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2014年12月

2014年12月31日 (水)

 般若寺花だより 12・31

般若寺 水仙花だより

~水仙や白き障子のとも移り 芭蕉~

大晦日となりました。まだ一年を振り返る余裕はありませんが、私にとっては結構長い一年でした。それは何より、本ブログにおいて真言律宗の宗祖である思円上人叡尊興正菩薩の一代記、『行実年譜』の読み下しに取り組んだからです。今もここに「改訂版」を連載していますが、同時に本山の西大寺で出されている教化広報紙の『すずむし』にも載せていただいています。八月の第一回目につづいて、新年号では第二回目が出る予定です。この書は何分、原文が漢文であり難しい語句がちりばめられているので、読者の皆様には難儀をおかけしていることと恐縮しています。来年も連載を続けますのでよろしくお付き合い願います。

〇水仙:≪見ごろ・満開近し≫

「御仏の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「のぼり行く 坂のなかばより 山門の

         雪の屋根見ゆ 星空の下に」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「君が世や から人も来て 年ごもり」一茶

・訳:ありがたい御世だねえ。ここ長崎では唐人も来て年ごもり。

〔和歌〕

「暮れかかる 日影はよそに なりにけり

         ゆふ霜こほる もりの下草」

           前大僧正源恵・風雅766

「暮れかかる日ざしは、もうどこかに見えなくなってしまった。夕方の霜が凍りついている、森の下草の寒々とした姿よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈病閒〉

「うつしみは まもらひゆかむ いまだよに

         なすべきことの ありとにかあらむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》295

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆秋八月、法華寺に至り、衆の為に比丘尼鈔(びくにしょう①)を講ず。冬十二月廿三日、式叉摩那(しきしゃまな②)戒を慈善(じぜん③)等の一十六人に授く。

 

 比丘尼鈔=南山大師道宣著述の南山五大部の一つ。

 式叉摩那=正学女と漢訳。沙弥尼のうち十八才から二十才までの者をいい、六法戒(不淫、不偸盗、不殺生、不妄語、不飲酒、不非時食)を保つ。

 慈善=聖恵房(1187―?)。法華寺中興第一世長老。もと春華門院昇子(後鳥羽天皇の皇女)に仕えた女房であった。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月30日 (火)

 般若寺花だより 12・30

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開近し≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「おのが子の 戒名もちて 雪ふかき

         信濃の山の 寺に来にけり」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「高砂の やうな二人や 餅をつく」一茶

・訳:高砂の爺婆(じじばば)のように共白髪の爺と婆二人が餅をついている。

〔和歌〕

「をのづから そめぬこのはを ふきまぜて

         色々に行く 木がらしのかぜ」

           前大納言為家・玉葉861

「たまたまには、まだ色づかぬ木の葉をも紅葉の中に吹きまぜて、紅黄緑、色とりどりに吹きすぎて行く、木枯の風よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

         みちのまはにに あしあやまちそ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》294

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆其の状を注記して、誓約を為すべし。仍(よつ)て各々の趣に任せて、略して子細を録す。其の願多端なり。敬(うやうやし)く、本師(釈尊)五百大願(ごひゃくたいがん①)の跡を慕う。

意楽(いぎょう②)盡し難し。恭しく文殊三世覚母(もんじゅさんぜかくも③)の誓いに同じくす。抑(そもそも)有情を利益すること必ず三宝に依る。佛と法との二宝は必ず僧宝に依る。僧宝の興行すること、戒に非ざれば立たず。願わくは毘尼(びに④)を専らにして、漸く一切、権実の聖教、通別の大小、諸宗の奥旨を学ばん。兼て外道種々の異見に達し、宜しきに隨って一切有情を利楽せん。唯願わくは、覚母大聖文殊、塵を同じくし、事を同じくして、利生の力を与えたまへ。自然に五字の呪(ごじのじゅ⑤)を誦して成就し、憶持して忘れず。自ら無礙弁舌(むげべんぜつ⑥)を得て、衆の為に正法を宣説せん。毎(たび)に聴衆に智慧を得せしめ、毎(ごと)に解悟(かいご⑦)して修行せしめん。已に自利を捨て、利他を先とす。昇沈して生を受くるもの、偏に覚母の引導を仰ぐべし。大慈大悲をもって、永く無益の生所を離れしめたまえ。仍て誓約の状件(くだん)の如し。敬って白(もう)す。

  宝治元年五月廿五日

苾蒭叡尊 苾蒭幸眞 苾蒭忍性 苾蒭重圓 苾蒭性證 苾蒭覚順追同 苾蒭賢任 苾蒭頼玄追同 苾蒭幸圓 苾蒭叡実追同 苾蒭源眞 已上願文。】

 

 五百大願=五百誓願とも。『悲華経』(大正蔵第三巻)によれば、釈迦如来が過去世において宝海梵志であった時、唯一人、浄土ではなく濁悪世である穢土において成仏し衆生を済度しようと誓われた五百の大願。悲華経には五百を具体的には述べていない。日本で成立したと考えられる『釈迦如来五百大願経』は悲華経を増広したもので京都高山寺に現存。悲華経は西大寺本尊釈迦如来の像内に納入されていた。解脱貞慶以来の南都における釈迦信仰の典拠。

 意楽=楽は願う意。何かをしようとする意思。心がまえ。

 文殊三世覚母=『心地観経』に出る。三世は過去、現在、未来の世。覚母は仏母。文殊の別号。文殊菩薩の智慧はさとりの母胎であることを言う。

 毘尼=毘奈耶。梵語ビナヤ。律、僧侶が正しい修行生活を行う上で守るべき規則集。

 五字呪=文殊の五字真言。『金剛頂経瑜伽文殊師利菩薩法』には、「ア・ラ・ハ・シャ・ナは是れ一切願を満ずる義なり。」とある。

 無礙弁舌=とらわれがなく自由自在にものを言う力。

 解悟=さとること。気がつくこと。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月29日 (月)

 般若寺花だより 12・29

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開近し≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「雪の上を 流るる霧や 低(ひ)くからし

        天(あめ)には満ちて 光る星見る」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「京の師走 高みに笑ふ 仏哉」一茶

・訳:京都の十二月、高所で笑っていらっしゃる仏さまがおわすよ。

〔和歌〕

「冬がれの しばふの色の ひととおり

        道ふみ分くる 野べのあさしも」

          権大納言資明・風雅760

「冬枯れの芝草の色が、一筋それと見える。(一面まっ白な中で)道を踏み分けたあとだけがはっきりと残る、野原の朝霜よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈当麻寺〉

「あしびきの やまのはざまの いはかどの

         つららににたる きみがあごひげ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》293

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆五月廿五日、又重ねて発願す、其の状に曰く、

 

【願わくは、今身より乃(いまし)成仏に至るまで、其の中間に於いて、自利の心を棄て、生を同国に受け、心を同じくし、力を合わせ、三宝を興隆し、有情を利益せん。行を文殊に学び、一切の貧窮にして孤独、受苦の衆生を憐愍(れんみん①)し、威力の及ぶ所、殺生を禁断し、受生の国土にて永く逆縁を無からしむ。寿命は長遠にして、無病にして強力、修行に倦むことなく、有情を利益せん。自身の為には不浄財を蓄えず。五塵(ごじん②)の境に於いて、永く染着せず。設(かり)に利生に隨て、生を遺賤(いせん③)に受くるとも、如法に出家して有縁の類を度せん。生々互いに助け、世々同じく修せん。猶し乳水の都(すべ)て違競(いけい④)無きが如くならん。

 

 憐愍=あわれみなさけをかけること。

 五塵=衆生の本性を汚す色(しき)・声(しょう)・香(こう)・味・触(そく)の五種類の対象。

 遺賤=低い身分にのこる、とどまること。

 違競=はなれ競うこと。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月28日 (日)

 般若寺花だより 12・28

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開近し≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈善光寺〉

「雪はれし 夜(よ)の町の上を 流るるは

         山よりくだる 霧にしあるらし」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「正月の 待遠しさも 昔哉」一茶

・訳:正月を待ち遠しいと思うのも、昔のことであったよなあ。

〔和歌〕

「ひとむらの 時雨をさそふ 山風に

         をくるる雲は のどかにぞゆく」

           大宰大弐俊兼・玉葉853

「一群の時雨をさそうように、山風がさっと吹き、それに遅れた雲はあとからのんびりと流れて行く。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈当麻寺〉

「おにひとつ ぎやうじやのひざを ぬけいでて

         あられうつらむ ふたがみのさと」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》292

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆一衆生として我が父母に非ざること無し。将に誰人に譲って自身の楽を求めんや。我は他人に推され、他は亦我に推されん。是(かく)の如く、是の如くせば、解脱は何れの劫ぞ。是(ここ)を以て誓願す。敬て本師(釈尊)往昔の誓願を学び、穢悪充満(えおじゅうまん①)の国土に処し、恒に佛刹擯棄(ぶっせつひんき②)の衆生に対して、利益安楽の方便を設(もう)く。諸佛に値遇して利生の法を学び、無佛の国に住して大饒益(だいにょうやく③)を作さん。小苾蒭(びっしゅ)叡尊、曾て此の願を発し、初発の心微(かすか)なりと雖も、恭(うやうや)しく究竟の心等しからん。而れども、隨喜の人は甚だ希(まれ)にして、嘲弄(ちょうろう④)の輩は尤も多からん。時に、日本国宝治元年歳次丁未、夏安居〔釈迦如来入滅以来二千一百九十五年に当るの安居〕、初めの半月第十日〔文殊師利菩薩有縁日〕、

