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2014年11月

2014年11月30日 (日)

コスモス寺 花だより  11・30

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

秋のコスモス ≪本日で終わりとします≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

イチョウの葉が黄色く色づきました。もう散りはじめています。

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「山門の 冬木の下に 灯火(ともし)もつ

       車夫ものを言ふ 過ぎゆく我に」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「御談義の 手まねも見ゆる かれの哉」一茶

・訳:お談義する人の手ぶりの真似も見えている。なんと枯野の中から。

〔和歌〕

「露わくる このしたとをき 春日野の

        お花がなかに さをしかの声」

          藤原冬綱朝臣・玉葉563

「露を分けて行く木の下道が遠く続く、春日野の尾花の中に、牡鹿の鳴く声が聞える。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈唐招提寺〉

「せうだいの けふのときこそ うれしけれ

         そうのつくれる いものあつもの」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》270

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆一日(あるひ)一(ひと)りの老翁有りて西大寺に来たり、菩薩戒を求受し竟(おわ)て、即ち薬方を授けて曰く、此の方甚だ神妙にして能く沈痾(ちんあ①)を治す。向後、これを用いて宜(よろし)く自他の病苦を救うべし。菩薩問いて曰く、翁は是れ何れの人ぞ。老翁答えて曰く、我は是れ、少彦名命(すくなひこなのみこと②)石落神(しゃくらくじん③)なりと。言ひ訖(おわ)って忽爾(こつじ④)として見えず。菩薩、奇異の思いを為し、之を調合して以て病者に与ふるに、平癒せずと云ふことなし。遂に施薬院を構えて広く病僧及び医療に便り無き者に施し、服用せしむ。又、東門の辺に地を択び、社を建てて以て彼の神を祭る。盖(けだ)し、此の神は天上高皇産霊尊(たかみむすびみこと⑤)に一千五百の神子あり、其の中に於いて、此の神尤も最小也。父の尊(みこと)怪しみ、掌(たなごころ)の上に居(すえ)て之を寵愛したまふ。其の指の間より此界に洩れ落ち、石上に在り。故に石落神(しゃくらくじん)と名づく。三輪の別宮に鎮座して、薬草を齅分(かぎわ)け、蒼生(そうせい⑥)の病を治さる。今に豊心丹(ほうしんたん⑦)の妙方を伝う。誠にゆえ有るかな。今時に臻(いた)るも、年始に西大寺に於いて呪薬の法会を啓建して、秘法を勤修す。以て之を加持すること断絶せず。十二月、勇猛心を発して、広大の願を立つ。

 

 沈痾=久しくなおらない重い病気。

 少彦名命=身体は小さいが、敏捷で、オオクニヌシノミコトとともに国土を経営し、医薬・禁厭の法を伝えた。

 石落神=西大寺東門の前にあるお社。少彦名命が落ちてきたと伝える石と小さな祠がある。

 忽爾=にわかなさま。忽然。

 高皇産霊尊=天地開闢のとき、高天原に出現した神。アメノミナカヌシノカミ、カミムスビノミコトとともに造化三神として知られる。

 蒼生=(民を青く茂る草にたとえていう)あおひとくさ。人民。

 豊心丹=日本最古の売薬とされる。西大寺で昭和二十年ごろまで製造販売していた漢方売薬。寺の大きな収入源となっていた。製薬道具一式、関連文書は奈良県立民俗博物館に寄贈保存されている。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


Img_9630

 

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2014年11月29日 (土)

コスモス寺 花だより  11・29

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

今日は朝から大塔宮護良親王を敬慕される「大塔会」の皆様が御参詣されます。般若寺で供養のおまいりをしてから吉野山まで行かれます。会では定期的に例会をもち宮様を偲ぶ地を訪ねておられます。当寺では宮様とゆかりの後醍醐天皇、文観上人、本性房、忍性菩薩、慈真和尚の話をさせていただきます。

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

まわりの木々の葉が色づいた晩秋の景色に彩りを添えてくれます。

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「山門は 早くとざせり 木枯の

       冬木を鳴らす 夜の空の晴れ」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「江戸江戸と えどへ出(いづ)れば 秋の暮」一茶

・訳:江戸江戸と、江戸へ行けばいいことがありそうだと出て行ってみたものの、さびしい秋の暮。

〔和歌〕

「風におつる 草葉の露も かくれなく

         まがきにきよき 入り方の月」

           儀子内親王・風雅630

「風に吹かれて乱れ落ちる草葉の露もかくれる所なくはっきり見えるほど、垣根に清らかな光りをそそぐ、入ろうとする月よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈唐招提寺〉

「りつゐんの そうさへいでて このごろは

         はたつくるとふ そのにはのへに」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆一日(あるひ)一(ひと)りの老翁有りて西大寺に来たり、菩薩戒を求受し竟(おわ)て、即ち薬方を授けて曰く、此の方甚だ神妙にして能く沈痾(ちんあ①)を治す。向後、これを用いて宜(よろし)く自他の病苦を救うべし。菩薩問いて曰く、翁は是れ何れの人ぞ。老翁答えて曰く、我は是れ、少彦名命(すくなひこなのみこと②)石落神(しゃくらくじん③)なりと。言ひ訖(おわ)って忽爾(こつじ④)として見えず。菩薩、奇異の思いを為し、之を調合して以て病者に与ふるに、平癒せずと云ふことなし。遂に施薬院を構えて広く病僧及び医療に便り無き者に施し、服用せしむ。又、東門の辺に地を択び、社を建てて以て彼の神を祭る。盖(けだ)し、此の神は天上高皇産霊尊(たかみむすびみこと⑤)に一千五百の神子あり、其の中に於いて、此の神尤も最小也。父の尊(みこと)怪しみ、掌(たなごころ)の上に居(すえ)て之を寵愛したまふ。其の指の間より此界に洩れ落ち、石上に在り。故に石落神(しゃくらくじん)と名づく。三輪の別宮に鎮座して、薬草を齅分(かぎわ)け、蒼生(そうせい⑥)の病を治さる。今に豊心丹(ほうしんたん⑦)の妙方を伝う。誠にゆえ有るかな。今時に臻(いた)るも、年始に西大寺に於いて呪薬の法会を啓建して、秘法を勤修す。以て之を加持すること断絶せず。十二月、勇猛心を発して、広大の願を立つ。

 

 沈痾=久しくなおらない重い病気。

 少彦名命=身体は小さいが、敏捷で、オオクニヌシノミコトとともに国土を経営し、医薬・禁厭の法を伝えた。

 石落神=西大寺東門の前にあるお社。少彦名命が落ちてきたと伝える石と小さな祠がある。

 忽爾=にわかなさま。忽然。

 高皇産霊尊=天地開闢のとき、高天原に出現した神。アメノミナカヌシノカミ、カミムスビノミコトとともに造化三神として知られる。

 蒼生=(民を青く茂る草にたとえていう)あおひとくさ。人民。

 豊心丹=日本最古の売薬とされる。西大寺で昭和二十年ごろまで製造販売していた漢方売薬。寺の大きな収入源となっていた。製薬道具一式、関連文書は奈良県立民俗博物館に寄贈保存されている。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月28日 (金)

