめ≫

紅梅、豊後梅 ≪満開≫

 

・山茱萸、レンギョウ、沈丁花、黄色水仙 ≪見ごろ≫

 

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

 

・桜、椿、シャガ、紫雲ランなどは 4

・鉄線、空木、アヤメなどは 5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

 

*きのうのお天気はめまぐるしく変化しました。久しぶりに晴れたと思ったら冷たい風が吹き、曇り空へ。日が暮れてからは雨が降りました。

きょうは朝は快晴。でもこれからどう変わるやら、まだ寒さは続きそうです。

一昨日から本ブログの写真を担当しているK君が旅行に出ましたのでしばらく写真のないブログとなります、ご容赦願います。

 

春の花はどれもみな遅れています。奈良で一番早く咲く氷室神社のしだれ桜もまだつぼみとのこと。例年でしたら今頃見ごろになっているはずなのに。

今はまだ梅の季節です。当寺では白梅はすこし散りはじめましたが、紅梅と豊後梅は満開です。やっぱり1週間から10日はおくれていますね。

 

しかし山吹はというと、新芽が出てきたなと思っていたらそこには花芽が見えています。いつ咲くかは予測できませんが、山吹はまず一重の黄色い花が咲き、それから白花が、最後に八重咲の出番です。

かつては4月中ごろから咲きだして25日の文殊会式の頃に満開を迎え、5月初めまで花がありました。しかし近年は暖冬つづきで10日ほど早まっていたのですが、今年は寒い春のため、元の花暦に戻るかもしれません。

 

 

〔短歌〕

 

「雨あとの 空みづみづし 近く見ゆる

山の上の松 色古びたる」

 

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「柳萌え うごきそめたる 石の色」桑原志朗

 

〔和歌〕

 

「なにとなく 庭の梢は かすみ深けて

入るかたはるる 山のはの月」

 

永福門院・風雅124

 

「何とはなしに、庭の木々の梢はほんのりと霞んで夜は更けまさり、入ろうとする西の空は晴れてくっきりと見える、山の端近い月よ。」

 

・入るかた=入る方角。

・かすみふけて=永福門院の独創表現。

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2012年3月25日 (日)

般若寺 春の花だより   3・25

  ◎梅: 白梅、紅梅、豊後梅 ≪満開≫

・レンギョウ、沈丁花、山茱萸、黄色水仙≪見ごろ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花は4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、紫雲ランは4

・鉄線、矢車草、は5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスは6月見ごろ

*つづいて「中の川」の石造文化財

③ 《実範上人塔と中川寺成身院跡》

・中の川集落を過ぎて浄瑠璃寺南口バス停へ向かい200メートルほど行くと、大きなカーブの手前で左手(道の西側)が開け、下の方に一枚の田圃が見えます。その田圃へ下るほそい道を林の中へ200メートルばかり行くと笹原の中に少し開けた場所があります。

その奥まったところに大きな木に囲まれて石塔があります。これが中川少将・実範上人の御廟塔と伝わる石造五輪塔です。五輪塔は「壇上積基壇」の上に建ちます。基壇は一辺183センチ四方、高さ50センチ、束石で区切られた二つの羽目石には格狭間(こうざま)が彫られる丁寧な作り。基壇上の塔はとてもよく均整がとれています。一辺85センチ、高6センチの蓮台に乗り、全高184センチを計る。地輪部は67センチ四方、高45センチ。基壇を含め総高240センチの立派な塔です。この辺りは後ろは落ち込んだ地形なので寺の「奥ノ院」「御廟所」的な場所にあたるようです。そして塔の前の笹原は平地が続くようです。

石塔はいろんな作例と比較して年代的には13世紀後半のものと推測されます。実範上人は1144年、平安末期に亡くなられていますから、この塔は没後百年程のちに追慕の供養塔として建てられたのか、弟子の宗観もしくは孫弟子、観験のものかもしれません。いづれの僧たちも当時のそうそうたる名僧でありました。現在では伝承に従い開山上人「実範御廟塔」とするのが適当でしょう。

さて、寺の方は現地では全くどこに伽藍があったのか見当がつきません。江戸時代の名所図絵でもあればいいんですが。おそらく御廟所前の平地になった笹原を刈り込めば、それらしいお堂跡なんかが分かるのではないでしょうか。早急な学術調査が待たれます。

今とりあえずすべきことは、バス道からの道しるべ・道標と御廟所の説明版です。奈良市も文化財課、観光課の仕事としてこれくらいはしてほしいですね。

地域行政として「中の川」の顕彰に力を入れてほしいものです。

最後に全国の真言宗の寺院、僧侶、檀信徒の皆様には「南山進流」の故里を知ってほしいです。そして無謀な開発の手から進流の聖地を守ってほしいです。

また興福寺、唐招提寺、東大寺、円成寺、浄瑠璃寺など実範上人ゆかりの寺院にも関心を持っていただきたいです。

みんなの力で史跡公園のような形で顕彰できるよう努力しましょう。

これで一応、5回にわたる「中の川」についての拙い報告を終えます、有難うございました。

〔短歌〕

「この寺に とまることにして くつろげば

大和の田舎の 夕ぐれしづか」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春なれや 名もなき山の 朝がすみ」松尾芭蕉

〔和歌〕

「くもりなく さやけきよりも 中々に

かすめる空の 月をこそ思へ」

権中納言定頼・玉葉122

「曇りなく明るく照っているのよりも、かえって、霞んだ空の月をこそはしみじみとなつかしく思うよ。」

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2012年3月24日 (土)

般若寺 春の花だより   3・24

◎梅: 白梅 ≪満開≫

紅梅 ≪満開≫

豊後梅 ≪見ごろ・八分咲き≫

・レンギョウ、沈丁花、山茱萸、黄色水仙≪見ごろ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、紫雲ランなどは4

・鉄線、矢車草、アヤメ、空木などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

昨日につづいて「中の川」に残る石造文化財について。

② 《村の辻堂地蔵石像と共同墓地五輪塔》

・中の川集落の中ほどにバス停留所があります。「中中の川」です。柳生道の方にもバス停があり「下中の川」といいます。集落は笠置行きのバス停にあります。そのバス停のすぐ横、道路の西側に3段ほどの石段の上に「辻堂」と呼ばれる小さな小屋のようなお堂があります。でも屋根は最近ふき替えられたようで真新しい瓦が目を引きます。村の中心にまつられるお地蔵様に対する中の川住民の篤い信仰心がしのばれます。中に高さ160センチの石のお地蔵様がおられます。高17センチの台石にのっておられるので立派な大きさです。惜しいことにお顔が上下二つに割れたのを継いであり痛々しいです。光背部分には向かって右に「奉造立地蔵菩薩 逆修 慶圓」左に「永正十四年(1517) 六月二十四日」と彫られています。この石地蔵は中川寺を記した古記録にも出ているので、元は寺の中にあったものかもしれません。「逆修」(ぎゃくしゅ)とは「逆(あらかじ)め冥福を修める意」で生前に、あらかじめ自分のために仏事を修して死後の冥福を祈ることです。この場合、「慶圓」(けいえん・きょうえん)という僧が逆修のために石地蔵を造立されたのです。約500年前、戦国時代の作です。お地蔵様の後ろには他に小石仏、舟形宝篋印塔など6基があります。