西大寺同結夏の苾蒭、

 幸圓蓮覚房、忍性良観房、賢任聖俊房、頼玄蓮順房

 性證専浄房、源眞尊順房、重圓順長房、幸眞蓮長房

  已上願の状。】

 

 穢悪充満=穢れと悪事が充ち満ちていること。煩悩と欲望が充満する。

 仏刹擯棄=仏国土からしりぞけ棄てられること。仏縁の無い。

 大饒益=一切衆生の済度、利益。。

 嘲弄=あざけりなぶること。ばかにすること。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月27日 (土)

 般若寺花だより 12・27

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「国遠く もちてかえりぬ 画だくみ(工)が

        かきてたびたる 吾が子の面わを」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「わんといへ さあいへ犬も とし忘れ」一茶

・訳:わんと言え、さあ言え、犬もとし忘れ。

〔和歌〕

「秋見しは それとばかりの 萩がえに

        霜のくち葉ぞ ひとは残れる」

          徽安門院一条・風雅759

「秋見たのはこれだったのだろうか、と疑われるばかりの、すがれ果てた萩の枝に、霜に当って朽ちた葉がたった一葉だけ、わずかに残っている。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「すめろぎの くにたたかふと かすがなる

         やまべのさるの しらずかもあらむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》291

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆茲に因り、滅後の佛子、自行円満、化他能成の為に、或いは、安養(あんにょう①)を欣(よろこ)び、或いは、知足(ちそく②)を望む。自利利他の善巧方便(ぜんぎょうほうべん③)、貴ぶべし、仰ぐべし。是に於いて弟子等、一つの忍び難きこと有り。安養に生まれる人は、猶し春雨の如くあれども、今に、未だ造悪の我等を引導すること能はず。内院に詣ずる者、其の数少なからざれども、未だ受苦の衆生を濟抜すること能わず。大悲は平等なりと雖も、無縁の故に導かれず。結縁何れの時を期さん。業苦は絶ゆる無きが故に。往昔に結縁すと雖も、未だ熟さざるが故に導かれず。熟せば誰か知識を恃(たの)まん。

善友は値ひ難き故に。願って佛刹に生まれんこと、人蹔(しばら)くは自行を恃むべし。迷乱善悪の類は、誰人を待ちてか引導せん。

 

 安養=安養浄土。阿弥陀の極楽浄土。心を安んじて身を養うことが出来る世界。

 知足=知足天。兜率天に同じ。弥勒菩薩が将来仏となるために修行する天界。

 善巧方便=巧みな手段。臨機応変にいろいろ巧みな方法によって人を導くこと。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月26日 (金)

 般若寺花だより 12・26

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「釣台の そとより我の 呼びしとき

     応(いら)へし吾子(あこ)を 生くると思ひき」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「耕さぬ 罪もいくばく 年の暮」一茶

・訳:耕さないで生きてきた罪はどれほど重なったのだろうか。年の暮れにはいっそうの罪の深さが思い知らされる。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「かぎろひの 夕べの庭に 出でて見つ

         かへることなき 命をおもひて」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「行(ゆく)年も かまはぬ顔や 小田の鶴」一茶

・訳:過ぎ行く年も気にしない風の顔だね。小さな田んぼの鶴。

〔和歌〕

「風むせぶ ひばらの時雨 かきくらし

        あなしのたけに かかる村雲」

          後九条前内大臣・玉葉841

「風が咽び泣くように音立てる檜原にさっと時雨がそそぎ、あたりをかき曇らせて穴師の嶽に村雲がかかる。」

・あなしのたけ=大和の歌枕、穴師の嶽。奈良県桜井市三輪の東北、巻向山に続く山。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「とりはてて ひとつのかきも なきにはの

         なににしぬびて あそぶさるかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》290

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆伏(ふ)して本師釈尊の金言を案ずるに、皆是れ生々(しょうじょう①)養育の父母、久しく重恩を荷うも、今に報いず。亦是れ世々(せぜ②)親厚の知識(ちしき③)、往昔深く契るも、生を隔て悉く忘る。いかに況や我を生みたる父母、火宅の中に住するも、怖心未だ起らず。現存の者、五塵(ごじん④)に愛着して、厭心を生ぜず。命過ぐる者、多くは三途に堕ち、常に衆苦を受く。子に非ずんば誰か濟(すく)わん。一たび死せば、何ぞ憶(おく⑤)せん。過去の重恩皆悉く憶せず。当来世に於いて、豈に今生を知らんや。如かじ、平等の大悲を発起して、生死の中に於いて、漸漸に教化して、其の本性に隨ひて、解脱に趣かしむ。但だ三界(さんがい⑥)は悉く苦域、厭ひても猶を厭うべし。四生(ししょう⑦)は皆無常なり。離れても更に離るべし。是くの故に、世尊在世の古(いにし)へ、小乗に趣く者、極めて多く、大乗に向かう者甚だ希(まれ)なり。大菩提心は、発し難くして退くこと易きを以ての故に。

 

 生々=生いたち育つさま。

 世々=過去・現在・未来。代を重ねること。

 知識=正しく教え導いてくれる指導者。高僧、善知識。

 五塵=衆生の本性を汚す色(しき)・声(しょう)・香(こう)・味(み)・触(そく)の五種類の対象。

 憶=おもう。おぼえる、記憶する。

 三界=欲界、色界、無色界。衆生が活動する全世界。

 四生=生き物の生れた方を四つに分類。母胎から生まれる胎生、卵から生まれる卵生、湿気のあるところから生まれる湿生、過去からの業の力によって化成する化生。すべての生きもの。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月25日 (木)

 般若寺花だより 12・25

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

23日の天皇誕生日における「お言葉」。

「先の戦争では300万を超す多くの人が亡くなりました。その人々の死を無にすることがないよう、常によりよい日本をつくる努力を続けることが、残された私どもに課された義務であり、のちに来る時代への責任であると思います。  そして、これからの日本のつつがない発展を求めていくときに、日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとより、できるだけ多くの世界の国々と共に支え合って歩んでいけるよう、せつに願っています。」

含蓄のあるお言葉です。常に平和を願っておられることが心にひびきます。すべての日本人はこの御心を良く噛みしめ模範とすべきです。とりわけAさんには爪の垢でも煎じてもらいたいものです。

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「釣台の そとより我の 呼びしとき

     応(いら)へし吾子(あこ)を 生くると思ひき」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「耕さぬ 罪もいくばく 年の暮」一茶

・訳:耕さないで生きてきた罪はどれほど重なったのだろうか。年の暮れにはいっそうの罪の深さが思い知らされる。

〔和歌〕

「いつのまに こけさへ色の かはるらむ

         今朝はつ霜の ふる里の庭」

         後一条入道前関白左大臣・風雅758

「一体いつの間に、(常緑のはずの)苔さえも白く色が変わったのだろう。今朝初霜の降り置いた、この故郷の庭よ。」

・はつ霜の=「初霜の降る」と「故郷」をかける。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「かすがのの もりのこぬれを つたひきて

         さるなくらしも やどのふるには」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》289

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆加うるに、希(まれ)に仏法に入る者、空しく鬢髪(びんぱつ)を剃り、法衣を被(き)て、性遮軽重(しょうしゃけいじゅう①)の戒網に漏(も)る。適(たまたま)三学(さんがく②)に従う者も、拙(つたな)く名聞(みょうもん)を求め、利養(りよう③)を求め、以て貴賤貧福の檀那に諂(へつら)ふ。真珠変じて麨(しょう④)と成る。甘露化して毒と成る。虚しく篤信の四事(しじ⑤)を受け、徒(いたずら)に三宝の財物を費やす。是くの如くの業因、年々弥(いよいよ)造り、日々絶えること無し。既に因果の道理を知らず。誰か生死の過患を怖れること有らん。或いは、氷に閇(とざ)されて、億千歳、寒を悲しみ色を変ず。苦を忍び声を為す。或いは、焔に交わり一中劫。鉄丸を食と為し、銅汁を飲とす。或いは、毛中に他の害を怖れる。或いは、鱗内に釣針を飲む。或いは、八苦(はっく⑥)の為に逼(せま)られ、或いは、五衰(ごすい⑦)の為に悲しむ。生じて忽ちに死し、死して更に生ず。輪の如く始まり無し。環の終わり無きに似たり。

 

 性遮軽重=性戒(殺生、邪淫など本来的に罪悪である行為を誡める戒、主戒、性重戒)と遮戒(飲酒など仏によってその時その場の必要に応じて制止された戒で性戒に比して軽い)。軽戒と重戒。