コスモス寺 花だより  11・28

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

まわりの木々の葉が色づいた晩秋の景色に彩りを添えてくれます。

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「木枯の 街のはづれに 灯明かきは 

       小学校の 夜学なるべし」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「一つなくは 親なし鳥よ 秋の暮」一茶

・訳:ひと声鳴くのは、親がいない鳥だよ。さびしい秋の暮。

〔和歌〕

「やたののや 秋のうれへや ひとつならし

        小鹿妻どひ 虫も鳴く也」

          新院(後伏見院)御製・玉葉560

「野にも山にも、秋の悲傷はいずこも同じであるらしい。小鹿は妻を求めて呼び、虫も鳴いているようだよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈西の京〉

「いにしへの うたのいしぶみ おしなでて

         かなしきまでに もののこほしき」

・こほし=恋し。なつかしい。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》269

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(仁治)三年壬寅(みずのえとら)

菩薩、四十二歳。正月十八日、額安寺学春等、迎えて菩薩戒を受け、因みに(ちなみに①)懇請あって、梵網古迹記(ぼんもうこしゃくき②)を講ず。二月十二日、戒法を受くる者、五十四人。翌日、西大寺に回る。一(ひと)りの信士(しんじ③)あり、路に迎えて奉請し、家に帰って供養す。童子、菩薩を見て、忻然(きんぜん④)として旧識(きゅうしき⑤)の如し。即ち父母に白(もう)して弟子と為(な)らんことを願う。父母、夙縁(しゅくえん⑥)あることを知って、敢えて之を禁ぜず。遂に同十六日を以て西大寺に届かる。菩薩、度して以て僧と為し、授るに五戒を以てす。時に年十有二、菩薩、法器を以て之を期し、慈憐(じれん⑦)提誨(ていかい⑧)す、慈真和尚(じしんわじょう⑨)是れ也。四月三日、長谷寺に於いて、菩薩戒を一百余人に授く。同十日、南法華寺に於いて七十六人に授け、同十二日、新井口に於いて二十九人に授く。八月十二日、森屋郷に於いて、五十四人に授く。九月、戒慧律師に命じて、南京東西の囹圍(れいい⑩)に於いて、病者に薬を与え、饑者(きしゃ⑪)に食を給い、其れをして沐浴せしめ、授るに八関斎戒(はちかんさいかい⑫)を以てす。其の仁慈(にんじ⑬)かくの如し。

 

 因みに=機縁として。

 梵網古迹記=梵網経の注釈書、新羅の青丘太賢の作。興正菩薩はさらに注釈を加え『梵網経古迹記輔行文集』を著す。

 信士=在俗の信者。

 忻然=にっこりよろこぶさま。

 旧識=旧知。以前からの知り合い。

 夙縁=むかしからの縁。

 慈憐=いつくしみあわれむ。

 提誨=さとしおしえる。

 慈真和尚=慈道房信空(12311316)。般若寺中興第一世長老、菩薩没後西大寺長老を継ぐ、第二世。後宇多天皇、談天門院五辻忠子に戒を授ける。諸国国分寺を復興し西大寺末寺とする。後醍醐天皇により「慈真和尚」を諡号される。

 囹圍=牢屋

 饑者=飢えたる人

 八関斎戒=八斎戒。在家信者に授ける戒。

 仁慈=他者に対する思いやり、いつくしみ。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月27日 (木)

コスモス寺 花だより  11・27

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

まわりの木々の葉が色づいた晩秋の景色に彩りを添えてくれます。

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「護国寺の 木群(こむら)をふかみ 日暮るれば

        木兎(つく)啼く聞ゆ この街の中へ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「義仲寺へ いそぎ候 はつしぐれ」一茶

・訳:芭蕉翁の眠っている義仲寺の時雨会に間に合うように急ぎます。おりしも初時雨。

〔和歌〕

「すみよしの 神のおまへの はまきよみ

         こと浦よりも 月やさやけき」

           前参議俊言・風雅627

「住吉神社の御神前の浜はまことに清浄であるから、それで、他の海岸よりも一層月が明るいのだろうか。」

・神のおまへの=祭神が海の神であり、社殿が海に面しているのでいう。

・こと浦=異浦。他所の海岸。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈西の京〉

「みほとけの ひかりすがしき むねのへに

         かげつぶらなる たまのみすまる」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》269

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(仁治)三年壬寅(みずのえとら)

菩薩、四十二歳。正月十八日、額安寺学春等、迎えて菩薩戒を受け、因みに(ちなみに①)懇請あって、梵網古迹記(ぼんもうこしゃくき②)を講ず。二月十二日、戒法を受くる者、五十四人。翌日、西大寺に回る。一(ひと)りの信士(しんじ③)あり、路に迎えて奉請し、家に帰って供養す。童子、菩薩を見て、忻然(きんぜん④)として旧識(きゅうしき⑤)の如し。即ち父母に白(もう)して弟子と為(な)らんことを願う。父母、夙縁(しゅくえん⑥)あることを知って、敢えて之を禁ぜず。遂に同十六日を以て西大寺に届かる。菩薩、度して以て僧と為し、授るに五戒を以てす。時に年十有二、菩薩、法器を以て之を期し、慈憐(じれん⑦)提誨(ていかい⑧)す、慈真和尚(じしんわじょう⑨)是れ也。四月三日、長谷寺に於いて、菩薩戒を一百余人に授く。同十日、南法華寺に於いて七十六人に授け、同十二日、新井口に於いて二十九人に授く。八月十二日、森屋郷に於いて、五十四人に授く。九月、戒慧律師に命じて、南京東西の囹圍(れいい⑩)に於いて、病者に薬を与え、饑者(きしゃ⑪)に食を給い、其れをして沐浴せしめ、授るに八関斎戒(はちかんさいかい⑫)を以てす。其の仁慈(にんじ⑬)かくの如し。

 

 因みに=機縁として。

 梵網古迹記=梵網経の注釈書、新羅の青丘太賢の作。興正菩薩はさらに注釈を加え『梵網経古迹記輔行文集』を著す。

 信士=在俗の信者。

 忻然=にっこりよろこぶさま。

 旧識=旧知。以前からの知り合い。

 夙縁=むかしからの縁。

 慈憐=いつくしみあわれむ。

 提誨=さとしおしえる。

 慈真和尚=慈道房信空(12311316)。般若寺中興第一世長老、菩薩没後西大寺長老を継ぐ、第二世。後宇多天皇、談天門院五辻忠子に戒を授ける。諸国国分寺を復興し西大寺末寺とする。後醍醐天皇により「慈真和尚」を諡号される。

 囹圍=牢屋

 饑者=飢えたる人

 八関斎戒=八斎戒。在家信者に授ける戒。

 仁慈=他者に対する思いやり、いつくしみ。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

Img_9301

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2014年11月26日 (水)

コスモス寺 花だより  11・26

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

まわりの木々の葉が色づいた晩秋の景色に彩りを添えてくれます。

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「木枯の 埃吹きあぐる 坂のうへの

       空紅(くれなひ)に 夕焼けてあり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「死にべたと 山や思はん 夕時雨」一茶

・訳:上手に死なないと山は思うだろうね。夕方の時雨。(病気ばかりしているが死なないことを、山を擬人化して詠んだ。)

