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2015年1月

2015年1月31日 (土)

コスモス寺 花だより  1・31

般若寺 水仙花だより

~水仙の 束とくや花 ふるへつつ  渡邊水巴~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙を 氷の花と いひし人

      その青ざめし 唇(くち)をおもへる」金子薫園

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「朝なあさな われ馴れけらし 戸をあけて

        顔にしひびく 寒さをおぼゆ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「松陰に 寝てくふ六十 よ州かな」一茶

・訳:松の陰に寝て食って生きている、六十余国であるなあ。

・松の陰=松は徳川氏の旧姓が松平であることから治世を賀す詠。

〔和歌〕

「雲をいでて われにともなふ 冬の月

         風や身にしむ 雪やつめたき」

           高弁上人・玉葉996

「雲を出て、私について来る冬の月よ。お前も風が身にしみるのかね、雪が冷たいのかね。(そんなに人恋しげにするのは)」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈東大寺〉

「あまたたび このひろまへに めぐりきて

         たちたるわれぞ しるやみほとけ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》324

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(弘長)三年癸亥(みずのとい )

菩薩、六十三歳。後嵯峨院(ごさがいん①)、志は佛乗(ぶつじょう②)に存し、一日(あるひ)天台の戒疏(てんだいのかいそ③)、一得永不失(いっとくえいふしつ④)の文を御覧じて、大いに感悟(かんご⑤)を生じて戒法を受けんと欲せらる。菩薩の戒徳を聞き、勅して宮中に入らしむ。師、力(つとめ)て之を辞す。詔、三たび至って已むことを得ず、乃ち入り見(まみ)ゆ。上皇坐を賜わり、召し対して法要を探る。菩薩、梵網は綱を提(さ)げ、応理(おうり⑥)は弁を縦(ほしいままに)し、深談は旨を称す。皇情怡悦(いえつ⑦)して、乃ち梵網菩薩戒を受けらる。因つて命じて戒支(かいし⑧)を図せしむ。菩薩、命を奉って退いて後、冬十月二十五日、天台梵網戒の図(⑨)を製作して、以て上皇に献(たてまつ)る。上、親(みずか)ら之を閲し、恩礼特に厚し。更に勅して瑜伽戒支(ゆがかいし⑩)を図せんことを請ぜらる。

 

 後嵯峨院=12201272.在位は12421246、土御門天皇の第三子、名は邦仁(くにひと)。子の後深草天皇、亀山天皇の二代にわたり治天の君として院政を行い治世は安定。法名素覚。

 仏乗=一切衆生をことごとく成仏させる教え。大乗。菩薩乗。

 天台の戒疏=隋の天台大師智顗が説き、灌頂が記録した大乗菩薩戒である梵網戒の注釈書、『菩薩戒義記』(別名、『菩薩戒義疏』)

 一得永不失=一たび得たれば永く失わず

 感悟=感じてさとること。

 応理=応理円実宗。法相宗のこと。

 怡悦=たのしみ喜ぶこと。

 戒支=梵網戒に説かれる戒条の構成。

 天台梵網戒の図=本『行実年譜』巻下末の著作目録には『天台戒図』とあるが現在逸失か。

 瑜伽戒支=瑜伽師地論(法相宗の所依論)に説かれる大乗戒の戒条

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月30日 (金)

コスモス寺 花だより  1・30

般若寺 水仙花だより

~畝にして 水仙つくる 小家かな  松瀬青

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙を 氷の花と いひし人

      その青ざめし 唇(くち)をおもへる」金子薫園

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「朝なあさな 人ら曳きおろす 材木の

        木の皮つけり 凍(こほ)れる坂に」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「すりこ木の やうな歯茎も 花の春」一茶

・訳:すりこ木のようにすり減った歯茎になってしまっても、迎える花の春。

〔和歌〕

「みよし野や すずふくをとは うづもれて

         槇の葉はらふ 雪のあさ風」

           津守国夏・風雅827

「ここ三芳野では、(頼政の歌にいう)篠を吹く風の音は、枝が雪に埋もれたために聞えず、槇の葉を払う雪の朝の風が、さわやかに吹く。」

参考:「今宵たれすず吹く風を身にしめて

     芳野の嶽に月をみるらむ」頼政(新古今387

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈東大寺〉

「おほらかに もろてのゆびを ひらかせて

         おほきほとけは あまたらしたり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》323

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆所生の功徳を以て、先ず神祇の法楽に備ふ。根本縁如の空、法性の月、常に朗(あきら)かにして、後証利生の影、同塵の水、濁ること無からん。

以て、国家雨露の鴻恩を報い、堯王舜王(ぎょうおうしゅんおう①)の賢政に任す。延喜天暦(えんぎてんりゃく②)の古風に追い、殊には大願主禅下(だいがんしゅぜんか③)、法体(ほったい④)恙(つつが)なく弥(いよいよ)興隆正法の勤行に勇(いさみ)し、大心(だいしん⑤)堅固にして倍(ますます)聖徳太子の誓願に学ばれんことを。結縁の随喜は同じく法味を食し、同心合力して等しく巨益に預かり、諸寺安穏にして学侶は三学に進まんことを。天下泰平にして後生も快く利生せんことを。十善は諸国に遍くして、七衆は中辺に満つ。風雨は時に隨い、万民の家饒(ゆたか)ならんことを。

乃至法界 平等利益、敬って白(もう)す。

 弘長二年壬戌(みずのえいぬ)後七月九日

  鎌倉苑寺に於いて、当寺太子御影開眼の為、之を草す。

 叡尊 已上表白 】

 

 堯舜=堯王と舜王。中国の伝説上の聖王。

 延喜天暦=醍醐天皇と村上天皇の治世。

 大願主禅下=最明寺禅門覚了房道崇(北条時頼)

 法体=仏門に入った者。僧体。

 大心=大菩提心。上求菩提、下化衆生をめざす菩薩の菩提心。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月29日 (木)

コスモス寺 花だより  1・29

般若寺 水仙花だより

~水仙の 花の日なたも 凍ての中  長谷川素

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「日にうとき 庭の垣根の 霜柱

水仙にそひて 炭俵敷く」正岡子規

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「遠き沖の 氷をたたく 漁槌(つち)の音

       槌におくれて 響きつつあり」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「雪行け行け 都のたはけ 待(まち)おらん」一茶

・訳:雪よ降って行け、降って行け、都のばかものが待っているだろう。

〔和歌〕

「はつせ山 おのへの雪げ 雲はれて

        嵐にちかき あかつきのかね」

          藤原景綱・玉葉985

「初瀬山の、峰の上の空は雪を催して冴えかえり、嵐に雲は晴れて、風に乗って響く暁の鐘の音が耳に近く聞える。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈平城宮址〉

「はたなかに まひてりたらす ひとむらの

         かれたるくさに たちなげくかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》322

真言律宗は仏戒を重んじる宗です。法灯を守り、寺を護持し、衆生済度の菩薩精神を修行するのが宗祖の教えを受けつぐ我々末徒の責務です。自利を捨て利他行にはげむのが宗祖の遺訓です。

しかし残念ながら最近、宗祖の教えに反する末寺が出てきました。「仏の身を傷つけ血を出だす」行為は五逆大罪の一つなのに。

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆是(ここ)を以て、慈悲の聖容を摸(も)し、在世の利生を慕ふ。渇仰の懇志を運び、滅後の報恩を擬(なぞら)ふ。爰に仏子、辺土十万余里に於いて、恭しく中夏の古風を追い、滅後二千余年に在り。幸いに在世の軌則を学び、得益は他に越え、勝利は分に過ぐ。報恩及び難く、謝徳余り有り。茲に因り、敬って秘密の神呪を誦し、青蓮の御眼を開く。恭しく六種の供具を備え内証の万徳を添えん。抑(そもそも)、太子の聖霊は救世観音の垂跡、遍照(へんじょう①)大悲の法門、帝網重々(たいもうじゅうじゅう②)、輪円具足(りんねんぐそく③)、万徳互具、凝然常住。五智の四身(④)は速やかに具わり、四種の曼荼(⑤)は忽ちに成る。所求皆得の誠言、何ぞ空しからん。如意成就の誓願、違(たが)うこと勿れ。

 

 遍照=法身の光明が遍く世界を照らすこと。大日如来の密号を遍照金剛という。

 帝網重々=帝網はインドラ(因陀羅)即ち帝釈天宮にある宝網で、結び目にある珠玉が互いに相映じ、映じた珠がまた映じ合って無限に映じる関係で、華厳の重々無尽を説明する。

 輪円具足=曼荼羅。

 五智の四身=五智は法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智。 四身は金剛頂経等に説く法身で、自性身、受用身、変化身、等流身。

 四種の曼荼=四種曼荼羅。大曼荼羅、三昧耶曼荼羅、法曼荼羅、羯磨曼荼羅。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月28日 (水)

コスモス寺 花だより  1・28

般若寺 水仙花だより

~世に悟る 満足もあり 水仙花  河東碧梧桐~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「日にうとき 庭の垣根の 霜柱

水仙にそひて 炭俵敷く」正岡子規

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「みづうみの 氷に立てる 人の声

        坂のうへまで 響きて聞ゆ」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「御談義の 手まねも見ゆる かれの哉」一茶

・訳:お談義する人の手ぶりの真似も見えている。なんと枯野の中から。

〔和歌〕

「深山には 白雪ふれり しがらきの

       まきのそま人 道たどるらし」

        鎌倉右大臣(源実朝)・風雅823

「深山には白雪が降り積もった。信楽の山で真木を樵る杣人らも、道を迷いがちに行くらしいな。」

・まきのそま人=植林した山で材木を切り出す山人。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈平城宮址〉