 三学=戒学、定(禅定)学、慧(智慧)学。

 名聞利養=世俗的な名声栄達と利得。

 麨=麦こがし。団子。

 四事=修行僧が日常必要とする四種の品。房舎、衣服、飲食、散華焼香。または飲食、衣服、臥具、湯薬。

⑥一中劫=劫は極めて長い時間のこと。『倶舎論』によると、人寿無量歳から次第に減って(百年ごとに一歳ずつ減らして)十歳に至る間が一中劫。

 八苦=生老病死の四苦に愛別離苦(愛するものに別れる苦しみ)、怨憎会苦(怨み憎むものと会う苦しみ)、求不得苦(求めても得られない苦しみ)、五陰盛苦(色受想行識の五陰・五蘊から生ずる苦痛が盛んに起こる苦しみ)を加える。

 五衰=天人が死ぬ前にその身体などに現われる五種類の衰亡の相。1)頭上の華がしぼむ。2)腋に汗が流れる。3)衣装がけがれる。4)身の威光を失う(または目をしばしば瞬く、または身に臭気を生ずる)。5)本座に居ることを楽しまぬ。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月24日 (水)

 般若寺花だより 12・24

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「釣台を 揺するなかれと 思(も)ひしかば

       我が手をかけて 坂をのぼりき」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「山寺や 雪の底なる 鐘の声」一茶

・訳:山寺よ、雪の底から響いてくる寺の鐘の声。

〔和歌〕

「をのづから をとする人も なかりけり

         山めぐりする 時雨ならでは」

           西行法師・玉葉838

「たまたまにでも、訪れる人すらないことだよ。山々をめぐり行く時雨の音の外には。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「もりかげの やどのながやに ひとりねし

         まくらにちかき もののひとこゑ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》288

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆又、夏安居、先年半月初十日。幸圓、忍性等を勧勉して、同じく倶に発願、其の状に曰く、

 

 【今身より仏身に至るまで、九人の苾蒭(びっしゅ)、心を同じくし力を合わせて、穢悪(えお①)の所に於いて、三宝を紹隆(しょうりゅう②)し、有情を利楽せんことを請う。誓願の状。

右倩(つらつら)以(おもんみ)れば、人間業(ごう③)を作るの輩、未来の苦酷(くこく④)を弁(わきま)えず。三途(さんず⑤)受苦の類、過去の集因を顧みること無し。是(ここ)を以て、或いは、居を海辺に卜し、鉤網(こうもう⑥)を業(なりわい)と為(す)。或いは、屋を山野に結び、才猟(さいりょう⑦)を事とす。或いは、他財を奪う。或いは、他の妻に染む。妄語、綺語、悪口、両舌、貪、瞋、邪見。是くの如き十悪(じゅうあく⑧)、高貴は他に勅して造らしめ、下賤は自ら手づから造作す。並びに是れ仏法に値(あ)わず。因果を信ぜざる故に。

 

 穢悪=穢土と悪趣。

 紹隆=前人の事業を受け継いで、さらにこれを盛んにさせること。

 業=梵・カルマン。行為。行動。身(身体)・口(言語)・意(心)の三つの行為。善悪の行為は未来の苦楽の結果を導く。⇔果報。

 苦酷=ひどい苦しみ。

 三途=悪業をなした者が死後に赴く三つのあり方。猛火に焼かれる火途(地獄道)、互に相食む血途(畜生道)、刀・剣・杖などで迫害される刀途(餓鬼道)。三悪道、三悪趣。

 鉤網=釣針と魚網。

 才猟=採猟。狩猟。

 十悪=身・口(く)・意の三業(ごう)によって造る十種の罪悪。殺生、偸盗、邪淫、妄語、綺語、悪口、両舌、貪欲、瞋恚、邪見(または愚痴)。十不善業。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月23日 (火)

 般若寺花だより 12・23

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

今日は今上天皇の誕生日。昨年の国民へのお言葉。

「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」

日本国民はこのまっとうなお言葉を良くかみしめなければなりません。今年のお言葉にも注目です。

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「いまはなる 言(こと)わすれめや 枕べに

       父の居らくは 幾年(いくとせ)ぶりぞと」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「あばら骨 なでじとすれど 夜寒かな」一茶

・訳:あばら骨をなでまいとするけれど、夜寒が骨身にしみる。

〔和歌〕

「吹く風の さそふともなき 木ずゑより

 落つるかれ葉の 音ぞさびしき」

          芬陀利花院前関白内大臣・風雅756

「吹く風は(弱く)、落葉を誘うという程でもないのに、梢からはらりと落ちる枯葉の音の、何とさびしいことよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「みゆきふる かうやおりきて こもりねし

         ならのやどりの よひのともしび」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》287

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆後深草院宝治元年丁未 改元二月八日

菩薩、四十七歳。春正月、西大寺僧堂を建立す。三月、発願立誓す。其の頌文に曰く、

 

 【釈迦尊に帰命したてまつる。願わくは、我れ未来に生を受ける善悪処に於いて、菩提心を忘れず。自然に衆生は皆是れ我が父母(しゅじょうはみなこれわがふぼ①)なりと憶(おも)い、種々の方便(しゅじゅのほうべん②)を設け、漸々(ぜんぜん③)に苦を離れしめ、自他の行願(じたのぎょうがん④)満じて、共に無上道(むじょうどう⑤)を證さんことを。】

 

 宝治元年丁未三月晦日酉時に之を誓ふと。 已上願文。

 

 衆生皆是我父母=『梵網経』に出る。

 種々の方便=衆生を仏道に導くさまざまな手段、方法。

 漸漸=次第次第に進むさま。

 自他の行願=自利利他の菩薩行の誓願。

 無上道=無上成等正覚。最高のさとりへの道、菩薩道。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月22日 (月)

 般若寺花だより 12・22

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

今日は冬至、昼間が一番短い日です。ということは、明日からは長くなるということですね。でも今の寒さは格別です。

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙や 美人かうべを いたむらし」与謝蕪村

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「父われを 時のますらも 口に呼び

        今もよぶかも 物書きてあれば」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「掌(てのひら)へ はらはら雪の 降りにけり」一茶

・訳:掌のなかにはらはらと雪が降ってくるよ。

〔和歌〕

「うちしぐれ ただよふ雲の 山めぐり

        はやくも冬の けしきなる哉」

        入道前太政大臣(西園寺実兼)・玉葉835

「時雨を降らせながら漂う雲が、山々をめぐって行く様子は、早くも冬の風情であるよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「すがしくも はなやぎてこそ おはしけれ

         につたうしやもん へんぜうこんがう」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》286

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆七月、良観性公(良観房忍性)、此の方、教籍(きょうせき①)尚(な)を未だ備わらざるを慨(なげ)いて、将に支那に入て之を伝えんとす。縁礙(えんがい②)有るを以て之を果たさざる也。仍て成願如公(成願房覚如)を勉(すすめ)て之を代らしむ。如、忻然(きんぜん③)として諾し、孑身(けつしん④)にして宋に入る。菩薩、深く其の志を感じて隆信舜公(隆信房定俊)をして之に伴なわしむ。二月、文殊講式一巻を製す。廿五日、如、一座三門の讃嘆を述べ、五字(ごじ⑤)千遍の神呪を念誦す。而して后、毎月之を修するをもって恒軌と為す。十月廿五日、土師寺(はじじ⑥)に於いて菩薩戒を二百三十六人に授く。

 

 教籍=戒律の典籍。

②縁礙=さまたげとなる縁故。

 忻然=欣然。よろこんで。

 孑身=ただ一人。ひとりぼっち。。

 五字=文殊菩薩の五字真言。(オン)アラハシャナウ。

⑥土師寺=道明寺(藤井寺市)

 

西大勅諡興正菩薩行実年譜 巻上 終

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月21日 (日)

 般若寺花だより 12・21

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「あわただしく 命はゆきぬ わが家の

          窓に日あたり きのふのごとし」

            島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「しばしまて 白髪くらべん 鉢扣(はちたたき)」一茶

・訳:しばらくそこで待っていろよ。白髪の数をくらべようじゃないか。

〔和歌〕

「時雨れ行く 雲まによはき 冬の日の

         かげろひあへず くるる空哉」

           前中納言為相・風雅734

「時雨を落として行く、雲の間に弱く輪郭を見せる冬の太陽が、光をほのめかす程にもなく、暮れて行く冬の空よ。」

・かげろひあへず=光を見せる気配はありながらはっきりした日ざしに至らず。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「しずけさの はなにあるごと こんどうの

         五こたにぎりて おはしますかも」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》285

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(寛元)四年丙午(ひのえうま)

菩薩、四十六歳。正月六日、又発願して曰く、

 

【 願はくは今より未来を盡すまで(①)、法を興し有情を利さん(②)。 衆生の昇沈(しょうちん)に隨って利益勝れるを先とす(③)。】

 

 今より未来を盡すまで=現在より未来にわたるまで。

 法を興し有情を利さん=仏法(釈尊のおしえ、正法)を興隆し、一切の有情(心を持つ生きもの、すなわち人間)を利益(りやく、仏道にみちびき物心両面のしあわせを享受させる)したい。