〔和歌〕

「やどちかく 妻どふ鹿の こゑのみぞ

        秋のねざめの ともとなりける」

         冷泉前太政大臣(西園寺公相)・玉葉558

「家の近くまで、妻を求めてやって来る鹿の声だけが、秋の夜の寝覚のわびしい私の心の友となっているのだよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈西ノ京〉

「うかびたつ たふのもこしの しろかべに

         あさのひさして あきはれにけり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》268

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(仁治)二年辛丑(かのとうし)

菩薩、四十一歳。春二月、具戒を慈寂空公(慈富房見空)に授く。三月、成圓、証禅等の請に依りて律教を講演す。七月十六日、始めて衆法の自恣(じし①)を行ず。是の如く律苑の清規(しんぎ②)、次に依って挙行し、缾錫(へいしゃく③)翩翩(へんぺん④)として、龍象来たり萃(あつま)り、徳香﨟著(ろうちょ⑤)して、三尺の孺子(じゅし⑥)も皆、能く其の名を知る。又一夕夢みらく、春日明神来現し、隨喜し親しく冥護を告ぐ。継いで神祠に詣で、経典を几上に繙(ひもと)く。一心に之を読誦すれば、舎利忽(たちま)ち経巻の上に現る。数百粒の光明、煜々(いくいく⑦)として心目を照耀す。号して春日相伝の舎利と曰う也。

 

 自恣=夏安居の最後の日に、参集の僧が罪過を指摘し、懺悔すること。

 清規=清衆の規準の意。唐の百丈懐古海が禅宗の寺院生活の規則として初めて制定した。禅宗、浄土宗、日蓮宗にそれぞれの清規がある。

 缾錫=水甕と錫杖

 翩翩=ひるがえるさま。才気のすぐれているさま。

 﨟著=歳を重ねること著しい。

 孺子=こども。わらべ。

 煜煜=光り輝くさま。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月25日 (火)

コスモス寺 花だより  11・25

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

今日は雨。きのうまでの三連休はお天気も良く、紅葉の名所はどこも最高の人出で混み合いました。奈良公園でも駐車場へ入れなかった車で大渋滞でした。一転、きょうは雨のおかげで普段の静けさに戻りました。奈良らしく。

コスモスは行く秋を惜しむようにまだ最後の花を咲かせています。

木々の葉が色づき、うら枯れた寂しい晩秋の景色に彩りを添えてくれます。しかし霜が降りれば花は完全に終わります。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「国遠く 来つるわが子を 埃あがる

       日ぐれの坂に 歩ましめ居り」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「松嶋や 一こぶしづつ 秋の暮」一茶

・訳:松島のことが思われるなあ。握りこぶし一つずつの秋の暮。

〔和歌〕

「うす雲の ただよふ空の 月影は

        さやけきよりも あはれなりけり」

          後鳥羽院御歌・風雅597

「薄雲の漂う空に、その雲一重を通してさす月の光は、曇りなく明らかなのよりもかえって心に深くしみ入るものなのだなあ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈春日野〉

「かすがやま しみたつすぎの なかぞらに

         こゑはるかなる とびのひとむら」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》267

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆仁治元年庚子(かのえね) 改元七月十六日

菩薩、四十歳。三月六日、額安寺に届かる。菩薩戒を受ける者三十余人。八齊戒(はっさいかい①)を禀(うけ)る者四百余人。四月三日、忍性、沙弥戒(しゃみかい②)を受く。十一日、具足戒(ぐそくかい③)に進む。

 八斎戒=在家信者(優婆塞、優婆夷)が守るべき戒。不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒の五戒に六斎日に守るべき三戒(大きくゆったりした寝床で寝ない、装身具を身につけたり歌舞音曲になじまない、正午を過ぎて食事をしない)を加えたもの。

 沙弥戒=沙弥(出家して二十歳未満の僧)になるための十戒。

 具足戒=正式の大僧(比丘)になるために受ける二百五十戒。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月24日 (月)

コスモス寺 花だより  11・24

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

草木の葉っぱが色づき、末枯れた寂しい晩秋の景色に彩りを添える花となっています。

冬庭を飾るサザンカが沢山の花をつけてきました。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。まわりの木々では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。クヌギやイチョウが黄葉するのはまだ少し先です。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「坂の上を 音してとほる 電車には

        既に灯(ひ)ともれり 嵐の日暮」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「椋鳥の 釣瓶おとしや はつ時雨」一茶

・訳:灰褐色のムクドリが釣瓶落としのように飛び去って行く。今日、初時雨。

〔和歌〕

「草がくれ 見えぬをじかも つまこふる

        声をばえこそ しのばざりけれ」

          従三位頼政・玉葉557

「草にかくれて見えない牡鹿も、妻を恋うて鳴く声はどうしてもがまんできないで(かくれかねて音に立てて)いるのだなあ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈春日野〉

「かすがのの こぬれのもみぢ もえいでよ

         またかへらじと ひとのゆくひを」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》267

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆仁治元年庚子(かのえね) 改元七月十六日

菩薩、四十歳。三月六日、額安寺に届かる。菩薩戒を受ける者三十余人。八齊戒(はっさいかい①)を禀(うけ)る者四百余人。四月三日、忍性、沙弥戒(しゃみかい②)を受く。十一日、具足戒(ぐそくかい③)に進む。

 八斎戒=在家信者(優婆塞、優婆夷)が守るべき戒。不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒の五戒に六斎日に守るべき三戒(大きくゆったりした寝床で寝ない、装身具を身につけたり歌舞音曲になじまない、正午を過ぎて食事をしない)を加えたもの。

 沙弥戒=沙弥(出家して二十歳未満の僧)になるための十戒。

 具足戒=正式の大僧(比丘)になるために受ける二百五十戒。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年11月23日 (日)

コスモス寺 花だより  11・23

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

草木の葉っぱが色づき、末枯れた寂しい晩秋の景色に彩りを添える花となっています。

冬庭を飾るサザンカが沢山の花をつけてきました。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。まわりの木々では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。クヌギやイチョウが黄葉するのはまだ少し先です。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「忙がしき 我れの仕事を 思ひつつ

        子を守り行く 冬木のまへを」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「長き夜や 心の鬼が 身を責る」一茶

・訳:秋の長い夜、心の鬼がわが身を責める。(身から出た罪によって心が責められること)

〔和歌〕

「秋の雨の はれゆく跡の 雲まより

        しばしほのめく 夜ゐの稲妻」

          従三位実名・風雅574

「秋の雨の、晴れ上って行くあとの雲の間から、暫くの間僅かに光っては消える、宵の間の稲妻よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈春日野〉

「うつしみは いづくのはてに くさむさむ

         かすがののべを おもひでにして」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》266

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆延応元年 己亥(つちのとい) 改元二月七日

菩薩三十九歳。年の始め七日、三密の壇を宝塔に構へ、東壇には金剛界の法を修し、西壇には胎蔵界の法を修す。中壇に就いて五大虚空蔵の法、幷に駄都(だと①)の秘法を修す。以て國家安全、宝祚長久(ほうそちょうきゅう②)、令法久住(れいほうくじゅう③)、利益無盡(りやくむじん④)を祈る。此れより以後、毎歳之を修すを永く寺軌と為す。三月、章服儀応法記(しょうふくぎおうほうき⑤)を講ず。深く誡む、人の蠶衣(さんえ⑥)を服すことを。鴻音(こうおん⑦)一々震ひ、聴く者警寤(けいご⑧)す。