「はたなかの かれたるしばに たつひとの

        うごくともなし ものもふらしも」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》321

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆就中(なかんずく)、大願主(北条時頼)は、宿福(しゅくふく①)沈厚にして、生を南浮(なんぶ②)に受け、現報(げんほう③)実に貴く、徳を華夷に遍くす。四海其の威を畏れ、草木の風に靡くが如し。貴賤はその恵みを被ること、山野の雨に潤ふに似たり。誉れは曩代(どうだい④)に越え、勢いは群類(ぐんるい⑤)を抜きんず。凡心已に限り有り、言議何ぞ陳べ盡さん。加ふるに、性を中和に受け、自ら三宝の福田に帰す。志を善根に専らとし、鎮(とこしなえ)に福智の勝業を修す。或いは、仏像を自らの手に刻し、相好を生身に慕う。或いは、経巻を盛筆に写し、義理を末代に遺す。遍く顕宗密宗を興隆し、広く本朝外朝に求法す。内には法性を縁とし、外には万機を摂す。現世を以て過去の因を尋ぬるに、発心修行の熏習(くんじゅう⑥)は已に久しからん。勝業を以て当来の果を推す。出障円明の証悟何ぞ疑わん。流れを汲んで源を尋ぬるに、仏法流布の大徳、技を折り本に帰するは、聖徳太子の鴻恩(こうおん⑦)なり。

 

 宿福=前世に積んだ福徳。宿徳。

 南浮=閻浮提(えんぶだい、梵・ジャンブー・ドゥヴィーの音写)。須弥山の南にある四大洲の一つ。旧訳で南閻浮提、新訳で南贍部洲という。

 現報=現在に善悪の業(行為)を作り、現身に善悪の果を受けること。

 曩代=むかしの世。

 群類=多くの生きもの。多くの衆生。群生。

 熏習=物に香りが移り沁みるように、あるものが習慣的に働きかけることにより、他のものに影響・作用を植えつけること。

 鴻恩=大きな恩。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月27日 (火)

コスモス寺 花だより  1・27

般若寺 水仙花だより

~世に悟る 満足もあり 水仙花  河東碧梧桐~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「尼とみて 讃する夜半や 水仙の

一葉ひとはな 浄いすがたを」青山霞村

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌

〈氷湖〉

「ここにして 坂の下なる 湖の

        氷うづめて 雪積りをり」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「一茶坊に 過ぎたるものや 炭一俵」一茶

・訳:一茶坊主には過分だろうなあ。炭一俵は。

〔和歌〕

「かきくらす 軒ばの空に 数みえて

        ながめもあへず おつるしら雪」

          前中納言定家・玉葉979

「一面に暗くなった軒先の空に、舞う雪片の数を、一つ、二つと見上げる間もなく、はらはらと盛んに降り落ちて来る白雪よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「びしやもんの ふりしころもの すそのうらに

         くれなゐもゆる はうさうげかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》320

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆爰に上宮太子(じょうぐうたいし①)、内証(ないしょう②)を慈悲の衣に隠し、辺地王院の跡を示す。外用(げゆう③)を本誓の形に顕わして、衆生迷乱の眼に任す。大悲代受(だいひだいじゅ④)の誓願を顧みて、塔寺を破壊の逆臣を誅し、吾有救世(ぐぜ⑤)の契約に任せ、興隆三宝の素懐を遂ぐ。爾る自り以来、寺塔を華夷(かい⑥)に起て、仏教を代々に請ず。五時三時(ごじさんじ⑦)の真教は中辺に満つ。一性五性(いっしょうごしょう⑧)の宗旨、南北に盛んなり。三密五相(さんみつごそう⑨)の修行、山野に遍し。安養知足(あんようちそく⑩)の浄業は貴賤に亘る。賜は道俗を兼ね、恩は智愚を統(すべ)ん。

 

 上宮太子=聖徳太子。

 内証=自内証とも。自己の心のうちに証(さと)った真理。

 外用=内証(さとり)に基づいて外に現われたはたらき。

 大悲大受=仏菩薩は大慈悲心ゆえ衆生の苦しみを代わりに受ける。

 救世=世間の人の苦しみを救うこと。とくに聖観音菩薩の別名としての救世観世音菩薩をいう。

 華夷=都と地方。

 五時三時=釈尊が成道から涅槃まで説いたとされる経典を教理の浅深によって解釈編成した教相判釈(きょうそうはんじゃく)。数多くある中で天台の五時教判(華厳時・阿含時・方等時・般若時・法華涅槃時)と法相の三時教判(有教・空教・中道教)。

 一性五性=天台の一乗悉有仏性説と法相の五性各別説。

 三密五相=身語意の三密観と五相成身観(通達本心、修菩提心、成金剛心、証金剛身、仏身円満)。密教の観行。

 安養知足=安養は阿弥陀如来の極楽浄土、知足は兜率天。欲界六天の第四天。現在、弥勒菩薩がここで説法しているとされる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月26日 (月)

コスモス寺 花だより  1・26

般若寺 水仙花だより

~水仙の 花のみだれや 藪座敷  広瀬惟然

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「尼とみて 讃する夜半や 水仙の

一葉ひとはな 浄いすがたを」青山霞村

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「明りうすき この部屋のなかに 坐りゐて

        痛みおぼゆる 膝を伸すも」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「松島や 同じうき世を 隅の島」一茶

・訳:松島よ。景勝の地と歌われても、片隅にあれば同じく住みにくいものだね。

〔和歌〕

「旅人の さきだつ道は あまたにて

       跡なきよりも まよふ雪かな」

         藤原為守・風雅820

「旅人の、先立って踏みつけて行った道は諸方に分れていて、(一体どれをたどって行けば目的地に着けるのか)足跡の全くない白一色、というのよりもかえって迷ってしまう、雪の旅路だなあ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「かれわたる いけのおもての あしのまに

         かげうちひたし くるるたうかな」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》319

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【 夫れ以(おもんみ)れば、妙理は今有に非ずして、本来に具足す。真智は本無に非ずして、性徳として円満す。三十七尊(さんじゅうしちそん①)、常に心城に住し(しんじょうにじゅうし②)、塵数の三昧、鎮(とこしなえ)に胸中に備ふ。何ぞ涅槃を生死の外に求めて、菩提を煩悩の内に隔てん。然れども此の理に迷ふが故に、屡(しばしば)塵労に動(どう③)じ、此の惑に依るが故に、多く業の種を薫ず。苦輪際(きわまり)無く、地獄鬼畜(じごくきちく)姿を分つ。流転定まらず、人中天上別差なり。過去は漫々(まんまん④)として、其の始まりを知らず。未来は永々として、其の終りを弁(わきまえ)ること無し。大聖(釈尊)は五天(ごてん⑤)に出で、設けるに真教(しんきょう⑥)を以てし、我等日域に生まれ、隔てるに山海を以てす。

 

 三十七尊=金剛界曼荼羅における根本諸尊。五仏、四波羅蜜菩薩、十六大菩薩、八供養菩薩、四摂菩薩。

 心城に住し=天台本覚讃の「三十七尊住心城(三十七尊が心の城に住んでいる) 普門塵数諸三昧(塵の数ほどの諸々の三昧に普く開かれた門がある)」の句を用いている。

 動=心が乱れる。ゆれうごく。

 漫々=広くて、はてしないさま。

 五天=五天竺。

 真教=真実のおしえ。仏教。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月25日 (日)

コスモス寺 花だより  1・25

般若寺 水仙花だより

~水仙の 花のみだれや 藪座敷  広瀬惟然

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「尼とみて 讃する夜半や 水仙の

一葉ひとはな 浄いすがたを」青山霞村

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「土荒れて 石ころおほき この村の

       坂にむかひて 入る日のはやさ」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「商人(あきんど)や うそをうつしに 蝦夷が島」一茶

・訳:商人たちよ、嘘を言い、その嘘をうつしに蝦夷が島まで来たというのか。

・うそをうつしに=嘘をつく、嘘をつくことを知らなかった人々に、悪い病気を伝染させるように嘘をうつすこと。蝦夷地(北海道)において日本商人たちがアイヌの人をだまして不当・不平等な条件で交易していたことに憤怒を感じた作である。

〔和歌〕

「したこほる み山の雪の けぬがうへに

        今いくへとか ふりかさぬらん」

         権中納言経平・玉葉962

「積った下の方はもう氷っている、深山の雪の消えもしない上に、今幾重降り重ねることだろうか。(よく降る雪よ)」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈浄瑠璃寺〉

「じやうるりの なをなつかしみ みゆきふる

         はるのやまべを ひとりゆくなり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》318

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆唱え畢(おわ)って潜然(せんぜん①)として、自ずから涕(なみだ)の下ることを知らず。其の法を重んじ師を敬うの志、亦至らずや。菩薩、既に鎌倉に至る。大檀主(実時)、慰問甚だ至れり。四月十六日、新清凉寺(しんせいりょうじ②)に於いて結夏す。蓋し大檀主の延請に由るなり。副元帥、時頼平公(ときよりへいこう③)(法諱は道崇、最明寺と号す)、菩薩大戒を受け、弟子の礼を執る。乃ち荘田若干頃を西大寺に寄附し、以て食輪(しょくりん④)を資(たす)けんとす。菩薩、辞して受けず。七月十五日、自恣(じし⑤)作法一巻を撰す。菩薩、西大寺に還るに及んで、元帥、書を馳せて問ひ候。其の関東往還と在住の事跡は、侍者性海比丘(しょうかいびく⑥)、之を記すと曰ふと雖も、其の文(⑦)已に失す。亦惜しむべし。唯だ、苑寺(えんじ⑧)上宮太子開光表白のみ有って、其の文猶存せり。其の表白に曰く、

 