 衆生の昇沈に隨って利益勝れるを先とす=衆生(ひとびと)の浮き沈み、すなわち善悪、貧富、盛衰など境遇の違いにかかわらず、人々を仏の道に導き利益する利他行を優先したい。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月20日 (土)

 般若寺花だより 12・20

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「ゆくものは 止(とど)まることなし 護国寺の

         冬木の森に 日は間(ま)なく照るも」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「菊いろいろ いつ古里の 冬籠(ふゆごもり)」一茶

・訳:菊はいろいろに咲いている。いったいいつになったら古里で冬籠りできるのだろうか。

〔和歌〕

「山がつの よもぎがかきも 霜がれて

        風もたまらぬ 冬はきにけり」

          藤原清輔朝臣・玉葉834

「山人の、わずかに垣根代りにする蓬もすっかり霜で枯れて、寒風もさえぎるものなく吹き込む冬がやって来たことよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「いませりし よはひはこぞと すぎはてし

         わがころもでに ゆきなふりそね」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》284

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆悲増大願(ひぞうのたいがん①)、此れを閲して知るべし。十六日、菩薩別受戒の僧三十六人とともに皆、墨の江(すみのえ②)に詣で、大般若経を神宮寺(じんぐうじ③)に於いて転読す。十一月八日、密壇を啓建して、灌頂を若干人に授く。廿一日、法華寺に於いて沙弥尼戒を若干人に授く。廿五日、西大寺真言堂(さいだいじしんごんどう④)の造功已に成る。即ち曾て刻む所の文殊の尊像を安置し奉り、落成の仏事を修す。

 

 悲増大願=菩薩に二類あり、一に智恵の勝れた智増菩薩、自利の善根多く利生の善根少なきもの。二に大悲心すぐれた悲増菩薩は、久しく生死に住して有情を利益せんと欲し速やかな菩提を求めない。悲増菩薩の大いなる誓願。

 墨の江=住之江。住吉の古称。

 神宮寺=住吉社神宮寺。

 西大寺真言堂=光明真言土砂加持法会を営む本堂。清凉寺式三国伝来釈迦如来像を本尊とする(現在の本堂は近世再建、釈迦像は当時のものが現存)。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月19日 (金)

 般若寺花だより 12・19

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「枕べに 幾夜をとほし 疲れたる

       心やすまり 今日涙出づ」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「むら時雨 山から小僧 ないて来ぬ」一茶

・訳:ひとしきり激しく降って通り過ぎる時雨、山から小僧が泣いて来たのだ。

〔和歌〕

「もみぢ葉の 深山にふかく ちりしくは 

         秋のかへりし 道にやあるらん」

           後二条院御歌・風雅727

「紅葉葉が、山奥に深く散りしいているのは、これが秋の帰って行った道なのだろうか。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈白雪〉

「ときもなく ふりくるゆきか くさまくら

         たびのころもは あつからなくに」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》283

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆時に隨ひ方便を設け、以て一悪をも離れしめ、一善をも修せしめるを要とせん。利生の事、若し同時ならば、勝れるを以て先と為し、八寒八熱の奈梨(なり①)は、利生の為に之を忍び、三界六道(さんがいろくどう②)の苦患は、利生の為に厭わず。就中(なかんずく)一つの切なる悲しみ有り。七歳にして悲母を喪う。未だ昇沈の生を弁(わきま)えざるに、善根を以て悉く廻向す。諸仏必ず引導し玉へ。

 寛元三年乙巳九月十三日戌時之を誓ふ。】 已上願文。

 

 奈梨=泥梨(ないり)、地獄。

 三界六道=一切衆生が生死輪廻する世界。欲界、色界、無色界。六つの迷界。地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月18日 (木)

 般若寺花だより 12・18

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「友を見て はじめて心 やすまれり

        堪(こ)らへてありし 涙ながるも」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「炉のはたや よべの笑いが いとまごひ」一茶

・訳:炉辺のぬくもりよ。そこでした昨夜の笑い話が永遠のお別れの挨拶でした。

〔和歌〕

「もみぢばは てりてみゆれど 足曳の

         山はくもりて 時雨こそふれ」

           貫之・玉葉808

「紅葉葉は明るく照り輝いて見えるけれど、山は曇って時雨が降っているよ。」

・てりて=照りて。「曇りて」の対。紅葉の輝くような美しさを示す。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺〉

「さけのむと ひそかにいでし やまでらの

         かどのをばしに かぜひきにけむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》282

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆抑々(そもそも)、断悪修善(だんなくしゅぜん①)利生(りしょう②)は一切菩薩の通願、三徳(さんとく③)の本基なり、三身(さんじん④)の正因なり。三世等しく修め、敢えて差異無し。然りと雖も、機根(きこん⑤)区(まちま)ちに分かれ、意楽(いぎょう⑥)互いに同じからず。故に別願おのおの異なり、弟子が如きは、機縁の然らしむる所、釈尊の遺弟に列し、辺地悪世に生まれて、無依無怙(むえむこ⑦)の衆生を見ては、将に、本師往昔の跡(ほんしおうじゃくのあと⑧)に等しく、五百の大願(ごひゃくのたいがん⑨)に隨順し、常に無聞非法(むもんひほう⑩)の衆生に於いて、菩薩の行を修し、終に五濁悪世(ごじょくあくせ⑪)に於いて、正等覚(しょうとうがく⑫)を成じ、諸仏の世界に引導せんとす。擯棄(ひんき⑬)せらるる衆生は、三乗(さんじょう⑭)の菩提に趣かしめ、人天の善種を植えしめ、衆生の輪廻に隨ひ、衆生の昇沈に隨ひ、機に隨ひ正法を説く。

 

 断悪修善=悪業を断ち善業を修めること。

 利生=利益衆生。衆生を済度すること。

 三徳=仏に具わる三つの徳。衆生を救護する恩徳、一切の煩悩を断った断徳、平等の智慧をもって一切諸法を照らす智徳。

 三身=三種の仏身。法身、報身、応身。

 機根=潜在的能力。仏法にふれて活動しはじめる精神的素質。

 意楽=意はこころ、楽はねがう。何かをしようとする意思。心がまえ。望み。

 無依無怙=よるところ、たよるところのない。

 本師往昔の跡=『悲華経』に説かれる釈迦の前生譚によれば、宝海梵志が浄土ではなく穢土を選び、衆生済度を誓願して娑婆であるこの世に生まれ釈迦如来となったことをいう。

 五百の大願=釈迦の衆生済度の誓願は五百を数えたという。(悲華経には具体的内容は説かれていない。)

 無聞非法=仏の教えを聞くこともなく、仏法にそむくこと。

 五濁悪世=劫濁(時代の汚れ)、見濁(人々が誤った思想・見解を持つこと)、煩悩濁(貪嗔癡等の煩悩が盛んになること)、衆生濁(見濁・煩悩濁の結果として、心身が弱く、苦しみが多くなること)、寿命濁(寿命が次第に短くなり、最低10歳にまでなること)の五つをいう。五濁のおこる時代を五濁悪世といい、末法と重ねて考えられる。

 正等覚=さとり。

 擯棄=仏法からしりぞけ捨てられた。

 三乗=声聞乗、縁覚乗、菩薩乗。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月17日 (水)

 般若寺花だより 12・17

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

今日は「春日若宮おんまつり」、奈良の一年の最後をかざるお祭りです。

お昼には奈良公園から三条通りを「お渡り」があり時代行列が見られます。

例年、雪が舞うことが多く寒い一日となります。

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「とめどなく 我(われ)の眼(まなこ)より 涙ながれ

         友に面(おも)むかひ 悔いてとまらず」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「年の市 何しに出たと 人のいふ」一茶

・訳:年末の市に何をしに出て来たのかと人様が言う。家族がいない者には正月用品を得る年末の市は無用だから疎外されている者の悲しみを詠む。芭蕉の句「何に此の師走の市にゆくからす」をふまえている。

〔和歌〕

「冬のきて 霜のふり葉も あはれなり

        われもおひその 杜のした草」

        円光院入道前関白太政大臣・風雅726

「冬が来て、霜の降り置いた葉の様子を見るのも身にしみてあわれに思われる。私も年老い、老蘇の森の下草のように霜枯れて行くのだもの。」

・おひその森=近江の歌枕。老蘇森。滋賀県蒲生郡安土町の奥石神社の森。「老い」にかける。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺、寺中に泊し学生に千年の寺史を説く〉

「このやまに だいしのゆかり おはさじと

         ことのしたより のどはれにけむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》281

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆仰ぎ願はくは、諸徳大衆(しょとくだいしゅう①)同心愍念(どうしんびんねん②)して、塵沙(じんさ③)の戒法を成ぜしめたまへ。夫れ戒法は無辺にして、法界塵沙の境を以て量と為すが故に、功徳無尽なり。動発勝思(どうはつしょうし④)の分を以て、際とするが故に。所以(ゆえん)は何ぞ、悪心は法界に遍し、境に隨い作に応ずるが故に、佛制亦た法界に遍くす。境に隨い禁ずべき故に。受戒若し成就すれば、更に前の悪心を翻じて、新たに功徳善法を成ず。其の中に前の通受は未来際(じんみらいさい⑤)を尽くす。今の別受は一形(いちぎょう⑥)を限ると。然れども、羯磨の功徳及ぶ所の、運々増長の分量は、前の所得の功徳を以て、以前の所薫の種字と同じく、来際を尽くし、通別更に異なり無し。是則ち菩薩所修の律儀(りつぎ⑦)なり。是則ち摂善摂生(しょうぜんしょうしょう⑧)の根本なり。誓ふ、今身より未来際を極めるまで、通別二受の禁戒、敢えて違犯せじと。唯願わくは、現不現前の一切三宝、慈悲を以て証明知見を垂れたまへ。