 

 駄都=仏舎利、卒塔婆。

 宝祚長久=宝祚は天皇の位、おおみくらい、皇位。長久は長くひさしいこと。

 令法久住=仏法をひろめ久しく栄えさせること。

 利益無盡=衆生利益が尽きることがない。

 章服儀応法記=唐の南山道宣作の『釈門章服記』を宋の元照が注釈を加えた『釈門章服儀応法記』。律にもとづいた袈裟など衣服の解説。

 蠶衣=絹の衣。

 鴻音=おおとりの声。

 警寤=のみこみの早いこと。さといこと。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月22日 (土)

コスモス寺 花だより  11・22

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは行く秋を惜しむように最後の花を咲かせています。

草木の葉っぱが色づき末枯れた寂しい晩秋の景色に彩りを添える花となっています。

冬庭を飾るサザンカが沢山の花をつけてきました。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。まわりの木々では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。クヌギやイチョウが黄葉するのはまだ少し先です。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「落葉せる 大き欅の 幹のまへを

        二人通りぬ 物言ひながら」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「したはしや むかししのぶの 翁椀(おきなわん)一茶

・訳:慕わしいことだ。昔をしのぶよすがの芭蕉翁がお使いになったお椀。

〔和歌〕

「秋山の みねゆく鹿の ともをなみ

       きりにまどへる 夕暮のこゑ」

         前大僧正慈鎮・玉葉552

「秋山の峰を行く鹿が、友がなくて、あの友則が歌のように、霧の中に道に迷って鳴いている、その夕暮の声の淋しいこと。」

・参考:高山のみねゆく鹿の友を多み 袖ふりこぬを忘ると思ふな(古今六帖935友則)

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈春日野〉

「ちはやぶる かみのみやゐに たらちねと

         ぬかづくみれば ふるさとおもほゆ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》265

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆一時の聴く者、倶に驩心(かんしん①)を得たり。講演既に訖(おわ)って道俗幾許(いくばく)人、従って菩薩戒を受く。九月、八角五重の石塔婆を西大寺に建立して、以て佛舎利を安んず。十月八日、叡性(えいしょう)、髪を薙(そ)り戒を禀(う)け、誠を傾け奉事す。廿八日、西大寺に結界して、弘律の場と為し、覚盛律師を請いて羯磨(こんま②)を秉(へい③)せしめ、菩薩は唱相(しょうそう④)す。[記録は別に有り]。翌日、始めて四分衆法(しぶんしゅうほう⑤)の布薩(ふさつ⑥)を行ず。[説戒(せっかい⑦)は覚盛、維那(いな⑧)は厳貞。行事(ぎょうじ⑨)は教玄、信忍等の四人也]

 

 驩心=よろこぶ心。

 羯磨=南都ではコンマ、天台ではカツマ。受戒、懺悔、結界などの際、言葉などによる作法を意味する。具足戒を受ける時用いられる白四羯磨(一白三羯磨、僧衆に一度告知して三度可否を問う)の作法を為すものを羯磨師という。

 秉=とる、もつ。

 唱相=結界作法の配役。。

 四分衆法=四分律の戒法。

 布薩=梵でウポーシャダ。説戒、浄住、近住と訳す。半月ごとに自己の行為を反省し、罪があれば告白懺悔する行事。四分布薩と梵網布薩がある。

 説戒=説戒師。戒本を説く。

 維那=都維那(ついな)。知事。綱維。行事を総括し先導する役。

 行事=布薩の進行をつかさどり、受者を浄める所作をする役。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月21日 (金)

コスモス寺 花だより  11・21

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

連日の寒さに耐えてコスモスはまだ名残の花を咲かせています。

寂しくなった晩秋の景色に彩りを添えてくれる貴重な花です。

冬を飾るサザンカが沢山の花をつけてきました。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。「さざんかさざんか咲いた道、・・・」の童謡がなつかしいですね。まわりの木々では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。クヌギやイチョウが黄葉するのはまだ少し先ですね。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「足袋買ひて 子に穿(は)かしめぬ 木枯(こがらし)の

         落葉吹き下(おろ)す 坂下の街に」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「紅葉(もみぢ)して 百姓禰宜(ねぎ)の 出立哉」一茶

・訳:山は紅葉。百姓禰宜がこれから仕事に出発して行くよ。

〔和歌〕

「色かはる 木ずゑをみれば さほ山の

        あさ霧がくれ 雁は来にけり」

          前大納言為家・風雅554

「赤に黄に、色の変る梢を見ると、佐保山の朝霧にかくれて、ああ、雁がやって来たのだなあ、そういう季節になったのだなあ、と実感されるよ。」

・さほ山=大和の歌枕、佐保山。奈良市北郊の丘陵。紅葉の名所。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈春日野〉

「かすがのの かみのやしろに たらちねと

         たづさはりきて ひとのおろがむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》264

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆暦仁元年戊戌(つちのえいぬ) 改元十一月十四日

菩薩、三十八歳。春二月、徒僧の為に、南山(なんざん①)の教誡律儀(きょうかいりつぎ②)、霊芝(れいし③)の六物図(ろくもつず④)、青丘(せいきゅう⑤)の戒本宗要(かいほんしゅうよう⑥)等を講ず。秋七月、正法寺(しょうぼうじ⑦)に於いて、梵網古迹記(ぼんもうこじゃくき⑧)の講筵を開く。木叉(もくしゃ⑨)を挙揚し、辭河(じか⑩)を下り、辯(べん⑪)を傾け海横(かいおう⑫)に注ぐ。

 

 南山=唐の道宣(596667)、終南山に住したので南山大師と称される。

南山律宗の祖。

 教誡律儀=道宣著、『教誡比丘新学行護律儀』。

 霊芝=宋の元照(がんじょう、10481116)。杭州の霊芝寺に住した。字は湛然、大智律師。

 六物図=僧尼が所持すべき六つの持物の解説書、宋元照撰『仏制比丘六物図』。六物は三衣(大衣・上衣・内衣)、鉢、座具、漉水囊。

 青丘=新羅の太賢。

 戒本宗要=太賢著『菩薩戒本宗要』。『梵網戒本』の宗要、解説書。

 正法寺=廃寺。天理市櫟本にあった。

 梵網古迹記=太賢著『梵網経古迹記』(大正蔵経四十)。梵網経の注釈書。

 木叉=波羅提木叉(はらだいもくしゃ)、梵語・プラーティモクシャの音写。別解脱律儀と訳す。戒本とも、戒を列記したもの。

 辭河=言葉の河。

 辯=議論。

 海横=海に満ち溢れる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

Img_9296

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2014年11月20日 (木)

コスモス寺 花だより  11・20

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

連日の寒さに耐えてコスモスはまだ名残の花を咲かせています。花数は少ないですが、寂しくなった晩秋の景色に彩りを添えてくれる貴重な花です。

冬を飾るサザンカが沢山の花をつけてきました。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。「さざんかさざんか咲いた道、・・・」の童謡がなつかしいですね。まわりの木々では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。クヌギやイチョウが黄葉するのはまだ少し先です。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈わが子〉

「病院に 我が子を伴(つ)れて 道とほし

       落葉ころがる 日暮れの坂に」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「秋の夜や しやうじの穴が 笛を吹」一茶

・訳:しみじみとした秋の夜。障子にあいた穴に秋風が吹きこんで笛を吹く。

〔和歌〕

「秋はきぬ しかはおのへに 声たてつ

        よはのね覚を とふ人はなし」

大蔵卿有家・玉葉550

「心淋しくなる秋は来た。妻を求める鹿は峰の上で声高く鳴いている。それなのに、私の夜中の寝覚をおとずれる人は誰一人いないのだ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈春日野〉

「いにしへの おほみいくさに いでましし

         かみのやしろと をろがみたつも」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》263

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(嘉禎)三年丁酉(ひのととり)

菩薩、三十七歳。春正月、天川に詣参し、弁天宮に於いて諷経誦呪(ふうきんじゅじゅ①)し、既に終て帰る時、童子有り、菩薩を招いて曰く、師、何ぞ式文(しきぶん②)を作らざるや。菩薩問うて曰く、你(なんじ)は是れ何人ぞ、童子応(こた)へて曰く、我は是れ天女の眷属なりと言ひ已(おわ)って見えず。菩薩即ち還りて式文を製(つく)り為し、以て神殿に納む。其の式、今に天川に伝ふ。是を立還式と(りっかんしき③)謂ふ。又見玉帰式(けんぎょくきしき③)と曰ふ。云ふに継(つい)で釈迦嶽に登り、山上に水無くして来往に皆、遠く谷泉を汲むに労す。菩薩、地を鑿(うが)ち加持するに、清泉洴出(ほうしゅつ④)して凛冽(りんれつ⑤)たり。之を言うべからざるや。今の世に之を伝えて、興正水(こうしょうすい)と謂う。菩薩慈力(じりき)⑥の感ずる所也と云う。二月、玄忍、教玄、願西、厳貞、賢真の五人を度し、慈息戒(じそくかい⑦)を授く。継いで具戒(具足戒)に進ぜしむ。世尊(釈尊)初めて五比丘を度するに相似たる也。三月、修蓮允公、塵寰(じんかん⑧)を跳出し、剃髪して僧となり、沙弥戒を受く。四月、海龍王寺に結夏す。重ねて、行事鈔釈相篇(ぎょうじしょうしゃくそうへん⑨)を講論して、持犯(じぼん⑩)を精究す。七月、西大寺に於いて表無表章(ひょうむひょうしょう⑪)を講ず。諸方の龍象(りゅうぞう⑫)騰踏(とうとう⑬)として赴き来たって、講席に雲集す。

 

 諷経誦呪=経をとなえ陀羅尼を誦すること。

 式文=仏神の徳をたたえる講式や諷誦文。

 立還式、見玉帰式=弁才天講式のことか。

 洴出=洴は迸ヵ。ほとばしり出ずる。

 凛冽=寒気のきびしいさま。冷涼。

 慈力=慈悲心の霊力。

 慈息戒=沙弥の戒、息慈とも。沙弥の十戒。

 塵寰=けがれた世界。俗世間。

 行事鈔釈相篇=行事鈔十二巻三十篇のうち、巻中第十四篇「隨戒釈相篇」。

 持犯=持戒と犯戒。

 表無表章=唐の法相唯識の学匠、窺基著『大乗法苑義林章(だいじょうほうおんぎりんじょう)』の一章「表無表色章」。

 龍象=聖者・高僧を威力ある龍や象にたとえていう。

 騰踏=雲などが飛んで進んで行くさま。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月19日 (水)

コスモス寺 花だより  11・19

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

今朝は冷え込みました。奈良は3度の最低気温です。冬のような寒さの中でもコスモスは名残の花を咲かせています。

晩秋の景色に彩りを添える大きな花です。花数は少ないですがこの時期としては貴重な花となりました。

サザンカも、いつのまにか沢山の花が咲いています。赤と白の花が濃い緑の葉かげでひっそりと咲いています。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈霜月〉

「物を乾す わが庭の木に 朝なあさな

      四十雀(しじふから)来る 冬となりけり」

       島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「亡(なき)母や 海見る度(たび)に 見る度に」

訳:亡き母よ海を見るたびに思い出す。(無季の句)

〔和歌〕

「今朝のあさけ かりがねききてつ 春日山

          もみぢにけらし 我が心いたし」

            穂積皇子・風雅552

「今朝の早朝、雁の声を聞いたよ。春日山はすっかり紅葉したらしいなあ。私の心は(秋と思うにつけて)本当に辛く悲しいよ。」

・万葉集1513

・いたし=苦しさを感ずる。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈春日野〉

「いでたたむ いくひのひまを こぞりきて

         かすがののべに あそぶけふかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》263

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(嘉禎)三年丁酉(ひのととり)

菩薩、三十七歳。春正月、天川に詣参し、弁天宮に於いて諷経誦呪(ふうきんじゅじゅ①)し、既に終て帰る時、童子有り、菩薩を招いて曰く、師、何ぞ式文(しきぶん②)を作らざるや。菩薩問うて曰く、你(なんじ)は是れ何人ぞ、童子応(こた)へて曰く、我は是れ天女の眷属なりと、言ひ已(おわ)って見えず。菩薩即ち還りて式文を製(つく)り為し、以て神殿に納む。其の式、今に天川に伝ふ。是を立還式と(りっかんしき③)謂ふ。又見玉帰式(けんぎょくきしき③)と曰ふ。云ふに継(つい)で釈迦嶽に登り、山上に水無くして来往に皆、遠く谷泉を汲むに労す。菩薩、地を鑿(うが)ち加持するに、清泉洴出(ほうしゅつ④)して凛冽(りんれつ⑤)たり。之を言うべからざるや。今の世に之を伝えて、興正水(こうしょうすい)と謂う。菩薩慈力(じりき)⑥の感ずる所也と云う。二月、玄忍、教玄、願西、厳貞、賢真の五人を度し、慈息戒(じそくかい⑦)を授く。継いで具戒(具足戒)に進ぜしむ。世尊(釈尊)初めて五比丘を度するに相似たる也。三月、修蓮允公、塵寰(じんかん⑧)を跳出し、剃髪して僧となり、沙弥戒を受く。四月、海龍王寺に結夏す。重ねて、行事鈔釈相篇(ぎょうじしょうしゃくそうへん⑨)を講論して、持犯(じぼん⑩)を精究す。七月、西大寺に於いて表無表章(ひょうむひょうしょう⑪)を講ず。諸方の龍象(りゅうぞう⑫)騰踏(とうとう⑬)として赴き来たって、講席に雲集す。

 

 諷経誦呪=経をとなえ陀羅尼を誦すること。

 式文=仏神の徳をたたえる講式や諷誦文。

 立還式、見玉帰式=弁才天講式のことか。

 洴出=洴は迸ヵ。ほとばしり出ずる。

 凛冽=寒気のきびしいさま。冷涼。

 慈力=慈悲心の霊力。

 慈息戒=沙弥の戒、息慈とも。沙弥の十戒。

 塵寰=けがれた世界。俗世間。

 行事鈔釈相篇=行事鈔十二巻三十篇のうち、巻中第十四篇「隨戒釈相篇」。

 持犯=持戒と犯戒。

 表無表章=唐の法相唯識の学匠、窺基著『大乗法苑義林章(だいじょうほうおんぎりんじょう)』の一章「表無表色章」。

 龍象=聖者・高僧を威力ある龍や象にたとえていう。

 騰踏=雲などが飛んで進んで行くさま。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月18日 (火)

