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2015年2月

2015年2月28日 (土)

コスモス寺花だより 2・28

般若寺 水仙花だより

~水仙の 世におくれたる 姿かな  佐々木文山~

〇水仙:≪見ごろ≫ 

「冷たくも 底びかりする わが春に

さきのこりたる 水仙の花」岡橙里

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅やわびすけの花が咲きだし、鶯も鳴いています。水仙の花は盛りをこえましたが例年より長もちしています。まだしばらくは咲き続けそうです。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。

・本数:3万本

・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「雨気もつ 春の夕ばえ 洋館の 

       窓あきたりと 子らのよろこぶ」

        岡麓・庭苔

〔俳句〕

「春雨に 大欠(おほあくび)する 美人かな」一茶

・訳:春雨に大きなあくびをする美人だなあ。

〔和歌〕

「又うへも あらじとみえし 富士の嶺の

       霞の底に いつなりにけん」

        入道前右大臣 

「これ以上高いものはあるまいと思えた富士山の頂上が、いつの間に霧の底になってしまったのだろう。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・いしのほとけ=京街道の千坊坂(せんぼうのさか)に立つ夕日地蔵。室町時代の作。歌碑は般若寺境内にあります。

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》351

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆抑(そもそも)人の世に在るや、只一旦の名利(いったんのみょうり①)に耽着(たんちゃく②)し、更に永劫の沈淪(えいごうのちんりん③)を顧みず。東に趨(はし)り、西に趨(おもむ)き、悪業は山嶽と積み、朝に営(いとな)み、夕に営(いそし)んで善根は涓塵(けんじん④)も無し。矧(いわんや)漁猟(ぎょりょう⑤)を業(なりわい)として、鎮(つね)に山水の生(さんすいのしょう⑥)を殺す。艶色(えんしょく⑦)を衒(てら⑧)ひて、常に衆庶の心を迷わす。加うるに、或いは盲聾(もうろう⑨)の報いを受くるの者あり。或いは疥癩(かいらい⑩)の病に嬰(かか)る者あり。彼の前業(ぜんごう⑪)を謂うに、則ち誹謗大乗(ひぼうだいじょう⑫)の罪あり。泥梨(ないり⑬)を歷(ふ)ると雖も、猶未だ尽きず。其の現報(げんぽう⑭)を見れば、また乞匈孤独(きっきょうこどく⑮)の苦、ただ衣食を望みて他念無し。解脱は何れの日ぞ。流転(るてん⑯)の絆、弥(いよいよ)纏(まと)う。出離(しゅつり⑰)は何(いず)れの期ぞ。牢獄の捷(しょう⑱)、堅く鏁(とざ)す。悲しい哉、悲しい哉。為何(いかんせん)為何(いかんせん)。偏(ひとえ)に文殊の威神(いしん⑲)を仰いで、以て済度(さいど⑳)の導師と為すにはしかじ。

 

 一旦の名利=旦は朝。一日。一時の名誉や利養、利益。

 耽着=心を注ぎ執着すること。

 永劫の沈淪=永久に迷界に沈みこむこと。

 涓塵=ちり、ほこりのように僅かなこと。

 漁猟=魚や鳥獣を獲ること。

 山水の生=野山や河海の生き物、衆生。

 艶色=つややかな美しい容色。色っぽい顔つき。

 衒=見せびらかす。売る。歩きながら売る。

 盲聾=視覚障害者と聴覚障害者。

 疥癩=疥は疥癬。ヒゼンダニの寄生によって生じる伝染性皮膚病。ひどいかゆみをもつ。癩はハンセン病。ライ菌の感染によって起る慢性の伝染性感染症。ハンセン病は特効薬プロミンにより治癒するようになったが、いまだに社会の一部には無知と偏見による差別が残っている。

 前業=前世における善悪の業(行為)。

 誹謗大乗=誹謗正法(ひぼうしょうぼう)、謗法とも。邪見と不信によって仏法(大乗)をそしる者は地獄に落ち、永久にさとりを得ることができないとされる。

*この箇所についてはむつかしい問題を含んでいます。歴史研究者の間では否定的な評価が下されることが多いですが、まだ定まってはいません。

 泥梨=梵語・ニラヤ。地獄。

 現報=現世に業因を作って現世にその報いを受けること。

 乞匈孤独=乞食をなりわいとし、疎外されて孤独なくらしをする人。

 流転=流転輪廻。衆生が無明の惑いのため、生まれかわり死にかわりして迷界を流転してきわまりないこと。

 出離=出離生死。

 捷=「トザシ」と振り仮名あり、「鎖」の間違いか。「捷」ならは、はやい、すみやかの意。

 威神=つよくおごそかで霊妙ふしぎな働き。たましい、こころ。

 済度=衆生済度。菩薩が苦海にある衆生を済(すく)い出してさとりの世界に度(わた)らせること。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

 

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コスモス寺花だより 2・28

般若寺 水仙花だより

~水仙の 世におくれたる 姿かな  佐々木文山~

〇水仙:≪見ごろ≫ 

「冷たくも 底びかりする わが春に

さきのこりたる 水仙の花」岡橙里

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅やわびすけの花が咲きだし、鶯も鳴いています。水仙の花は盛りをこえましたが例年より長もちしています。まだしばらくは咲き続けそうです。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。

・本数:3万本

・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「雨気もつ 春の夕ばえ 洋館の 

       窓あきたりと 子らのよろこぶ」

        岡麓・庭苔

〔俳句〕

「春雨に 大欠(おほあくび)する 美人かな」一茶

・訳:春雨に大きなあくびをする美人だなあ。

〔和歌〕

「又うへも あらじとみえし 富士の嶺の

       霞の底に いつなりにけん」

        入道前右大臣 

「これ以上高いものはあるまいと思えた富士山の頂上が、いつの間に霧の底になってしまったのだろう。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・いしのほとけ=京街道の千坊坂(せんぼうのさか)に立つ夕日地蔵。室町時代の作。歌碑は般若寺境内にあります。

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》351

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆抑(そもそも)人の世に在るや、只一旦の名利(いったんのみょうり①)に耽着(たんちゃく②)し、更に永劫の沈淪(えいごうのちんりん③)を顧みず。東に趨(はし)り、西に趨(おもむ)き、悪業は山嶽と積み、朝に営(いとな)み、夕に営(いそし)んで善根は涓塵(けんじん④)も無し。矧(いわんや)漁猟(ぎょりょう⑤)を業(なりわい)として、鎮(つね)に山水の生(さんすいのしょう⑥)を殺す。艶色(えんしょく⑦)を衒(てら⑧)ひて、常に衆庶の心を迷わす。加うるに、或いは盲聾(もうろう⑨)の報いを受くるの者あり。或いは疥癩(かいらい⑩)の病に嬰(かか)る者あり。彼の前業(ぜんごう⑪)を謂うに、則ち誹謗大乗(ひぼうだいじょう⑫)の罪あり。泥梨(ないり⑬)を歷(ふ)ると雖も、猶未だ尽きず。其の現報(げんぽう⑭)を見れば、また乞匈孤独(きっきょうこどく⑮)の苦、ただ衣食を望みて他念無し。解脱は何れの日ぞ。流転(るてん⑯)の絆、弥(いよいよ)纏(まと)う。出離(しゅつり⑰)は何(いず)れの期ぞ。牢獄の捷(しょう⑱)、堅く鏁(とざ)す。悲しい哉、悲しい哉。為何(いかんせん)為何(いかんせん)。偏(ひとえ)に文殊の威神(いしん⑲)を仰いで、以て済度(さいど⑳)の導師と為すにはしかじ。

 

 一旦の名利=旦は朝。一日。一時の名誉や利養、利益。

 耽着=心を注ぎ執着すること。

 永劫の沈淪=永久に迷界に沈みこむこと。

 涓塵=ちり、ほこりのように僅かなこと。

 漁猟=魚や鳥獣を獲ること。

 山水の生=野山や河海の生き物、衆生。

 艶色=つややかな美しい容色。色っぽい顔つき。

 衒=見せびらかす。売る。歩きながら売る。

 盲聾=視覚障害者と聴覚障害者。

 疥癩=疥は疥癬。ヒゼンダニの寄生によって生じる伝染性皮膚病。ひどいかゆみをもつ。癩はハンセン病。ライ菌の感染によって起る慢性の伝染性感染症。ハンセン病は特効薬プロミンにより治癒するようになったが、いまだに社会の一部には無知と偏見による差別が残っている。

 前業=前世における善悪の業(行為)。

 誹謗大乗=誹謗正法(ひぼうしょうぼう)、謗法とも。邪見と不信によって仏法(大乗)をそしる者は地獄に落ち、永久にさとりを得ることができないとされる。

*この箇所についてはむつかしい問題を含んでいます。歴史研究者の間では否定的な評価が下されることが多いですが、まだ定まってはいません。

 泥梨=梵語・ニラヤ。地獄。

 現報=現世に業因を作って現世にその報いを受けること。

 乞匈孤独=乞食をなりわいとし、疎外されて孤独なくらしをする人。

 流転=流転輪廻。衆生が無明の惑いのため、生まれかわり死にかわりして迷界を流転してきわまりないこと。

 出離=出離生死。

 捷=「トザシ」と振り仮名あり、「鎖」の間違いか。「捷」ならは、はやい、すみやかの意。

 威神=つよくおごそかで霊妙ふしぎな働き。たましい、こころ。

 済度=衆生済度。菩薩が苦海にある衆生を済(すく)い出してさとりの世界に度(わた)らせること。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