 

 諸徳大衆=別受戒に参加した諸大徳、僧衆。

 同心愍念=心を合わせ、あわれみ深い思いをもって。

 塵沙=ほこりや砂のように細かく多いさま。

 動発勝思=すぐれたる思い、心情を動かし開くこと。

 尽未来際=永久に、永遠に。

 一形=一形寿。一代。

 律儀=摂律儀戒。

 摂善摂生=摂善法戒、摂衆生戒。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月16日 (火)

 般若寺花だより 12・16

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

コスモスは花の終了を告げてからもまだ咲いています。気温は、毎朝零度ちかくまで下がり、時々氷が張っているのに。こんな真冬にコスモスが見られるなんて初めて、おどろきです。この花は苗を育てるプランターに、9月初め種をまいたのが今までのこったのです。小さな苗は霜にあたって萎れていますが、大きい方、80センチほどの苗はきれいな大きな花を咲かせています。一輪の花の寿命は秋にくらべて長いようです。この先どこまでもつか実験ですね。大晦日、お正月まであったらうれしいです。

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「子をまもる 夜のあかときは 静かなれば

         ものを言いたり わが妻とわれと」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「ほのぼのと 明わたりけり 煤の顔」一茶

・訳:ほもぼのと明るくなってきたなあ。煤払いで黒ずんだ顔が。

〔和歌〕

「年をへて 苔にむもるる ふるでらの

        軒に秋ある つたの色かな」

          前大僧正慈鎮・玉葉803

「年月を経て、苔にうずもれ、季節もわからないような古寺の、軒に紅葉して秋を感じさせる、蔦の色であるよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺、金堂なる十一面観音を〉

「うらわかく ほとけいまして むだなまも

         ただまもゆらに みちゆかすごと」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》281

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆仰ぎ願はくは、諸徳大衆同心愍念(びんねん①)して、塵沙(じんさ②)の戒法を成ぜしめたまへ。夫れ戒法は無辺にして、法界塵沙の境を以て、量りと為(す)るが故に、功徳無尽なり。動発勝思の分を以て、際とするが故に。所以(ゆえん)は何ぞ、悪心は法界に遍し、境に隨い作に応ずるが故に、佛制亦た法界に遍くす。境に隨い禁ずべき故に。受戒若し成就すれば、更に前の悪心を翻じて、新たに功徳善法を成ず。其の中に前の通受は未来際(みらいさい③)を尽くす。今の別受は一形(いちぎょう④)を限ると。然れども、羯磨の功徳及ぶ所の、運々増長の分量は、前の所得の功徳を以て、以前の所薫の種字と同じく、来際を尽くし、通別更に異なり無し。是則ち菩薩所修の律儀(りつぎ⑤)なり。是則ち摂善摂生(しょうぜんしょうしょう⑥)の根本なり。誓ふ、今身より未来際を極めるまで、通別二受の禁戒、敢えて違犯せじと。唯願わくは、現不現前の一切三宝、慈悲を以て証明知見を垂れたまへ。

 

 愍念=あわれむ思い。いたむ、悲しむ。

 塵沙=ほこりや砂のように細かく多いさま。

 尽未来際=永久に、永遠に。

 一形=一形寿。一代。

 律儀=摂律儀戒。

 摂善摂生=摂善法戒、摂衆生戒。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2014年12月15日 (月)

 般若寺花だより 12・15

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「弟妹(いろと)らの 悲しみ坐り ゐる前に

かへり来れり 知ることもなし」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「初雪や 故郷(ふるさと)見ゆる 壁の穴」一茶

・訳:初雪が降っているよ。故郷が見えてくる、壁の穴から。

〔和歌〕

「しもがれむ ことをこそおもへ 我が宿の

         まがきに匂ふ しら菊の花」

           前中納言師時・風雅701

「やがて霜枯れてしまう事をつくづく惜しいなあと思うよ。私の家の垣根に美しく咲き匂う、白菊の花を見るにつけて。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺、金堂なる十一面観音を〉

「しょくとりて むかへばあやし みほとけの

         ただにいますと おもほゆるまで」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》280

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆敬って律鈔を開き、如来の正法を以て自身の所行を校(くら)ぶるに、宛も明鏡の醜陋(しゅうろう①)の形を照らすが如し。また澄水の疲破(ひは②)の影を宿すに似たり。進んで更に受具せんと欲するに、能所の縁備え難く、退いて俗形に復さんと欲するに、狂人の責(せめ)脱し難く、ここに於いて重ねて思念すらく、菩提薩埵、律儀戒を受くるに、別受(べつじゅ③)有り、通受(つうじゅ④)有り。通受の方軌に従他(じゅうた⑤)有り、自受(じじゅ⑥)有り。設(たと)ひ従他は成りがたくとも、自受は何ぞ成らざらんや、ここを以て、去る嘉禎二年歳次丙申(ひのえさる)八月下旬、三世十方の三宝に祈りて、以て夢中の告を被り、閻浮第一の霊像(東大寺大仏)を拝し、以て現前の瑞を感じ、当時の歓喜身に余り、感涙眼に浮かぶ。遂に、同年九月上旬を以て、東大寺羂索院(法華堂)に於いて、大聖観自在菩薩の御前に対し、四人の善伴同じく誓約を来際に期し、互に証明を現前に仰ぐ。面々、瑜伽自誓の羯磨を誦して、各、在家出家の戒体を成ず。爾るより以来、菩薩の大僧、漸々に寺寺に遍(あまねく)す。正法の威光、新たに処々を輝かす。衆僧の円満すること難きに非ず。闍梨の如法また備われり。之に依りて将に諸徳の慈悲を蒙り、更に別受の軌則を遂ぐ。

 

 醜陋=顔かたちがみにくくいやしいさま。

 疲破=疲皺。疲れて顔に現われる皺。

 別受=律儀戒だけを別して受ける受戒法。三師(戒和尚、羯磨師、教授師)と七人の証明師のもとで、白四羯磨(びゃくしこんま)により摂律儀戒(四分律の具足戒・比丘は二百五十戒)のみを受ける。四波羅夷法は不淫、不盗、不殺、不妄語(犯せば追放される重罪)。菩薩戒(三聚浄戒)としての摂善法戒と摂衆生戒は別の機会に受ける。

 通受=三聚浄戒による菩薩戒の受戒法で三つを通じて(総じて)受けることが出来る。『四分律』の具足戒と『瑜伽師地論』の四他勝処法を折衷して授かる。中世以降の南都では通受受戒が主流となる。

 従他=従他受による受戒。十師(三師七証)による受戒。

 自受=自誓受による受戒。『占察経』『瑜伽師地論』を根拠とする。十師に佛菩薩を招請する。自誓受戒は通受のみ。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

 

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2014年12月14日 (日)

 般若寺花だより 12・14

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

今日は総選挙、衆議院議員を選ぶ選挙の投票日です。戦後69年目、歴史の分かれ目に立つ選挙です。明るい未来につながるのか、それとも暗い奈落への道が待っているのか、答えは私たちの投票にかかっています。何はともあれ選挙に行きましょう。参政権を持っている人は、未来の子や孫のために現在の政治への責任を果たしましょう。

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「ふたつの歳 眼をやみしかば 手をひき歩み

         思ひは永く この子にのこらむ」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「三絃(さみせん)の ばちで掃きやる 霰哉」一茶