コスモス寺 花だより  11・18

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

寒くなりました。朝は冬のようです。奈良では山間部で霜が降りています。そのうち平野部でも氷点下になるのでしょう。晩秋の古都はゆったりとした時が流れてゆきます。いい季節ですね。

いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な花となりました。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼ、モミジの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈霜月〉

「霜どけの 日の照りぬれば 楓の木

        一ときに葉の 落つるにやあらむ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「鶏(にはとり)の 小首を曲る 夜寒哉」一茶

〔和歌〕

「露けさの 袖にかはらぬ 草葉まで

       とはばや秋は 物やおもふと」

        前関白太政大臣(鷹司基忠)・玉葉546

「露にしっとりとぬれた点では私の袖と変らぬ草葉にまでも、聞いてみたいものだ、秋になるとお前も物思いをするのかと。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈東大寺〉

「おほてらの にはのはたほこ さよふけて

         ぬひのほとけに つゆぞおきにける」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》262

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆後、常喜院(じょうきいん①)に於いて、四分律行事鈔(しぶんりつぎょうじしょう②)を講論し、開遮持犯(かいしゃじぼん③)を一々精究して余蘊(ようん④)無し。次に、嵩嶽(すうがく⑤)の四分戒本疏(しぶんかいほんしょ⑥)を東大寺に講ず。四律五論(しりつごろん⑦)三大五部(さんだいごぶ⑧)、次第に之を熟爛(じゅくらん⑨)し、大いに紵麻(ちょま⑩)の圓律宗(えんりつしゅう⑪)を簸起(はき⑫)す。冬十二月、戒慧貞公(かいけいていこう⑬)、海龍王寺(かいりゅうおうじ⑭)を以て延べて之に居らしむ。菩薩、欣然(きんぜん⑮)として往日(おうじつ⑯)に絳紗(こうしゃ⑰)を闢(ひら)き、宗の教を講演す。学ぶ者悦び隨ふこと、群流の大川に趣くが如し。

 

 常喜院=建暦二年(1212)、解脱坊貞慶が弟子の覚真をして興福寺内に開かせた戒律研鑽の道場。

 四分律行事鈔=唐の道宣編、四分律の要義書。『四分律刪繁補闕行事鈔』。略して行事鈔。

③開遮持犯=開は為すをゆるすこと、遮は為すを禁じること。持戒と犯戒。

④余蘊=あますところ。のこるところ。

⑤嵩嶽=嵩山の鎮国寺に住した定賓律師。法礪の相部宗を受け、その旧疏を宣揚す。

 四分戒本疏=四分律の戒本(戒条)の注釈書。

 四律五論=十誦律、四分律、五分律、摩訶僧祇律の四種の律と毘尼母論、摩得勒伽論、善見論、薩婆多論、明了論の律注釈書五論。

⑧三大五部=律三大部は四分律の注釈書。道宣編『四分律含注戒本疏(しぶんりつがんちゅうかいほんしょ)八巻』、『四分律刪繁補闕行事鈔(しぶんりつさんはんほけつぎょうじしょう)十二巻』、『四分律刪補随機羯磨疏(しぶんりつさんほずいきこんましょ)八巻』。五部は不明、五部律であれば四律に解脱律を加える。

⑨熟爛=きわめる。熟知習得。

⑩紵麻=からむし。麻の衣。

⑪圓律宗=道宣の南山律宗。

⑫簸起=波があおるように起る。

 戒慧貞公=戒慧房厳貞(かいけいぼうげんてい)。

 海龍王寺=奈良市法華寺町にある真言律宗末寺。隅寺(すみでら)と称す。

⑮欣然=よろこんで快く物事を行うさま。。

⑯往日=過ぎ去った日。むかし。

⑰絳紗=赤色の紗(うすぎぬ)。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年11月17日 (月)

コスモス寺 花だより  11・17

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な花となりました。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈霜月〉

「一ぽんの 幹をめぐりて 落ちしきる

   楓樹(かへで)の紅葉(もみじ) ここだくたまる」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「拾ひ足袋 しつくり合ふが 奇妙也」一茶

・訳:拾った足袋が足にしっくり合うのが奇妙だなあ。

〔和歌〕

「うちむれて あまとぶ雁の つばさまで

         ゆふべにむかふ 色ぞかなしき」

           伏見院御歌・風雅538

「群をなして、空を飛んで行く雁の翼までが、次第に暮色に包まれて行く、その色合の、何と悲しいこと。」

・ゆふべにむかふ=夕暮らしい感じになって行く。「むかふ」は「次第にある方角に近づく」意。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈平城宮址〉

「はたなかに まひてりたらす ひとむらの

         かれたるくさに たちなげくかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》261

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

・注を補充しました。

◆嘉禎二年丙申(ひのえさる)

菩薩、三十六歳。受具(じゅぐ①)の志願、日を逐って堅猛(けんもう②)にして、秋八月、遂に東大舍那殿(東大寺大仏殿)に於いて、懺摩(さんま③)の法を修し、得戒の相を祈る。同二十八日巳の刻、霊瑞(れいずい④)の応(おう⑤)有り。〔天華墜(てんけつい⑥)等の好相(こうぞう⑦)の記、別に之れ有り〕。九月朔日、羂索院(東大寺法華堂、三月堂)に於いて、自ら誓って形同沙弥(けいどうしゃみ⑧)戒を受け、二日、法同沙弥(ほうどうしゃみ⑨)戒を受け、四日、午前上分、満分戒(まんぶんかい⑩)を納むる時、不空院(ふくういん⑪)尊性房圓晴(えんせい、えんしょう⑫)、西方院(さいほういん⑬)慈禅房有厳(ゆうげん、うごん⑭)、招提寺(しょうだいじ⑮)学律房覚盛(かくじょう⑯)の三大徳、自誓して同じく受く。是れ則ち本朝菩薩通受自誓受具(ぼさつつうじゅじせいじゅぐ⑰)の元始なり。

 

 受具=具足戒を受けること。

 堅猛=つよくたけくなる。

 懺摩=梵語・クシャマの音写。忍の意。懺悔(さんげ)のこと。

 霊瑞=不思議なめでたいしるし。

 応=感応。冥応。

 天華墜=天から瑞祥の花が降ること。

 好相=禅定の中で仏の姿を見、頭頂を摩するなど瑞兆を観想すること。

 形同沙弥=剃髪はしたがまだ十戒を受けていない沙弥(比丘戒を受ける前の二十歳未満の僧)。優婆塞の八斎戒を受ける。

 法同沙弥=剃髪(出家)して十戒を受けた沙弥。

 満分戒=比丘の具足戒。四分律の二百五十戒。

 不空院=真言律宗末寺。奈良市高畑福井町。

 円晴=11811242.大和国の人。貞慶の弟子、戒如より律を学び常喜院で研鑽す。

 西方院=律宗末寺、唐招提寺子院。奈良市五条町。

 有厳=11861275.初め戒如につき、のち吉野の覚如に従って律を学ぶ。自誓受戒ののち、1246(寛元四年)覚如らとともに入宋し、律三大部を請来す。西方院を創建。