・辻堂の横に西側集落の中へ通じる小道があり、300メートルほど行くと小さな社が三つの「三社神社」があります。そこから集落を離れてうっそうと茂る森の中へ入り200メートルほどで村の共同墓地へ出ます。入り口には六地蔵、そして戦死の兵士の墓が並び、新旧の墓石が所狭しと立つ中をさらに奥へと進むと木製の墓標にかこまれて大きな石造五輪塔が見えてきました。見るからに古そうで堂々とした大きさです。高さは蓮華座を含み186センチ、地輪部は巾64センチ、高47センチあります。時代は定かではありませんが、おそらく鎌倉時代にさかのぼると思われます。この五輪塔のまわりの墓標は「埋め墓」の名残をとどめる古い墓制だと思われます。そして五輪塔は「惣墓の供養塔」です。祖先崇拝の心と伝統を大切にしてきた、大変古いお墓のあり方を見せる民俗文化財としても貴重なものです。

ゴミ焼き場はこののどかな村の環境を犠牲にして作られるのでしょうか。仏様、神様、ご先祖様を大切にして何百年も住み続けておられる中の川の人々の心を公共の名において踏みにじることは誰であっても許されないことです。

〔短歌〕

「うすら冷たき 夕日のいろかも 野を帰る

から車の鳴り 空気にひびき」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「萌え出づる ものにやはらか 春の土」高木青巾

「和歌」

「さびしさは 花よいつかの ながめして

かすみにくるる 春雨の空」

前大納言為兼・風雅117

「つくづく淋しさが身にしみるのは、「花よ、いつ咲くのか」という思いを抱いてぼんやり遠くを見やっているうち、霞にとざされて次第に暮れて行く、春雨の降る空の風情であるよ。」

・花よいつか=「花よ、何時か」と待ちわびる気持ち。京極派独特の口語的

表現。

・参考: 「春を浅み 寒さ梢の 花やいつぞ

           面影みせて 雪は散れども」(伏見院御集1837

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2012年3月23日 (金)

般若寺 春の花だより   3・23

◎梅:白梅 ≪満開≫

紅梅 ≪満開≫

豊後梅 ≪見ごろ・7分咲き≫

・レンギョウ、山茱萸、沈丁花、黄色水仙≪見ごろ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、紫雲ランなどは4

・矢車草、鉄線、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

*今日から「中の川」に残る石造文化財をご紹介していきます。

 《牛塚の石塔と石仏、伊勢参宮供養碑》

中の川には中世の人々の信仰を物語る石造文化財が多くあります。

まずは般若寺から東へ延びる旧伊賀伊勢道を2㌔ほど行ったところ、中の川の手前300メートルほどにある、通称「牛塚」(うしづか)と呼ばれる石塔と石仏とお伊勢参りの供養碑についてご紹介します。

・牛塚は伝承によれば、鎌倉時代、東大寺興福寺をはじめとした奈良の寺院復興に際し、資材を運搬するのに使役され斃れて行った牛を供養するために、塔を建て仏をまつったと言われています。般若寺の大石塔の石もこの道を運ばれました。笠置山系当尾の里が石材供給地であったからです。中の川からこの牛塚までは急な上り坂があり、上りきった高台に塔を建てたのでしょう。

きのう、何十年ぶりかで行ってみたのですが地形はあまり変化がなく、塔のある岡に立つと、北に展望が開け木津川あたりまでよく見える絶好の景色でした。

しかしあたりの不法投棄されたゴミには憤りを覚えました。

・塔は元は十三重石塔であったらしいのですが、今は10重目の笠石までしか残りません。総高333センチあります。軸石の四方仏は金剛界の梵字を刻みます。

(東―阿閦如来・ウーン字、南―宝生如来・タラーク字、

西―阿弥陀如来・キリーク字、北―不空成就如来・アーク字)

この字体は鎌倉時代特有の鋭い「薬研彫り」を見せ、大変美しい梵字です。

台石は80センチ四方、高45センチ、軸石は50センチの立方体、初重の笠石は76センチ四方で、軒下に垂木形を作り軒反りは力強く鎌倉の特徴を持ちます。

近年、修復を受けたのか、セメントの目地が見えます。しかし残念ながら四方仏の方位が90度づれていました。

・石塔の真下に南面して一体の石仏があります。高さ巾ともに150センチの板石造りの石龕の中に、高75センチ巾80センチの坐像の仏像です。前に出した両手は早くに失われ、頭部も30年前にはあったのが今は持ち去られなくなっています。ここは奈良県側か京都府側かわかりませんが、保存管理が行き届いていません。径65センチの円形光背もあり古風な作りの石仏です。かつては重い石を運んだ人も牛もこの地でしばしの休息を取っていたのかもしれません。ここから奈良へはなだらかな下り坂になる尾根道です。

・石塔のすぐ脇に高さ104センチ幅66センチの石碑があり表面には真ん中に「天照皇大神宮奉三十三度供養」に右左に「元和二年(1616)六月00」と刻まれ、上部に丸が二つあります。これは日月を表わし内宮外宮の伊勢大明神を意味します。この碑は伊勢参宮を33度果たした記念にこの牛塚へ供養奉納されたものです。約400年前のもので伊勢道の歴史を物語る貴重な信仰遺産です。

〔短歌〕

「一(ひと)むら雲 日をかげしたり 土白き

往還(おうくわん)のいろ 目にくらくなりつ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「摘草の 手を洗うなり うちそろひ」山口青邨

〔和歌〕

「あさなぎに ゆきかふ舟の けしきまで

春をうかぶる 波のうへ哉」

前中納言定家・玉葉119

「早朝の穏やかに凪いだ海面を往来する舟の様子までも、「春」そのものを浮かべているように見える、波の上の景色よ。」

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2012年3月22日 (木)

般若寺 春の花だより   3・22

◎梅: 白梅 ≪満開≫

紅梅 ≪見ごろ・七分咲き≫

豊後梅 ≪見ごろ・五分咲き≫

・沈丁花、レンギョウ、黄色水仙、山茱萸: ≪見ごろ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、紫雲ランなどは4

・鉄線、矢車草、アヤメ、空木などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

* 昨日につづいて「中川寺」のこと。

中川寺開基の実範(じちはん・じつはん・じっぱん)大徳は京都公家の出身。生年不詳、没年は天養元年(1144)910日。字は本願・蓮光。通称は中川少将・少将上人ともいう。父は参議(諌議太夫ともいう)藤原顕実、その第四子。

若くして出家し興福寺で法相宗を学び、醍醐寺厳覚や高野山教真より真言密教を享け、また横川の明賢につき天台宗をも修められました。

修業を終えて忍辱山に住したある日、中の川に遊び、その地の景勝であることを見出し、朝廷に奏して伽藍を建て中川寺成身院と名付けられました。

また戒律の衰退を遺憾として唐招提寺の復興に尽力し、『東大寺戒壇院受戒式』を著わし受戒式を復活されました。

さらに実範大徳は仏教音楽、声明(しょうみょう・お経に節をつけて唱える歌曲のようなもの)を興され、多くの門弟を育てられました。

中でも「円明房宗観」(えんみょうぼう しゅうかん)師は声明の達人として世に知られました。師は呼び名を「大進上人」といいます。

またそのお弟子に「紀伊上人・観験」(かんげん)師がおられます。

師の声明は、久安年間(114551)に仁和寺の覚性法親王が乱立していた真言声明を評定した際、四大流派の一つに認定され、師匠の大進上人の名を取り「大進上人流」略して「進流」と名乗られたそうです。