・訳:三味線の撥(ばち)で掃いて落とした霰だよ。

〔和歌〕

「かた山の ははその梢 色づきて

        秋風さむみ 雁ぞなくなる」

          前大納言為氏・玉葉768

「片山の柞(ははそ)の木の梢が紅葉してきて、秋風が寒く吹き、雁の鳴く声が聞えて来るようだ。」

・ははそ=ナラやクヌギなどの落葉喬木の総称。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺〉

「こんだうの くらきをいでて このまなる

         くさのもみぢに めをはなちをり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》279

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆伏して以(おもんみ)れば、弟子流伝(転ヵ)生死の程、三界六道の間、苦海波高くして、未だ大悲の船を感じず。長夜闇深くして永く解脱の路を失う。闇より闇に移り、弥(いよいよ)大覚の光に背き、波より波に沈んで、遠く涅槃の岸より離る。然る間、適(たまたま)人間の波に浮び、船師大船師の法を聞く。希(まれ)に佛日の光に照らされて、導師大導師の教えを被(こうむ)る。喜ぶべし喜ぶべし、仰ぐべし仰ぐべし。然れども居を東桑(とうそう①)の堺に卜(ぼく②)し、隨順法律(ずいじゅんほうりつ③)の知識を見ず。生を澆末(ぎょうまつ④)の際に受け、永く如説修行の軌範を失う。ここを以て早年の齢にして、髪を剃り衣を改め、憗(なまじ⑤)いに形を沙門に似せ、愚駿(ぐしゅん⑥)の意(おもい)のままで壇に登り、戒を望み、猥(みだ)りに名を比丘に仮り、五篇七聚(ごひんしちしゅう⑦)の禁戒、殆ど其の名を聞かず。三衣六物(さんねろくぶつ⑧)の資具(しぐ⑨)、都(すべ)て其の相を見ること無し。已に無戒の類に及ばざるや、寧ろ持犯(じぼん⑩)の名を論ずること有らんや。之に加え、常に大小の伽藍に汗したるに、仏法僧宝の敬田(きょうでん⑪)に背き、鎮(とこしな)へに甲乙(こうおつ⑫)の信施を受けて、拙(つたな)く鉄丸洋銅(てつがんようどう⑬)の業因を積む。師匠を弁(わきま)えること無く、同伴は共に迷ふ。然り而して、日月は馳せるが如し。生年三十有余、星霜頻りに移って、剃髪より亦二十年に及ぶ。空しく隣家の宝を算(かぞ)ふ。自ら前非を知り、半銭の利を擬(なぞら)ふ。

 

 東桑=東方の果ての地。

 卜=えらぶ。うらなって選び定める。

 隨順法律=法律は仏法と戒律。隨順は心から信じて従うこと。

 澆末=澆季末世。澆は軽薄、季は末の意。道徳が衰え人情の浮薄となった時代。末世は末法の世、仏法のおとろえた世。

 なまじいに=出来そうもないことを無理にするさま。

 愚駿=すぐれているわけでもなく、おろかな。

 五篇七聚=律の戒法を違犯した場合の罪の軽重を五または七に分類するもの。波羅夷、僧残、波逸提法、波羅提提舎尼、突吉羅の五篇に偸蘭遮、悪説を加えて七聚。

 三衣六物=比丘が個人所有を許された三つの衣(僧伽梨・大衣、鬱多羅僧・上衣、安陀会・下衣)と鉢(鉄鉢、応量器)、座具、漉水嚢(水こしの袋)。

 資具=使用する器具。什器。

 持犯=持戒と犯戒

 敬田=福田(善い行いの種をまいて功徳の収穫を得る田んぼの意)の一つで、仏法僧など尊敬すべき対象。

 甲乙=だれかれ。信者。

 鉄丸洋銅=鉄のかたまり、熔けた銅。口に入れても身につくものとならないものの喩え。

(つづく)」

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

 

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2014年12月13日 (土)

 般若寺花だより 12・13

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「山の村の 隣人(となりびと)らに 暇(いとま)つげて

        来つる道には 帰ることなし」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「子七人 さはぐかれのの 小家哉」一茶

・訳:七人の子どもがさわいでいる枯野の中の小家だなあ。

〔和歌〕

「あさぎりの はれゆくをちの 山本に

         紅葉まじれる 竹の一むら」

           前大納言実明女・風雅680

「朝霧の晴れて行く、遠くの山の麓に、紅葉のまじった竹の一群が見えて来る。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺〉

「わくごらは あなうつくしと みほとけの

         みだうのやみに こゑはなちつつ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》278

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆其の願文に曰く、

【 佛子叡尊、敬って蓮華台上の廬遮那如来、葉上葉中の諸の釈迦牟尼、大小権実の一切正法、小乗大乗の賢聖衆僧、殊に別しては、一代本師牟尼善逝(いちだいほんしむにぜんぜい①)、滅後大師波羅提木叉(めつごだいしはらだいもくしゃ②)、三世覚母曼殊支利(さんぜかくぼまんじゅしり③)、一生補処梅多梨耶(いっしょうふしょばいたりや④)、諸佛受戒三大菩薩、迦葉優婆梨等集律聖衆、龍樹無着等伝法諸師、現前勧請の両阿闍梨耶、証明受戒の和合衆僧、梵釈四王(ぼんしゃくしおう⑤)、龍神八部(はちぶ⑥)三部五部、三界(さんがい⑦)五類(ごるい⑧)護法の天等、惣じては微塵刹土(みじんせつど⑨)、帝網重々(たいもうじゅうじゅう⑩)、一切の三宝、護法の境界に白(もう)して言(もう)さく。

 

 一代本師牟尼善逝=一代の根本の教師である釈迦牟尼如来。牟尼は梵語・ムニの音写、聖者・寂黙・聖仙の意。 善逝は梵語・スガタの訳、悟りの彼岸に去って再び迷いの生死海に堕ちない者の意。

 滅後大師波羅提木叉=仏滅後の大師となる波羅提木叉。梵語・プラーティモークシャの音写。戒本。戒の条文。

 三世覚母曼殊支利=三世の仏の覚りの知恵を生み出す母のような、文殊師利菩薩。

 一生補処梅多梨耶=一生補処はただ一度だけこの生死の世界に縛られるだけで、次の世には仏と生れることができる地位。菩薩としての最高位。梅多梨耶は梵・マイトレーヤ。弥勒菩薩。釈尊入滅後五十六億七千万年たてば釈尊の代りに衆生済度すると予言された補処の菩薩。

 梵釈四王=梵天、帝釈天、四天王。

 八部=八部衆。仏法護持の異類。天、龍、夜叉、乾ダツ婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩喉羅迦。

 三界=欲界、色界、無色界。

 五類=五類天。1.上界天(色界、無色界の諸天)、2.虚空天(欲界の六天中夜摩天以上の四天)、3.地居天(欲界六天中四王天、忉利天)、4.遊虚空天(日月星宿)、5.地下天(龍、阿修羅、閻魔王等)

⑨微塵刹土=ごくこまかな国土。

⑩帝網重々=帝釈天(因陀羅)宮にある宝網で、結び目にある珠玉が互いに映じ合って無限に輝く関係で、華厳の「重々無尽」を表す。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

 

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2014年12月12日 (金)

 般若寺花だより 12・12

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「田舎の 帽子かぶりて 来(こ)し汝(なれ)を

       あはれに思ひ おもかげに消えず」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「一尺の 子があぐらかく いろり哉」一茶

・訳:一尺の子どもがあぐらをかいている囲炉裏だなあ。

〔和歌〕

「さよふけて 衣うつなり われならで

        またねぬ人は あらじとおもふに」

          小弁・玉葉757

「夜が更けて、どうやらどこかで衣をうっているらしい。私でなくて、ほかに寝ないでいる人などあるまいと思っていたのに。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺〉

「わたるひの ひかりともしき やまでらの

         しづけきゆかに たつほとけたち」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》277

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆菩薩、斯(こ)の法を秘重すること、其れかくの如し。弟葉(ていよう①)何ぞ頂奉(ちょうほう②)せざらんや。

秋九月十三日、泉の家原寺清涼院(えばらじせいりょういん③)に抵(いた)り、白四羯磨別受(びゃくしこんまべつじゅ④)の法に依って重ねて具足戒を禀(う)く。其の同く受る者三十有六人なり。此の旹(とき)に丁(あた)って、白泉(びゃくせん⑤)再び漲(みなぎ)り、律燈大いに光る。登壇既に訖(おわ)って、即ち文殊堂に於いて、大誓願を發(おこ)す。

 

 弟葉=弟子ら。

 頂奉=いただき、たてまつる。

 家原寺清凉院=大阪府堺市家原寺町にある。高野山末寺。行基菩薩の誕生地。寛元三年(1245)興正菩薩が再興。本尊は文殊菩薩。いつからか清涼院を院号として寺号に冠してる。ここでは寺そのものを指すか、当時あった支(子)院をさすかは不明。名前からすると釈迦如来を意味する。

 白四羯磨別受=通受(三聚浄戒の総受)に対して、摂律儀戒(四分律の戒、比丘であれば具足戒すなわち二百五十戒)のみを三師七証の十師の下で受けるのが別受。具足戒の授戒作法が白四羯磨(一白三羯磨)で、白は議題提案のこと、羯磨は作法のこと。授戒の儀式で羯磨師が受戒希望者に代って白を唱え、僧伽全員に賛否を求めることを三回くりかえす方法で、もし異議を唱える者がなく沈黙であれば、その羯磨は成立して受戒することが認められる。

 白泉=白四羯磨すなわち別受の律法を泉にたとえる。 

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月11日 (木)

 般若寺花だより 12・11

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

 

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「玉きはる 命のまへに 欲(ほ)りし水を

       こらへて居よと 我は言ひつる」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「合点(がてん)して 居ても寒いぞ 貧しいぞ」一茶

・訳:十分に承知していても寒いぞ貧しいぞ。

〔和歌〕

「色々に ならびの岡の はつもみぢ

       秋のさがのの ゆききにぞみる」

         後宇多院御歌・風雅679

「色とりどりに並んでいる、並びの岡の初紅葉を、これが秋の本然の姿だと思いつつ、嵯峨野の行き帰りに楽しんで見るよ。」

・はらびの岡=山城の歌枕、双ヶ岡。

・秋のさがの=「秋の性」と「嵯峨野」をかける。

・ゆきき=後宇多院は嵯峨大覚寺を仙洞とし、洛中としばしば往来した。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈室生寺〉