 招提寺=唐招提寺。律宗本山。奈良市五条町。

 覚盛=11941242.大和国服部の人。窮情房とも。1212年(建暦2)常喜院の俊才二十人に最年少で選ばれ弘律に専念す。唐招提寺の中興開山。著作に『菩薩戒通別二受鈔』「菩薩戒遣疑鈔」などがある。

 菩薩通受自誓受具=『占察経』によって、僧が自ら仏に誓って、菩薩戒である三聚浄戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)を一度に通じて受け、具足戒の受戒が成立して菩薩比丘と成るとされた。

昭和三十年の調査で、西大寺蔵興正菩薩寿像の体内に納入されていた『自誓受戒記一巻』が発見されている。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月16日 (日)

コスモス寺 花だより  11・16

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な花となりました。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈霜月〉

「わが妻は いとまなければ 楓葉の

        落ちしきる庭に 衣洗ひ乾せり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「ならはしや 木曽の夜寒の 膝頭」一茶

・訳:しきたりなのだなあ。木曽の夜寒にかかえる膝頭。

〔和歌〕

「夕されば 野もせにすがく 白露の」

        たまればかてに 秋風ぞ吹く」

          大蔵卿有家・玉葉545

「夕方になると、野原も狭いほどに置く白露が、たまるかと見ればすぐ吹き散らして、秋風が吹く。」

・すがく=原歌は「みがく」である。

・かてに=・・・できないで。耐えかねて。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「かれわたる いけのおもての あしのまに

         かげうちひたし くるるたふかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》261

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

◆嘉禎二年丙申(ひのえさる)

菩薩、三十六歳。受具(じゅぐ①)の志願、日を逐って堅猛(けんもう②)にして、秋八月、遂に東大舍那殿(東大寺大仏殿)に於いて、懺摩(さんま③)の法を修し、得戒の相を祈る。同二十八日巳の刻、霊瑞(れいずい④)の応(おう⑤)有り。〔天華墜(てんけつい⑥)等の好相(こうぞう⑦)の記、別に之れ有り〕。九月朔日、羂索院(東大寺法華堂、三月堂)に於いて、自ら誓って形同沙弥(けいどうしゃみ⑧)戒を受け、二日、法同沙弥(ほうどうしゃみ⑨)戒を受け、四日、午前上分、満分戒(まんぶんかい⑩)を納むる時、不空院(ふくういん⑪)尊性房圓晴(えんせい)、西方院(さいほういん⑫)慈禅房有厳(ゆうげん、うごん)、招提寺(しょうだいじ⑬)学律房覚盛(かくじょう)の三大徳、自誓して同じく受く。是れ則ち本朝菩薩通受自誓受具(ぼさつつうじゅじせいじゅぐ⑭)の元始なり。

 

 受具=具足戒を受けること。

 堅猛=つよくたけくなる。

 懺摩=梵語・クシャマの音写。忍の意。懺悔(さんげ)のこと。

 霊瑞=不思議なめでたいしるし。

 応=感応。冥応。

 天華墜=天から瑞祥の花が降ること。

 好相=禅定の中で仏の姿を見、頭頂を摩するなど瑞兆を観想すること。

 形同沙弥=剃髪はしたがまだ十戒を受けていない沙弥(比丘戒を受ける前の二十歳未満の僧)。優婆塞の八斎戒を受ける。

 法同沙弥=剃髪(出家)して十戒を受けた沙弥。

 満分戒=比丘の具足戒。四分律の二百五十戒。

 不空院=真言律宗末寺。奈良市高畑福井町。

 西方院=律宗末寺、唐招提寺子院。奈良市五条町。

 招提寺=唐招提寺。律宗本山。奈良市五条町。

 菩薩通受自誓受具=僧が自ら仏に誓って、菩薩戒である三聚浄戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)を一度に通して受け、具足戒の受戒が成立して菩薩比丘と成ることが出来るとする『占察経』による。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月15日 (土)

コスモス寺 花だより  11・15

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な秋の桜となりました。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈落葉松〉

「夕晴れの 空に風あれや 著(いちじ)るく

        浅間の山の 烟(けむり)はくだる」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「綿弓や てんてん天下 泰平と」一茶

・訳:綿弓をうつ音が聞えてくるよ。てんてん天下泰平と。

〔和歌〕

「をぐら山 麓の寺の いりあひに

        あらぬねながら まがふかりがね」

          皇太后宮大夫俊成・風雅536

「小倉山で聞けば、麓の寺で打つ入逢の鐘の音に、それらしからぬ声ながらも入りまじって聞える、雁の音よ。」

・あらぬねながら=違った音ではあるが。

・まがふ=入り乱れる。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「びしやもんの ふりしころもの すそのうらに

         くれなゐもゆる はうさうげかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》261

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

長らくお休みさせていただきましたが本日より再開します。

休止前の文と少しダブりますが、東大寺における「自誓受戒」から始めます。毎日の更新ができないかもしれません。ご容赦願います。

◆嘉禎二年丙申(ひのえさる)

菩薩、三十六歳。受具(じゅぐ①)の志願、日を逐って堅猛(けんもう②)にして、秋八月、遂に東大舍那殿(東大寺大仏殿)に於いて、懺摩(さんま③)の法を修し、得戒の相を祈る。同二十八日巳の刻、霊瑞(れいずい④)の応(おう⑤)有り。〔天華墜(てんけつい⑥)等の好相(こうぞう⑦)の記、別に之れ有り〕。九月朔日、羂索院(法華堂、三月堂)に於いて、自ら誓って形同沙弥(けいどうしゃみ⑧)戒を受け、二日、法同沙弥(ほうどうしゃみ⑨)戒を受け、四日、午前上分、満分戒(まんぶんかい⑩)を納むる時、不空院尊性房圓晴(えんせい)、西方院慈禅房有厳(ゆうげん、又はうごん)、招提寺学律房覚盛(かくじょう)の三大徳、自誓して同じく受く。是れ則ち本朝菩薩通受自誓受具(ぼさつつうじゅじせいじゅぐ⑪)の元始なり。

 

 受具=具足戒を受けること。

 堅猛=かたく、たけくなる。

 懺摩=梵語・クシャマの音写。忍の意。懺悔(さんげ)のこと。

 霊瑞=不思議なめでたいしるし。

 応=感応。冥応。

 天華墜=天から瑞祥の花が降ること。

 好相=禅定の中で仏の姿を見、頭頂を摩するなど瑞兆を観想すること。

 形同沙弥=剃髪はしたがまだ十戒を受けていない沙弥(比丘戒を受ける前の二十歳未満の僧)。優婆塞の八斎戒を受ける。

 法同沙弥=剃髪(出家)して十戒を受けた沙弥。

 満分戒=比丘の具足戒。四分律の二百五十戒。

 菩薩通受自誓受具=僧が自ら仏に誓って、菩薩戒である三聚浄戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)を一度に通して受け、具足戒の受戒が成立して菩薩比丘と成ることが出来るとされた『占察経』による。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月14日 (金)

