般若寺 コスモス花だより 9・30
暑かった九月は今日で終わり。本当に残暑の「長い月」でした。遅れていたコスモスの花もようやく秋花が咲いてきました。「秋咲大輪美色」(タキイ)や「オータム・ビューティ」(サカタ)という種類です。花は赤白ピンクの単弁で大きさは8センチもあり、見栄えのする存在感あるコスモスです。
《秋の花々》
◎ コスモス:≪見ごろ・五分咲き≫
見ごろは10月上旬~11月中旬。
35種類。15万本。
珍しい品種のシーシェル、ローズボンボン、スノーパフ、ハッピーリング、ピコティ、サイケなどが咲いています。ローズボンボン、スノーパフは複弁で菊のような豪華な花です。淡い黄色のイエローガーデン、イエローキャンパスも咲き出しました。今年の花は一週間遅れていますので10月から11月中旬までが見ごろとなるでしょう。
〇秋海棠:≪満開すぎ≫
〇シオン(紫苑):≪満開≫
〇水引草:≪見ごろ≫
《白鳳秘仏特別公開》
期間:9月21日(土)~11月11日(月)
「大きなる 手をもて我ら 救わんと
微笑みおはす 白鳳の弥陀」
十三重大石塔昭和大修理の時、800年の眠りから目覚めるように御出現された白鳳時代阿弥陀如来金銅仏と胎内仏、水晶舎利塔、丈六文殊脇侍の太刀と手首、嵯峨天皇勅額、神功皇后大絵馬、雨宝童子、菅原天神、青銅製相輪、仏画などが御開帳されます。
《「般若寺コスモス花あかり」特別企画》
「南朝御聖蹟般若寺顕彰碑」建立 記念奉納地歌舞
奉納舞:山村流上方舞
山村若女(やまむらわかめ)師匠
吉野郡川上村ご出身、後南朝遺臣御末裔
日時:10月19日(土)午後五時半より
会場:本堂・御本尊文殊菩薩御宝前(後醍醐天皇御願仏)
演目:追善の地歌舞『虫の音』
『松竹梅』(山村若瑞・わかみずき)
地方(じかた)演奏:菊原流五代目
菊原光治(きくはらこうじ)師匠
演目:『残月』ほか
〔短歌〕
「ブリッヂの 赤き糸くづ 人ふみて
なほのこりゐる 赤き糸くづ」
木下利玄・銀
〔俳句〕
「こほろぎや たやすく抜けて 畑の中」市村究一郎
〔和歌〕
「さをしかの しかならはせる 萩なれや
たちよるからに をのれおれふす」
紫式部・玉葉
「牡鹿が、(自分の妻として)そうするように習慣づけた萩なのだろうか、折ろうとして側に寄っただけで、自分から折れ伏しているよ。」
・さをしかの=「小男鹿」と「然(し)か」(そのように)とを重ねて声調を整えた技巧。
*秋艸道人、会津八一先生の歌集『鹿鳴集』より、奈良愛惜の歌。
〈震余 大正十二年九月 被服廠の跡にて〉
「みぞがはの そこのをどろに しろたへの
もののかたちの みゆるかなしさ」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
*「南朝御聖蹟を顕彰する」
後醍醐帝、船上山還幸
『太平記』 巻第七 「前朝伯州船上還幸の事」
・本文:〈にはか事なれば、御輿などもなくて、長年が着たる冑の上に荒薦(あらこも)を巻いて、主上を負ひ進らせ、鳥の飛ぶが如く、舟上(ふなのうへ)へ入れ奉る。やがて我が倉の内の米穀・銭貨を取り寄せて、己が舘には火を懸けて、舟上に伺候して、皇居を守護し奉る。名和七郎武略の謀事(はかりごと)
ある者にて、白布をあまた取り寄せて、松葉を焼(た)いて夫すべつつ、近国の武士の家々の紋を書いて、ここかしこの木の末に打つ立てたり。この旌ども山風に飛揚して、山中に大勢の充満したる用にみえたりける。
かかりし程に、同じ記二十九日、佐々木隠岐判官清高・同じく弾正左衛門、その勢三千余騎押し寄せたり。この舟上と申すは、北は大山に続いて峰岨(そばだ)ちて、三方は地僻(さが)りにて岸絶えたり。白雲腰に帯をなし、峨々として遥々たり。されども事急にして、にはかに拵(こしら)へたる城なれば、堀の一つをもほらず、塀の一重をも塗らず、ただ処々に大木を切り倒し、逆木(さかもぎ)に引き、坊舎の甍を破りてかい楯にかけるばかりなり。されば寄手三千余騎、坂中まで責め上りて、城中を屹(きつ)向上(みあ)げたれば、松柏生ひ茂りていと深き木隠れに、勢の多少は知らねども、峨々たる山の高峰に、家々の旌四、五百流、雲に翻(ひるがへ)り日に映じて、燦然としてぞ見えたりける。さてははや近国の勢ども、ことごとく馳せ参じけりと心得て、この勢ばかりにては責めがたしと思惟(しゆい)して、寄手心に危ぶめば、進むものさらになかりけり。城中の勢どもこれを見て、敵に勢の多少を見えじとて、隠れて時々射手を出だし、遠矢を射させて日を昏(く)らす。〉
・訳:(急なことなので御輿もなくて、又太郎長年が着ている鎧の上に荒薦を巻いて、帝を背負い申しあげ、鳥が飛ぶような速さで船上山の館へ帝をお入れする。又太郎長年はすぐに自分の倉の中にある米穀や銭を船上山に運び込み、自分の館には火を放って船上山に参上して、皇居をお守り申し上げる。一族の名和七郎は武勇の計略にすぐれた者で白布を多く取り寄せ、松葉を焚いてすすけさせ、その白布に近国の武士たちの家々の紋を描いて、あちらこちらの梢に立てておいた。この旗が峰吹く風にひるがえって、山中に大軍勢が満ち満ちているように見えたのであった。
こうしたときに、同月の二十九日、佐々木隠岐判官清高と同佐々木弾正左衛門とが、その手製三千余騎で押し寄せて来た。この船上山というのは、北は大山に続いていて峯は険しく、三方は山裾がのびていて絶壁になっている。白雲が山麓を巻いていて、山は険しく、はるか遠くにそびえている。けれども急なことで、にわかに造った城なので、堀の一つも掘らず、塀の一つすらこしらええておらず、ただところどころに大木を切り倒して逆茂木とし、僧房の屋根を壊して垣楯として並べただけであった。したがって寄せ手三千余騎は坂の中途まで攻めのぼって、城中を厳しく見上げると、松柏が生い茂ってたいそう奥深い木陰に、勢の多少は分からないけれども、峨峨たる山の高い峰々に、諸家の旗が四、五百本、雲間にひるがえり、陽の光に反射して、燦然と輝いて見えた。さては早くも近国の軍勢がことごとく馳せ参じたのだと理解して、この軍勢だけでは攻略できないと考えて、寄せ手は不安に思って、進撃するものはいなかった。城中の兵たちはこの様子を見て、敵にこちらの軍勢の多少をさとらせまいというわけで、物陰に隠れて、時々射手(いて)を出しては遠矢を射かけさせて、日を過ごしていた。) (つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の心ある人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
そして『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びには、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが披瀝され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
しかし歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして世界から尊敬される観光都市奈良と言えるのでしょうか、よく考えてください。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンター建設計画に関する課題について』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)