「なみたたす ほとけともしみ いくとせを

         つぎてきにけむ やまのたをりに」

・なみたたす=並み立たす。ならんで立っておられる。

・ともしみ=ともしぶ(羨しぶ)。うらやましく思う。

・やまのたをりに=山の撓りに、山のくぼみに。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》276

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆其の付嘱(ふしょく)の詞に曰く、

【 叡尊、西大寺に住し、寛元三年八月廿五日寅の時、例の如く後夜の行法、之を勤む。五相成身観(ごそうじょうしんがん①)の後、心神忽然(こつぜん②)として湛寂(たんじゃく③)なり。あたかも定に入るが如し。夢に非ず、覚むるにあらず。空中に於いて大光明輪あり、大聖文殊師利菩薩、宝蓮華に坐し、金獅子王の上に乗り空中に出現す。予、信心して心肝に徹し、起立合掌す。此の時菩薩示して曰く、末代に密法修行して伝戒持律の資たる汝に、佛性戒灌頂印明を授くべし。汝、伝持して失すること勿れと。即ち授与し給ひ、事終て空中に没す。其の後、行法畢て、倩(つらつら)冥授の次第を憶ひ、心に任せて記す所也。叡尊、戒律の再興、専ら三摩耶戒(さんまやかい④)の為、瑜伽の羯磨を披(ひら)き得て、自誓受具し〔通別二受〕畢んぬ。爰(ここ)に大聖、従他の軌則を以て戒法成仏灌頂、伝授を蒙るもの也。信心厚深の至り、偏に以て冥通す。未来際を尽くすまで、伝戒の和上、師資相承して断絶すべからず。若し此の印可断絶せしむれば、我が再興律法、又以て断絶す。律法と密教とは、一心に於いて日月の如し。

時に文永六年八月廿五日、信空大徳に授与す。唯一人に授け二人に及ぶべからず。

西大寺叡尊    已上嘱記 】

 

 五相成身観=五相を具備して本尊の仏身を修行者の現実の身の上に完成させると観ずる密教の観行。金剛界法の行用。五相は、通逹本心、修菩提心、成菩提心、証金剛身、仏身円満(前の四段階の観法を順次に修習して、行者の身体が仏の身体と同一性であることを悟る)。五智。

 忽然=にわかに、たちまち。

 湛寂=解脱の境地に入ったような安らかさを湛えている。

 三摩耶戒=真言行者の守るべき戒。(1)正法を捨てず、邪行を行わない。(2)菩提心を捨てない。(3)一切法を相手の器に応じて惜しみなく与える。(4)衆生の救済に努力する。これらを発心の最初から、心と仏と衆生の三平等の理を信じ、いかなる苦難に遭っても断固、正法を捨てないことを誓う。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月10日 (水)

 般若寺花だより 12・10

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

もみじ、さくら、けやき、ナンキンハゼなどの落葉樹はおおかた葉を落しました。いま葉を残しているのは、高木ではいちょう、くぬぎ、灌木では山吹です。どれも黄色ですが、少しづつ色合いが違っていて自然の造形の微妙なる多様さが見てとれます。自然は芸術ですね。

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「幼きより 生みの母親を 知らずして

        いゆくこの子の 顔をながめつ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「盆の灰(はひ) いろはかく子の 夜寒哉」一茶

・訳:盆の灰の上にいろはの文字を書く子、夜寒が身に染みるよ。

〔和歌〕 

「ふけゆけば ところどころに きこえつる

         きぬたのをとぞ まれに成り行く」

           前右近大将家教・玉葉756

「夜が更けるにつれて、あちこちで聞えていた砧の音が、次第に少なく、稀にしか聞えぬようになって行くよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈霜葉〉

「もみぢばの たにまはるけく わたりきて

         こけまだらなる てらのきざはし」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》275

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(寛元)三年乙巳(きのとみ)

菩薩、四十五歳。春正月、請いを受け、泉州家原寺(えばらじ)清涼院を住持し堂宇を修造し、新たに護摩堂、求聞持堂、及び天照大神、丹生高野、弁天等の神社を建つ。又、寺辺に於いて、同禅寺を建立し以て尼寺と為す。四月九日、法華寺に届かる。尼文篋(文篋房基忍)等の五人、沙弥尼戒を従い受く。次いで、五月八日より三十箇日を点じて、西大寺に於いて始めて最勝会(さいしょうえ①)を修し、国家を祝祷す。以て君恩を酧(むく)ひたてまつる。しかるより以後、永く恒軌と為す。今時に至るまで猶絶えず。八月廿五日夜、忽ち感ず。文殊、出現して親しく佛性三摩耶妙戒(ぶっしょうさんまやみょうかい②)灌頂(かんじょう③)を授くることを。其の法至って甚深なり。筆端に記すべからず。後に文永六禩(し④)に臻(いた)り、始めて信空大徳に伝う。

 

 最勝会=護国経典とされる金光明最勝王経を講説し、天地の長久を祈る法会。

 仏性三摩耶妙戒=別名、住無為戒、菩提心戒、金剛仏戒とも。真言行者が本来具有している戒で、浄菩提心を戒体とするから阿闍梨に従って受戒する三昧耶戒に対し、自得する戒であるため別体と考えられるが、共に浄菩提心の発露であるから、論題でも同体とする。

 灌頂=頭頂に水をそそぐこと。密教で阿闍梨より法を受けるときの儀式。授戒灌頂。

 禩=年。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月 9日 (火)

 般若寺花だより 12・9

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「硝子戸の 外(と)のもに星は 照り満てり

         たちまちにして 我が子はあらぬ」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「義仲寺は あれに候 はつしぐれ」一茶

・訳:義仲寺はあれでございます。初時雨。

宝暦十三年以降、近江の義仲寺では芭蕉忌に奉納された句を集成して「時雨会」を毎年出版。

〔和歌〕

「いりかかる をちの夕日は かげ消えて

         すそよりくるる うす霧の山」

           後西園寺入道前太政大臣・風雅662

「入ろうとしている遠方の夕日は、光が薄れて、山裾の方から暮れて行く、薄霧のかかった山よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈霜葉〉

「うみゆかば みづくかばねと やまがはの

         いはほにたちて うたふこらはも」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》275

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(寛元)三年乙巳(きのとみ)

菩薩、四十五歳。春正月、請いを受け、泉州家原寺(えばらじ)清涼院を住持し堂宇を修造し、新たに護摩堂、求聞持堂、及び天照大神、丹生高野、弁天等の神社を建つ。又、寺辺に於いて、同禅寺を建立し以て尼寺と為す。四月九日、法華寺に届かる。尼文篋(文篋房基忍)等の五人、沙弥尼戒を従い受く。次いで、五月八日より三十箇日を点じて、西大寺に於いて始めて最勝会(さいしょうえ①)を修し、国家を祝祷す。以て君恩を酧(むく)ひたてまつる。しかるより以後、永く恒軌と為す。今時に至るまで猶絶えず。八月廿五日夜、忽ち感ず、文殊出現して親しく佛性三摩耶妙戒(ぶっしょうさんまやみょうかい②)灌頂(かんじょう③)を授くることを。其の法至って甚深なり。筆端に記すべからず。後に文永六禩(し④)に臻(いた)り、始めて信空大徳に伝う。

 

 最勝会=護国経典とされる金光明最勝王経を講説し、天地の長久を祈る法会。

 仏性三摩耶妙戒=別名、住無為戒、菩提心戒、金剛仏戒とも。真言行者が本来具有している戒で、浄菩提心を戒体とするから阿闍梨に従って受戒する三昧耶戒に対し、自得する戒であるため別体と考えられるが、共に浄菩提心の発露であるから、論題でも同体とする。

 灌頂=

 禩=年。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月 8日 (月)

 般若寺花だより 12・8

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

今日は仏教の開祖、釈迦牟尼世尊仏陀が苦行を離れ、菩提樹の下で禅定に入り悟りを開かれた日、成道会(じょうどうえ)です。

それから1941年(昭和16)、日本がアメリカのパールハーバー攻撃で太平洋戦争を始めた日でもあります。無謀な戦争は日本の無条件降伏による敗戦で終結を迎えましたが、アジアで数千万人の尊い命を犠牲にする大きな過ちをおかしました。今日は日本が再び戦争をしないという誓いを新たにする日です。人は平和の中でしか人生をまっとう出来ません。幸福の追求もできません。これが仏陀のおしえです。肝に銘じておきたいものです。

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えて見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「これの世に 汝(いまし)やはある 吾(あ)れの子の

         手をとり握り ひたすらにあり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「ひいき目に 見てさへ寒き 天窓(あたま)哉」一茶

・訳:ひいき目で見ても、寒そうに禿げた頭だなあ。

〔和歌〕

「朝日さす いこまのたけは あらはれて

        きりたちこむる あきしのの郷」

          前参議実俊・玉葉737

「朝日がさすにつれ、生駒山はくっきりと姿をあらわし、対照的にまだ深く霧が立ちこめている、麓の秋篠の里よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈霜葉〉