 潜然=ひそかに。しずかに。

 新清凉寺=鎌倉の清凉寺谷(せいりょうじがやつ)にあった忍性開基の新清凉寺釈迦堂(今は廃寺)。

 時頼平公=鎌倉幕府の執権。時氏の次子。北条氏の得宗専制(独裁制)を確立。最明寺で出家し執権を長時に譲り後見役となる。子は北条時宗。西大寺に荘園寄進を申し出るも、菩薩はこれを辞退す。般若寺の丈六文殊像の獅子絵具料には五百両寄進される。

 食輪=食事についやす費用か。寺、教団の運営費を指すか。

 自恣=夏安居の最後の日に、参集の僧が互いに罪過を指摘し、懺悔すること。

 性海比丘=覚証房性海。喜光寺長老。叡尊師に近侍して記録係をつとめた。

 其の文=『関東往還記』のこと。本書では「其の文已に失す」とあるが、尊経閣文庫と金沢文庫に写本が現存する。なお2011年、細川涼一氏が平凡社から東洋文庫803『関東往還記』として注釈書を出版さる。

 苑寺=表白には鎌倉苑寺とある。略称であろうが不詳。ただ苑は園に通じるから鎌倉で律宗ゆかりの覚園寺(現真言宗泉涌寺派)であろうか。

(前日と同文、つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月24日 (土)

コスモス寺 花だより  1・24

般若寺 水仙花だより

~水仙白く 古道顔色を 照らしけり  夏目漱石~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「うたたねより さむれば障子 ほのしらみ

水仙の香の 悲しくまよふ」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「わが筆の 穂さきこほりて 墨うすし

        心せはしく 書きつぎて居り」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「初空へ さし出す獅子の 首(かしら)哉」一茶

・訳:新春の初空へ景気よくさしだした獅子の頭の見事さよ。

〔和歌〕

「いづくとも つもるたかねは みえねども

         雲のたえだえ ふれるしら雪」

           右近大将道嗣・風雅818 

「どこがそれとも、雪の積った高い山の姿は指摘できないけれども、雲の絶え間絶え間に降った白雪と見えるあたりが、きっとそれなのだろう。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈東大寺〉

「おほてらの にはのはたほこ さよふけて

        ぬひのほとけに つゆぞおきにける」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》318

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆唱え畢(おわ)って潜然(せんぜん①)として、自ずから涕(なみだ)の下ることを知らず。其の法を重んじ師を敬うの志、亦至らずや。菩薩、既に鎌倉に至る。大檀主(実時)、慰問甚だ至れり。四月十六日、新清凉寺(しんせいりょうじ②)に於いて結夏す。蓋し大檀主の延請に由るなり。副元帥、時頼平公(ときよりへいこう③)(法諱は道崇、最明寺と号す)、菩薩大戒を受け、弟子の礼を執る。乃ち荘田若干頃を西大寺に寄附し、以て食輪(しょくりん④)を資(たす)けんとす。菩薩、辞して受けず。七月十五日、自恣(じし⑤)作法一巻を撰す。菩薩、西大寺に還るに及んで、元帥、書を馳せて問ひ候。其の関東往還と在住の事跡は、侍者性海比丘(しょうかいびく⑥)、之を記すと曰ふと雖も、其の文(⑦)已に失す。亦惜しむべし。唯だ、苑寺(えんじ⑧)上宮太子開光表白のみ有って、其の文猶存せり。其の表白に曰く、

 

 潜然=ひそかに。しずかに。

 新清凉寺=鎌倉の清凉寺谷(せいりょうじがやつ)にあった忍性開基の新清凉寺釈迦堂(今は廃寺)。

 時頼平公=鎌倉幕府の執権。時氏の次子。北条氏の得宗専制(独裁制)を確立。最明寺で出家し執権を長時に譲り後見役となる。子は北条時宗。西大寺に荘園寄進を申し出るも、菩薩はこれを辞退す。般若寺の丈六文殊像の獅子絵具料には五百両寄進される。

 食輪=食事についやす費用か。寺、教団の運営費を指すか。

 自恣=夏安居の最後の日に、参集の僧が互いに罪過を指摘し、懺悔すること。

 性海比丘=覚証房性海。喜光寺長老。叡尊師に近侍して記録係をつとめた。

 其の文=『関東往還記』のこと。本書では「其の文已に失す」とあるが、尊経閣文庫と金沢文庫に写本が現存する。なお2011年、細川涼一氏が平凡社から東洋文庫803『関東往還記』として注釈書を出版さる。

 苑寺=表白には鎌倉苑寺とある。略称であろうが不詳。ただ苑は園に通じるから鎌倉で律宗ゆかりの覚園寺(現真言宗泉涌寺派)であろうか。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月23日 (金)

コスモス寺 花だより  1・23

般若寺 水仙花だより

~水仙白く 古道顔色を 照らしけり  夏目漱石~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「うたたねより さむれば障子 ほのしらみ

水仙の香の 悲しくまよふ」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「冬の日の 光とほれる 池の底に

       泥をかうむりて 動かぬうろくづ」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「蓬莱に 南無南無といふ 童哉」一茶

・訳:蓬莱飾を見て、南無南無と言う子どものいとしさよ。

〔和歌〕

「しがらきの と山ばかりに ふりそめて

        庭にはをそき 雪にもある哉」

         尚侍藤原頊子朝臣・玉葉953

「信楽あたりの近い山には降りはじめていながら、私の庭にはいつまでも降って来ない雪だこと、まあ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈東大寺〉

「おほてらの ほとけのかぎり ひともして

         よるのみゆきを まつぞゆゆしき」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》317

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【願わくは、

我生々(しょうじょう①)に師に侍することを得るなれば、

  影の如く形に隨ひて暫しも離れず。

 法(ほう②)を弘め生(しょう③)を利して玄化(げんけ④)を助け、

塵点劫海(じんでんごうかい⑤)にも終に辞さず】

 

 生々=生まれかわり死にかわって、多くの生涯を経ること。

 法=仏法、正法。

 生=衆生。

 玄化=教化。奥深い教理を教えること。

 塵点劫海=塵点劫は計り知ることのできない長い時間。永劫。海は劫波(こうは、梵・カルパの音写)の縁語で世界の意か。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月22日 (木)

コスモス寺 花だより  1・22

般若寺 水仙花だより

~水仙や 梅まつ人を うつむかせ  横井也有~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「うたたねより さむれば障子 ほのしらみ

水仙の香の 悲しくまよふ」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「わが家の 池の底ひに 冬久し

沈める魚の 動くことなし」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「里しんと してづんづと凧 上りけり」一茶

・訳:里はしんと静まりかえり、凧だけがのびのびと上がっているなあ。

〔和歌〕

「雪やこれ はらふたかまの 山風に

        つれなき雲の 峯にのこれる」

          後鳥羽院御歌・風雅811

「雪だったのか、これは。吹き払う高間山の山風にもかかわらず、何事もないかのように、白雲が、峯に残っていると見えるのは。」

・たかまの山=大和の歌枕。金剛山。

・つれなき=反応のない。変化のない。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈新に召に応ずる人に〉

「いくとせの いのちまさきく このかどに

         きみをしまたむ われおいぬとも」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》316

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(弘長)二年壬戌(みずのえいぬ)

菩薩、六十二歳。正月廿四日、法華寺に於いて、大比丘尼戒を二十人に授く。二十五日、西大寺に帰り唯道舜公(唯道房實舜)を度し、沙弥戒を授く。又、菩薩戒を道俗八十余人に授く。二月二日、大苾蒭戒を三十五人に授く。二日、大檀越越州太守平實時公、菩薩を懇請(こんせい①)す。之を辞することを得ず。聿(いつ②)に、其の行を催す。即ち徒僧(とそう③)泉福寺戒印秀(戒印房源秀)律師を招いて、西大を監守(かんしゅ④)せしむ。秀公、菩薩を木津河の滸(こ⑤)に送る。作礼(さらい)して謂ひて曰く、某、桑楡(そうゆ⑥)の残景、死と鄰(となり)す。何ぞ再び慈顔を瞻(み)ることを得んや。然りと雖も、吾れ願わくは、世々(せいせい⑦)本師(釈尊)を毘賛(ひさん⑧)し、法を弘め生を利し、縦(たと)ひ百千万億劫にも、終に退転せず。

因りて偈を唱えて曰く、

 

 懇請=鎌倉下向を懇ろに招請。

 聿=ここに。「詩経」に用いられ、リズムをととのえる言葉。

 徒僧=弟子。

 監守=監督し守ること。

 滸=岸辺の平地。ほとり。

 桑楡=クワとニレ。くれがた。老年。

 世世=だいだい、累世

 毘賛=あつくたたえる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月21日 (水)

コスモス寺 花だより  1・21

般若寺 水仙花だより

~水仙や 梅まつ人を うつむかせ  横井也有~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「日かげ土 かたく凍(こほ)れる 庭の上を

        鼠走りて 土蔵(くら)に入りたり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「きのふ迄 毎日見しを 若菜かな」一茶

・訳:きのうまで毎日見ていたのに気付かなかったが、今日は若菜の出番だなあ。

〔和歌〕

「雲井ゆく つばさもさえて とぶ鳥の

        あすかみゆきの ふる郷の空」

          土御門院御製・玉葉949

「空を行く翼も寒さに凍えて飛ぶ鳥の様子を見ても、明日は雪が降ることかと思われる、古い廃都、飛鳥の里の空よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈新に召に応ずる人に〉