 

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2015年2月27日 (金)

コスモス寺花だより 2・27

般若寺 水仙花だより

~水仙の 世におくれたる 姿かな  佐々木文山~

〇水仙:≪見ごろ≫ 

「冷たくも 底びかりする わが春に

さきのこりたる 水仙の花」岡橙里

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅やわびすけの花が咲きだし、鶯も鳴いています。水仙の花は盛りをこえましたが例年より長もちしています。まだしばらくは咲き続けそうです。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。

・本数:3万本

・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「春の日に 移り来たりて 庭の木の

       枯草づるを たぐりたぐるも」

        岡麓・庭苔

〔俳句〕

「一ツ舟に 馬も乗りけり 春の雨」一茶

・訳:一つの舟に馬も乗り合わせたよ。春の雨が降っている。

〔和歌〕

「春くれば 霞をかけて 葛城や

       山のをのへぞ 遠ざかり行」

        冷泉入道前右大臣・新葉和歌集24

「春が来ると、鬘を頭にかけるように、霞をかけて、葛城の山々はその尾根筋が遠くなってゆくように見えるよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・いしのほとけ=京街道の千坊坂に面して立つ夕日地蔵。室町時代の作。歌碑は般若寺境内にあります。

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》350

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆就中(なかんずく)、鶴林(かくりん①)に滅を唱ふるの後、二千余廻の歳月空しく過ぐ。龍花下生(りゅうげげしょう②)の期、五十六億の風煙、なお前仏後仏(ぜんぶつごぶつ③)の間に逈(はるか)なり。劫濁見濁(こうじょくけんじょく④)の今、恣(ほしいまま)に顕密(けんみつ⑤)の教えに逢う。聊か因果の理を信じ、倩(つらつら)大法値遇の縁を思うに、偏に是れ大聖流演(だいしょうるえん⑥)の力なり。何ぞ唯、龍猛菩薩(りゅうみょうぼさつ⑦)の加被(かひ⑧)に預かりて、忽ちに上乗秘蔵(じょうじょうひぞう⑨)の枢(とぼそ⑩)を開かん。戒賢論師(かいけんろんし⑪)の夢告を感ぜんや、遂に中窓伝持(ちゅうそうでんじ⑫)の器を得るのみならんや。

 

 鶴林=釈尊の入滅を悲しみ、沙羅双樹が鶴の羽のように白く変って枯死したという伝説に基づく。沙羅双樹林の異称、転じて釈尊の死、すなわち仏涅槃を言う。つるのはやし。

 龍華下生=弥勒菩薩が仏涅槃の後、長い年月を経てこの世に下生して龍華樹下で説法し衆生済度をする。

 前仏後仏の間=釈迦牟尼仏入滅から五十六億七千万年後の弥勒下生までの間。

 劫濁見濁=劫濁は末法の世において生じる飢饉、疫病、などの天災や戦争などの社会悪などによる時世の汚濁。見濁は諸の邪見(邪悪な思想、見解)がさかんになり世を濁乱する。

 顕密=顕教(法相、華厳、三論、天台など)と密教(真言、台密)

 大聖流演=文殊菩薩の教化、流布演説。

 龍猛菩薩=竜樹菩薩

 加被=加護。

 上乗秘蔵=大乗秘蔵のおしえ。

 枢=とぼそ。かなめ。枢要。

 戒賢論師=梵・シーラバドラ。印度マガダ国ナーランダ寺の僧。唐の玄奘三蔵の師。

 中窓伝持=不明。竜樹が般若空にもとづく中道を説いた『中論』を根本論書とする三論宗のことか。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月26日 (木)

コスモス寺花だより 2・26

般若寺 水仙花だより

~水仙の 莟に星の 露を孕む  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫ 

「冷たくも 底びかりする わが春に

さきのこりたる 水仙の花」岡橙里

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅やわびすけの花が咲きだし、鶯も鳴いています。水仙の花は盛りをこえましたが例年より長もちしています。まだしばらくは咲き続けそうです。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。

・本数:3万本

・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「春の草 もゆる二葉の はつかにも

      我いのちをば みるべかりけり」

       岡麓・庭苔

〔俳句〕

「土焼の 姉様うれし 春の雨」一茶

・訳:土で焼いた女雛を求めたうれしさよ。やわらかな春の雨。

〔和歌〕

「春きても 河風さむし 瓶の原(みかのはら)

       たつや霞の 衣かせ山」

        右近大将長親・新葉和歌集23 

「春がやってきても川風が寒いことだ、瓶の原は。立っている霞の衣を貸してくれよ。」

・瓶の原=山城国の歌枕。

・かせ山=鹿背山。京都府木津川市鹿背山。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。歌碑は般若寺境内にあります。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつにしておきたいです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》349

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆夫れ三世十方の諸仏は、恒沙(ごうしゃ①)の数も喩えにあらず。六度四依(ろくどしえ②)の大士は、刹塵の量覃(さぐ)り難し。皆是れ無縁の大悲(むえんのだいひ③)に牽(ひか)れて隨機の化用(ずいきのけよう④)を垂れずということなし。厥(そ)の中に文殊師利菩薩は、殊に覚母の乳水(かくものにゅうすい⑤)を灑(そそ)いで、三界の稚子(さんがいのちし⑥)を救う。普く平等の慈光を放って、五道(ごどう⑦)の迷徒を照らし、十悪(じゅうあく⑧)と雖も引接(いんじょう⑨)し、名号(みょうごう⑩)を聞く者は阿鼻重罪(あびじゅうざい⑪)を滅すが故、闡提(せんだい⑫)と雖も捨てず。形像を拝する者は、薩埵の大心(さったのだいしん⑬)を発(おこ)すが故に、人として情(こころ)ある者、誰か帰敬(ききょう⑭)せざらんや。

 

 恒沙=恒河沙(ごうがしゃ)。恒河(ガンジス川)の砂、無限の数量のたとえ。

 六度四依=六度は菩薩が修する六種の修行項目。布施・持戒・忍辱(にんにく、忍耐)・精進(努力)・禅定・知慧の六波羅蜜。波羅蜜は宗教理想を実現するための実践修行。完成、熟達、通暁の意。四依は衆生が依りかかってよい四種の人。一、出世の凡夫、二、シュダゴン(預流)・シダゴン(一来)の人、三、アナゴン(不還)の人、四、阿羅漢の人。四依の大士という。

 無縁の大悲=仏は特定の人を対象とせず、すべては空であると観ずるから、仏の慈悲を無縁の慈悲といい、そのいつくしみはあまねくあらゆるものに及び、慈悲の中で最も尊いものとされる。

 隨機の化用=衆生の機根(能力)に応じて教化、教導するはたらき。

 覚母の乳水=文殊は智慧を与えるところから、三世覚母(三世における仏の覚りの母)と呼ばれ、母が幼子に乳を与えて子育てすることにたとえられる。

 三界の稚子=三界(欲界、色界、無色界)、すなわち全世界におけるおさな子である一切衆生。

 五道=五悪趣。衆生が善悪の業因によって趣き住む五つの場所。天、人間、畜生、餓鬼、地獄。五悪道、五趣とも。

 十悪=十善業に反する行為。十悪業をなす人。身、口、意の三業によって造る十種の罪悪。殺生、偸盗、邪淫、妄語、綺語、悪口、両舌、貪欲、瞋恚、邪見(または愚痴)。

 引接=仏が衆生を引き導くこと。引摂。

 名号=文殊菩薩の御名。

 阿鼻重罪=阿鼻地獄(無間地獄)へ落ちる重罪。五逆(父・母・阿羅漢・を殺すこと、僧団の和合をこわすこと、仏の身体を傷つけること)と謗法(正法を誹謗すること)の罪。

 闡提=一闡提(いっせんだい、梵語・イッチャンティカ)。本来解脱の因を欠く断善根のものと、菩薩が一切衆生を救おうとして故意に涅槃のさとりに入らない者すなわち大悲闡提との二種類がある。ここでは成仏の因を持たない断善根ものをさす。

 薩埵の大心=菩提薩埵(ぼだいさった)・さとりを求めて修行する人が、すべての人をさとりの世界へ導き、成仏させる衆生済度の心をおこすこと。

 帰敬=帰依。帰命。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

Dsc03290

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2015年2月25日 (水)

コスモス寺花だより 2・25

般若寺 水仙花だより

~水仙の 莟に星の 露を孕む  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫ 

「わがふるさと 相模に君と かへる日の

春近うして 水仙の花咲く」前田夕暮

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅の花もほころび鶯が鳴き出しています。今年は寒い日が続いたので水仙の花はいつもより長持ちしているように思います。それでも花のみごろは二月いっぱいまででしょう。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「旧(もと)よりの 神棚釣れり 移り来し