その頃、真言声明の一大拠点が中川寺成身院であったのです。さらに次の住持、慈業上人は高野山三宝院の勝心大徳の乞いを容れ、進流声明は本拠を中川寺から高野山に移されました。

高野山は京都に対し南山と呼ばれていましたから、以後「進流」は「南山進流」(なんざんしんりゅう)と呼ばれ真言声明の代表となっています。それゆえ「中の川」は真言声明、いな日本の仏教音楽の源流、聖地と言ってもよいでしょう。

中川寺は滅びましたが、進流はいまも日本全国の真言宗寺院で脈々と息づいています。そして様々な法要を荘厳し、檀信徒の心の支えとなっています。

このような聖地をゴミ焼き場で汚してもいいのでしょうか。歴史景観の破壊をもたらす工場はこの地にはふさわしくないでしょう。奈良市の関係各位の良識に訴えたいと思います。

〔短歌〕

「春山を 汗ばみ上れり里わには

青麦畑(ばた)に 風ひかる見ゆ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「古井戸の くらきに落る 椿かな」与謝蕪村

〔和歌〕

「みどりこき 霞のしたの 山の端に

うすき柳の 色ぞこもれる」

花園院御歌・風雅91

「緑が一入濃い、深い霞の下に沈んでいる山の端。そこには、芽吹いたばかりの薄緑の柳の色がこもっているのだ。」

・みどりこき=霞の色は「緑」であるとされる。その霞が深く立ちこめている意。柳の「薄き」緑と対照させる。

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2012年3月21日 (水)

般若寺 春の花だより   3・21

◎梅: 白梅 ≪満開≫

紅梅 ≪五分咲き≫

豊後梅 ≪三分咲き≫

・沈丁花、ラッパ水仙,レンギョウ: ≪咲きはじめ≫

◎山吹: 黄色一重咲き、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、紫雲ランなどは4

・矢車草、鉄線などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月みごろ

*今日は緊急に

《名刹 中川寺成身院 遺跡の保存のために》

と題してご報告いたします。この地に奈良市が大規模なゴミ焼却場を建設しようとしているからです。

佐保川をさかのぼると「中の川」という集落があります。般若寺の東2km、浄瑠璃寺の南1kmの奈良の郊外です。般若寺から東へ延びる「伊賀・伊勢道」の古道がバス道となって村の中を通じる家数三十戸ほどののどかな村里です。「笠置」行き奈良交通バスは、中の川停留所を過ぎると次は、浄瑠璃寺南口、「鳴川」集落をへて岩船寺口、狭川、須川の里から笠置に至ります。

この中の川には平安時代に興福寺の学僧、実範(じっぱん・じちはん)上人が開基した「中川寺成身院(なかのかわでらじょうしんいん)」という寺がありました。

鎌倉時代にはたいへん栄え、寺は明治維新までは存続したようですが、その時点で破却され、今では五輪塔のみを残し寺地は田畑、山林と化しています。しかし『東大寺雑集録』という古文書では子院(塔頭)として「弥勒院、地蔵院,瓦坊、東北院、仏眼院、十輪院、薬師院、三蔵坊」があると記します。(『奈良県史6・寺院』)また小字には「東福、薬師、地蔵院、清浄院、弥勒院」の名が残ります。(『奈良市史 社寺編』)

伽藍としては、寛永9年(1639)の興福寺文書には「本堂、塔、鐘楼、鎮守」があるとされ、また「本堂には愛染明王像を安置、二層塔、地蔵石像がある」との記録もあります。二層の塔とは多宝塔ではなかったかと思われます。

地蔵石仏は今も村の辻堂に現存します。銘には「永正14年(1517)」とあるりっぱなお地蔵様です。

寺跡はいまだ発掘調査がされていないので正確にはわかりませんが、実範の御廟塔の周囲が寺跡と考えられます。

現存する流出寺宝として、

重要文化財・毘沙門天立像:胎内納入印仏の墨書銘に「中川寺十輪院持仏堂安置、応保2年(1162)供養」とある。かつて個人所蔵であったが、現在は東京国立博物館所蔵。

京都府指定文化財・薬師如来坐像:平安後期作。現在木津川市鹿背山の西山浄土宗西念寺所蔵。

重要文化財・梵鐘:鐘銘に「成身院鐘 大治四季(1129)四月七日鋳造 匠多治比頼友等也 ・・・」とある。現在神戸市生田区中山手通の徳照寺所蔵。

の存在がわかっています。おそらくもっと多くの中川寺寺宝が各地に散在していることでしょう。

実範さんと声明、周辺の石造遺品については後日にご紹介します。

〔短歌〕

「歩き来て 北条氏果てし 巖穴(いわあな)の

ひややけきからに 古(いにしへ)おもほゆ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「一天や 鶯の声 透き徹り」川端茅舎

〔和歌〕

「さほ姫の うちたれがみの 玉柳

ただ春風の けづるなりけり」

前中納言匡房・玉葉92

「春の女神佐保姫の長く垂れた髪のような美しい柳よ。それは(人が手を触れるのも憚られて)ただ春風が、櫛でとかすように静かに吹きなびかしているのだ。」

・さほ姫=佐保姫。春を司る女神。佐保は平城京の東方にあり、東は春をあらわす。

・けづる=くしけずる。髪を櫛でとかす。

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2012年3月20日 (火)

般若寺 春の花だより   3・20

◎梅: 白梅 ≪満開≫

    紅梅 ≪三分咲き≫

    豊後梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹: 黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・椿、桜、レンギョウ、シャガ、紫雲ランなどは4

・矢車草、空木、アヤメなどは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

*また寒い朝でした。真冬のようにマイナス2度の気温で霜が降りていました。

きょうはお彼岸の中日、各寺院では彼岸会が営まれ、ご先祖のお墓参りに行かれる方も多いでしょう。当寺では特別な法要はありませんが、寺へ参られる方にはお彼岸まいりの意味をお伝えできればと考えています。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、昔から季節の変わり目として農作業の節目になっています。花でも野菜でも種をまくならこの時期です。

最近は温室で育った苗が売られていますので、みなさんこの時期大きくなった苗を買っておられます。しかしこれは霜に弱いから霜よけネットは必需です。

コスモスも本当でしたらこれから種をまけばいいんですが、当寺では早く咲かせるために2月の後半に種まきをしました。そしてトンネルの中で今ではもう5センチの苗になっています。この分だったら4月には庭に定植できるでしょう。

お彼岸過ぎればもっともっと暖かくなってほしいですね。

〔短歌〕

「春日てる 大御堂が谷(やつ)に 入りくれば

麦畑の鶫(つぐみ) 殖林へとびぬ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「信濃路は 雪間を彼岸 参りかな」横井也有

〔和歌〕

「みるままに しづえの梅も 散りはてぬ

さもまちどをに さく桜かな」

和泉式部・風雅90

「見ているうちにもう、下枝に残っていた梅の花もすっかり散ってしまった。まあ、これから先どんなにか待ち遠しい思いをさせた上で、やっと咲くだろう桜よ。(早く咲いておくれ)」