「いくとせの おほみいくさを かへりきて

         またよみつがむ いにしへのふみ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》315

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆弘長元年辛酉(かのととり) 改元二月廿日

菩薩、六十一歳。七月、山州久世郡美豆(みず①)の道俗、菩薩を請ひ、供を設けて法を聴く。塵を望み頂礼して、戒法を求受する者、道俗数百人。八月、定然律師、洛西に新たに精藍を創す(葉室と号す所)。菩薩を請じて開山の祖と為す。菩薩、既に到って僧界を結し、布薩を行う。因って寺に顔せしめ浄住(じょうじゅう)と曰ふ。院を摩尼光(まにこう)と号す。浄住は乃ち布薩の華言(かげん②)なり。而して後、祇林(ぎりん③)日に栄え、紺苑(こんえん④)ますます麗(れい⑤)にして、調御の殿(ちょうごのでん⑥)、木叉の壇(もくしゃのだん⑦)、三密の堂(さんみつのどう⑧)、六和の寮(ろくわのりょう⑨)、鴈塔(がんとう⑩)、経閣(きょうかく⑪)、齊庖(さいほう⑫)、門廡(もんぶ⑬)等に泊るまで、律居(りっきょ⑭)にあるべき所のもの、悉く備わる。是れ則ち、菩薩の七戒壇所の隨一なり。又、定然律師の請に依って、四分律行事鈔及び梵網古迹記を講ず。聴徒輻輳(ふくそう⑮)し、幢々(とうとう⑯)として絶えることなし。水の沢に趨(おもむ)くが如し。惟(た)だ後(おく)れんことを恐る。講演既に竟って、菩薩戒を受くる者、三百余人。十月、石清水摩尼珠坊、修造已に成る。菩薩、之に赴き、戒法を弘唱し、菩薩戒を若干人に授く。十二月十八日、鎌倉越後守平實時公(えちごのかみたいらのさねときこう⑰)、貝(見ヵ)阿弥陀仏(けんあみだぶつ⑱)を以て、宋本一切経を西大、浄住の両寺に各一部を寄附せらる。菩薩、供を設け慶讃す。伶倫(れいりん⑲)楽を奏し、男女雲集し外儀尤も昌んなり。蓋し、檀主の厳命(げんめい)を禀ければ也。今、西大寺に存するは、即ち是れ此の経也。

 

 美豆=山城国久世郡美豆郷(現京都市伏見区淀美豆町)。石清水八幡宮領。 

 華言=漢訳語。

 祇林=祇園精舎の林苑、転じて寺。

 紺苑=紺宇(紺色の軒、屋根)、仏寺をさす。

 麗=きらびやか。華麗な。

 調御の殿=調御丈夫は仏陀十号の一つ。釈尊を指すので舎利殿のことか。

 木叉の壇=波羅提木叉は戒のこと。戒壇をいう。

 三密の堂=身口意の三密。真言堂である本堂か。

 六和の寮=六和敬(ろくわきょう)。さとりを求めて行をする者が、互に仲よくし、敬いあうことについての六種和敬。身・口・意・戒・見・利和敬。僧坊のことか。。

 鴈塔=大唐西域記によれば、インドのマガダ国に建てられた雁供養のための塔。唐の長安にあった大雁塔、小雁塔から卒塔婆一般を言うか。

 経閣=経蔵。

 齊庖=くりや、台所。食堂。

 門廡=門ののき、ひさし。門。

 律居=律寺、律院。

 輻輳=方々から集まること。こみあう。

 幢々=旗がたちならぶ。

⑰越前守平實時=北条実時。北条実安の子、幕府の重役を務める。六浦荘金沢(現横浜市金沢区)に称名寺を創建す。所蔵の図書類が金沢文庫となる。

⑱見阿弥陀仏=不詳。細川氏『学正記』注によれば、実時がもと帰依した浄土宗鎮西義の然阿良忠の弟子、あるいは覚盛の弟子で大安寺中興長老禅恵の弟子であろうかと推定される。

⑲伶倫=音楽を奏する人。楽人。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2015年1月20日 (火)

コスモス寺 花だより  1・20

般若寺 水仙花だより

 ~水仙の 香やこぼれても 雪の上  加賀千代女~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

 かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「冬ふけて 久しとおもふ 日の脚は

        土蔵(つちぐら)のうへに 高くのぼらず」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「づぶ濡(ぬれ)の 大名を見る 巨燵(こたつ)哉」一茶

・訳:ずぶ濡れの大名行列を見ている炬燵の温かさよ。

〔和歌〕

「ながめやる 岡の柳は 枝さびて

        雪まつ空の 暮ぞさむけき」

          章義門院・風雅808

「遠く眺めやる岡に立つ柳は、葉の落ちた枝が物さびて垂れ、今にも降りそうな雪を待つ風情の夕暮の、何と寒々しいこと。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈新に召に応ずる人に〉

「いにしへの ふみよみすてて みいくさに

         いでたつひとの あごのそりぐひ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》314

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆正元元年己未(つちのとひつじ) 改元三月廿六日

菩薩、五十九歳。春三月、調子丸作る所の法隆寺聖霊院如意輪観音尊像(①)、世を歷(へ)て汚損(おそん②)零碎(れいさい③)す。菩薩、匠に命じて修造す。十一日、大いに開光(かいこう④)の仏事を修す。四月十日、四度加行人のために、如意輪念誦次第、之を製作す。秋八月、検校法印空清(宮清)公の請に依って、大蔵経を石清水八幡宮(⑤)に転読す。冬十月、如意輪不動愛染三顆宝輪華秘法一巻(⑥)を製す。十二月、年始、後七日修する所の如意輪法一帖、之を重ね記す。

 

 如意輪観音尊像=台座に銘文有り、その末に「願主 西大寺衆首比丘叡尊 奉行比丘盛遍」とある。

 汚損=汚したり傷つけたりすること。

 零碎=落ちてくだけること。

 開光=開眼光。開眼供養。

 石清水八幡宮=京都府八幡市八幡高坊に所在。貞観元年(859)大安寺僧行教が宇佐より勧請した。伊勢神宮に次ぐ宗廟、平安京の鎮守とあがめられた。宮の別当、検校の一族が叡尊師に帰依し子弟が弟子となる。また山内の八幡大乗院は西大寺末寺となった(廃寺)。

 如意輪不動愛染三顆宝輪華秘法=如意輪観音、不動明王、愛染明王をまつり正月後七日御修法を行う修法。西大寺流独特の密観宝珠形舎利塔を如意輪観音と見立てた。詳しくは奈良国立博物館研究紀要の『鹿園雑集』(平成11年創刊号)に発表の内藤榮氏論文「密観宝珠形舎利容器について」を参照。

(次の分が不備なので前日と同じ文章です)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月19日 (月)

コスモス寺 花だより  1・19

般若寺 水仙花だより

~水仙の 香やこぼれても 雪の上  加賀千代女~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈冬の日〉

「冬空の 日の脚いたくい かたよりて

       我が草家(くさいえ)の 窓にとどかず」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「八兵衛が 猪首に着なす 頭巾哉」一茶

・訳:八兵衛のずんぐりした首、そんな首にかかるように着た頭巾だなあ。

〔和歌〕

「よもすがら 里はしぐれて 横雲の

         わかるる峯に みゆるしら雪」

           前参議実俊・玉葉946

「一晩中、この里は時雨が降って、暁、横雲が明けはなれて行く峰には、まっ白に雪が積もったのが見える。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈紅日〉

「かがやきて かかるほくとの ながきえを

         うちあふぎつつ まもるよもあらむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》314

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆正元元年己未(つちのとひつじ) 改元三月廿六日

菩薩、五十九歳。春三月、調子丸作る所の法隆寺聖霊院如意輪観音尊像(①)、世を歷(へ)て汚損(おそん②)零碎(れいさい③)す。菩薩、匠に命じて修造す。十一日、大いに開光(かいこう④)の仏事を修す。四月十日、四度加行人のために、如意輪念誦次第、之を製作す。秋八月、検校法印空清(宮清)公の請に依って、大蔵経を石清水八幡宮(⑤)に転読す。冬十月、如意輪不動愛染三顆宝輪華秘法一巻(⑥)を製す。十二月、年始、後七日修する所の如意輪法一帖、之を重ね記す。

 

 如意輪観音尊像=台座に銘文有り、その末に「願主 西大寺衆首比丘叡尊 奉行比丘盛遍」とある。

 汚損=汚したり傷つけたりすること。

 零碎=落ちてくだけること。

 開光=開眼光。開眼供養。

 石清水八幡宮=京都府八幡市八幡高坊に所在。貞観元年(859)大安寺僧行教が宇佐より勧請した。伊勢神宮に次ぐ宗廟、平安京の鎮守とあがめられた。宮の別当、検校の一族が叡尊師に帰依し子弟が弟子となる。また山内の八幡大乗院は西大寺末寺となった(廃寺)。

 如意輪不動愛染三顆宝輪華秘法=如意輪観音、不動明王、愛染明王をまつり正月後七日御修法を行う修法。西大寺流独特の密観宝珠形舎利塔を如意輪観音と見立てた。詳しくは奈良国立博物館研究紀要の『鹿園雑集』(平成11年創刊号)に発表の内藤榮氏論文「密観宝珠形舎利容器について」を参照。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月18日 (日)

コスモス寺 花だより  1・18

般若寺 水仙花だより

~水仙の 香やこぼれても 雪の上  加賀千代女~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「たえまなく 嵐ふきゆく 丘のうへの

        林のなかゆ 土埃(ほこり)あがるも」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「万歳の まかり出たよ 親子連れ」一茶

・訳:万歳がやってきたよ。みれば親子連れ。

〔和歌〕

「風のをとも さむき夕日は みえながら

         雲一むらに あられおつなり」

           前中納言重資・風雅801

「風の音も寒く聞え、寒々とした夕日はそれでも見えていながら、雲の一群の流れる下だけは、霰が落ちているようだ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈紅日〉

「みやこべを ながこふそらの いづくにか

         なきてわたらむ ひとむらのとり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》313

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(正嘉)二年戊午(つちのえうま)