          ここの鴨居の 上高ければ」

           岡麓・庭苔

〔俳句〕

「壁の穴 幸(さひはひ)春の 雨夜哉」一茶

・訳:壁の穴がぽかり。幸いにも春雨が降る甘美な夜だなあ。

〔和歌〕

「立わたる 霞の下の 白雪は

       山の端ながら 空に消えつつ」

        よみ人しらず・新葉和歌集22

「見渡すかぎりずっと一面に立っている霞とその下の白雪は一つに溶け合って、山の稜線がすっかり空に消えていっている。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》348

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆【 造立し奉る、白檀木(原本;周)丈六(しゅうじょうろく①)文殊師利菩薩像一躯。

御身(おんみ②)の裏に図し奉る、五字文殊曼荼羅、八字文殊曼荼羅、金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅。

御身の内に納め奉るは、仏舎利五十三粒、大般若経一部六百巻、般若心経一千巻、宝篋印陀羅尼一千遍、本尊真言一万遍、余尊真言各一千遍、一字三礼妙法蓮華経一部八巻、同開結二経、阿弥陀般若心等経各一巻、同最勝王経一部十巻、比丘比丘尼菩提心願文七十五通、奉加帳一通。

華(原本;花)座(けざ③)の中に納め奉る(原本;奉の字無し)、受菩薩戒七衆三萬(原本;万)百五十八人の名帳、幷に(原本;無し)所々殺生禁断等状五十六通。

 

 周丈六=仏身は一丈六尺(十六尺)あるとされ、坐像の場合、八尺ないし九尺に造られる。仏像製作に用いられる尺度は、中国周代の寸法で、曲尺(通称かねじゃく)の約四分の三の長さである周尺を用いる。

 御身=丈六文殊菩薩坐像の御身体。

 華座=文殊尊の坐す蓮華座。塑像の獅子の背に安置された。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月24日 (火)

コスモス寺花だより 2・24

般若寺 水仙花だより

~水仙の 見る間を春に 得たりけり  斉部路通~

〇水仙:≪見ごろ≫

「わがふるさと 相模に君と かへる日の

春近うして 水仙の花咲く」前田夕暮

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅の花もほころび鶯が鳴き出しています。今年は寒い日が続いたので水仙の花はいつもより長持ちしているように思います。それでも花のみごろは二月いっぱいまででしょう。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「春さむき 風吹きにけり 幾度か

        家を移して 住みかはるべき」

          岡麓・庭苔

〔俳句〕

「春雨や はや灯のとぼる 亦打山(まつちやま)」一茶

〔和歌〕

「都人 いとまありてや けふも又

      鳥羽田の面に 若菜つむらん」

        前大納言宗房・新葉和歌集20

「都人たちは暇があるから、今日もまた鳥羽の地の田面で若菜を摘むのだろうか。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》347

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆(文永)五年戊辰(つちのえたつ)

菩薩、六十八歳。二月十六日、伝法灌頂三摩耶戒詮要私記(でんぼうかんじょうさんまやかいせんようしき①)一巻を製し、筆硯(ひっけん)已に晞(かわ)く。梵網戒経を四天王寺に於いて講ず。三月廿五日、菩薩、永代文殊菩薩日供料を般若寺に納めらる。兼て無遮大会(むしゃだいえ②)を設く。饑者(きしゃ③)数万人、其の恵みを得て去る。蓋し是れ、重ねて尊像造営供養の仏事に擬(なぞら)える者也。其の願文に曰く、

 

 伝法灌頂三摩耶戒詮要私記=真言密教の伝法灌頂において、灌頂壇に入る前に受ける三摩耶戒を授ける儀式作法書。三摩耶戒は、一、正法を捨てず邪行を行わない、二、菩提心を捨てない、三、一切法を相手の器に応じて惜しみなく与える、四、衆生の救済に努力する、の精神的な戒で、四重禁戒と言う。。

 無遮大会=無遮会、無遮檀施とも。道俗・貴賤・上下の別なく、来集した全ての人々に一切平等に財と法(仏のおしえ)を布施する法会。元来、国王が施主となって行われたもので、インドのアショカ王が始めたと伝説される。日本では推古四年法興寺で行われたのが最初。後、持統天皇や真如親王の事績が知られる。

*この無遮大会は『感身学正記』、『般若寺文殊願文』によれば文永五年ではなく文永六年(1269)のことであり、『行実年譜』編輯の誤りである。

『感身学正記』(細川涼一氏校注)には、次の文章があります。

○文永五年「秋九月ごろ、同法等に相語りて曰く、文殊造立の大願すでに果たし遂げ畢んぬ。供養の儀、よろしく経説に任すべし。すなわち、文殊経に云わく、〔この文殊師利法王子、貧窮・孤独・苦悩の衆生となりて行者の前に至る。もし人文殊師利を念ずれば、まさに慈心を行うべし。慈心をおこなわば、すなわちこれ文殊師利を見ることを得ん。〕と云々。まさに慈心と文殊は名は異なれども躰は一つなるを知るべし。慈心を勧めんがため、苦悩相を現ず。施行の起こり、職(もと)よりこれに由る。(細川氏の読み・もととして由はかかるものなり。)よって、当明年春三月の縁日、あまねく非人を集め、無遮大会を儲け、生身の文殊の供養に擬えんと欲すと云々。ここに同法等ことごとく皆随喜す。そもそもこの像を造り奉るゆえんは、一切衆生の本尊としてなり。もっとも貴賎に勧め、その奉加の用途をもって造営の料物となすべし。しかりといえども、知識に勧進する事都鄙に充満し、邂逅の事にあらざるの間、人皆尋常の儀に存じ、定めて深重の信を生ぜざるか。よって勧進の詞を出さず、ただ自然の助成に任せ訖んぬ。供養の段においては、広く十方に勧め、あまねく小縁を結ばしむべきの由、最初に発願し畢んぬ。これらの趣をもって、相談するの処、同法等侶の面々、合力して縁に触れ親疎に勧進せしむ。」

○文永六年「二月二十三日、施行の事を営まんがため、般若寺に移住す。三月五日、当寺(般若寺)の西南の野(細川氏は「五三昧の北端」と注を加えられる。三昧地としての「般若野」がどこまでの範囲であったかは確定できないが、北は笠塔婆のあった字「高石」から、南は現北山十八間戸・夕日地蔵の辺りまで、さらに広くは佐保川へ下る斜面全体であったかもしれない。般若寺に現存の江戸期の古絵図には、寺から見て西南の地、京街道の西側に「芝開(しばひらき)」という字名が記される。絵図の描かれた当時の周辺は畑地であり、その一部だけが芝(柴)地として残されていたのであろう。現状は町家が密集していて原形をとどめない。道の東には近世以降の墓地が二か所存在する。)を点じ施場となし、北山非人に課して地形の高下を正さしむ。また兼ねて長吏に仰せて、諸宿非人交名を召す。十一日、これを出す。この供養の間の作法、別に性海比丘の一巻記有り。」

 惜しむらくは、性海比丘の記した「文殊供養の作法一巻記」は現存しないことです。さいわい唯一の史料として春日若宮社の神官、中臣祐賢の日記『中臣祐賢記』の文永六年三月二十五日条に叡尊師らの文殊供養の作法が具体的に記録されています。(細川氏著『感身学正記 1』302頁に掲出)

 

 饑者=飢えたる人。かつえる者

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。


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2015年2月23日 (月)

コスモス寺花だより 2・23

般若寺 水仙花だより

~水仙の 見る間を春に 得たりけり  斉部路通~

〇水仙:≪見ごろ≫

「わがふるさと 相模に君と かへる日の

春近うして 水仙の花咲く」前田夕暮

雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅の花もほころび鶯が鳴き出しています。今年は寒い日が続いたので水仙の花はいつもより長持ちしているように思います。それでも花のみごろは二月いっぱいまででしょう。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈家うつり〉

「春さむき 風吹きにけり 幾度か

        家を移して 住みかはるべき」

          岡麓・庭苔

〔俳句〕

「春雨や はや灯のとぼる 亦打山(まつちやま)」一茶

〔和歌〕

「都人 いとまありてや けふも又

      鳥羽田の面に 若菜つむらん」

        前大納言宗房・新葉和歌集20

「都人たちは暇があるから、今日もまた鳥羽の地の田面で若菜を摘むのだろうか。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》346

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆道俗士女(どうぞくしじょ①)、傾城霞会(けいせいかかい②)する。盲躄老病(もうへきろうびょう③)と雖も、匍匐(ほふく④)して詣せざる莫し。念五結願(ねんごけちがん⑤)の日に丁(あた)って、異香(いこう⑥)遠く四方に薫る。瑞花近く庭際に雨とふる。謂うべし、菩薩同体悲願力の感ずる所なり。其の尊像の胎胞(たいほう⑦)幷びに蓮座の中に納める所の、仏舎利経呪等、具に菩薩記する所の願文に見えたり。次下に之を録す。故に茲に記せず。而して后、仏殿僧坊鐘楼等、次第に之を興建す。巍然(ぎぜん⑧)として一方の望刹(ぼうせつ⑨)と成る。幾乎(ほとんど)聖皇(しょうこう⑩)草創の昔に復す也。即ち弟子慈道空公(慈道房信空)をして其の住持の位に居らしむ。八月朔日、菩薩戒を一百余人に授く。

 