「やまがはは しらなみたてり あすのごと

         いでたつこらが うたのとよみに」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》274

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(寛元)二年甲辰(きのえたつ)

菩薩、四十四歳。二月廿五日、今里の野に就いて、仮に坊舎を建て、文殊大士を安置し、食を畿内の饑者(きしゃ①)数千人に施す。三月四日、菩薩戒を三百三十四人に授く。又、殺生を四郷に禁ず。十月十三日、肉兄源景親の子息、陀羅尼童子、隨いて頂相を円にす。菩薩、為に五戒を授く。西琳(さいりん②)の総持(そうじ③)律師、是也。廿五日、安部文殊に詣す。心地戒(しんちかい④)を稟受(ひんじゅ⑤)する者、三百九十六人、因みに勧めて殺生を廿五箇所に禁ず。廿七日、隨真尼公(隨真房則阿)を度す。

 

 饑者=貧しく飢えたる者。

 西琳=西琳寺。

 総持=叡尊師の甥にあたる。日浄房。

 心地戒=梵網菩薩戒。

 稟受=稟と受、共にうけるの意。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2014年12月 7日 (日)

 般若寺花だより 12・7

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えています。見ごろは今月半ばごろからお正月にかけて。花は二月まで咲きます。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。当寺の水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「顔のうへに 涙おとさじと おもひたり

       ひたぶるに守(も)る 目をまたたかず」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「寒月や むだ呼されし 座頭坊」一茶

・訳:寒々とした冬の月。仕事もないのに無駄に呼ばれた盲目のあんまさん。

〔和歌〕

「つの国の ゐなのの霧の たえだえに 

        あらはれやらぬ こやの松ばら」

         弾正尹邦省親王・風雅656

「摂津の国の、猪名野に立つ霧は少しづつ途絶えがちになって来たが、まだはっきりとは見えかねる、昆陽の松原だなあ。」

・ゐなの=摂津の歌枕、猪名野。兵庫県川西市・伊丹市・尼崎市にわたる猪名川流域の平野。

・こや=摂津の歌枕、昆陽。伊丹市南西部・尼崎市北部一帯。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈霜葉〉

「いでたたむ わくごがともと こえくれば

         かはなみしろし もみぢちりつつ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》273

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆後嵯峨院寛元元年癸卯(みずのとう) 改元二月廿六日

菩薩、四十三歳。賢明慈濟(けんみょうじさい①)律師、小字(をさなな)は多聞童子、菩薩に隨持し、薙染(ちぜん②)して出世間の法を学ぶ。又、長谷寺の善算来りて輪下(りんか③)に入り、沙弥戒を受く。七月十六日、進みて苾蒭戒(びっしゅかい④)を受く。八月、特に上聞(じょうぶん⑤)して勅許を蒙り、清原、新賀、西方寺、西大寺を以て、永く殺生禁断(せっしょうきんだん⑥)の地と為す。

 

 賢明房慈濟=石清水八幡宮寺検校法印の弟。唐招提寺覚盛より具足戒を受ける。鎌倉極楽寺忍性の下で活動し、後継者と目されたが、忍性より早世し、弟子の順忍が極楽寺第三世長老となる。

 薙染=剃髪染衣すなわち出家。

 輪下=門下。

 苾蒭戒=比丘戒。大僧戒、具足戒。

 上聞=ショウブンとも。君主の耳に入ること。上聴。

 殺生禁断=仏教の不殺生、慈悲の精神から、一定地域での鳥・獣・魚などの狩猟を禁ずること。勅許により法的な実効を保証された。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月 6日 (土)

 般若寺花だより 12・6

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えています。見ごろは今月半ばごろからお正月にかけて。花は二月まで咲きます。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。当寺の水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「日の暮れまで おほぢぢの手を とりてよろこび

         たはやすきかも わが子の命は」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「茶の花に 隠(かくれ)んぼする 雀哉」一茶

・訳:茶の花に隠れん坊している雀たちよ。

〔和歌〕

「月さゆる あかしのせとに 風ふけば

        こほりのうへに たたむしらなみ」

          西行法師・玉葉657

「月の光の冷たく映る、明石の瀬戸に風が吹くと、立つ白波はまるで氷の上にたたみかけて寄せるように見える。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈奈良帝室博物館〉

「よりたてば はにわのうまの たてがみの

         あらきくしめに こころはいりぬ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》273

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆後嵯峨院寛元元年癸卯(みずのとう) 改元二月廿六日

菩薩、四十三歳。賢明慈濟(けんみょうじさい①)律師、小字(をさなな)は多聞童子、菩薩に隨持し、薙染(ちぜん②)して出世間の法を学ぶ。又、長谷寺の善算来りて輪下(りんか③)に入り、沙弥戒を受く。七月十六日、進みて苾蒭戒(びっしゅかい④)を受く。八月、特に上聞(じょうぶん⑤)して勅許を蒙り、清原、新賀、西方寺、西大寺を以て、永く殺生禁断(せっしょうきんだん⑥)の地と為す。

 

 賢明房慈濟=石清水八幡宮寺検校法印の弟。唐招提寺覚盛より具足戒を受ける。鎌倉極楽寺忍性の下で活動し、後継者と目されたが、忍性より早世し、弟子の順忍が極楽寺第三世長老となる。

 薙染=剃髪染衣すなわち出家。

 輪下=門下。

 苾蒭戒=比丘戒。大僧戒、具足戒。

 上聞=ショウブンとも。君主の耳に入ること。上聴。

 殺生禁断=仏教の不殺生、慈悲の精神から、一定地域での鳥・獣・魚などの狩猟を禁ずること。勅許により法的な実効を保証された。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2014年12月 5日 (金)

 般若寺花だより 12・5

般若寺 水仙花だより

~水仙や寒き都のここかしこ 蕪村~

〇水仙

「うつくしき 素足の冬の 来りけり

ちらほらと咲く 水仙の花」与謝野晶子

水仙の花は日に日に増えています。見ごろは今月半ばごろからお正月にかけて。花は二月まで咲きます。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。当寺の水仙はおもに三十三番札所観音の石像の前、足元を飾って咲きます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど。

〔短歌〕

〈逝く子〉

「おほぢぢの 荒れし手のひらを さすりつつ

         国にかへりし 思ひすと言ひつ」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「世にあはぬ 家のつんとして 冬椿」一茶

・訳:世間とは仲良しでない家の前につんとして立つ冬椿。

〔和歌〕

「ひとしきり あらしはすぎて 桐の葉の

         しづかにおつる 夕暮の庭」

           昭訓門院権大納言・風雅645

「一しきり吹き荒れた強風はうそのように過ぎ去って、桐の葉が静かに落ちる、夕暮の庭の風情よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈帝室博物館〉

「ガラスどの たなにならびて おのもおのも

         いりひかがよふ しやりのおんたふ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》272

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻上 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆誓願す、今身より来際(らいざい①)を尽くすまで、所有の財宝及び身命は、もし勝れたる利あらば、来たって乞い求むれば、恵施教化して発心せしめん。

誓願す、今身より来際を尽くすまで、悪を断ち善を修する利生の願を、任運(にんうん②)に憶持(おくじ③)して永く退かずして、受くる所の禁戒をことさらに犯ぜず。

誓願す、今身より来際を尽くすまで、もし怨み等あって逼悩(ひつのう④)せらるとも、一念にも瞋恨(しんこん⑤)の心を起さずして、慈心をもって教化(きょうけ)して大乗に趣かしめん。

誓願す、今身より来際を尽くすまで、自利利他の一切の行は、もし懶惰(らんだ⑥)懈怠(けたい⑦)の心有らば、自身を勉励して、勤めて修行せん。

誓願す、今身より来際を尽くすまで、定、慧、方便、願、力、智(じょうえほうべんがんりきち⑧)、布施、愛語、利、同事(ふせあいごりどうじ⑨)を漸々に修学して必ず円満せんこと。

誓願す、今身より来際を尽くすまで、法界にある諸の有情を済度し、発心修行して正覚を成ぜしめ、然して後、自ら無上道を証せんこと。

仁治三年壬寅年十二月之を誓う 佛子叡尊     】 

 

 来際=未来際。

 任運=ひとの作為を加えずにそのままであること。法爾(ほうに)、無功用(むくゆう)と同意。

 憶持=心に念じ、信仰する。

 逼悩=せまられなやまされること。

 瞋恨=いかりとうらみ。

 懶惰=なまけること。おこたること。ぶしょう。

 懈怠=精進の反対、悪を断ち善を修める努力を怠っていること。怠慢。

 定慧方便願力智=十波羅蜜多(檀戒忍進禅慧方願力智)

 布施愛護利同事=四摂事(ししょうじ)、四摂法。菩薩が衆生を引き寄せて救うために行う四つの徳。教えや財物を与える布施、優しい言葉を語る愛護、身と口と心の三種の行為によって利益を与える利行、救うべき相手の立場に同化して助けの手をさしのべる同事をいう。 

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。