・しづえの梅=下枝の梅。上枝から咲き散り、わずかに残った花。

・さも=いかにも。

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2012年3月19日 (月)

般若寺 春の花だより   3・19

: 白梅 ≪満開≫  

紅梅 ≪三分咲き≫ 

豊後梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹: 黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・椿、桜、レンギョウ、シャガ、紫雲ランなどは4

・矢車草、空木、あやめ、つつじなどは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスなどは6月見ごろ

*梅の花はいよいよ盛りを迎えています。白梅は今満開。南高梅、白加賀という種類で小ぶりの実がなります。

紅梅の花は目に鮮やかな紅色です。しかし実のならない花梅です。

最後に咲いてきたのが豊後梅(ぶんごうめ)。これはウメとアンズの中間種で花も実もあります。しかもその実はアンズのように大きく梅干しでも、ジュースやジャムでも使え重宝します。近年人気のある品種です。

花の色はうすいピンク色で花ガクが赤いので、遠くから見れば桜よりめだつ桜色をしています。

この豊後梅も咲きはじめ、枝全体が紅色になっています。

いよいよ春爛漫、百花繚乱の始まりです。

〔短歌〕

「寒きながら 昼は日ぬくむ 田圃ゆき

今更目につく たんぽぽの萌え」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「山寺の 扉(と)に雲遊ぶ 彼岸かな」飯田蛇笏

〔和歌〕

「うちわたす さほのかはらの 青柳も

今は春べと もえにけるかも」

大伴坂上郎女・玉葉87

「遥かに見晴らす、広々とした佐保河の河原の柳も、今こそは春になったとばかり、青々と萌え出たことだなあ。」

・うちわたす=端から端まで届かせる意。見渡す。

・さほ=大和の歌枕。佐保。奈良市北部、般若寺から不退寺あたりの地。佐保山の裾を佐保河が流れ道を佐保路という。大伴氏の居住地。佐保姫は春の女神。江戸時代ごろまでは般若寺への坂道に「坂上」の地名があったと伝える。

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2012年3月18日 (日)

般若寺 春の花だより   3・18

◎梅: 白梅 ≪見ごろ≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

 

◎山吹: 黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

 

・椿、桜、レンギョウ、シャガ、紫雲ランなどは4

・あやめ、空木、おが玉の木、矢車草などは5

・山アジサイ、アジサイ、ヒツジ草などは6月見ごろ

 

 

*梅の花は白いのがほぼ満開になりました。紅梅も枝全体が紅色に見えるほどつぼみが膨らみ先の方から花が開いてきました。沈丁花も少し咲いています。梅と沈丁花は匂いがあり春の香りをただよわせています。そして山吹の枝にはあさ緑の新芽が出ています。やはり雨が降るごとに自然界は変化を見せてくれますね。

 

今日は万葉集の代表的な歌人、柿本人麻呂のご命日。「人麻呂忌」です。人麻呂は平安時代には和歌の道の聖人として神格化され、1118年、藤原顕季によって「人麻呂影供」(ひとまろえいぐ)という儀式がはじめられました。人麻呂の画像をまつり、香花・酒膳を供え和歌を献じて供養します。以後、歌会・歌合を営んでいます。この影供は近世までつづき人麻呂は歌聖としてあがめられました。

 

「見れどあかぬ 吉野の川の とこなめの

絶ゆることなく またかえり見む」

       (人麻呂・万葉集巻1)

 

 

〔短歌〕

 

「水たまり 轍(わだち)にのこり 雨後(あめあと)の

道しろくかわき 春日(はるび)まぶしさ」

木下利玄・一路

 

〔俳句〕

 

「人丸忌 わが俳諧を もて修す」富安風生

 

〔和歌〕

 

「たが里ぞ かすみのしたの 梅柳

をのれ色なる をちかたの春」

 

花園院御歌・風雅87

 

「あれは誰の住む村里だろうか。霞のたなびく下に、梅も柳も、おのずからそれぞれの色合をほのかに見せる。遠い彼方の春景色よ。」

 

・をのれ色なる=誰がするともなく自然にそれぞれの彩りを示す。

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2012年3月17日 (土)

般若寺 春の花だより   3・17

◎梅: 白梅 ≪見ごろ≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・椿、桜、レンギョウ、シャガ、などは4

・空木、あやめ、紫雲ラン、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス、などは6月見ごろ

*今日の雨は暖かい春雨です。

「野の道や 梅から梅へ 六阿弥陀」正岡子規

今日は「彼岸の入り」、20日が「お中日」、23日を「彼岸明け」といいます。

彼岸は「彼の岸」すなわち悟りの世界、仏の住まうお浄土です。彼の岸に行き着くことを「到彼岸」、梵語でパーラミタ―といいます。

『観無量寿経』というお経に説かれる「日想観」によると、西に沈む太陽を観察することで阿弥陀の西方浄土を観想できるといいます。春分の日は太陽が真西に沈むので彼岸に最も近い日とされます。

ここにご紹介した子規の句にある「六阿弥陀」は、江戸時代から大正頃まで盛んであった「六阿弥陀詣で」のことで、江戸の町の阿弥陀様を六カ寺めぐる信仰があり、全行程28キロを歩いて回るのだそうです。

六という数字は「六道」にも「六波羅蜜」にも通じています。

身近なところで六阿弥陀を巡拝されてはいかがでしょう。

〔短歌〕

「木苺(きいちご)の 下向く花に 顏よせて

嗅げばほのけき 香に匂ひゐる」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「草餅の 色香のこりて 夜の臼」難波勉

〔和歌〕

「なにとなく さへづる山の 鳥のねも

もののあはれは 春の明けぼの」

寂蓮法師・玉葉86

「特に何の鳥ともなくさえずりかわしている、山の小鳥の声々を聞くにつけても、物のあわれは秋の夕暮ではなく、春の曙にこそしみじみと感じられるよ。」

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2012年3月16日 (金)

般若寺 春の花だより   3・16

◎梅: 白梅 ≪五分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹: 黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガ、などは4

・鉄線、空木、あやめ、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモスは6月見ごろ

*今日は晴れから曇り。少し春らしくなってきました、でも遅い春ですね。

明日は南の暖かい空気が入り込み一気に気温上昇だそうですが、一日雨の予報です。明日から週末で春のお彼岸の入りなのにあいにくですね。

「彼岸鐘 草木聞けり 鳥聞けり」大野林火

お彼岸には仏さま、ご先祖さまに手を合わせ、此の岸にいるわれらが無事に生かされていることを感謝しましょう。

〔短歌〕

「空の色 瑠璃になごめり 白梅の

咲きみてる梢(うれ)の 枝間(えだま)々々に」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「御松明 とて北嵯峨の 人出かな」福田恵二

〔和歌〕

「まどあけて 月の影しく 手枕に

梅がかあまる 軒の春風」

進子内親王・風雅85

「窓をあけて、さし入る月の光を敷くように寄り臥しているその手枕のあたりに、梅の薫りをあり余る程に漂わせる、軒の春風よ。」 

・月の影しく手枕に=月光が床の上に射し、その中で手枕をして寝ていると。

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2012年3月15日 (木)