 道俗士女=出家人(僧)と在家人、男と女。

 傾城霞会=城を傾けるがごとく街をあげて、霞の如く大勢が参集する。

 盲躄老病=躄は足の不自由な人。目や足に障害があって身体が不自由な人も、老人や病人も。

 匍匐=はらばうこと。地に伏して膝行すること。

 念五結願=念は廿、念五は二十五日。文殊菩薩の縁日。結願は法会の最後のこと。法会の最終日。二十八日が結願日。

 異香=イキョウとも。すぐれたよいかおり。

 胎胞=胎内、体内。

 巍然=山が高くそびえるさま。

 望刹=名刹。高名な伽藍。

 聖皇=般若寺開基の聖武天皇。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月22日 (日)

コスモス寺花だより 2・22

般若寺 水仙花だより

~水仙に さはらぬ雲の 高さかな 正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙は 萎れしのちも 明星に

似たる蕊(しべ)をば ただなかにおく」与謝野晶子

雪中花。二月も後半にはいり少し春めいてきました。鶯がまだぎこちない声音で鳴き出しました。今年は寒い日が続いているので水仙の花は長持ちしています。寒中にくらべると花数は減りましたが、いまも本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石像の足もとを純白の花が飾っています。花は二月いっぱい見られます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

 

〔短歌〕

〈紅梅〉

「春の雪 おほくたまれり 旅立たむ

       心しづまり 炉にあたり居り」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「けふ植し 槇の春雨 聞く夜哉」一茶

・訳:今日植えた槇の木にふりしきる春雨を聞いている静かな夜だよ。

〔和歌〕

「消えそむる 雪まを分けて 生ひ出(いづ)る

         野辺の若菜も 今やつむらし」

           太宰帥泰成親王・新葉和歌集19

「消え始めたばかりの雪の間を押し分けて芽生え出てくる野辺の若菜も、今や摘むらしいよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》345

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

◆七月廿日、曾(かつ)て法橋善慶に命ずる所の丈六文殊の尊像彫造全く成る。即ち之を南京般若寺に安置し奉る。大いに開光供養(かいこうくよう①)の法会を啓(ひら)き、献ずるに百味珍饌(ひゃくみちんせん②)を以てし、建てるに百余の旛幢(はんとう③)を以てす。導師は十二時の行法を修し、衆僧二百余人堂中に雲集し、海潮を紅蓮の舌上(ぐれんのぜつじょう④)に簸(あお)り、梵音(ぼんのん⑤)を金碧(きんぺき⑥)の殿中に流す。楽師は楽を奏し、伶人(れいじん⑦)は屡(しばしば)舞う。鐘鼓は鏗鍧(こうこう⑧)として、管弦は嘔々(おうおう⑨)たり。

 

 開光供養=眼光を開く開眼供養。仏眼を描き仏の魂を入れる。

 百味珍饌=仏前に供える種々の美味、珍味の食物。

 旛幢=バンドウ。旛は長く垂れ提げたはた。のぼり。幢は円筒形で、刺繍飾りのついたはた。

 海潮を紅蓮の舌上に簸り=読経の声を潮波にたとえ、その声を真っ赤な舌の上で波うたせあおり上げるさま。

 梵音=梵天王の発する清浄な音声。読経の声。声明の一種。四箇法要で散華の次に唱える仏法僧の徳をたたえる歌唱。

 金碧=仏殿を飾る金色や青色の彩色

 伶人=楽師。舞楽を演ずる俳優(わざおぎ)。

 鏗鍧=鐘や鼓の音。鐘鼓の音の混じり合うさま。鏗は金石の鳴る音、

 嘔々=車の車軸のきしるような音。

 般若寺本尊丈六文殊菩薩の開眼供養の法会については、叡尊師の自伝である『感身学正記』(細川涼一氏校注)にくわしく語られています。

「(七月)廿五日、開眼。その儀は、仏前に密壇を飾り、内陣の東西両方に帖を敷きて(南北三行)諸僧の座となし、正面の東西二行に帖を敷きて法用衆の座となす。一々に標を立つ。東西の外陣をもって、聴衆の座となす。今日、諸寺の僧、結縁のため来集す。未の初めの剋(午後一時)、集会の太鼓を打ち、僧衆百八十人、僧房の北面に集会す。璋尊・道俊、おのおの帳文を持ち、二行の列を調う。すなわち、おのおの金を打ち、衆僧を導き、僧房の左右を経、堂の後戸より入り、標の次第に随い列座し、三礼の後着座す。供養法導師たるをもって、予(叡尊)、礼盤に著す。」

この後、廿八日の結願まで、法会の次第が記されます。

そして般若寺の復興についての記事として、

「そもそも当寺は、去んぬる弘長年中に尊像を安置し奉りて以来、幾年を経ずといえども、自然に両三輩の施主出来し、仏殿・僧坊・鐘楼・食堂等を造り添え、ほとほと本願(聖武天皇)の昔に復すと謂うべし。これひとえに大聖文殊善巧の方便と、願主上人(観良房良慧)無想の意楽との計会の致す所なり。すなわち、西大寺の末寺として管領せしむべきの由、上人(良慧)競望の間、同法比丘信空を遣わし住まわしむ。」

このように伽藍の造営、願主上人良慧、中興第一世長老信空のことが語られています。

(前日と同文)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年2月21日 (土)

コスモス寺 花だより  2・21

般若寺 水仙花だより

~水仙に さはらぬ雲の 高さかな 正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙は 萎れしのちも 明星に

似たる蕊(しべ)をば ただなかにおく」与謝野晶子

雪中花。二月も後半にはいり少し春めいてきました。鶯がまだぎこちない声音で鳴き出しました。今年は寒い日が続いているので水仙の花は長持ちしています。寒中にくらべると花数は減りましたが、いまも本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石像の足もとを純白の花が飾っています。花は二月いっぱい見られます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「みすず刈る 信濃の国に 旅だつと

         銭よみて居り 雪ふる窓に」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「と(疾)くとけよ 貧乏雪と そしらるる」一茶

・訳:早く解けなさいよ。いつまでも残っていると、貧乏を招く雪と叱られる。

〔和歌〕

「春日山 をのへの雪も 消えにけり

       麓の野べの 若菜つまなん」

         後醍醐天皇御製・新葉和歌集18

「春日山の尾上の雪も消えてしまった。[春の日の野]と書くその麓の[春日野]にはさぞかし若葉が生え出ていることであろうから、それを摘んで欲しいものだ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》345

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文

(

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(

)

(

)

◆七月廿日、曾(かつ)て法橋善慶に命ずる所の丈六文殊の尊像彫造全く成る。即ち之を南京般若寺に安置し奉る。大いに開光供養(かいこうくよう①)の法会を啓(ひら)き、献ずるに百味珍饌(ひゃくみちんせん②)を以てし、建てるに百余の旛幢(はんとう③)を以てす。導師は十二時の行法を修し、衆僧二百余人堂中に雲集し、海潮を紅蓮の舌上(ぐれんのぜつじょう④)に簸(あお)り、梵音(ぼんのん⑤)を金碧(きんぺき⑥)の殿中に流す。楽師は楽を奏し、伶人(れいじん⑦)は屡(しばしば)舞う。鐘鼓は鏗鍧(こうこう⑧)として、管弦は嘔々(おうおう⑨)たり。(⑩)

 

 開光供養=眼光を開く開眼供養。仏眼を描き仏の魂を入れる。

 百味珍饌=仏前に供える種々の美味、珍味の食物。

 旛幢=バンドウ。旛は長く垂れ提げたはた。のぼり。幢は円筒形で、刺繍飾りのついたはた。

 海潮を紅蓮の舌上に簸り=読経の声を潮波にたとえ、その声を真っ赤な舌の上で波うたせあおり上げるさま。

 梵音=梵天王の発する清浄な音声。読経の声。声明の一種。四箇法要で散華の次に唱える仏法僧の徳をたたえる歌唱。

 金碧=仏殿を飾る金色や青色の彩色

 伶人=楽師。舞楽を演ずる俳優(わざおぎ)。

 鏗鍧=鐘や鼓の音。鐘鼓の音の混じり合うさま。鏗は金石の鳴る音、

 嘔々=車の車軸のきしるような音。

 般若寺本尊丈六文殊菩薩の開眼供養の法会については、叡尊師の自伝である『感身学正記』(細川涼一氏校注)にくわしく語られています。

「(七月)廿五日、開眼。その儀は、仏前に密壇を飾り、内陣の東西両方に帖を敷きて(南北三行)諸僧の座となし、正面の東西二行に帖を敷きて法用衆の座となす。一々に標を立つ。東西の外陣をもって、聴衆の座となす。今日、諸寺の僧、結縁のため来集す。未の初めの剋(午後一時)、集会の太鼓を打ち、僧衆百八十人、僧房の北面に集会す。璋尊・道俊、おのおの帳文を持ち、二行の列を調う。すなわち、おのおの金を打ち、衆僧を導き、僧房の左右を経、堂の後戸より入り、標の次第に随い列座し、三礼の後着座す。供養法導師たるをもって、予(叡尊)、礼盤に著す。」

