般若寺 水仙花だより 1・31
◎水仙: ≪二~三分咲き≫
・開花:2月~3月。今年は一か月ほど遅れ気味。
・球根の数:1万~2万
*今日は睦月(むつき)、一月の最後の日。明日からは如月(きさらぎ)、二月が始まります。「きさらぎ」は「生更ぎ」の意で、草木が芽吹いて更生することを言います。もちろんこれは旧暦ですから新暦に直すと三月の事です。新暦は季節がずれてしまいます。たとえば三月三日の「ひなまつり」に桃の花を供えますが、これは四月の花です。七月七日の「たなばた」は梅雨のさなかで天の川は見えません。ということで二月に節分、立春が来てもまだまだ寒い日があり、季節は冬です。まあ気分だけでも春を迎えることにしましょうか。
〔短歌〕
「日の出頃 街道の霜 真白に
からからつづく 百姓の車」
木下利玄・一路
〔俳句〕
「水仙も 水仙の香も 立ちてをり」斉藤和子
〔和歌〕
「はつ雪の 窓のくれ竹 ふしながら
をもるうは葉の ほどぞ聞ゆる」
前中納言定家・風雅812
「初雪の降る、窓辺の呉竹よ。寝ながら聞けば、積もる雪になびき伏しつつ、次第に雪の重みが上葉に加わって行く様子が、竹のきしむかすかな音として聞えるよ。」
・ふしながら=「竹」の縁語「節」に、「臥し」「伏し」をかける。
*『平家物語』を読む。
「宇治河先陣」の段、
「佐々木あぶみふンばりたちあがり、大音声をあげて名のりけるは、〈宇多天皇より九代の後胤、佐々木三郎秀善が四男、佐々木四郎高綱、宇治河の先陣ぞや。われと思はん人々は高綱に組めや〉とて、おめいてかく。畠山五百余騎でやがてわたす。むかへの岸より山田次郎がはなつ矢に、畠山馬の額をのぶか(箆深)に射させて、弱れば、河中より弓杖(ゆんづえ)をつゐておりたッたり。岩浪甲の手さき(かぶとの吹返し[しころの先端の折り返された部分]の前方)へざッと押し上げけれども、事ともせず、水の底をくぐッて、むかへの岸へぞつきにける。上がらんとすれば、うしろに物こそむずとひかへたれ(背後から何かがむずとひっつかんだ)。〈た(誰)そ〉と問えば、〈重親(しげちか、大串次郎孝保の子、武蔵七党の横山党に属す)〉とこたふ。〈いかに大串か〉。〈さン候〉。大串次郎は畠山には烏帽子子(ゑぼしご、元服の時の加冠者を烏帽子親と言い、冠を加えられた方を烏帽子子という)にてぞありける。〈あまりに水がはやうて、馬はおしながされ候ひぬ。力およばで、つきまいらせて候(仕方がないからあなたにつかまって来ました)〉といひければ、〈いつもわ(我)殿原は、重忠が様なるものにこそたすけられんずれ〉といふままに、大串をひッさげて、岸のうへへぞ投げあげたる。ただなをッて(真直ぐに立って)、〈武蔵国の住人、大串次郎重親、宇治河かちたちの先陣ぞや〉とぞ名のッたる。敵も味方も是を聞いて、一度にどッとぞわらひける。其後畠山のりかへに(乗換の馬)のッてうちあがる。魚綾の直垂(ぎょれうのひたたれ、麹塵色[きくじんいろ]ともいい、あるいは色の名でなく波に魚の紋のある綾織ともいう。直垂はよろいひたたれ。)に火おどしの鎧きて、連銭葦毛なる馬に黄覆輪(きんぶくりん)の鞍をいてのッたる敵の、まッさきにすすんだるを、〈ここに駈くるはいかなる人ぞ。なのれや〉といひければ、〈木曽殿の家の子に、長瀬判官代重綱〉となのる。畠山〈けふのいくさ神いははん(今日の軍神への供え物にしてやろう)〉とて、をしならべてむずととッて引き落し、頸ねじきッて、本田次郎が鞍のとッつけ(鞍の輪につけた紐、その紐を頭髪の根元に通して鞍に結び付ける)にこそつけさせけれ。これをはじめて、木曽殿の方より宇治橋かためたる勢共、しンばしささへて防ぎけれども、東国の大勢みな渡いて攻めければ、散々にかけなされ、木幡山・伏見をさいてぞ落ち行きける。勢田をば稲毛三郎重成がはからふにて、田上供御の瀬をこそわたしけれ。(一方、範頼の軍勢が向かった勢田のほうめんでは、稲毛三郎重成の計略で田上供御の瀬の付近で瀬田川を渡った。田上は瀬田川東岸の地名、田上供御の瀬は瀬田橋から約一里かりゅうで、大戸川[田上川ともいう]のごうりゅうする所。)」
(この段終わり)
*秋艸道人、会津八一先生の歌集『鹿鳴集』より、奈良愛惜の歌。
〈南京余唱・春日野にて〉
「うつくしき ひとこもれりと むさしのの
おくかもしらず あらしふくらし」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
*今、若草山の北麓、浄瑠璃寺や正倉院、東大寺、春日山に近い「中ノ川・東鳴川」に奈良市のごみ焼却場を建設するというとんでもない計画があります。ここに焼却場ができ、高い煙突から煙が吐き出されることになれば、日本の宝、世界の宝である神聖な古都の風景と文化財が破壊されます。
悠久の大和、奈良の山々は日本人の心のふるさと、国のまほろばです。
「やまとは 国のまほろば たたなづく
青垣やまごもれる やまとしうるはし」
日本武尊(やまとたけるのみこと)・古事記
この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンター建設計画に関する課題について』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。
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