般若寺 春の花だより   3・15

◎梅: 白梅 ≪五分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガ、などは4

・鉄線、空木、あやめ、などは5

・山アジサイ、アジサイ、早咲コスモス、などは6月に見ごろです。

*陰暦215日(新暦38日にあたる)はお釈迦様の涅槃の日。

そして新古今集きっての歌人、西行法師の忌日。本当は文治6年(1190216日が御命日ですが、涅槃会に合わせ15日を忌日としています。

西行さんといえば桜、有名な歌を残しておられます。

「願はくは 花の下にて 春死なむ

そのきさらぎの 望月のころ」

二月十五日は桜の花にはまだ早いけれど、お釈迦さまの涅槃の日に、花のもとにて死にたいものだと詠われたのです。

西行さんは出家前は俗名佐藤義清(のりきよ)といい、北面の武士として鳥羽上皇に仕え文武両道に秀でていました。先祖は平将門の乱を平定した俵藤太・藤原秀郷であり名門の武将でした。ところが23歳で世の無常を感じ出家得道されました。

出家の原因にはさまざまな憶測が生まれていますが、以後仏道と和歌の道を究め、奥州や四国など諸国を旅し素晴らしい和歌を詠まれました。また重源上人の依頼で源頼朝にも会い東大寺復興にも尽力されました。そして最後は河内国弘川寺でなくなられました。史上もっとも偉大な歌僧といわれます。

その忌日を「西行忌」または法名にちなんで「円位忌」といいます。没後いろんな人が法師に歌や句を捧げておられます。二句を献じます。

「人々の座におく笠や西行忌」飯田蛇笏

「花あれば西行の日とおもふべし」角川源義

最後に西行さんの和歌二首。

「雪と見て かげに桜の 乱るれば

花の笠着る 春の夜の月」 (山家集)

「吉野山 さくらが枝に 雪散りて

花おそげなる 年にもあるかな」(新古今集)

〔短歌〕

「春を浅み 日かげればさむき 雑木原

小禽(ことり)見うしなひしが 再び鳴かず」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「葛城の 山懐に 寝釈迦かな」阿波野青畝

〔和歌〕

「みねの霞 ふもとの草の うす緑

野山をかけて 春めきにけり」

永福門院・玉葉84

「峰にかかる春霞、麓の原に萌え出た若草の薄緑色よ。野山にわたってすっかり春らしくなったなあ。」

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2012年3月14日 (水)

般若寺 春の花だより   3・14

◎梅: 白梅 ≪五分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹: 黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガ、紫雲ラン、などは4月に見ごろ

・空木、矢車草、ポピー、あやめ、などは5

・アジサイ、早咲コスモス、ヒツジ草、などは6

*きのうボランティア作業奉仕で若者が一人来てくれました。力のありそうな方なのでちょっと重労働をお願いしました。それは境内の花壇に配列された水仙の鉢植えの撤去です。水仙は2月で花が終わり、今は葉を茂らせ来年のために球根を太らせる時期です。境内から駐車場へ移動し夏に葉が枯れるまでそのまま置いておきます。一鉢15kgほどあり数は300鉢あります。手押しの台車に一回7個のせて少し上りこう配を100メートル余りを運びます。たぶん一日仕事になるだろうと思っていたら、1時間半ほどで終えられたのです。そのあと少し休憩を取ってもらい、続いてコスモスの苗床への土運びをしてもらいました。

若い人の力は素晴らしいですね、お天気も上々、少し寒かったので力仕事にはもってこいだったのでしょう。本当に助けられました。私だったら3日はかかっていたでしょうに。

今年もいろいろとボランティアの方々にお助けいただきそうです、ありがたいことです。

〔短歌〕

「今日もくもる 空に秀(ひい)づる 冬木の梢(うれ)

待たねばならぬ 春の遠さよ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春風や 堤長うして 家遠し」与謝蕪村

〔和歌〕

「梅が香は まくらにみちて 鶯の

こゑよりあくる 窓のしののめ」

前大納言為兼・風雅84

「梅の薫りは、枕のあたり一ぱいに匂って、鶯の声を先立てて明けて来る、窓の暁の光りよ。」

・しののめ=東雲。夜明け方に東の空の白む頃。またその光。

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2012年3月13日 (火)

般若寺 春の花だより   3・13

◎梅:白梅 ≪五分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色一重咲、黄色八重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガ、などの春の花は4月中旬

・空木、鉄線、あやめは5月

・あじさい、早咲コスモスは6月見ごろ

*今朝の冷え込みは厳しかったです。当地では氷の張り具合から見てマイナス2度くらいではないかと思います。北国では雪が冬のように降り積もっていることでしょう。しかし無風快晴、昼間は温くなります。

きのう地元の診療所の開設記念にと講演を依頼されました。地元の歴史や文化財についての話を一時間でということでした。参加される方は診療所へかかりつけておられる地域の方ばかりだそうです。

さてとさっそく構想を箇条書きしてみました。ところがこの地域は膨大な歴史の上に成り立っていることを今更ながら思い知らされ、思案してしまいました。この地域には鼓阪小学校と若草中学校があります。その校区内に絞ってみましたが、それが大変なのです。その歴史は奈良時代、平城京から始まります。万葉歌人大伴氏の故郷であり、東大寺があります。小学校は国宝の転害門をくぐって旧東大寺尊勝院の境内地であり、中学校は戦国武将松永久秀の居城、多聞山城の跡に建っています。日常歩く道は東京極路、一条大路、二条大路、などかつての平城京の都大路の跡です。それだけではなく古代から中世、近世、近代へと連綿と続き、各時代にわたって人間の営みの跡が満載されています。

これを一時間でまとめるのは不可能です。これから4月まで時間はあるので、テーマを絞り込んで一般の人にもわかりやすい話にしていきたいと思っています。大体、奈良に住んでいる人は案外自分の足元にどんな歴史が眠っているのか知らない人が多いです。かえってよそから来た人の方が良く知っておられます。だから地元の歴史は住民にとっては何を聞いても新鮮だろうと思います。

奈良人にはもっと自信、誇りを持っていただきたいですね。

〔短歌〕

「松の木の 切り倒されて あらはなる

向うの峰に 対(むか)ひていこふも」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春宵や 流るる如く ピアノ鳴る」星野立子

〔和歌〕

「梅の花 くれなゐにほふ 夕暮に

柳なびきて 春雨ぞふる」

前大納言為兼・玉葉83

「梅の花が紅に艶やかに咲き匂っている夕暮に、柳の緑の糸が風になびいて、静かに春雨が降っている。」

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2012年3月12日 (月)

般若寺 春の花だより   3・12

◎梅: 白梅 ≪三分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に入って見ごろ

*何度目かの寒の戻りで寒い一日です。二月堂のお水取りはあと一日で満行です。おたいまつは今日が最後、豪勢にあがります、人出も最高潮となるでしょう。

奈良ではお水取りが済めば春が来ると言います。天気予報でも水曜日を越せば暖かくなると言っていますのでここ二三日がんばりましょう。

きのう近くのホームセンターでサギ草二種類とトキ草一種類の球根を買いました。どちらも水を好む花なのでミズゴケで植えます。それから通販でチョコレートコスモスと小菊の苗を注文しました。このコスモスは最近よく出回っていましすが最初の頃は驚きでした。花はチョコレート色、香もカカオのそれですから人工的に作ったのかなと疑ったものです。もともとメキシコにそういう種類のものがあったのを改良して現在のようになったそうです。