この後、廿八日の結願まで、法会の次第が記されます。

そして般若寺の復興についての記事として、

「そもそも当寺は、去んぬる弘長年中に尊像を安置し奉りて以来、幾年を経ずといえども、自然に両三輩の施主出来し、仏殿・僧坊・鐘楼・食堂等を造り添え、ほとほと本願(聖武天皇)の昔に復すと謂うべし。これひとえに大聖文殊善巧の方便と、願主上人(観良房良慧)無想の意楽との計会の致す所なり。すなわち、西大寺の末寺として管領せしむべきの由、上人(良慧)競望の間、同法比丘信空を遣わし住まわしむ。」

このように伽藍の造営、願主上人良慧、中興第一世長老信空のことが語られています。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月20日 (金)

コスモス寺 花だより  2・20

般若寺 水仙花だより

~水仙に さはらぬ雲の 高さかな 正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙は 萎れしのちも 明星に

似たる蕊(しべ)をば ただなかにおく」与謝野晶子

雪中花。二月も後半にはいり少し春めいてきました。鶯がまだぎこちない声音で鳴き出しました。今年は寒い日が続いているので水仙の花は長持ちしています。寒中にくらべると花数は減りましたが、いまも本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石像の足もとを純白の花が飾っています。花は二月いっぱい見られます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「わが汽車の 林の中に あることを

        醒めて知りしは 何時なりけむ

         帰京即日校正」

           島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「子守唄 雀が雪も とけにけり」一茶

・訳:子守唄が聞こえ、雀が遊んでいた雪も解け出したよなあ。

〔和歌〕

「この里は 山沢ゑぐを つみそめて

        野辺の雪まも 待たぬなりけり」

          後村上院御製・新葉和歌集17

「この里は深山にあるけれども、山の沢に萌え出る若菜をもう摘み始めて、野原の雪が溶けて雪間の若菜が萌え出るのも待たないのだったよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》344

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【文永四年丁卯五月廿一日、西大寺に於いて再治し畢んぬ。先年、初心始学の小沙弥等の為に、粗(おおまか)に之を科分す。未だ覇勘(はかん①)に及ばざるに、人多く之を写す。錯乱有らんことを恐れ、是を以て、今更に之を勘定(かんてい②)し畢んぬ。

釈迦遺法苾蒭叡尊 已上跋辞。

 

 覇勘=旗印になる校勘。定まった文字、文章。

 勘定=考え定める。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月19日 (木)

コスモス寺 花だより  2・19

般若寺 水仙花だより

~水仙に さはらぬ雲の 高さかな  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙は 萎れしのちも 明星に

 似たる蕊(しべ)をば ただなかにおく」与謝野晶子

雪中花。二月も後半にはいり少し春めいてきました。鶯がぎこちなさをみせながらも鳴き出しました。今年は寒い日が続いているので水仙の花は長持ちしています。寒中にくらべると花数は減りましたが、いまも本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石像の足もとを純白の花が飾っています。花は二月いっぱい見られます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「湯気こもる 湯のまど明けて なやましき

         我が息つきぬ 寒き潮風」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「雪とけて クリクリしたる 月よ哉」一茶

・訳:雪がとけてぼんやり曇っていた月もクリクリと明るく輝く夜になったなあ。

〔和歌〕

「千世までの 春をつみてや 君がため

         けふたてまつる 若菜なるらん」

           前内大臣隆・新葉和歌集16

「永遠の春を積み重ねるようにと願いながら摘んで、帝のために今日奉献する若菜なのであろう。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》343

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆同廿一日、菩薩曾て撰する所の表無表色章科文(ひょうむひょうしきしょうかもん①)一巻、再び之を治し、以て来裔(らいえい②)に垂れる。其の跋詞に曰く、

 

 表無表色章科文=『大乗法苑義林章』の一章である「表無表色章」を段落区分したもの。

 来裔=来れるすえ。後裔、末裔。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年2月18日 (水)

コスモス寺 花だより  2・18

般若寺 水仙花だより

~水仙に さはらぬ雲の 高さかな  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ≫

「水仙は 萎れしのちも 明星に

似たる蕊(しべ)をば ただなかにおく」与謝野晶子

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「紅梅の 花を揺すぶる 潮風の

       寒きにおどろく 湯の窓をあけて」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「雪解て 嬉しさう也 星の顔」一茶

・訳:雪が解けて嬉しそうにしているねえ。星の顔。

〔和歌〕

「鶯の 飛火(とぶひ)の野べの 初声(はつこゑ)に

      たれさそはれて 若菜つむらん」

        中務卿宗良親王・新葉和歌集15 

「鶯が飛ぶ春日の飛火野の野辺で、その初音に誰が誘われて若菜を摘んでいるのだろうか。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》342

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆其の跋詞に曰く、

【文永四年丁卯五月廿日、西大寺に於いて草し畢る。釈迦遺法の苾蒭叡尊、三聚浄戒の圓体(えんたい①)を詳(つまび)らかにし、以て将に倒れんとする大表(だいひょう②)を扶(たす)け、菩提薩埵の衆法(しゅうほう③)を暁(さと)って、以て将に絶えなんとする玄綱(げんこう④)を紐(むす)ばんとす。文永二年の秋、憖(なまじい)に誓心を発す。爾る従り以来、衆行別行(しゅうぎょうべつぎょう⑤)相続して間無く、図らずも遅々として三箇年に及べり。今月今日、終に其の志を遂ぐるのみ。 已上跋文。】

 

 圓体=戒体。戒を守ることを誓うと、戒を守り続けさせる〈戒体=原動力〉が生じるという。物質的なものと考える(倶舎宗、天台宗)立場と精神的なものと考える立場(法相宗)がある。

 大表=おおきなめじるし。大いなる柱。戒律の教え。

 衆法=多くの教え。大乗の仏法。

 玄綱=奥深い道。道徳。ここでは戒律のこと。

 衆行別行=集団で行うことと自身単独での修行。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月17日 (火)

コスモス寺 花だより  2・17

般若寺 水仙花だより

~のどかさの 侘しからまし 水仙花  服部土芳~

〇水仙:≪見ごろ≫

「うれしくも 見つる冬野の 一すぢの 

水のほとりの 水仙の花」金子薫薗

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「潮風は はげしくあれや 湯の窓ゆ

       揺すれて見ゆる 紅梅の花」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「紫の 袖にちりけり 春の雪」一茶

・訳:紫の袖に散ったよ。春の淡雪が。

〔和歌〕

「おのづから ながき日影も くれ竹の

         ねぐらにうつる 鶯の声」

           後村上院御製・新葉和歌集14

「知らず知らずのうちに春の長い日も暮れて、呉竹のねぐらに帰って行く鶯の鳴き声が聞えることだ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》341

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(文永)四年丁卯(ひのとう)

菩薩、六十七歳。春三月、長禅尊公(長禅房幸尊)等の為に、伝法灌頂(でんぼうかんじょう①)を執行す。五月廿日、表無表章詳体文集(ひょうむひょうしょうしょうたいもんじゅう②)全部三巻の編集、既に成って筆を絶つ。

 

 伝法灌頂=密教で人の師となりうる阿闍梨位を得ようとする者に対して大日如来の法を授ける真言秘奥の灌頂。付法灌頂、阿闍梨灌頂とも云う。

 表無表章詳体文集=唐の法相宗開祖慈恩大師窺基(きき)が唯識教学を体系化した法相の論書、『大乗法苑義林章』(だいじょうほうおんぎりんじょう)の一章「表無表色章」の注釈書。戒体の得捨と律儀を詳解する。日本大蔵経巻六十七所収。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月16日 (月)

コスモス寺 花だより  2・16

般若寺 水仙花だより

~のどかさの 侘しからまし 水仙花  服部土芳~

〇水仙:≪見ごろ・満開を少し超える≫

「うれしくも 見つる冬野の 一すぢの 

水のほとりの 水仙の花」金子薫薗

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈紅梅〉

「磯の上に ひまなき風の 吹き揺する

        紅梅の花は 大かた莟(つぼみ)」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「長き日の 壁に書きたる 目鼻哉」一茶

・訳:春の日永、なすこともなく眺めている壁に書かれた目鼻よ。

〔和歌〕

「春くれば 花にうつろふ 鶯の

        心の色ぞ 音には知らるる」

          よみ人しらず・新葉和歌集13

「春になると花に惹かれてゆく鶯の心の深さは、その鳴き声によって知られることだ。」

・心の色=歌語。深く心に思うさまを色にたとえる。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》340

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆十二月、河(河内)の真福寺宝塔修造已に成る。丹青(たんせい①)焜煌(こんこう②)として林巒(りんらん③)に照映(しょうえい④)す。是に由って大いに落成の仏事を修す。並びに饑人(きにん⑤)一千余人を集め、食を施し、授くるに帰戒(きかい⑥)を以てす。

 

 丹青=赤と青。絵具による彩色。

 焜煌=かがやききらめく。

 林巒=木の繁った山並み。

 照映=てりはえること。

 饑人=うえたるひと。

 帰戒=三帰戒。仏法僧の三宝に信心の誠をささげる三帰依(帰依仏、帰依法、帰依僧)と五戒(在家衆の戒。不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒)。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月15日 (日)