コスモス寺 花だより  11・14

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な秋の桜となりました。

まわりの木々の中では桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈落葉松〉

「枯芝の 土にあらはれし 石のあたま

       腰かけて居て 日ぐれとなりぬ」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「早だちの かぶせてくれし 蒲団哉」一茶

・訳:早立ちの人がかぶせてくれた蒲団のぬくもりよ。

〔和歌〕

「露の色 ましばの風の 夕げしき

       あすもやここに たへてながめん」

         前大納言為兼・玉葉544

「露が光り、真柴に風の吹く夕暮の景色よ。明日も果してここに、この心傷む秋の思いに耐えて、これを眺めることができるだろうか。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈大安寺をいでて薬師寺をのぞむ〉

「しぐれふる のずゑのむらの このまより

         みいでてうれし やくしじのたふ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律の祖、叡尊興正菩薩一代記を読む・改訂版》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 

(休止中)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月13日 (木)

コスモス寺 花だより  11・13

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

当寺のコスモスは名残りの花となってきました。今咲いている鉢植えの花は9月に植えた草丈の低いコスモスです。行く秋を惜しむように大きな花を咲かせています。数は少ないですが稀少な秋の桜です。

桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。マユミもピンク色の袋の下に鈴のような赤い実が見えています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙が葉を伸ばしてきました。もう一番花が咲いています。莟も沢山見えていますからことしの花は早いのかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲く鮮やかな花の色どりは、秋とはまた違う景色となります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈落葉松〉

「山裾に ありと知らるる 川の瀬の

       音のきこゆる この夕(ゆふべ)かも」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「月花や 四十九年の むだ歩き」一茶

・訳:月や花やと四十九年もむだに遊行してきた。四十九年を「始終苦年」と言いかけておかしみを出す。「花の月のと ちんぷんかんの うき世哉」一茶

〔和歌〕

「ゆふぎりの むらむらはるる 山ぎはに

         日影をわたる 雁の一つら」

           覚誉法親王・風雅534

「夕霧の、濃く薄くむらむらに晴れかかる山際に、残る日ざしを横切って渡って行く、雁の一列よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

         みちのまはにに あしあやまちそ」

・まはに=赤い土。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律の祖、叡尊興正菩薩一代記を読む・改訂版》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 

(休止中)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月12日 (水)

コスモス寺 花だより  11・12

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

コスモスは名残りの花となってきました。今咲いている鉢植えの花は9月に植えた草丈の低いコスモスです。行く秋を惜しむように大きな花を咲かせています。数は少ないですが稀少な秋の桜です。

桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。マユミもピンク色の袋の下に鈴のような赤い実が見えています。

〇水仙

「真中の 小さき黄色の さかづきに

     甘き香もれる 水仙の花」木下利玄

冬の花、水仙が葉を伸ばしてきました。もう一番花が咲いています。莟も沢山見えていますからことしの花は早いのかもしれません。

水仙は地中海沿岸が原産地とされ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りと、花を傷める大風がないので、秋にはない良さがあります。葉のみどりが青々としているし、草丈はそれほど高くないので石仏のお顔がよく見えます。花は大きくて緑の中で色鮮やかです。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

*「白鳳秘仏特別公開」昨日を以て終了しました。長らくのご愛顧を感謝いたします。来年は春・429日~510日の予定です。また来年の7月から9月まで、奈良国立博物館の開館120年記念特別展「白鳳」に出陳されます。全国の主要な白鳳仏が奈良に集われるそうです。

〔短歌〕

〈落葉松〉

「落葉松(からまつ)の 色づくおそし 浅間山

          すでに真白く 雪降る見れば」

            島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「旅の皺(しわ) 御覧候へ ばせを仏」一茶

・訳:旅で刻まれた皺をご覧ください。芭蕉仏様。

〔和歌〕

「秋されば いとど思ひを ましばかる

        この里人も 袖や露けき」

          後鳥羽院御製・玉葉543

「秋になると、いよいよ愁いの思いが増す。柴を刈って生計を立てるこの村の里人らも、私と同じ思いで、袖を露と涙でぬらしていることだろうか。」

・ましば=「思ひを増し」に「真柴」をかける。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈春日野にて〉

「うらみわび たちあかしたる さをしかの

         もゆるまなこに あきのかぜふく」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律の祖、叡尊興正菩薩一代記を読む・改訂版》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 

(休止中)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月11日 (火)

コスモス寺 花だより  11・11

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

奈良国立博物館の正倉院展は12日で終わります。当寺の秘仏公開は本日までです。大変盛況のうちに終えさせていただけます事、御参詣の皆様に御礼申し上げます。

コスモスは名残りの花となってきました。今咲いている鉢植えの花は9月に植えた草丈の低いコスモスです。行く秋を惜しむように大きな花を咲かせています。数は少ないですが稀少な秋の桜です。

桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。マユミもピンク色の袋の下に鈴のような赤い実が見えています。

〇水仙

冬の花、水仙が葉を伸ばしてきました。もう一番花が咲いています。莟も沢山見えていますからことしの花は早いのかもしれません。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス の紹介

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りと、花を傷める大風がないので、秋にはない良さがあります。葉のみどりが青々としているし、草丈はそれほど高くないので石仏のお顔がよく見えます。花は大きくて緑の中で色鮮やかです。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

*「白鳳秘仏特別公開」(1111日まで)。

白鳳金銅仏の阿弥陀如来様が十三重石宝塔からご出現になって50周年になります。今年は白鳳仏の他に各層から発見の仏像、舎利塔、経典などを開帳し、十重目出現の腐朽四天王もご覧いただけます。そのほか寺宝の仏画、彫像、大絵馬,勅額、青銅相輪など多彩です。

博物館の「正倉院展」は12日まで。連休が終わって少し空いているかも。

真言律宗の各寺院でも秘仏、秘宝の御開扉があります。西大寺、海龍王寺、不退寺、元興寺、不空院、浄瑠璃寺、岩船寺など。

〔短歌〕

〈牟礼駅〉

「土剥げて 岩山あらはるる 芝山の

        立ちのふくらみに 風吹く音す」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「秋の夜や 隣を始(はじめ) しらぬ人」一茶

・訳:秋の夜よ。隣をはじめとして知らない人ばかり。

芭蕉の「秋深き 隣は何を する人ぞ」をふまえている。人恋しさの裏返しか。

〔和歌〕

「きりすすき 秋の日影の 山のはに

         ほのぼのみゆる かりのひとつら」

           従三位為信・風雅532

「霧の薄くかかった、秋の日ざしの映る山の端のあたり、ほのかに見えて飛び行く、雁の一列よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈春日野にて〉

「こがくれて あらそふらしき さをしかの

         つののひびきに よはくだちつつ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律の祖、叡尊興正菩薩一代記を読む・改訂版》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 

(休止中)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年11月10日 (月)

コスモス寺 花だより  11・10

古都の秋 コスモスなら般若寺

~日本最古のコスモス名所~

 〇秋のコスモス ≪終り近し≫

奈良国立博物館の正倉院展は12日で終わります。当寺の秘仏公開は11日までです。9月後半から始まったのですが大変盛況でした。受付に坐った係員さんには扉の開閉と受付応対で忙しくしていただきました。