菩薩、五十八歳。春正月、灌頂堂を建つ。又、金泥を以て金胎等の曼荼羅九幅(①)を図画す。四王堂に就き、開眼供養す。三月七日、灌頂道場を開く。具支灌頂を日浄(惣持)等若干人に授く。九月、又、日浄律師の請に依って、河の西琳寺に赴く。緇素(しそ②)、菩薩戒を乞受する者、二百五十有六人。十月、般若心経を誉田八幡宮(こんだはちまんぐう③)に講讃す。六日、叡福寺上宮聖廟(④)に詣ず。通夜して如意輪根本大呪を誦し、国家を祝祷す。継いで和の布施寺(ふせじ⑤)に之き、戒経を講演す。道俗、化に嚮(むか)ふこと、玄金(くろがね⑥)の磁石に就くが如し。十六日、菩薩戒を三百七十余人に授く。

 

 曼荼羅九幅=高野山大楽院の賢雄が父、性仏房に勧めて高雄曼荼羅九幅作製のため、絹布や砂金十五両を寄進させたことが『学正記』に出る。

 緇素=緇は黒、素は白の意。黒衣(僧衣)と白衣(俗人の衣)、転じて僧と俗、道俗。

 誉田八幡宮=現羽曳野市誉田にある応神天皇陵の後円部の南に営まれた八幡社。西大寺末寺帳によれば後円部の頂上に「誉田奥院宝蓮華寺」があった。

 叡福寺上宮聖廟=聖徳太子御廟。

 布施寺=細川涼一氏の『学正記』では、現奈良県葛城市寺口の置恩寺(知恩寺)と西大寺末寺帳の「フセ羂索院」の二ヶ寺を候補に挙げられる。

 玄金=鉄。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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コスモス寺 花だより  1・18

般若寺 水仙花だより

~水仙の 香やこぼれても 雪の上  加賀千代女~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「たえまなく 嵐ふきゆく 丘のうへの

        林のなかゆ 土埃(ほこり)あがるも」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「万歳の まかり出たよ 親子連れ」一茶

・訳:万歳がやってきたよ。みれば親子連れ。

〔和歌〕

「風のをとも さむき夕日は みえながら

         雲一むらに あられおつなり」

           前中納言重資・風雅801

「風の音も寒く聞え、寒々とした夕日はそれでも見えていながら、雲の一群の流れる下だけは、霰が落ちているようだ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈紅日〉

「みやこべを ながこふそらの いづくにか

         なきてわたらむ ひとむらのとり」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》313

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(正嘉)二年戊午(つちのえうま)

菩薩、五十八歳。春正月、灌頂堂を建つ。又、金泥を以て金胎等の曼荼羅九幅(①)を図画す。四王堂に就き、開眼供養す。三月七日、灌頂道場を開く。具支灌頂を日浄(惣持)等若干人に授く。九月、又、日浄律師の請に依って、河の西琳寺に赴く。緇素(しそ②)、菩薩戒を乞受する者、二百五十有六人。十月、般若心経を誉田八幡宮(こんだはちまんぐう③)に講讃す。六日、叡福寺上宮聖廟(④)に詣ず。通夜して如意輪根本大呪を誦し、国家を祝祷す。継いで和の布施寺(ふせじ⑤)に之き、戒経を講演す。道俗、化に嚮(むか)ふこと、玄金(くろがね⑥)の磁石に就くが如し。十六日、菩薩戒を三百七十余人に授く。

 

 曼荼羅九幅=高野山大楽院の賢雄が父、性仏房に勧めて高雄曼荼羅九幅作製のため、絹布や砂金十五両を寄進させたことが『学正記』に出る。

 緇素=緇は黒、素は白の意。黒衣(僧衣)と白衣(俗人の衣)、転じて僧と俗、道俗。

 誉田八幡宮=現羽曳野市誉田にある応神天皇陵の後円部の南に営まれた八幡社。西大寺末寺帳によれば後円部の頂上に「誉田奥院宝蓮華寺」があった。

 叡福寺上宮聖廟=聖徳太子御廟。

 布施寺=細川涼一氏の『学正記』では、現奈良県葛城市寺口の置恩寺(知恩寺)と西大寺末寺帳の「フセ羂索院」の二ヶ寺を候補に挙げられる。

 玄金=鉄。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月17日 (土)

コスモス寺 花だより  1・17

般若寺 水仙花だより

~水仙や 根岸に住んで 薄氷  夏目漱石~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「本読みて 吾がありければ 水仙の

かをりなつかしく かよひ来たれり」宇都野研

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「いく日(にち)か ここに籠れる 乏(とぼ)しらに

          二階にとどく 冬木の梢」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「藪入が 供を連れたる 都哉」一茶

・訳:藪入りで帰郷する男がお供を連れている、さすがに都は違うなあ。

〔和歌〕

「淵はせに かはるのみかは あすか川

        昨日のなみぞ けさはこほれる」

          参議雅経・玉葉943

「(昨日の淵ぞ今日は瀬になる)というが、そればかりではないよ。明日香川では、昨日川面に立っていた波が、今朝は氷ってしまっている。」

参考歌:「世の中は 何か常なる あすか川

     昨日の淵ぞ 今日は瀬になる」(古今933読人しらず)

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈紅日〉

「みゆきふる かかるあしたを くもゐにか

         はうひきなづむ きみがおもかげ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》312

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆正嘉元年丁巳(ひのとみ) 改元 月 日(三月十四日)

菩薩、五十七歳。春正月、具足戒を長禅、幸尊、玄基、等一十余人に授く。三月、菩薩戒経(ぼさつかいきょう①)を泉の近木郷(こぎごう②)、地蔵院(じぞういん③)に講ず。席に預かる者、高野山圓達(こうやさんえんたつ④)等、一千百七十余人、皆悉く菩薩大戒を求受す。八月、標宗顕徳篇(ひょうしゅうけんとくへん⑤)を法華寺に講ず。十月、摂の遠里遠野(おりおの⑥)、西琳院(さいりんいん⑦)に届(いた)る。梵網十重戒を講ず。講竟って菩薩戒を受くる者、一百九十余人。又、懇請に依りて天王寺に至り、心地品(しんちぼん⑧)を講ず。諸寺の碩徳(せきとく⑨)法筵(ほうえん⑩)に集う者、七百三十余人。菩薩に就いて戒法を禀(う)く。

 

 菩薩戒経=梵網経。

 近木郷=日根郡近木郷(現大阪府貝塚市)

 地蔵院=近木地蔵堂。後白河法皇の祈願所であった(廃寺)。

 高野山圓達=高野山大楽院の圓達房賢雄。

 標宗顕徳篇=『四分律行事鈔』巻上第一。

 遠里遠野=現大阪市住吉区遠里小野。中世には瓜生野(うりうの)。

 西琳院=西林院。住吉神社神主家津守氏の尼寺、西大寺末寺であったと考えられる(廃寺)。『新葉和歌集』には後醍醐天皇の女房、大納言典侍が出家していた西林院の梅の花を、後村上天皇が詠まれた歌を載せる。

「わがたのむ西の林の梅花 御法の花のたねかとぞ見る」

 心地品=梵網経。詳しくは『梵網経廬遮那仏説菩薩心地戒品第十』(二巻)。

 碩徳=徳の高い人。高徳の僧。

 法筵=法会・法事の席。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月16日 (金)

コスモス寺 花だより  1・16

般若寺 水仙花だより

~古寺や 大日如来 水仙花  正岡子規~

 昨日のニュースによれば、沖縄の辺野古新基地の工事が強行され、基地に反対して座り込みをしていた住民の方が警察の強制排除でけがをされたようです。

沖縄では昨年、地元名護市長選、沖縄県知事選、県都那覇市長選、そして衆議院選挙全選挙区において新基地反対の民意が示されました。それを無視して国の御都合を押し付けるのは民主主義国家のすることではありません。日本は独裁専制の国に成り下がってしまったのでしょうか。沖縄の主権者は県民、住民です。国は沖縄を戦争の道具として利用することに血道をあげるのではなく、先の大戦で悲劇的な戦禍をこうむった沖縄には平和の島として生きる権利があることを認めるべきです。不殺生・平和は仏陀のおしえです。 

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「冬庭の 荒びし土に 水仙は

葉に反りうちて 萌えたちてをり」木下利玄

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「籠りゐて たがひに寂し 時をりに

        二階の下に 物音する妻」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「這(は)へ笑へ 二つになるぞ けさからは」一茶

・訳:這え、笑え、二歳になるぞ、この春からは。

〔和歌〕

「空さむみ 雪気もよをす 山風の

        雲のゆききに 霰ちるなり」

          前中納言為相女・風雅800

「空が寒々として、雪の気配を運んで来る山風によって雲が行きかうにつれ、折々ぱらぱらと霰が散るのが聞える。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈紅日〉

「ながまもる とほきとりでに のぼるひの

         いやあかからし さむきあさけを」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》311

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆同廿日、法華(隆ヵ)寺東院に於いて、菩薩戒を三百余人に授く。秋八月、沙弥戒を長禅尊公(長禅房幸尊)等に授く。又、梵網を摂の四天王寺に講ず。聴徒二千余指。皆一時傑偉(けつい①)の子なり。講既に巻いて西大寺に回る。一夕、夢に天照太神、手づから自ずから愛染明王を授けて曰く、汝、此の明王に帰して、菩提を成就し衆生を利益せよと。菩薩、覚めて後、奇異の思いを為す。翌朝、一(ひと)りの老翁愛染明王の像(あいぜんみょうおうのぞう②)を負いて、来りて之を菩薩に授く。其の相好、宛も夢みる所の如し。菩薩、大いに之を歓喜し、深く此の尊に帰す。遂に一堂を建て、明王を安置し、日に秘法を修して以て供養を伸べる。今時に至っても、長日の秘法、之を修して怠ること無し。

 

