コスモス寺 花だより 11・17
古都の秋 コスモスなら般若寺
~日本最古のコスモス名所~
〇秋のコスモス ≪終り近し≫
いまコスモスは名残りの花となっています。草丈の低いコスモスが晩秋の景色に彩りを添え大きな花を咲かせています。花数は少ないですがこの時期としては貴重な花となりました。
まわりの木々の中では桜とナンキンハゼの葉が赤く色づいてきれいです。またマユミの実もピンク色の袋の下に鈴のような赤い色を見せています。
〇水仙
「真中の 小さき黄色の さかづきに
甘き香もれる 水仙の花」木下利玄
冬の花、水仙は日に日に葉を伸ばしています。つぼみが沢山ついてところどころで花を咲かせています。ことしの花は例年にくらべ早いようです。12月には見ごろを迎えるかもしれません。
水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされたと言います。ギリシャ神話から名づけられ洋名は「ナルキッソス」といいます。水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。
・花期:12月~2月 ・花数:1万本。
・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。
〇春咲きコスモス の紹介
・花期:5月~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。
・花数・3万本
・種類はセンセーションを主として9品種ていど。
〔短歌〕
〈霜月〉
「一ぽんの 幹をめぐりて 落ちしきる
楓樹(かへで)の紅葉(もみじ) ここだくたまる」
島木赤彦・氷魚
〔俳句〕
「拾ひ足袋 しつくり合ふが 奇妙也」一茶
・訳:拾った足袋が足にしっくり合うのが奇妙だなあ。
〔和歌〕
「うちむれて あまとぶ雁の つばさまで
ゆふべにむかふ 色ぞかなしき」
伏見院御歌・風雅538
「群をなして、空を飛んで行く雁の翼までが、次第に暮色に包まれて行く、その色合の、何と悲しいこと。」
・ゆふべにむかふ=夕暮らしい感じになって行く。「むかふ」は「次第にある方角に近づく」意。
〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕
〈平城宮址〉
「はたなかに まひてりたらす ひとむらの
かれたるくさに たちなげくかな」
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。
・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15)
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》261
『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
・注を補充しました。
◆嘉禎二年丙申(ひのえさる)
菩薩、三十六歳。受具(じゅぐ①)の志願、日を逐って堅猛(けんもう②)にして、秋八月、遂に東大舍那殿(東大寺大仏殿)に於いて、懺摩(さんま③)の法を修し、得戒の相を祈る。同二十八日巳の刻、霊瑞(れいずい④)の応(おう⑤)有り。〔天華墜(てんけつい⑥)等の好相(こうぞう⑦)の記、別に之れ有り〕。九月朔日、羂索院(東大寺法華堂、三月堂)に於いて、自ら誓って形同沙弥(けいどうしゃみ⑧)戒を受け、二日、法同沙弥(ほうどうしゃみ⑨)戒を受け、四日、午前上分、満分戒(まんぶんかい⑩)を納むる時、不空院(ふくういん⑪)尊性房圓晴(えんせい、えんしょう⑫)、西方院(さいほういん⑬)慈禅房有厳(ゆうげん、うごん⑭)、招提寺(しょうだいじ⑮)学律房覚盛(かくじょう⑯)の三大徳、自誓して同じく受く。是れ則ち本朝菩薩通受自誓受具(ぼさつつうじゅじせいじゅぐ⑰)の元始なり。
① 受具=具足戒を受けること。
② 堅猛=つよくたけくなる。
③ 懺摩=梵語・クシャマの音写。忍の意。懺悔(さんげ)のこと。
④ 霊瑞=不思議なめでたいしるし。
⑤ 応=感応。冥応。
⑥ 天華墜=天から瑞祥の花が降ること。
⑦ 好相=禅定の中で仏の姿を見、頭頂を摩するなど瑞兆を観想すること。
⑧ 形同沙弥=剃髪はしたがまだ十戒を受けていない沙弥(比丘戒を受ける前の二十歳未満の僧)。優婆塞の八斎戒を受ける。
⑨ 法同沙弥=剃髪(出家)して十戒を受けた沙弥。
⑩ 満分戒=比丘の具足戒。四分律の二百五十戒。
⑪ 不空院=真言律宗末寺。奈良市高畑福井町。
⑫ 円晴=1181-1242.大和国の人。貞慶の弟子、戒如より律を学び常喜院で研鑽す。
⑬ 西方院=律宗末寺、唐招提寺子院。奈良市五条町。
⑭ 有厳=1186-1275.初め戒如につき、のち吉野の覚如に従って律を学ぶ。自誓受戒ののち、1246(寛元四年)覚如らとともに入宋し、律三大部を請来す。西方院を創建。
⑮ 招提寺=唐招提寺。律宗本山。奈良市五条町。
⑯ 覚盛=1194-1242.大和国服部の人。窮情房とも。1212年(建暦2)常喜院の俊才二十人に最年少で選ばれ弘律に専念す。唐招提寺の中興開山。著作に『菩薩戒通別二受鈔』「菩薩戒遣疑鈔」などがある。
⑰ 菩薩通受自誓受具=『占察経』によって、僧が自ら仏に誓って、菩薩戒である三聚浄戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)を一度に通じて受け、具足戒の受戒が成立して菩薩比丘と成るとされた。
昭和三十年の調査で、西大寺蔵興正菩薩寿像の体内に納入されていた『自誓受戒記一巻』が発見されている。
(つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。
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