般若寺 夏の花だより 8・31
《コスモス なら般若寺 花だより》
猛暑で始まり、大雨で大災害を引き起こした異常気象の長い8月も今日で終わりです。明日からは秋。まだ残暑もあるでしょうが、さわやかな秋冷の季節がはじまります。
〇秋のコスモス:≪ちらほら咲き≫早くも咲きだしました
見ごろは9月中旬~11月上旬
満開は9月末から10月下旬
花数・15万本、25種類
〇しおん:≪つぼみ≫
〇秋海棠(しゅうかいどう):≪見ごろ≫
花期・9月まで
赤白2種類 200株
〇ひつじぐさ、姫睡蓮:≪見ごろ≫ 9月まで
〇百日紅(さるすべり):≪見ごろ≫9月まで
*お知らせ:今年は十年ぶりに国宝楼門入口を開きます。9/27,28.10/4,5,11,12,13の土・日・祝日。午前10時から午後4時の予定。雨天中止。
〔短歌〕
〈富士見原 其二〉
「すいと虫 畳のうへに 鳴きてをり
蚕をあげし わが家のうちに」
島木赤彦・氷魚
〔俳句〕
「苦の娑婆や 虫も鈴ふる はたををる」一茶
〔和歌〕
「月の色も 秋ちかしとや さよふけて
まがきの荻の おどろかすらん」
式子内親王・玉葉443
「月の色も秋近い色になったよ、と知らせたくてか、夜更けて真垣の荻が、さやさや音を立てて人の注意をうながすらしいよ。」
〔秋艸道人、会津八一先生の歌集『鹿鳴集』より、奈良愛惜の歌〕
〈病中法隆寺をよぎりて〉
「うつしよの かたみにせむと いたづきの
みをうながして みにこしわれは」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
《真言律の祖、叡尊興正菩薩一代記を読む・改訂版》231.
『西大勅謚興正菩薩行実年譜』
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
「勅謚興正菩薩年譜 題辞」
◆閻浮(えんぶ①)、日の出ずる勝域、豊葦原中津瑞穂國(とよあしはらなかつみづほのくに)人皇百十三代(にんのうひゃくじゅうさんだい②) 仙洞太上皇(せんとうだじょうこう③)御即位の年、霜月の望鬼宿の日(ぼうきしゅくのひ④)。余、河内州科長(しなが⑤)楠氏の家に生を感じ、襁褓(むつき⑥)にして佛陀を知り、年甫(ねんぽ⑦)七歳にして抜俗(ばつぞく⑧)の志を發す。考妣(こうひ⑨)之を諾(だく)すれども、太守石川主殿頭昌勝(たいしゅいしかわとのものかみまさかつ⑩)、鞠愛(きくあい⑪)して聽(ゆるさ)弗(ず)。 而(しかれ)ども、余、出家すること帰るが如くにして、顧戀(これん⑫)する所無し。吾が祖、興正大士落髪の歳(十七歳)に臻(いた)りて、大和岡本斑鳩宮法起(岡本法起寺)中興第二世、純空性和尚を禮して、以て受業の師と為し、周羅(しゅうら⑬)を削除して、慈息戒(じそくかい⑭)を稟(う)け、聽渉(ちょうしょう⑮)精苦して鋒芒(ほうぼう⑯)少しく露(あら)はる。
① 閻浮=閻浮提(えんぶだい)。人間の住む世界。
② 人皇百十三代=百十二代の誤り。人皇は神武天皇以後の天皇。
③ 仙洞太上皇=霊元上皇(1654-1732)。在位は寛文三年(1663)―貞享四年(1687)。退位後、二回の院政を敷かれ期間が長かったので「仙洞様」と呼ばれた。
④ 望鬼宿日=望は満月。陰暦の15日。鬼宿は二十八宿の一つ、たまほめぼし。
⑤ 科長=磯長、南河内太子町。聖徳太子御廟のある叡福寺のあたり。
⑥ 襁褓=おむつ。
⑦ 年甫=年のはじめ。年始。
⑧ 抜俗=出家。
⑨ 考妣=亡くなった父母。
⑩ 太守石川主殿頭昌勝=昌勝は初名、改名して石川憲之。山城淀藩々主(1634-1707)。従五位下。
⑪ 鞠愛=愛育。気に入って養い育てる。
⑫ 顧戀=心のこり、未練。
⑬ 周羅=中国古代、周のあやぎぬ。俗世の衣服。
⑭ 慈息戒=沙弥戒。
⑮ 聴渉=教えを聴聞し勉学すること。
⑯ 鋒芒=鋒鋩。するどい切っ先。感性、言葉のするどいこと。
◆貞享(二年、1685)乙丑三月二日辰時下分、泉(和泉)の千種(ちぐさ)の森、神鳳僧寺(じんぽうそうじ①)に於いて、大乗菩薩三聚通受羯磨(だいじょうぼさつさんじゅうつうじゅこんま②)を以て自誓受具(じせいじゅぐ③)す。時に年二十二。余、謂(おもへ)らく叔世(しゅくせい④)戒師に値遇すること最も甚だ難し。吾が祖 興正菩薩、彼の菩薩通受七衆成性(しちしゅうじょうしょう⑤)の奥義を発明して、此の慈氏(じし⑥)説き玉ふ所の瑜伽顕了三聚自誓之羯磨を開示するに匪(あら)ずんば、奚(なん)ぞ能く大苾蒭(びっしゅ、比丘)位に進むことを獲んや。其れまさに熟(つらつら)審かにすべき也。此れに由りて之を観(おも)ふに、骨に鏤(ちりば)め、心に銘じ、恩を喞(しょく、啣ヵ⑦)し、徳に報いずんば有るべからざる者也。斯の書を編集の志願、始めて茲に奮発(ふんぱつ⑧)す。
① 神鳳僧寺=泉州(現大阪府堺市西区鳳北町)にあった律寺。行基開基と伝え、江戸時代に復興された真言律の拠点寺院(律三僧坊の一つ)。明治の廃仏毀釈で廃寺となり大鳥神社となる。
② 大乗菩薩三聚通受羯磨=大乗菩薩戒は三聚浄戒のことで、摂律儀戒・摂善法戒・摂衆生戒(饒益有情戒)の三種類がある。受戒の方法には、三聚戒を一度に受ける通受と摂律儀戒だけを別個に受ける別受の二つがある。羯磨はカツマとも言う(天台宗)。作法、業と訳される。比丘などが戒を受けたり懺悔したりする作法。
③ 自誓受具=受戒するのに戒和上をはじめ三師七証の十師がそろわない場合、自ら誓って仏菩薩から直に戒を受る自誓受戒の方法が許されると言う(『占察経』による)。受具は比丘、比丘尼が受ける具足戒(ぐそくかい、完全な戒)、大戒とも。
④ 叔世=すえのよ。末世。季世。
⑤ 菩薩通受七衆成性=七衆は、比丘・比丘尼・沙弥・沙弥尼・式沙摩那・優婆塞・優婆夷。通受受戒によって菩薩比丘性などが成立し、菩薩になるための戒が成立する。
⑥ 慈氏=弥勒菩薩。『瑜伽師地論』の論主。
⑦ 喞=喞はそそぐ、かこつの意。啣(かん、本字は㘅)はふくむ、心に留めるの意。
⑧ 奮発=気力をふるいおこすこと。
(つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文では抱負が述べられています。その結びには、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが披瀝され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。
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