 傑偉=すぐれてえらい。りっぱな。

 愛染明王の像=西大寺愛染堂に安置されている秘仏本尊。像内納入文書によれば、宝治元年(1247)八月十八日に大願主叡尊、大檀越範恩、仏師善円、衆僧十九人の合力で造立されたことが判明する。愛染は愛欲貪染の意で、衆生が本来具備する煩悩がそのまま金剛薩埵の浄菩提心の三昧であるとする、煩悩即菩提を表象した尊。外相は忿怒暴悪形であるが、内証は敬愛を以て衆生を解脱させる。息災・得福の修法をする。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月15日 (木)

コスモス寺 花だより  1・15

般若寺 水仙花だより

~古寺や 大日如来 水仙花  正岡子規~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「冬庭の 荒びし土に 水仙は

葉に反りうちて 萌えたちてをり」木下利玄

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「片側の 雨戸を引きぬ あかあかと

       日の照る昼の 風はげしさに」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「門の春 雀が先へ 御慶(ぎょけい)哉」一茶

・訳:門松が立ててある新春の家。雀が先に行って、新年のご挨拶をしているよ。

〔和歌〕

「さゆる夜の 氷のうへに ゐるかもは

         とけてねられぬ ねをのみや鳴く」

           平宗直・玉葉941

「ひどく冷え込む夜、氷の上にうずくまっている鴨は、こう寒くてはとても安心してゆっくりねられないというので、あんなに鳴いてばかりいるのだろうか。」

・とけて=「うちとけて」「くつろいで」の意に「氷」の縁語「とけて」をかける。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈望遠〉

「シベリヤの おほかみむれて きこえくる

         のべのかりほに いねずかもあらむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》310

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【謹みて勝鬘経疏鈔一本を寄入す。

右斯の鈔は、大唐高僧の製造にして、日域面目(にちいきめんぼく①)の秘書なり。貞観十三の運(じょうがんじゅうさんのめぐり②)我朝に請来すと雖も、建長第七の暦、讒(わづか)に荒陵(あらはか③)に訪ひ得たり。恨(うらむら)くは先哲(せんてつ④)の芳志(ほうし⑤)を忘れ、悲しむべくは後鋭(こうえい⑥)の龜鏡(きけい⑦)を失う。茲に依って一本を繕写(ぜんしゃ)して、永く伝通(でんつう⑧)を冀(ねが)う。伏して惟(おもんみ)れば、上宮皇聖霊(じょうぐうこうしょうりょう⑨)は東隅(とうぐう⑩)佛法の曩祖(どうそ⑪)なり。法隆学問寺は太子鄭重(ていちょう⑫)の御願なり。纔(わずか)に因果を弁(わきま)える人、誰か皇太子の鴻恩(こうおん⑬)を忘れんや。苟(いやしく)も報謝を志すの輩(ともがら)、須(すべから)く法隆寺の人法を崇(あが)むべし。聖霊忝(かたじけな)く義疏(ぎしょ)を末代に留めん。寺家、又夏冬の研練昌(さかん)なり。須らく此の鈔を写し、彼の寺に安置すべし。仍て更に一本を修写して永く以て寄入し、以て聖霊無窮の恩徳を謝す。以て寺中琢磨(たくま⑭)の被覧(ひらん⑮)に擬(なぞら)える而已(のみ)。丹襟(たんきん⑯)の旨、蓋し以て斯(かく)の如し。

建長八年三月十八日     西大寺衆首苾蒭叡尊 】

 

 日域面目=日本国の名誉、評判の。

 貞観十三の運=貞観十三年(871)。

 荒陵=荒陵寺、四天王寺。

 先哲=昔のすぐれた思想家、賢者。

 芳志=親切な心。かんばしい志。

 後鋭=後進のひいでた人。聡い人。

 龜鏡=キキョウとも。よりどころとなる模範。亀鑑。

 伝通=伝来弘通。

 上宮皇聖霊=聖徳太子。

 東隅=東のすみにある国、日本国。

 曩祖=祖先。

 鄭重=ねんごろな、大事な。

 鴻恩=大きな恩恵。大恩。

 琢磨=(玉などをすり磨く意から)学問技芸に励んで、修練すること。

 被覧=ひらき見ること。被見。

 丹襟=まごころ。赤心。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月14日 (水)

コスモス寺 花だより  1・14

般若寺 水仙花だより

~古寺や 大日如来 水仙花  正岡子規~

本日のNHK奈良局の夕方番組「奈良ナビ」(午後6107:00)で、般若寺の水仙の花が紹介されます。

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「冬庭の 荒びし土に 水仙は

葉に反りうちて 萌えたちてをり」木下利玄

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「悲しみに 馴(な)れしに似たり 冬の日の

        二階に物を 書き耽(ふけ)り居り」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「世の中を ゆり直すらん 日の始」一茶

・訳:世の中を揺らして直すのだろう。一年の始まり。

〔和歌〕

「わきて猶 こほりやすらむ 大井河

       さゆるあらしの 山かげにして」

        前関白左大臣(近衛基嗣)・風雅795

「他の場所よりは、とりわけきびしく氷ることだろうな、大堰川では。吹き冴える嵐の山という名を持つ、嵐山の山陰なのだから。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈望遠〉

「うつせみの いのちまさきく あらきのに

         いねてきくらむ こほろぎのこゑ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》309

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆康元元年丙辰(ひのえたつ) 改元十月五日

菩薩、五十六歳。三月十八日、天台慈覚大師(じかくだいし①)将来する所の上宮太子勝鬘経疏鈔(しょうまんぎょうしょしょう②)一部を繕写(ぜんしゃ③)して、以て法隆寺に納む。其の寄附状に曰く、

 

 慈覚大師=最澄の弟子、円仁。延暦寺第三世。著作に『入唐求法巡礼行記』が有る。

 勝鬘経疏鈔=勝鬘経は詳しくは『勝鬘獅子吼一乗大方便方広経』。この疏鈔は聖徳太子撰の『勝鬘経義疏』とは別の注釈書であろう。大正新修大蔵経の第八十五巻(古逸部・疑似部)には『勝鬘義記』、『勝鬘経疏』『挟注勝鬘経』が収録される。

 繕写=不足を補い、写しなおすこと。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2015年1月13日 (火)

コスモス寺 花だより  1・13

般若寺 水仙花だより

~古寺や 大日如来 水仙花  正岡子規~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「冬庭の 荒びし土に 水仙は

葉に反りうちて 萌えたちてをり」木下利玄

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈正月〉

「仏壇に 蝋燭ともす みじか日の

       真昼の障子 明るくなれり」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「君が世や よ所(そ)の膳にて 花の春」一茶

・訳:ありがたい君の世だなあ。よそ様のお宅の食事に呼ばれて、迎えるめでたい春。

〔和歌〕

「はやきせは 猶もながれて 山川の

         いはまによどむ 水ぞこほれる」

           権中納言公雄・玉葉937

「早い瀬の水はなおも流れてやまず、山川の岩の間に滞っている水だけが氷っているよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈望遠〉

「ぼたんかう よのまもながれ やまざらむ

         ひとのまもらふ くにのきはみを」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》308

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(建長)七年乙卯(きのとう)

菩薩、五十五歳。正月、請いを受けて池尻里(いけじりのさと①)に至って説法す。菩薩戒を求受する者、僧俗之を総(すべ)るに、四百三十九人。二月、初めて文殊丈六(②)の大像造営の願を発す。佛工は法橋(ほっきょう③)善慶(ぜんけい④)、命を承って斧を下す。

秋八月、事鈔の持犯篇(じぼんへん⑤)を西大寺に於いて講ず。遠近の俊秀、袞(こん⑥)を負い席に駢(なら)び、幽凝(ゆうぎょう⑦)を鏡測(けいそく⑧)し、深要(しんよう⑨)を鼓撃(こげき⑩)す。亦法門の盛事なり。

 

 池尻里=候補地は二つあり、和泉国の久米田池と河内国の狭山池の両方に池尻の地名あり。

 文殊丈六=復興途上の般若寺の本尊として造立を発願された丈六文殊像。文永四年に開眼供養される。

 法橋=法橋上人位。僧綱制で律師に授けられた僧位。のち一般の僧にも適用され、さらに仏師、絵師にも授けられた。

 善慶=叡尊師の下で作仏に携わった南都仏師(11971258)。建長元年(1249)に西大寺本尊の清凉寺式釈迦如来像を大仏師として造立。般若寺丈六文殊像は正嘉元年(1257)に完成するが翌二年(1258)秋に卒去。文殊像が安置される獅子の制作は子息の善春に引き継がれ、文永四年(1267)七月二十五日に開眼供養を迎えた。

 持犯篇=『四分律行事鈔』巻中・四・第十五「持犯方軌篇」

 袞=天子や上公の着る礼服。袞袞(こんこん)=あとからあとから続いて、絶え間なくの意。

 幽凝=奥深い精神。

 鏡測=手本として推し測る。

 深要=深遠で枢要なところ。

 鼓撃=鼓舞し打ちあてる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月12日 (月)

コスモス寺 花だより  1・12

般若寺 水仙花だより

~水仙の 花の高さの 日影かな 川井智月~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「雪ふかき 街に日照れば きはやかに

        店ぬち暗く こもる人見ゆ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「象潟(きさがた)も けふは恨まず 花の春」一茶

・訳:雨が似合いの象潟も今日は恨みの雨ではなく晴れ渡っている。なんと言っても花の春だから。

〔和歌〕

「冬ふかき 谷のした水 をとたえて

        氷のうへを はらふ木がらし」

          恵助法親王・風雅794

「冬が深まった、谷陰を流れる水は氷結して流れの音が絶え、氷の張りつめた川面の上を払うように木枯の風が吹く。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈望遠〉

「みいくさは よとせをすぎぬ たちとりて

         わがともがらの いでたちしより」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》307

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(建長)五年癸丑(みずのとうし)