コスモス寺 花だより  2・15

般若寺 水仙花だより

~水仙に 日のあたるこそ さむげなれ 安井大江丸~

〇水仙:≪見ごろ・満開を少しこえる≫

「うれしくも 見つる冬野の 一すぢの 

水のほとりの 水仙の花」金子薫薗

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈校正室〉

「ただ一つ 小さき火鉢 置かれたり

        手のひらあぶれば 手のうらさむし」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「一村は かたりともせぬ 日永哉」一茶

・訳:一村は眠ったようでかたりとおとさえもしない。まさしく春の永日だよ。

〔和歌〕

「なれもまづ 谷の戸出(いで)て 君が代に

         あへるを時と 鶯ぞ鳴く」

          福恩寺前関白内大臣・新葉和歌集12

「お前もいちはやく谷の戸を出たから、我が君の代に際会できて、これは千載一遇の時機を得たと鶯が鳴くことよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》339

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆又浄地は、形命(けいめい①)を資(たす)くるの要法、仏戒を浄むるの権方(けんぽう②)なり。祖師の云へること有り。良(まこと)に衆生の報力は同じからず、上中下の根を差別するに由って、上達の徒のごときは、身力資強にして儲畜(ちょちく③)を假(か)らざれども、中下の類は必ず資具(しぐ④)を須(もち)いる。方(まさ)に能く策進(さくしん⑤)す。是を以て、大聖慈愍して、方に之を結することを開したまう。界には同宿汗染の罪無く、人には貯蓄貧慢の心無し。宿畜既に除外(のぞけ)ば咎(とが)起らざるが故に、名づけて浄地と為す。宜(よろ)しく大界食界の限域を定め、更に摂僧摂食の作法を加うべし。仍ち六和の格式に任せて、先ず四方の界相を結すべし。三業(さんごう⑥)誠を運び、一心に秉量(へいりょう⑦)すべし。

已上表白】

 

 形命=いのちを保つからだ。

 権方=臨機応変、まにあわせの方法。

 儲畜=貯蓄。財貨を蓄えること。また、その財貨。

 資具=使用する器具。什器。

 策進=馬にむち打って進む。

 三業=身(身体)、口(言語)、意(心)の三つの行為(業)。

 秉量=心にかたく守り、おしはかる。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月14日 (土)

コスモス寺 花だより  2・14

般若寺 水仙花だより

~水仙に 日のあたるこそ さむげなれ 安井大江丸~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「春のいろ 青し二寸の 水仙の

芽も翡翠なる 人の耳輪も」与謝野晶子

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

〇ロウバイ:≪見ごろ≫

〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪咲きはじめ≫

〇梅:≪つぼみ≫

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「春の嵐 吹きて小暗し 庭のうへの

       胡桃の幹は 揺すれつつあり」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「春の日や 暮ても見ゆる 東山」一茶

・訳:春の日よ。日が暮れても見えるよ、京の東山。

〔和歌〕

「いとはやも 谷の古巣を 出でそめて

         人に待たれぬ 鶯の声」

           冷泉入道前右大臣・新葉和歌集11

「たいそう早く谷の古巣を出て鳴き始めるから、人に待ち遠しく思われることのない鶯の声だよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》338

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆【敬って現前の大徳衆僧に曰す。今、如来の制約に任せ、将に摂僧摂食(しょうそうしょうじき①)の両界を結ばんとす。夫れ結界は、三宝久住の秘術、一味平等の要門なり。我と他、彼と此の妄情、事に即して自ずから晴れ、利行と同事(りぎょうとどうじ②)の勝業は縁に触れて成り易し。是(ここ)を以て、如来出世の初めには、乖別(かいべつ③)を一閻浮提(えんぶだい④)に許さず。僧数漸く積むの後は和合を六相(ろくそう⑤)方隅に勘(かんが)えしむ。自然と作法(しぜんとさほう⑥)は不同なりと雖も、皆是れ六和(ろくわ⑦)の方軌なり。大界戒場、差別すると雖も、三乗の法則にあらずということ莫し。僧寺、之を結すれば、界神法を守り、俗家、之を結すれば、宅神災いを拂う。劫焼の炎にも焼かれず。無作(むさ⑧)の功徳、界畔を共にして、常住にして漂溺(ひょうでき⑨)の波にも蕩(ゆれうご)くこと無し。自然の威力は地際に徹(とお)り堅固なり。誠に是れ生善滅罪の良縁、住法依僧の浄地(じょうち⑩)、衆同の本、作業の基なる者也。

 

 摂僧摂食=受戒の時結界された地域、摂僧界は比丘が一か所に集合して布薩などの行事を行うために設けられた、一定の区画をいう。摂食界は比丘の食物に関する制戒を犯さないように浄地(違反しても罪にならない区域)の指定をした所。食物の貯蔵所を結界した地域。

 利行同事=菩薩が人々を悟りへ導く《四つの把握法》、四摂事(ししょうじ)。布施摂(真理を教える法施とものを与える財施)、愛語摂(やさしい言葉をかけること)、利行摂(身口意三業の善行で人々に利益を与えること)、同事摂(形を変えて人々に近づき、同じ仕事にいそしむこと)

 乖別=そむきわかれること。

 閻浮提=梵語ジャンブドゥビーパ。須弥山の南方にある四大洲の一つ。仏が現れてその法楽を受けるのはこの洲だけとされる。のちに人間世界全体を意味し、また現世の称ともなった。

 六相=華厳経、十地経などに説く、万有のすがたにそなわる六種の相。総、別、同、異、成、壊の相を謂う。

 自然と作法=摂僧界に自然界と作法界あり。自然界は不作法界で、作法しないで自然の形勢によって定まっている区域。これには聚落・蘭若・同行・水の四処がある。作法界には大界・戒場・小界の区別がある。

 六和=六和敬(ろくわぎょう)。さとりを求めて清らかな行を修めるものが、互に仲よくし、敬いあうことについての六種(身・口・意・戒・見・利和敬)

 無作=因縁の世界を超越した悟りの境地。

 漂溺=ただよいおぼれること。

 浄地=ジョウジとも。清浄の土地、寺のある土地。寺院で塩・醤油など食料を置く所。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月13日 (金)

コスモス寺 花だより  2・13

般若寺 水仙花だより

~水仙や 美人かうべを いたむらし 与謝蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「春のいろ 青し二寸の 水仙の

芽も翡翠なる 人の耳輪も」与謝野晶子

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「沖べより 氷やぶるる 湖の

        波のひびきの ひろがり聞ゆ」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「我春も 上々吉よ けさの空」一茶

・訳:わが春も上々吉だよ。めでたく晴れ上がった今朝の空。

〔和歌〕

「岩ねには 積もるとみれど 滝つ瀬に

        落ちては水の あは雪ぞ降る」

          妙光寺内大臣・新葉和歌集10

「大地にしっかりと根を下ろした岩には積ると見えるけれど、滝に落ちると空しく水の泡となってしまう、そんなはかない淡雪が降るよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》337

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆十月廿四日、重ねて西大寺に結界(けっかい①)す。菩薩、羯磨(こんま②)を秉(へい③)し、答法(とうほう④)は総持律師なり。唱相(しょうそう⑤)は幸尊律師なり。菩薩の表白に曰く、

 

 結界=教団の僧尼の秩序を保持するために、ある一定地域を限ること。特に受戒や布薩などを行うために作法を行って大界、戒場、小界などを定める。

 

 羯磨=梵語カルマン。身口意の行為をなすことを意味する。弁事、作法と訳され、受戒・懺悔の作法、僧伽(教団)の行事執行を言う。

 秉=手にとる。羯磨師をつとめる。

 答法=結界作法の配役。

 唱相=結界作法の配役。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月12日 (木)

コスモス寺 花だより  2・12

般若寺 水仙花だより

~水仙や 美人かうべを いたむらし 与謝蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「春のいろ 青し二寸の 水仙の

芽も翡翠なる 人の耳輪も」与謝野晶子

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「坂下の 湖の氷の やぶるるを

      嵐のなかに 立ちて見ており」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「老が身の 直(ね)ぶみをさるる けさの春」一茶

・訳:老人としてナンボの価値があるかと値踏みされて迎えた新春。

〔和歌〕

「かつ消えて 庭には跡も なかりけり

         空にみだるる 春のあは雪」

           後村上院御製・新葉和歌集9

「一方ではそのまますぐ消えて、庭には雪の降った跡もないことだなあ、一方では空に乱れ飛んでいる春の淡雪は。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》336

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆(文永)三年丙寅(ひのえたつ)