サギ草、トキ草もチョコレートコスモスも夏の花、今から楽しみです。

〔短歌〕

「くもり日の 河淀(かわよど)くろく 殖林(しょくりん)の

杉の木立の うつりたるかも」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「甘草の 芽のとびとびの ひとならび」高野素十

〔和歌〕

「さきぬれば 大宮人も うちむれぬ 

梅こそ春の にほひなりけれ」

前大僧正慈鎮・風雅76

「咲くというと、宮廷人達も集って楽しむ。梅こそは春の栄華そのものであることだなあ。」

・大宮人=宮中に仕える人。

・にほひ=華やかに目立つもの。精粋。

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2012年3月11日 (日)

般若寺 春の花だより   3・11

◎梅: 白梅 ≪三分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなどの春の花は4月に入ってから見ごろ。

*ひさびさの晴天。きょうは風もなく穏やかな一日となりそうです。

3・11東日本大震災から満一年、犠牲者の追悼と被災地の復興を念じて黙とうをささげたいと思います。

この一年の間は次の大地震が被災地かほかの地で起こるのではないかとひやひやしながらの毎日でした。これからも危険度は高まります。

日本列島は地震によって出来上がった陸地ですから避けることは不可能です。私たちのまわりにある山河、湖、海岸線、温泉などの美しい自然景観は変化に富み、世界に誇るべき日本の財産です。

しかしその地形を形作ってきたのは「プレート・テクトニクス」理論に示されるように、日本列島はユーラシアプレートと北米プレートの上にありそこへ太平洋プレートとフィリピン海プレートが押してきて圧力をかけます。その境目ではプレートのもぐりこみが起こり、海側から来たプレートは大陸側のプレートを引きこんで沈み、それが耐えられなくなったとき断裂や反発が生じ巨大地震となり大津波を起こします。

海の無い奈良でも過去にはたびたび大地震が記録されていますが、盆地のまわりはすべて地震によって造られた地形で今もいたるところに活断層が眠っています。

般若寺の境内を少し掘れば粘土と丸い玉石が出てくるのは、かつてこの地が水底であったことの証しです。列島そのものが海の底であったのかもしれません。

それが地震の造山活動で標高百数十メートルの「奈良山」「佐保山」となっているのです。

地震は避けられません。しかし被害は減らせます。そして希望をなくさないこと、助け合いのこころを失わないことです。

今日からもう一度、自分にできることをみんなで考えましょう。

〔短歌〕

「外(と)の面(も)には 物の濡れゆく 音為(す)めり

夜半(よは)の小床(をどこ)に めざめてをれば」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春天に 鳩をあげたる 伽藍かな」川端茅舎

〔和歌〕

「をしなべて 春雨ふりぬ 我が宿の

わか木の梅は はやもさかなん」

後一条入道前関白左大臣・玉葉59

(一条実経)

「世間一帯に春雨が降っている。私の家の若木の梅よ、さあ早く咲いておくれ。」

・をしなべて=あまねく。一様に。

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2012年3月10日 (土)

般若寺 春の花だより   3・10

◎梅:白梅 ≪三分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に見ごろを迎える予想。

*夕べからの雨はどうやら上がりました。少し寒いです。

*きのうからホームページに記載されたように,般若寺のコスモスを美しく咲かせるためのボランティア会が発足しました。

会の名称は「コスモス美咲(みさき)会」と決まりました。どなたでもご参加いただけるように規約も会員制も作っておられません。会長役をつとめていただくのは発起人の加藤悦子さんとおっしゃる女性の方です。先に行動実績があり、自然に会となったような形です。

昨年には暑い中を草取り作業などをやっていただき、おかげで美しいコスモスの花が咲きました。今年も先月には寒い中を何年ぶりかでお堂の大障子を張り替えていただき堂内が明るくなりました。寺のものは大助かりでした。作業に参加されるのは女性の方が多いですがいつも男性の方も来ておられます。これだけはというノルマはありませんので、ご自分の力に応じた作業をやっていただけます。

昔から掃除は,庭でも室内でもきれいにすれば、そのおこないで自分の心の中も清められると言います。またボランティア活動をすれば心が豊かになり、その心が身体を健康にする、とあるお医者さんがお話しておられました。

いま日本中いたるところでさまざまなボランティア活動が始まっています。経済至上主義の中では珍しいことです。体験した誰もが、活動を通じて心と心の触れ合いを実感しておられます。かつてなかった社会現象です。この国もようやく成熟社会に入ってきたようです。

般若寺での小さな活動も、社会にうるおいを、人の心にやすらぎを、ということで人間への信頼の回復につながることに寄与することでしょう。

美しい花は見るだけでも心を癒してくれます。それを育てる作業に加わればもっといいことがあるのではないでしょうか。

*当日の飛び入り参加を歓迎いたします。

〔短歌〕

「馬車とまれば とみにひそけし たそがれの

野中のせせらぎ 何処(いづべ)にか鳴り」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春めきと 覚えつつ読み 耽るかな」星野立子

〔和歌〕

「くれなゐの むめがえになく 鶯は

こゑの色さへ ことにぞありける」

俊頼朝臣・風雅75

「まっ赤な梅の咲く枝に鳴く鶯は、声の色合さえ特別にすばらしいなあ。」

・こゑの色=声の味わい。「紅梅」によそえて特に「色」という。

・こと=格別。

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2012年3月 9日 (金)

般若寺 春の花だより   3・9

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に入って見ごろとなる見込み。

*今日は雨です。一日ふりつづくようです。

◎梅:白梅 ≪三分咲き≫ 紅梅 ≪咲きはじめ≫

春雨のふる日には会津八一さんの歌がぴったり合います。

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

こさめなかるる はるはきにけり」八一

この歌は内田康夫の『平城山(ならやま)を越えた女』の冒頭に出てきます。

小説では新薬師寺の盗難にあって世の中から消えてしまった、有名な白鳳金銅仏「香薬師如来」の行方をテーマにしています。奈良坂の夕日地蔵から始まり、浄瑠璃寺のある当尾(とおの)の石仏や秋篠の里など、奈良ご当地巡りの展開となります。

私が最初に買った本では題名は『奈良坂を越えた女』でした。それが途中から『平城山・・・・・』に変えられました。序章に八一さんの歌をもってきて後々に期待をいだかせる出だしだったのに。「奈良坂を越えた」でなければ会津八一さんの歌を出した意味がないと少し残念な思いです。平城山は北見志保子作詞の歌謡『平城山』(人恋ふはかなしきものと平城山にもとほりきつつ・・・)で世に知られているので、うけを狙ってこちらに変更されたのでしょうか。でも平城山は範囲が広くて特定できない呼び名です。奈良坂に続く舞台になる当尾へは、昔から奈良坂を越えて行くルートが常道でした。元に戻らないものでしょうか、惜しまれますね、内田さん。

〔短歌〕

「砂埃(すなほこり) よりより立てり 往来の

春日(はるひ)ななめに 風そよぎいで」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春暁や 人こそ知らぬ 木々の雨」日野草城