菩薩、五十三歳。冬十一月、慈父慶玄(けいげん)、気力常の如くにして、自ら死期を知り、予(あらかじ)め菩薩を招く。菩薩即ち往く。志を刻し誠を罄(つく)す。昼夜離れずして、善く之を保護す。九日、面を西にして坐し、掌を合わせ仏を念ず。安然として目を閇じ、熟睡が如く然り(ごとくしかり①)。報齢を享くること、八十有九。菩薩、遺体を送葬し、塔を其の上に建つ。悲しみを含み徳を慕い、追薦(ついせん②)して恩を報ず。菩薩の孝心、亦盛大ならずや。而して后、其の父の宅を以て、改めて精舎(しょうじゃ③)と為す。名づけて敬田(きょうでん④)と曰う。妣考(ひこう⑤)の牌(はい⑥)建て、以て香蘋(こうひん⑦)を備ふ。寺の基(もとい)猶を存せり。是れ則ち菩薩誕生の地(⑧)なり。

 

 如く然り=・・・のようである。

 追薦=薦は供物。追善供養。

 精舎=梵・ビハーラ。仏道修行者の住居の意。寺院。てら。

 敬田=敬田院。敬田は三福田(敬田、恩田、悲田)の一つで、仏法僧の三宝のこと。敬うことによって功徳を得るからいう。

 妣考=死んだ母と父。

 牌=ふだ。位牌。

 香蘋=香と華。

 菩薩誕生の地=大和郡山市白土(しらつち)町の道路端に「興正菩薩御誕生之地」の石碑が立つ。また白土の村落内の浄土寺(浄土宗)には江戸時代の御遠忌の石塔があり、小堂には七百年御遠忌に製作された銅像がまつられる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月11日 (日)

コスモス寺 花だより  1・11

般若寺 水仙花だより

~水仙の 花の高さの 日影かな 川井智月~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「言(こと)にいでて 言ふはたやすし 直照(ひたて)りに

           照る雪の上に 我ひとりなる」

            島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「又ことし 娑婆塞(しゃばふさ)ぎぞよ 草の家」一茶

・訳:また今年もこの娑婆を塞いでいるだけだなあ。この草の家もおのれも。

〔和歌〕

「ふる川の いり江の水の あさ氷

       かよひし舟の 跡だにもなし」 

       常盤井入道前太政大臣・玉葉935 

「古川の入江の水に、早朝張りつめた氷を見れば、行き交っていた舟の航跡など、全くあとかたもない。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈あるあしたクエゼリンの戦報に音羽候の将士とともにみうせたまひけるよし聞きて〉

「なげきつつ いぬればちかき あかつきを

         そのをたけびの おもほゆらくに」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》306

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(建長)四年壬子(みずのえね)

菩薩、五十二歳。龝(しゅう①)七月、河内州真福寺(しんぷくじ②)に至り、大いに落成の仏事を修す。因みに梵網戒経(ぼんもうかいきょう③)を講ず。廿五日、隨って菩薩戒を受くる者、五十五人。

 

 龝=秋の古字。旧暦(陰暦)では七月から九月まで。

 真福寺=『感身学正記』には泉福寺とある。『西大寺諸国末寺帳』にも「河内国泉福寺」と見えるので『行実年譜』は間違いであろう。現在廃寺となっているが、大阪府南河内郡美原町大保(だいほ)にあった西大寺末寺。叡尊師の高弟、戒印房源秀が第一世長老となった。

 梵網戒経=梵網経。詳しくは『梵網経廬舎那仏説菩薩心地戒品第十巻』(上下二巻)。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月10日 (土)

コスモス寺 花だより  1・10

般若寺 水仙花だより

~なほ清く 咲くや葉がちの 水仙花 松本氷固~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「山門に 向ひてのぼる 大どほり

       雪厚くして 黒土を見ず」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「日(ひ)の本(もと)や 金も子をうむ 御代(みよ)の春」一茶

・訳:わが日の本の国では金も金の子を生む、ありがたい春をむかえた。

〔和歌〕

「吹きさゆる あらしのつての 二こゑに

         またはきこえぬ あかつきのかね」

           前大納言為兼・風雅786

「冷たく吹きつのる嵐にのって来た、ただ二声ののち、もうそれ以上は聞えない、暁の鐘の音よ。」

・あらしのつて=「伝(つ)て」は「仲介」。嵐のおかげでもたらされた物。

・またはきこえぬ=風向きが変って聞えなくなった趣。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈あるあしたクエゼリンの戦報に音羽候の将士とともにみうせたまひけるよし聞きて〉

「わたつみの そこひもしらず ゆくしほの

         ふかきうらみを わがいかにせむ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》305

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆十一月、衆の請を受け、事鈔(じしょう①)を法華寺に講ず。舎利若干粒、几上(きじょう②)に現ずることを感ず。青黄間錯(かんさく③)して、其の光、目を奪う。時の人呼んで湧出舎利と為す。厥(そ)の后、次第に分散して以て二千余粒に及ぶ。文永庚午(かのえうま、七年)、菩薩自ら縁起(えんぎ④)を書き、以て後代に貽(のこ)す。

 

 事鈔=道宣編の『四分律刪繁補闕行事鈔』。

 几上=机上。

 間錯=いりまじる。

 縁起=『法華寺舎利縁起』。本年譜の文永七年(1270)の条に収録されている。なお原本は薬師寺元管長であった橋本凝胤師所蔵(現在の所蔵者不詳)。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2015年1月 9日 (金)

コスモス寺 花だより  1・9

般若寺 水仙花だより

~なほ清く 咲くや葉がちの 水仙花 松本氷固~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「雪あれの 風にかじけたる 手を入るる

      懐(ふところ)のなかに 木の位牌あり」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「我春よ 上々吉よ 梅の花」一茶

・訳:わが春もこのうえなく上々吉だよ、梅の花。

〔和歌〕

「たび枕 ふしみの里の 朝ぼらけ

       かりたのしもに たづぞなくなる」

         式子内親王・玉葉932

「旅の仮寝をする、伏見の里の夜明け方の景色よ。稲の刈り株の並ぶ田にまっ白に霜が置き、鶴の鳴く声が聞えて来るようだよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈あるあしたクエゼリンの戦報に音羽候の将士とともにみうせたまひけるよし聞きて〉

「すめろぎの みことかしこみ ありそべの

         たまとくだけて ちりましぬとふ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》304

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆弘長年間、関東に於いて二句を加ふ。故に菩薩の跋詞に曰く、

 

【貴賤の檀那、誓願を諸徳に同じくす。

上下の合力、功徳を九旬(きゅうじゅん①)に等しくす。

 弘長二年四月十六日、関東鎌倉新清凉寺(しんせいりょうじ②)に於いて、此の句を草し入れる。

今、通受結夏廿六歳に当る。 叡尊。檀那(だんな③)越後守平實時(えちごのかみたいらのさねとき④)。】 已上。

 

 九旬=九十日の夏安居。

 新清凉寺=『関東往還記』によれば叡尊師らが鎌倉下向し教化活動した際、宿坊にした寺。釈迦堂とも。のちに西大寺末寺になり、戒如と共に入宋の覚如が長老として住した。現在廃寺。

 檀那=梵語・ダーナの音写。布施。中国・日本では檀越(だんおつ、梵・ダーナパティの音写、施主)の意味に混用される。

 越後守平實時=執権北条義時の孫。金沢称名寺殿、または越州と称される。評定衆・引付頭人など幕府重職をつとめた。金沢文庫を創設(幕府滅亡後は菩提寺である称名寺に委ねられた)。称名寺は現在も真言律宗末寺。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月 8日 (木)

コスモス寺 花だより  1・8

般若寺 水仙花だより

~初雪や水仙の葉のたわむまで 芭蕉~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか、見ごろをむかえました。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月まで咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「屋根並みの 雪をおろして 道狭し

         暗きあかりに 歩みを求む」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「こんな身も 拾ふ神ありて 花の春」一茶

・訳:こんな身でも拾ってくれる神があって新春を迎えた。

〔和歌〕

「瀬だえする ふる河水の うす氷

         ところどころに みがく月かげ」

           藤原為秀朝臣・風雅783

「浅瀬の流れもとだえがちな、古河の水に張った薄氷よ。氷った所々だけ、磨いたように月光がきらりと映るよ。」

・瀬だえ=川水が涸れ、瀬が途切れる状態。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈あるあしたクエゼリンの戦報に音羽候の将士とともにみうせたまひけるよし聞きて〉

「よりふして このさよどこに きくべしや

         ラヂオゆゆしき みんなみのこと」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》303

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆或いは、自誓に得戒し、或いは、従他に得戒す。若し大心(だいしん①)を発(おこ)す者は、悉く菩薩の数に列(つら)なる。是(ここ)を以て、現前の大徳僧等愛(あい②)を離れ親(しん③)を辞して、身を佛法に任せ、願を発し誓いを立てて、心を菩提に剋(きざ)む。機(き④)に隨いて法を受け、位に任せて相(そう⑤)を持す。時に坐禅を修し、日に経論を誦す。已に顛(たお)れたる大標(たいひょう⑥)を立てて、已に絶えたる玄綱(げんこう⑦)を継ぐ。末代の勝事(しょうじ⑧)、仏法の奇特(きどく⑨)なり。良(まこと)に喜ぶべき哉。是を以て、時に依りて結法(けっぽう⑩)を加へ、処に隨って安居を期す。唯願わくは、大徳衆僧、仏法の遇ひ難きことを知って、勤修して倦(う)むこと無く、人命の無常なることを弁(わきまえ)て、精進して懈(おこた)ること勿れ。所生の功徳を以て、国家の泰平を祝し、四海の安穏を祈る。本師(釈尊)の恩徳に酬(むく)ひ、父母の生育に報ずべし。兼て諸徳同居の好(よしみ⑪)を以て、生々の知識(しょうじょうのちしき⑫)と為し、互に悪行を誡め、互に善業を励み、力を合わせ三宝(仏法僧)を興さんとす。心を一つにして衆生を利せん。諸衆、此の如き志願を凝らし、各(おのおの)相対して作法すべし。

