般若寺 春咲コスモス 花だより 5・11
《般若寺 春咲コスモス 花だより》
○春咲コスモス:≪咲きはじめ≫
花期・4月下旬~7月上旬 13種類 3万本
見ごろは今月下旬から。
・シャガ:≪見ごろ≫
・花菱草、矢車草:≪見ごろ≫
・グラジオラス、テッセン:≪咲きはじめ≫
・山アジサイ、空木、黄ショウブ:≪つぼみ≫
・バナナの木(からたねおがたま):花がバナナのかおりを漂わせている
*〔短歌〕
〈嵐の空〉
「昼もなか 桑の芽をつむ 少女らの
いそがしく摘み 物言はず居り」
島木赤彦・氷魚
〔俳句〕
「大原や 小町が果の 夏花つみ」一茶
〔和歌〕
「行きてみん 深山がくれの をそざくら
あかず暮れぬる 春の形見に」
藤原長能・風雅297
「行ってみようよ、山奥にひっそりとかくれて咲く遅桜を。十分味わい切らないうちに終わってしまった春の形見として。」
・あかず=飽かず。満足し得ずに。
*《秋艸道人、会津八一先生の歌集『鹿鳴集』より、奈良愛惜の歌。》
〈鐘楼〉
「ひさしくも つかざるかねを おしなでて
こもれるひびき かずしもあらず」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
*《『西大勅諡興正菩薩行実年譜』を読む》119.
西大勅謚興正菩薩行実年譜 巻中
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
「 抑(そもそも)人の世に在るや、只一旦の名利(いったんのみょうり)に耽着(たんちゃく)し、更に永劫の沈淪(ちんりん)を顧みず、東に趨(はし)り、西に趨(おもむ)き、悪業は山嶽(原本;岳)と積み、朝に営み、夕に営(いそし)んで善根は涓塵(けんじん)も無し。矧(いわんや)漁猟(ぎょりょう)を業として、鎮(つね)に山水の生(さんすいのしょう)を殺す。艶色(えんしょく)を衒(てら)ひて、常に衆庶の心を迷わす。加うるに、或いは盲聾(もうろう)の報いを受くるの者あり。或いは疥癩(かいらい)の病に嬰(かか)る者あり。彼の前業(ぜんごう)を謂うに、則ち誹謗大乗(ひぼうだいじょう)の罪あり。泥梨(ないり)を歷(ふ)ると雖も、猶未だ尽きず。其の現報(げんぽう)を見れば、亦乞匈孤独(きっきょうこどく)の苦、但衣食を望み、他念無し。解脱は何れの日ぞ。流転(るてん)の絆、弥(いよいよ)纏(まと)う。出離(しゅつり)は何期(原本;無期、期すること無し)。牢獄の捷(しょう)、堅く鏁(とざ)す。悲しい哉、悲しい哉。為何(いかんせん)為何(いかんせん)。偏に文殊の威神(いしん)を仰いで、以て済度(さいど)の導師と為すにはしかじ。」
・一旦の名利=旦は朝。一日。一時の名誉や利養、利益。
・耽着=心を注ぎ執着する。
・沈淪=深くしずむこと。零落。
・涓塵=ちり、ほこりのように僅か。
・漁猟=魚や鳥獣を獲ること。
・山水の生=野山や河海の生き物、衆生。
・艶色=つややかな容色。色っぽい顔つき。
・衒=てらう。売る。歩きながら売る。
・盲聾=視覚障害者と聴覚障害者。
・疥癩=疥は疥癬。ヒゼンダニの寄生によって生じる伝染性皮膚病。ひどいかゆみをもつ。癩はハンセン病。ライ菌の感染によって起る慢性の伝染性感染症。ハンセン病は特効薬プロミンにより治癒するようになったが、いまだに社会の一部には無知と偏見による差別が残っている。
・前業=前世における善悪の業(行為)。
・誹謗大乗=誹謗正法(ひぼうしょうぼう)、謗法とも。邪見と不信によって仏法(大乗)をそしる者は地獄に落ち、永久にさとりを得ることができないとされる。
**この箇所について、歴史学者のあいだでは、身体障害や病気の苦しみを背負って生きざるを得なかった人々を前世の業の報いととらえる叡尊師の考え方は、差別的宿業観を是認していて、人間のいのちや幸せの尊重を説いた仏の教えから離れた立場に立ち、かえって差別を当然視しているのではないか、との指摘がある。しかし科学的知識の未発達な中世の時代にあって、目の前の不幸な現実を因果応報の仏教的教説で解釈しようとしたことは時代の通念であり、誰しも現代のような人権思想を持つことは困難であったと思われます。私は、叡尊師は病者貧者に慈悲行を実践して眼前の苦しみを救い、菩薩戒を授けることで人々に仏の世界への接近、成仏の可能性を指し示し、生きる希望を与えようとしたととらえたいと思います。
・泥梨=梵語、ニラヤ。地獄。
・現報=現世に業因を作って現世にその報いを受けること。
・乞匈孤独=乞食をなりわいとし、疎外を受けて孤独なくらしをする人。
・流転=流転輪廻。衆生が無明の惑いのため、生まれかわり死にかわりして迷界を流転してきわまりないこと。
・出離=出離生死。
・捷=いくさに勝つ。はやい、すみやか。
・威神=つよくおごそかで霊妙ふしぎな働き。たましい、こころ。
・済度=衆生済度。菩薩が苦海にある衆生を済(すく)い出してさとりの世界に度(わた)らせること。
(つづく)
*《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文では抱負が述べられています。その結びには、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが披瀝され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。
| 固定リンク
コメント