菩薩、六十六歳。春二月八日、天王寺(四天王寺)に在り、衆の為に説法したまふ。時に聴衆の中に、菩薩の仏身を現して大光明を放つを見る者有り。合掌恭敬し、歓喜頂礼して、南無思円仏(なむしえんぶつ①)と称す。予、隨覚鏡慧(ずいかくきょうけい②)公の神託記(しんたくき③)を按ずるに、曰く、一時(あるとき)、三輪明神、七歳の童女に附して空に騰(あ)がること高さ七尺、喜躍(きやく④)して已まず。傍らの人怪しみて問う。何すれぞ其れ然るや。童女曰く、霊鷲(りょうじゅ⑤)の釈迦、雞足の迦葉(けいそくのかしょう⑥)、身を此の方に現じて、説法度生することを喜ぶ故なり。又問て曰く、其れ誰と為(な)す。応(こた)へて曰く、西大寺思円上人(叡尊)、般若寺慈道公(信空)是也。加ふるに十六羅漢、跡を上人の門に垂る。故に彼の徒弟と称する者は、多くは是れ霊山結縁の衆なり。ここを以て之を推(おしはか)れば、則ち菩薩は、乃(すなは)ち釈迦の応化にして、凡庸に非ず。断じて信ずべし。十一日、法華寺に至る。菩薩戒を八十余人に授く。十九日、河(河内)の西琳寺に赴き、又菩薩戒を二百三十余人に授く。継いで和(大和)の磯野極楽寺(いそのごくらくじ⑦)に届き、菩薩戒を一千五百十八人に授く。

 

 南無思円仏=叡尊師は仮名(けみょう)が思円房なので思円上人と称された。

 隨覚鏡慧=隨覚房鏡慧。叡尊師に隨持して記録を残した。御入寂の際は看病をされたようだ。

 神託記=神のおつげ、託宣の記録。三輪明神の霊験記。

 喜躍=よろこびおどる。

 霊鷲=梵語ギジャクッセン。霊鷲山。仏陀が説法された地。

 雞足の迦葉=梵語マハーカーシャパ、摩訶迦葉。仏陀の十大弟子の一人。頭陀第一。清廉な人格者で仏陀の信頼厚く佛入滅後教団の統率者となり第一回の仏典結集を行う。雞足山に入り入定入滅した。

 磯野極楽寺=現大和高田市磯野にあった真言律宗末寺(廃寺)。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月11日 (水)

コスモス寺 花だより  2・11

般若寺 水仙花だより

~水仙や 美人かうべを いたむらし 与謝蕪村~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「春のいろ 青し二寸の 水仙の

芽も翡翠なる 人の耳輪も」与謝野晶子

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「つぎつぎと 氷をやぶる 沖つ波

        濁りをあげて ひろがりてあり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「貧乏草 愛(めで)たき春に 逢にけり」一茶

・訳:貧乏草、お前にもめでたい春がめぐってきたなあ。

・前書きに、「福寿草といへる花、人々もてはやすことのうらやましく、一本もとめて植えたりけるに、いかがしたりけん、山吹のうるはしき色には咲かで、灯心の油じみたる花になんありける。橘の枳殻(からたち)と変ずる類ひ、愛ずる人によるならん。かかるいぶせき庵に移したれば、本性をうしなへるもことはり也。戯れにかれが名をとりかへる。」

〔和歌〕

「風寒み 何をか春と いはしろや

       雪だにとけぬ 松の下蔭」

         春宮大夫師兼・新葉和歌集8

「風が寒いのでどうして春だなどと言えようか、昔有間皇子が引き結んだというこの岩代の松の枝が解けないのはもちろんのことだが、雪さえも溶けないこの松の下陰は。」

・参考:「岩代の浜松が枝を引き結び

まさきくあらばまたかへりみむ」有間皇子・万葉2.

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》335

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆又、導師行ずる所の光明真言念誦次第一冊並びに開白結願の作法等、菩薩皆な之を製作して、以て恒軌と為す。爾るより以来今時に至るまで、既に五百年に垂(なんなん)とす。然りと雖も、法会相続して絶ゆること無し。貴と無く賤と無く、男と無く女と無く、会場に雲集し、結縁窮まり無し。加うるに、開白の古へ自り、以て当今に臻(いた)るまで、上は天皇妃嬪(ひひん①)公卿太夫自り、下(しも)は農夫職女(しょくじょ②)に及び、並びに諸宗の高僧碩徳等、霊簿に交締(こうてい③)して其の法澤(ほうたく④)に預かる者、幾憶万人ということを知らず。菩薩広大に願力の及ぼす所、亦遠からずや。冬十二月、胎蔵界頸次第(くびしだい⑤)第一帖を製す。

 

 妃嬪=妃(きさき、天子の第二夫人)と嬪(つま、貴人のそばに仕える女性、側室)

 職女=女性の職人。

 交締=まじわりむすばれる。

 法澤=のり(仏法)のめぐみ。

 頸次第=次第は次第書(がき)の意。修法の順序を記した法則(ほっそく)。中国では儀軌を直接用いて行じていたが、わが国では儀軌よりも簡略で整備された次第を先徳が作り相承した。頸次第は重要の意。他に略次第、私次第がある。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月10日 (火)

コスモス寺 花だより  2・10

般若寺 水仙花だより

~水仙の 見る間を春に 得たりけり  斉部路通

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ふるさとの 日光のなか ひやりひやり

         水仙の葉を 踏みて居りけり」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「氷(ひ)の湖(うみ)の 沖におおきなる 穴あけり

          雲の動きの すみやかになりて」

            島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「わが春や タドン一ツに 小菜一把(こないちは)」一茶

・訳:わが春が来たよ。タドン一つに小菜一把の貧者ぶり。

〔和歌〕

「つれもなき 梢の雪も 消えそめて

        雫ににごる 松の下水」

         前中納言為忠・新葉和歌集7

「なかなか融けなかった松の梢の雪もようやく融け始めて、その雫によって濁ることだよ、松の木の下を流れてゆく水は。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》334

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆菩薩滅後、八月に之を勤む。故に慈眞和尚(じしんわじょう①)此の文の後ろに跋書して曰く、

 

【抑(そもそも)今の願文は、法会始行の後、翌年之を草す。季秋九月上旬四朝を以て開白の日と為して、勤め来たること尚(ひさ)し。而るに先師帰寂の諱辰(せんしきじゃくのきしん②)の鄰近(りんきん③)となれり。此の七日七夜の勤行を促して、彼の追修追福の恵業に擬す。仍(すなわ)ち恒例の式日を改めて、以て遠忌の佳期に代ふ。然る間、時節と天気と聊か文意に背く。霜葉と風松と、寔(まこと)に人の迷いを起さんものか。衆疑を除かんが為、此の一言を加ふるのみ。 已上跋文 】

 

 慈真和尚=慈道房信空。興正菩薩の高弟。般若寺中興第一世長老、菩薩遷化後、西大寺第二世長老となる。諸国国分寺を末寺とし復興する。真言律宗西大寺教団の隆盛に貢献した。後醍醐天皇より慈真和尚を諡号される。

 先師帰寂の諱辰=興正菩薩の御忌日、正応三年(1290)八月二十五日。

 鄰近=鄰は隣の正字。となり。近隣。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月 9日 (月)

コスモス寺 花だより  2・9

般若寺 水仙花だより

~水仙や 門を出づれば 江の月夜  各務支考~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ふるさとの 日光のなか ひやりひやり

         水仙の葉を 踏みて居りけり」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「暖き 風疾(はや)く吹きて 日のあたる

     氷の湖(うみ)は 霑(ぬ)れいろになれり」

      島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「明ぼのの 春早々に 借着かな」一茶

・訳:明るい春早々に借り着をしているよ。

〔和歌〕

「さえかへり 又こそ谷に 氷(こほり)ぬれ

        高嶺(たかね)にとくる 雪の下水」

          関白左大臣・新葉和歌集6 

「春になったのに寒さが戻って、再び谷で凍ったことだよ、高い山の峰に積った雪の下から融けて流れてきた水は。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》333

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆仏法、厥(それ)が為に専ら恢弘(かいこう①)する者か。弟子等、上求下化(じょうぐげけ②)の外、何の慮(おもんばかり)か有らん。自(おのれ)を忘れ他を救ふの余り、他念無し。於戯(ああ)一日の持斎(じさい③)に六十万載(年)の資糧有り。矧(いわん)や一生を限るにおいてをや。五戒の功能、二十五神の擁護(ごかいのこうのう、にじゅうごしんのおうご④)あり。いわんや諸戒を全うするに於いてをや。斯の禁戒律儀を守って、光明真言を称念す。誰か隨喜せざらん、誰か慇懃(いんぎん⑤)ならざらん。惣じて之を言はば、仏道の為、法界の為に修す。身の為に修せず。世尊若し納受したまはば、衆生悉く解脱せん。仰ぎ願わくは、当寺本尊(釈迦如来)に伏して乞う。十方の諸仏、哀愍聴許し、知見証明したまえ。昔、釈苑公(しゃくえんこう⑥)七日七夜の斎会(さいえ⑦)するに、仙鶴忽ち其の庭に化現す。今、仏弟子七日七夜の慧薫(けいくん⑧)、仏陀定めて此の砌に影向したまふらん。精誠(せいせい⑨)惟(これ)同じくとも、玄応(げんのう⑩)猶勝らんのみ。乃至、発因起縁(ほついんきえん⑪)、成順成逆(じょうじゅんじょうぎゃく⑫)、皆七朝(七日)の善根を以て、将に来世の張本(ちょうほん⑬)となる。我等、衆生と皆共に仏道を成ぜんことを。敬って白す。

  文永二年九月四日   西大寺沙門等敬白 已上願文 

 

