般若寺 初夏咲きコスモス 花だより 6・1
《般若寺 花だより》
六月は水無月(みなつき)。旧暦の六月は梅雨が明けて水が無くなる月。しかし新暦では梅雨本番、「水の月」。ここ数日、真夏のような暑さが続いており、まだ雨の気配はありません。晴天はあじさいにはつらいですが、コスモスには絶好のお天気となります。
○初夏に咲くコスモス:≪見ごろ・五分咲き≫
コスモスの草丈が1メートルを超え、人の高さに近づいてきました。スーパービッキー、ソナタ、シーシェル、ピコティ、サイケ、ダブルクリック、センセーション、ベルサイユなどが咲いています。新種は一つ一つの花が大きく、色鮮やかで存在感があります。
花期・春から7月上旬まで。満開は6月。
13種類 3万本。
・桜うつぎ、矢車草:≪見ごろ≫
・すいかずら、ていかかずら:≪見ごろ≫かおり花
・姫睡蓮、山アジサイ:≪咲きはじめ≫
・あじさい、ひつじぐさ:≪つぼみ≫
*〔短歌〕
〈赤罌粟の花〉
「夜おそく 水を貰ひに 行く道は
桑の葉青く 灯を提(さ)ぐるなり」
島木赤彦・氷魚
〔俳句〕
「行々(ぎょうぎょう)し 大河はしんと 流れけり」一茶
・行々し=ヨシキリ
〔和歌〕
「あやめふく 軒ば涼しき 夕風に
山ほととぎす ちかくなくなり」
二条院讃岐・玉葉347
「菖蒲を葺いた軒端を、涼しく夕風が吹きわたり、山時鳥もすぐ耳近くで鳴くようだよ。」
*《秋艸道人、会津八一先生の歌集『山光集』より、奈良愛惜の歌。》
〈奈良の新薬師寺を思ひいでて〉
「みほとけは いまもいまさば わがために
まなこすがしく まもらせたまへ」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
*《興正菩薩行実年譜を読む》140.
西大勅謚興正菩薩行実年譜 巻下
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
「後宇多院建治元年乙亥(きのとい) 改元四月廿日
菩薩、七十五歳。春三月、太神宮(だいじんぐう)に詣して護国法を修す。夏四月、良観性公(良観房忍性)、鎌倉自り来たり、菩薩に礼謁し、献ずるに唐本大般若経一部、仁王経十部、梵網理趣孔雀明王等経各十部、並びに金胎曼荼羅、釈迦三尊、十六善神像等を以てす。七月廿五日、徒僧百口を率いて河(河内)の平岡明神に詣す。三箇日を卜して大般若経を転読す。廿八日、菩薩戒を八十余人に授く。訖って天王寺に至り、四分梵網布薩(しぶんぼんもうふさつ)を行う。八月二日、住吉明神に詣し、大般若幷びに五部大乗経を転読すること、又三日也。五日。河尻燈籠堂(かわじりとうろどう)に届き、菩薩戒を三十六人に授く。七八両日、本宮(ほんぐう)に於いて大般若仁王金剛般若等の経を転読す。又、菩薩戒を五十有七人に授く。十日、亦天王寺に還る。三日を点じて最勝王経を講讃すること百部。既に竟って西大寺に還る。」
・大神宮=伊勢太神宮。
・四分梵網布薩=布薩は梵語ウポーシャダ、浄住、近住、斎、説戒などと訳される。同一地域内の比丘たちが半月ごとに会合して過去半月の行為を自己反省し、罪があれば告白懺悔する行事で、毎月の満月と新月の日に行われる。梵網布薩(大乗布薩)は十四日と二十九日、四分律布薩(小乗布薩)は十五日と三十日に行われた。それぞれの波羅提木叉(戒条)を読誦する。
・河尻燈籠堂=兵庫県尼崎市の神崎川と猪名川の合流地点にあった古代からの港町、河尻の泊(とまり)。京都・奈良と瀬戸内海を結ぶ重要地点。灯台施設(燈籠堂)を維持管理した寺か。
・本宮=本宮といえば熊野本宮を思い浮かべるが、叡尊師の行程から見て、五日の河尻、十日の四天王寺の間の七、八日両日を費やしているので熊野は無理。住吉社には第一本宮から第四本宮あるので、八月二日に続いて再拝したのであろう。
(つづく)
*《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*5月13日付の奈良新聞報道によると「奈良市 清美工場移転/会館/火葬場移転 進まぬ懸案事業 〈住民合意〉得られず」という見出しで、奈良市議会市民環境委員会(中西吉日出委員長)の審議の様子が記事になっていました。クリーンセンター問題では、現工場の早期移転を求める北部住民と、計画の白紙撤回を求める東部住民の双方から請願が提出されていることを紹介しています。そして昨年一月に候補地を中ノ川町と東鳴川町に選定した奈良市クリーンセンター建設計画策定委員会(渡辺信久委員長)は、(ごみ集積のリレーセンター設置案を出した後、)昨年8月から休止状態となり、今年2月13日付で全委員19人の任期切れとなったことを報じています。
事態はこう着状態です。そろそろ市長さんの政治決断が求められる時が来たのではないでしょうか。公平な市民の意見では、現地での建て替えを含む候補地の再検討をされた方がいいのでは、という声が聞えます。市内では最高の立地条件(4車線の幹線道路が東西南北に交差)にある現工場こそ最適地であり、ここで最新の設備を導入するのがベストの解決策ではないのか、という市民の声を尊重していただきたいですね。地元住民の方も、人口が少ないからと言って都市周辺の山村部へ工場を押しつけるのではなく、より良いクリーンセンターのあり方を市当局と話し合っていただきたいですね。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文では抱負が述べられています。その結びには、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが披瀝され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。
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