 建長三年四月十六日之を草す。

今、通受結夏十五歳に当る。 叡尊已上表白。】

 

 大心=衆生済度をめざす菩薩の大菩提心。

 愛=愛着、恩愛。

 親=親愛。親近者への愛情。

 機=機根。仏法を聞いて修行できる素質、能力。

 相=すがた。自性。

 大標=大いなる柱、戒律儀。

 玄綱=奥深い道徳。規則。仏の正法である戒律。。

 勝事=人の耳目をひくような尋常でない事柄。すばらしいこと。

 奇特=特にすぐれて珍しいこと。すぐれてほめるべきこと。殊勝。

 結法=結夏。結制。

 好=親しいまじわり。交誼。

 生々の知識=生々は多くの生涯。生々世々(しょうじょうせぜ)。知識は善知識。教え導いてくれる善い友人、指導者。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月 7日 (水)

コスモス寺 花だより  1・7

般若寺 水仙花だより

~初雪や水仙の葉のたわむまで 芭蕉~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙の 薫りのなかに 眼をあけば

      めんめんと冬の 日のふりそそぐ」古泉千樫

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「山門に 近づきにけり 雪かきて

       氷あらはるる 坂をのぼりて」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「影ぼしも まめ息才で けさの春」一茶

・訳:影法師も丈夫で健康で迎えた新春よ。

〔和歌〕

「とこさえて ねられぬ冬の よをながみ

         またるるかねの をとぞつれなき」

           章義門院・玉葉931

「床の中まで冷えこんで、寝られない冬の夜は特別に長くて、早く明けないかと待たれる暁の鐘の音は、無情にも一向に聞えて来ない。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈またあるあした〉

「あおぞらの かぜさむからし まくらべの

         まどのたかきを あかきくもゆく」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》302

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【敬って現前の大衆に白(もう)す。夫れ安居といっぱ、妙理に冥(めい①)する之要門、妄縁を遮(さえぎ)る之秘術なり。教主普く三乗(さんじょう②)に被(こうむ)らしめ、五衆等しく佛制に隨ふ。月氏(げっし③)震旦(しんだん④)、伝えて改むること無し。日域中辺(にちいきちゅうへん⑤)、聞きて年旧(ふ)りたり。然るに、時転(ときうた)た衰変し、法漸く凌夷(りょうい⑥)せり。出家の五衆(しゅっけのごしゅう⑦)は、名のみ有って実無し。安居九旬(きゅうじゅん⑧)は、時のみ有って修すること無し。髪を剃り衣を染めて、衣鉢を知らず。帰(き⑨)を誦して壇に登るとも、十具(じゅうぐ⑩)を受くること無し。受体(⑪)已に闕(か)けて、隨行(ずいこう⑫)亦亡せり。大小の律儀は闕けて学ぶこと無し。誰か不学無知の法界に遍きことを知らん。貴賤の檀施を望みて厭うこと無し。誰か虚しく信施を受くれば、鉄丸洋銅なることを畏れん。甘露(かんろ⑬)は毒と変じ、醍醐(だいご⑭)は病を発す。良(まこと)に悲しむべき哉。法の如く将に受けんとするに師僧得難し。世に順じて黙止(もくし⑮)せんとすれば来果(らいか⑯)畏れ有り。爰(ここ)に一つの要法有り。謂はく、菩薩の通受(ぼさつのつうじゅ⑰)なり。十三難(じゅうさんなん⑱)を簡(えら)ばず。十六遮(じゅうろくしゃ⑲)を問わず。若し七遮(しちしゃ⑳)無くんば、皆戒法を受得すべしと。

 

 冥=思いにふける。冥想。

 三乗=菩薩乗、声聞乗、縁覚乗。乗は菩提への乗物。

 月氏=西域(中央アジア)に栄えた古代氏族。

 震旦=シンタンとも。中国の異称。

 日域中辺=日域は太陽の出る所、日本国。中辺はなかほど、畿内。

 陵夷=陵(おか)が夷(たいら)になる意から、物事が衰えること。

 出家の五衆=比丘、比丘尼、式叉摩那、沙弥、沙弥尼。

 九旬=九十日。

 帰=帰依三宝。

 十具=沙弥の十戒、比丘の具足戒。

 受体=受戒で身に具わる戒体。

 隨行=受けた戒法にしたがって、自らつとめ行なうこと。

 甘露=甘く美味な飲料。仏の教法をたとえて言う。

 醍醐=乳を精製して作られた最も美味なる食べ物。仏教の最高真理にたとえる。

 黙止=黙ったままで捨て置くこと。見すごす。

 来果=来世の果報。なお写本には果は杲(こう、日光のあきらかなさま)となっている。

 菩薩の通受=菩薩戒(三聚浄戒)を総じて受ける受戒方法。

 十三難=受戒できない難。淫・盗・殺・妄の四波羅夷罪を犯した者をはじめ十三を数える。

 十六遮=受戒できない遮。父母が許さない、借金がある、官吏であるなど十七を数える。

 七遮=受戒が許されない七逆罪。出仏身血、殺父、殺母、破和合僧、殺阿羅漢の五逆罪に、殺和上、殺阿闍梨の二つを加える。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年1月 6日 (火)

コスモス寺 花だより  1・6

般若寺 水仙花だより

~水仙や白き障子のとも移り 芭蕉~

 〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「御仏の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:5~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて、アジサイと同時に咲きます。満開は6月上旬ごろ。春は夏のような暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。葉は青々としているし、草丈はそれほど高くないので石ぼとけ様のお顔が花の中でよく見えます。濃い緑の中に咲くピンク・白・赤の鮮やかな花の色は際立ち、秋とはまた違う風情があります。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈善光寺〉

「夜の山へ 向ひて長き 坂の道

        雪くらくして 星月夜なる」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「君が世や 旅にしあれど 笥(け)の雑煮」一茶

・訳:めでたい大君の世だよ。旅の途上にあるけれど立派な器に盛り付けた雑煮。

〔和歌〕

「吹くとだに しられぬ風は 身にしみて

         影さへとおる 霜のうへ月」

           儀子内親王・風雅779

「吹いているとも気づかぬ程の風は、しんしんと身にしみて、光があくまでも冴えて冷たい、霜の上にさす月よ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『山光集』より〕

〈またあるあした〉

「まくらべに しひのこずゑを こぼれいる

         あさひまぶしと きぬかつぎねつ」

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》301

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(建長)三年辛亥(かのとゐ)

菩薩、五十一歳。正月、画工某(①)、斎戒(さいかい②)を受持し、日々沐盥(もくかん③)し、清浄に文殊菩薩、十六羅漢、南山霊芝(なんざんれいし④)、幷に菩薩(興正菩薩)影像、二十幅(⑤)を図絵し、以て之を寄附して永く鎮護とす。三月、河の安楽寺(あんらくじ⑥)の建立已に成って、大いに法会を啓(ひら)く。時に菩薩に隨って心地戒を受くる者、一百十余人。四月十六日、西大寺に於いて結夏安居(けちげあんご⑦)す。其の表白に曰く、

 

 画工某=南都の絵所絵師堯尊。

 斎戒=八斎戒。在家の信者が出家者と同じように一日だけ守る戒。

 沐盥=身体を浄めるため沐浴すること。

 南山霊芝=南山律宗の祖、唐の南山大師道宣。南山律宗の宋時代の復興者、霊芝元照(がんじょう)。

 二十幅=『学正記』には二十一悑(幅)とある。

 河の安楽寺=河内国。安楽寺について、『学正記』を訳注した細川涼一氏は河内国交野郡田口(現枚方市田口)の安楽寺(廃寺)と狭山池西北畔の半田(現狭山市半田)の安楽寺(廃寺)を候補地に挙げる。

 結夏安居=安居は梵語・バルシャ(雨、雨季)の訳。雨季に外出を避け定住修行するのを夏安居または雨安居という。陰暦四月十六日(五月十六日とも)から三か月間。安居に入ることを結夏という。僧侶の法臘(ほうろう、出家してからの年数)は夏安居の回数で数える。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年1月 5日 (月)

コスモス寺 花だより  1・5

般若寺 水仙花だより

~水仙や白き障子のとも移り 芭蕉~

 元日の朝、今上天皇は新年のお言葉を文書で発表されました。大変重要なことを述べておられます。しかし、一部の新聞では記事として報道しないという不審なことがありました。また語句を取り換えている情報もあります。ここに掲載したのはNHKと読売新聞が報道したものを載せています。

つねづね平和を希求されている天皇陛下ならではの含蓄のあるお言葉です。そして今年の希望として、パラオ諸島へ慰霊に行きたいとも述べられたそうです。パラオと言えば、昨年NHKスペシャル「狂気の戦場ペリリュー〈忘れられた島〉の記録」で取り上げられたペリリュー島のことです。おそらくこのテレビ放送を御覧になったのだと思われます。陛下はいまの日本人が忘れかけている人間的な感性、平和への思いをよく保守しておられることに感銘をおぼえます。

【天皇陛下の新年の感想】(文書の抜粋)

「 本年は終戦から七十年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。          この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。」

11日報道の読売新聞紙面より)

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「御仏の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。真冬の寒さのなか、見ごろをむかえました。花はこれから二月まで咲きます。三十三番札所の石仏の足もとを飾るように咲いています。

水仙は地中海沿岸が原産地と謂われ、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに遣唐使によって日本へもたらされるという壮大な旅をした花です。ギリシャ神話から名づけられ原名は「ナルキッソス」といいます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙、雪中花とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。