〔和歌〕

「うちなびき 春たちぬらし わが門の

柳のうれに 鶯なきつ」

柿本人麻呂・玉葉35

「春になったらしいなあ。我が家の門口の柳の枝で、鶯が鳴いたよ。」

・うちなびき=「春」の枕詞。春、草木が萌え出てなびく所からいう。

・うれ=草木の成長する先端。枝先。

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2012年3月 8日 (木)

般若寺 春の花だより   3・8

◎梅:白梅 ≪三分咲き≫ 紅梅 ≪つぼみ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に入って見ごろとなる予想。

*白い梅の花がだいぶ咲いてきました。今日は晴れから曇りそして雨へと移り変わります。春先は変化が速いです。

*いままでご紹介してきた鎌倉時代の石造文化財を系統的に学ぼうと思ったらその方面の研究の成果に依るべきです。いま新しくて手に入りやすい本は山川出版社の(日本史リブレット)で出された、山川均著『石造物が語る中世職能集団』(2006年刊・840円)です。山川先生は当寺へもよく来られ、著作物もいただいています。現在、大和郡山市の教育委員会の文化財担当主任の職についておられ、おもに石造文化の研究を深めておられます。

山川先生の著作には他に、

『日本石塔資料集』(石文社発行・2011刊・12,000円)

があり、さらにこの3月末には汲古書院から(東アジア海域叢書)のシリーズの一冊に

『寧波と宋風石造文化』(2012331刊、7,350円)を監修されています。

これからは日中交流の歴史と文化が注目される時代が始まります。この本はその先駆けとなりそうです。

般若寺は古代朝鮮「高句麗」の僧が開創した寺。十三重石塔と笠塔婆は「南宋」の石大工が建てたもの。お経の大全集である「一切経」は「元」からの将来品。と東アジアの文化交流の証しを今に伝えています。日本がアジアの一員として生きていくためには、これらの生き証人である文物をもっと世の人に知らせるべきでしょう。

〔短歌〕

「ねむり得し 浅きまどろみ はやめざめ

厨(くりや)の音の いちいちきこゆ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「止むといふ 心どこかに 春の雪」稲畑汀子

〔和歌〕

「梅の花 にほひをとめて おりつるに

色さへ袖に うつりぬるかな」

中務卿具平親王・風雅73

「梅の花は、そのよい薫りを求めて折ったのに、(薫りばかりでなく)美しい色まで袖に染みついてしまったよ。」

・とめて=尋ね求めて。また「香を移し止める」意もある。

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2012年3月 7日 (水)

般若寺 春の花だより   3・7

◎梅:白梅 ≪咲きはじめ≫ 紅梅 ≪つぼみ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなどの花も4月見ごろ。

*きのうからホームページの表紙が変わりました。春たけなわの季節の花と石仏さまです。短歌は季節にはとらわれないもので一年中でも使えそうです。

これは有名な明治の文豪、森鴎外の『奈良五十首』に収められている歌で、『太平記』の英雄の一人、護良親王(もりよし・もりなが)が般若寺で危難を逃れた事績を題材にしたものです。戦前の歴史では南朝が正統と考えられ、後醍醐天皇や護良親王にゆかりの地は聖蹟と呼ばれました。般若寺は南朝の聖蹟であったのです。

*ここ数日、一気に春の気候に変わりました。気温は4月中ごろになっているそうです。

コスモスと同じようにプランター鉢で育てている野菜も大きくなっています。小松菜、ラディッシュ、ホウレン草などまだ小さいですが間引き菜として食しています。量は少なくとも自家栽培のものは新鮮でおいしく感じられます。また冬から春に育つ野菜は虫がつかないので完全無農薬で育ちます。ただこれからは渡り鳥が故郷に帰る準備で食欲旺盛になり食べられるものは何でも片っ端から食いつくします。花の苗も気を付けないとやられます。トンネル栽培の方は大丈夫ですが露地のものは不織布などをかぶせる必要があります。花も野菜も愛情をこめ手間暇を惜しまず世話をすることですね。

それは人間の場合にも言え、子供でも大人でも同じことです。

〔短歌〕

「右左 地肌(ぢはだ)しめれる 切通(きりどお)し 

風すさぶ日に とおらくよしも」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「わがいのち ほそりほそりて 麗らなり」水内鬼灯

〔和歌〕

「雪と見て 花とやしらぬ 鶯の

まつ程過ぎて なかずもあるかな」

凡河内躬恒・玉葉34

「(まっ白な雪を、ただ)雪だと見て、花とは思わないのだろうか。鶯は、待つ日数も随分過ぎたのに、まだ鳴かないことだことだなあ。」

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2012年3月 6日 (火)

般若寺  春の花だより   3・6

◎梅:白梅 ≪咲きはじめ≫ 紅梅 ≪つぼみ≫

◎山吹:黄色八重咲、黄色一重咲、白山吹≪花・4月≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に見ごろ。

*きのう雨の中、コスモスの苗床を点検しました。27日から20日まで7回に分けてまいた種がほぼ全て発芽していました。少し霜で傷んだのもありましたが大方は青々とした双葉を並べています。今日は覆いのビニールをはずし雨に当ててやりました。春の雨は冷たくとも植物にとっては成長を促す恵みの雨です。これから日差しが戻ってくれば気温も上昇し木々の緑とともにコスモスの葉も茂ることでしょう。5月下旬の開花まであと70日余り、近いような遠いような日数です。それまで何段も階段を上るような作業工程があります。世話する人間のほうも体力気力を充実させていかねばなりません。乞うご期待。

〔短歌〕

「真夜中の 軒にかそけく 音さする

雨の降り出を 小床(をどこ)にきくも」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「穴出でむ 虫のほのめき あきらかに」阿波野青畝

〔和歌〕

「ひとむらの かすみの底ぞ にほひゆく

梅の梢の 花になるころ」

徽安門院・風雅70

「一つの村里にかかる霞の奥から、ほんのりと美しい色合いが浮かび上がって来る。あのあたりの梅の梢が、すっかり花になる頃なのだ。」

・ひとむら=一村。一つの村全体。「一群」の意をかけている。

・かすみの底=霞みこめたその奥底。

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2012年3月 5日 (月)

般若寺  春の花だより   3・5

◎梅:白梅 ≪咲きはじめ≫ 紅梅 ≪つぼみ≫

◎山吹:黄色八重咲き、黄色一重咲き、白山吹 ≪花・4月≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなどの春の花は開花が遅れ気味です。

*今日も雨です。ひょっとしたら大雨になるやもしれません。

白梅の花が目立って増えています。紅梅もつぼみを膨らませあと少しで咲きそうです。椿はまだまだだと思っていたら、なんという名前かはわかりませんが大きな花で赤に白か、白に赤かはわからないけれど二色に色が混ざった花が咲いています。藪椿もちらほら咲きです。でもこの寒さではそう簡単には咲かないでしょう。春のお彼岸が過ぎたころか、月末ぐらいから4月にかけて桜とともに満開になると思います。

〔短歌〕

「訪(おと)なへる 春山のみ寺 庭きよみ

ひっそり閑(かん)として 真清水(ましみづ)の音」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「春宵や 光り輝く 菓子の塔」川端茅舎

〔和歌〕

「猶さゆる 嵐は雪を 吹きまぜて

夕ぐれさむき 春雨の空」

永福門院・玉葉33

「ますます冴え返って吹く強風は雪を吹きまぜて来て、夕暮れになるにつれていよいよ寒さの身にしみる、春雨の空よ。」 

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2012年3月 4日 (日)

般若寺  春の花だより   3・4

◎梅: ≪つぼみ・咲きはじめ≫

◎山吹:黄八重咲、黄一重咲、白山吹≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は少し遅れて咲く予想。

*天気予報の通り雨が降り出しました。少し寒いです。二月堂ではお水取りが始まっています。錬行衆の方々にとってはこの寒さは身にこたえることでしょう。

昨日、当寺で行われた仏前結婚式は暖かい晴天のもと、厳かに執り行われました。まず導師である戒師様一同ご本尊さまを礼拝し、続いて戒師のお諭しを受けました。のち両人による誓詞が読み上げられ、仏様から賜った夫婦の念珠を取り交わし、両人と両家の契りの杯をくみかわして、最後にはご法楽として般若心経とご本尊など諸真言を読誦し式典を終えました。

仏前の式は珍しいですが、式の進行でいま何をしているかがよく分かり、一般の人にも受け入れられやすいのではないでしょうか。

当寺は若奥様をお迎えして春めいています。これから若いお二人には和気あいあいと二人三脚でご活躍いただきたいと思います。

*きのうのブログで仏画を載せていましたが、これは「弁財天女画像」です。結婚式に合わせて庫裏のとこにお飾りしました。きのう来られた大阪八尾の教興寺副住職によると、この画像は大変珍しいお姿の弁天様だということです。教興寺以外では初めて見たということです。

また調べることができたらお知らせいたします。

〔短歌〕

「星空に 夜の木の梢(うれ)を 仰ぎつつ

通り行きたり その木のもとを」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「曲水や 草に置きたる 小盃」高浜虚子

〔和歌〕

「山もとの さとのつづきに さく梅の

ひとへに世こそ 春になりぬれ」

永福門院・風雅66

「山の麓の村里の続くあたりに咲き揃った梅の、その一重咲ではないが、ただもう偏えに世間は春になっていまったなあ。」

・ひとえに=「一重」と「偏へ」をかけ、「ひたすらに」の意とする。

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2012年3月 3日 (土)

般若寺 春の花だより   3・3

◎水仙は終わりました。長らくのご愛顧を感謝いたします。

◎梅:白梅・紅梅 ≪つぼみ~咲きはじめ≫

・ネコヤナギ: ≪見ごろ≫

◎山吹:黄八重咲・黄一重咲・白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウなどの春の花は4月に咲くでしょう。

33日は「上巳(じょうし)の節句」。平たく言えば「ひなまつり」。

桃の節句とも言います。五節句の一つですが、むろん旧暦ですから本来なら今の4月上旬の頃です。

ただ今では、いまだ桃はおろか梅の花もお飾りできません。

きのうご紹介した佐保姫の歌と句の続きです。

「さほ姫の そめ行く野べは みどり子の

袖もあらはに 若菜つむらむ」順徳院(11971242

「佐保姫の もてなしあつし 独り旅」正岡子規

*本日は当寺の法資、顕任君の結婚式。ご本尊前にて挙式いたします。よき伴侶を得てさらなるご活躍されんことをおねがいします。

〔短歌〕

「寒き日の 街道を来て 里川の

どんどん橋を 踏みわたりたり」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「遠つ世の 面輪かしこし 木彫雛」水原秋桜子

〔和歌〕

「さえかへり 山風あるる ときは木に

ふりもたまらぬ 春の淡雪」

前大納言為家・玉葉29

「春というのに再び冷えこんで、山風が烈しく吹きつける常緑樹の梢に、降りかかりはするが積りもせずに散る、春の淡雪よ。」

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2012年3月 2日 (金)

般若寺 春の花だより   3・2

◎水仙: ≪終わり近し≫

◎梅:白梅・紅梅 ≪つぼみ~咲きはじめ≫

◎山吹:黄色一重咲・八重咲・白山吹 ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、レンギョウ、シャガなど春の花は4月に咲く予想。

*雨、春を告げるあたたかい雨です。真冬の寒さから一気に4月の気温です。半信半疑の春で体もついていきませんし、いつまた冬に戻るかもしれないと用心するにこしたことはありません。

以前にも書いたことがありますが春の女神は「佐保姫」です。般若寺から西へ続く丘陵を「佐保山」、そのふもとを流れる川を「佐保川」、平城京の一条大路を「佐保路」といい、奈良時代から有名な山・河・路です。万葉集以来おおくの歌や句が読まれています。平安時代にも古京奈良の有名な歌枕でした。

「佐保姫の 糸染め掛くる 青柳を

吹きな乱りそ 春の山風」藤原定家(11621241

「佐保姫の 十二ひとえか 雲霞」野々口立圃(15951669

佐保には、多聞山城跡、佐保山御陵(聖武天皇・光明皇后)、興福院、不退寺などの名所旧跡があります。お天気が良くなれば佐保路巡りをしてください。きっと春の女神に出会えますよ。

〔短歌〕

「日ざかりの 高原(たかはら)ひろみ 

ところどころ 草の葉かへり 鶯きこゆ」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「手のひらに かざって見るや 市の雛」小林一茶

〔和歌〕

「雪の色を うばいてさける 梅の花

いまさかりなり 見ん人もがな」

中納言家持・風雅65

「雪の色を取りあげてしまって、雪よりもまっ白に咲いている梅の花は、今が盛りだよ、見る人があればいいのになあ。」

・万葉集850

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2012年3月 1日 (木)

般若寺 春の花だより   3・1

  ◎水仙: ≪終わり近し≫

◎梅:白梅・紅梅 ≪つぼみ~咲き始め≫

◎山吹: ≪花・4月中旬≫

・桜、椿、シャガ、レンギョウなど春の花は4月に入ってから咲く予想。

*お天気はめまぐるしく変わります。晴れ、曇り、雨と日替わりです。いよいよ冬の花、水仙、蠟梅、侘助は終わりに近づいています。かといって早春の花、梅は遅れています。もしかしたら北国のように梅も桜も一斉に咲くのかもしれません。

一週間ほど前に修理に出したパソコンが返ってきました。この間、古いのを使っていたので時間がかかりました。新しいほうが早く動きます。どうやらノートパソコンは衝撃に弱いそうで、ハードディスクの交換が必要だったようです。機械はデリケートですね、優しく扱わないといけないということです。データも消えてしまったのがあるようでまた新たに作ります。ああしんど、という気分です。

〔短歌〕

「埃(ほこり)たつ 街(ちまた)をくれば 掘割に

たぶたぶゆるる あをにごり水」

木下利玄・一路

〔俳句〕

「いきいきと 三月生る 雲の奥」飯田龍太

〔和歌〕

「ももちどり 声のどかにて 遠近の

山はかすめる 春の日ぐらし」

従三位為子・玉葉25

「沢山の小鳥たちのさえずりがいかにものどかで、遠く近くの山はすっかり霞みこめている。ようやく暮れようとするこの春の一日よ。」

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