 恢弘=ひろいこと。大きくしおしひろめること。

 上求下化=上求菩提、外化衆生(じょうぐぼだい、げけしゅじょう)。さとりを求め修行し、一切衆生を教化し救済すること。

 持斎=戒律を守って身心を清浄に保つこと。八戒を守ること、特に、正午を過ぎて食事をしないこと。

 五戒の功能、二十五神の擁護=五戒を守る人は二十五神に守護される。

 慇懃=ねんごろなこと。ていねいなこと。

 釈苑公=不詳。

 斎会=僧尼に斎食(さいじき)を供する法会。

 慧薫=智慧による薫化、感化。。

 精誠=セイゼイとも。まじりけなく誠実なこと。まごとろを尽すこと。

 玄応=幽玄な感応。仏の感応。

 発因起縁=因に発して縁より起る。発起因縁。

 成順成逆=順縁、逆縁ともに成仏の方便となる。

 張本=チョウボンとも。あらかじめ後の素地を設けつくること。原因。根本。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年2月 8日 (日)

コスモス寺 花だより  2・8

般若寺 水仙花だより

~水仙や 門を出づれば 江の月夜  各務支考~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ふるさとの 日光のなか ひやりひやり

         水仙の葉を 踏みて居りけり」古泉千樫

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「ひた吹きに 氷の湖(うみ)に 吹く風の

        暖くして 曇りをおくる」

         島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「春立や 愚の上に又 愚にかえる」一茶

・訳:生き延びて新年を迎えたなあ。愚かに生きてきた上に、また愚に戻って行く。

〔和歌〕

「花鳥(とり)の 色にも音(ね)にも 先立(さきだち)て

           時しる物は 霞なりけり」

             中務卿尊良親王・新葉和歌集5

「花の色にも鳥の声にも先だって、春という時節を知ってその姿を現すものは霞だったよ。」

・花鳥=梅と鶯か。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》332

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆方(まさ)に今、季秋(きしゅう①)四朝を以て、開白の初日と為す。本願聖霊(称徳天皇)上生の忌辰(じょうしょうのきしん②)なり。仏身の相好を資(たす)け、釈提桓因(しゃくだいかんいん③)南嚮(なんきょう④)の良曜(りょうよう⑤)なり。天眼(てんげん⑥)の照鑒(しょうかん⑦)を仰ぐ。時に地形奇絶(きぜつ⑧)なること、清涼(せいりょう⑨)の地を蹈むが如し。天時晃朗(てんじこうろう⑩)として、兜率天に昇るを省き、霜葉(そうよう⑪)は禅窓に飄(ひるがえ)る也。麟(りん⑫)喩独覚(どっかく⑬)の観に叶ひ、風松の佛閣を繞(めぐ)るなり。遙かに龍葩三会(りゅうはさんね⑭)の期を契る。此(ここ)にして善を修す、其れ悦びならずや。勤行の次第、道場の荘厳、種々の法式、一々甄録(けんろく⑮)す。其の雅趣(がしゅ⑯)を守って、永く失墜すること勿れ。彼の栴檀林(せんだんりん⑰)に入るの者は花の粧(よそおい)身に薫ず。崑崙嶺(こんろんれい⑱)を過ぐるの者は、玉の色歩みに隨う。法の染着、亦復只且(かくばかり)なり。弟子等、慧苑の凡藂(はんそう⑲)、禅樹の枯株なり。佛日西に蔵(かく)れて、二千余廻り。律炬(りっきょ⑳)の消えんとするを挑(かか)ぐ。法水東に漸(すす)んで、幾許(いくばくばかり)の歳ぞ、戒流の涸れんとするを導く。本朝に於いて廃失すと雖も、我が寺に於いて聊か興隆す。正法茲に繇(より)て、弥(いよいよ)繁昌なり。

 

 季秋=秋の終わりの月、晩秋。陰暦九月。

 上生の忌辰=弥勒菩薩の住まう兜率天への上生、即ち寂滅。忌辰は命日。

 釈提桓因=帝釈天。梵天と共に仏法の護法神。

 南嚮=南向き。

 良曜=曜は日・月・星の総称。よい日にち。

 天眼=五眼(ごげん)の一つ。神通力により、ふつう見えないものをも見通す超人的な目。天眼通。

 照鑒=照鑑。仏が明らかに見給うこと。

 奇絶=きわめて珍しいこと。

 清涼=さわやかに涼しいこと。すがすがしいこと。

 天時晃朗=天時は寒暑、昼夜など、自然にめぐって来て人事に関係ある時。晃朗は明るくかがやいているさま。

 霜葉=霜にあたって紅葉した葉。しもば。

 麟=麒麟。聖人。

 独覚=師なくして十二因縁の法を感じ、あるいは他の縁起により悟りを得た人。縁覚、辟支仏とも。

 龍葩三会=龍華三会。弥勒菩薩がこの世に下生して、華林園の龍華樹下で説法するという会座。三回にわたるので龍華三会、弥勒三会とも。

 甄録=甄は、明らかにする、見分ける、区別するの意。詳細に記録すること。

 雅趣=風雅なおもむき。

 栴檀林=白檀の林。香木で花も香気が強い。

 崑崙嶺=中国古代に西方にあると想像された高山。

 凡藂=すべての若草。

 律炬=戒律の法灯。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月 7日 (土)

コスモス寺 花だより  2・7

般若寺 水仙花だより

~春寒き 寒暖計や 水仙花  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ありなしの 水仙の香の ただよへる

暗き座敷に 君おもひぬる」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「山の田の 清水に魚を 放ち来し

       子どもの足は 泥にこごえつ」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「ことしから まふけ遊ぞ 花の娑婆」一茶

・訳:生きながらえて、今年から命のもうけと思って遊び暮らすことになったよ。花のような俗世間を。中風の病から生き返って新春を迎えた喜び。たとえ苦の娑婆であっても、もうけものと思って遊んで暮らそう、と居直った。

〔和歌〕

「九重の 都に春や 立ぬらん

      天つ雲井の 今朝はかすめる」

        冷泉入道前右大臣・新葉和歌集4

「都に春が立ったのだろうか、大空が今朝は霞んでいる。」

・九重=宮中。

・都=ここでは、吉野の行宮を言うか。あるいは、京都を遠く思いやっているとも解せる。

・雲井=天空。

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》331

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆寔(まこと)に是れ、菩薩普賢の願海(ぼさつふげんのがんかい①)は、如来清浄の法輪なり。茲に因り、七日七夜の光陰を卜し、瑜伽瑜祇の壇場を賁(かざ)り、一結衆をして不退の行を勤めしむ。去歳より始めて、未来際を限る。其の意如何(いかん)となれば、律法中興より以降、勤修する内衆の徒ら、若干の亡霊、佛道を増進し、兼て復た、曾て共に一塗に遊び、同じく一室に禅せし所、近年の際、索然として已に盡きぬ。凡そ此の眞門に入るの侶(ともづれ)、更に名利を抛(なげう)つ。此の貧道に伴うの彙(たぐい)、豈に財宝を蓄えんや。没後の追福に於いては衆中の救助を恃(たの)む。中陰一廻の間、懇篤に似たりと雖も、世を下り歳を累(かさ)ぬるの後、頗る以て等閑(とうかん②)なり。乃ち此の別行を営んで、永代の作善と為す。出家の五衆八斎戒の輩、幷びに此の衆等の恩所、当寺の大檀那、浄仏土に於いて再会を期せんが為に、名字を過去帳に載する所なり。加うるに、六道四生(ろくどうししょう③)は皆な是れ劫々の父母なり。鉄囲沙界(てっちしゃかい④)は世々の朋友ならざるは莫(な)し。彼を思ひて楚痛(そつう⑤)し、我が為に慇憂(いんゆう⑥)す。昭々乎(しょうしょうこ⑦)として六度(ろくど⑧)の舟を艤(ふなよそおい)し、游々焉(ゆうゆうえん⑨)として三覚(さんがく⑩)の岸に登る。廻施(えせ⑪)に貮(ふたごころ)無く、出離(しゅつり⑫)は疑いなきなり。

 

 菩薩普賢の願海=『華厳経普賢行願品』に説かれる普賢菩薩の十大願で「行願海」という。それは、一.常にすべての仏を敬い、二.常にすべての如来の徳をたたえ、三.常にすべての仏に仕えて最上の供養をし、四.常に無始以来の悪行を懺悔して浄戒をたもち、五.常に仏・菩薩から六趣四生に至るまでのあらゆる功徳を随喜し、六.常にすべての仏に教えを説くことを要請し、七.涅槃に入ろうとする仏・菩薩などに対してはこの世にとどまることを常に請い、八.常に毘盧遮那仏に随ってその仏が教化のために示す相をことごとく学びとり、九.すべての衆生の種別に応じて種々につかえ、種々に供養してめぐみ、十.以上のようなあらゆる功徳を一切の衆生にさしむけて、ことごとくが仏果を完成することを願う。

 等閑=なおざり。おろそか。

 六道四生=六道は衆生が作った業によって輪廻する地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天の六つの世界。四生は生類を生れ方の違いで四種に分ける。胎生、卵生、湿生、化生。

 鉄囲沙界=須弥山の周りの四洲の外海をかこむ九山の鉄でできた山、鉄囲山と、ガンジス河の砂ほどもある無数世界、恒河沙(ごうがしゃ)世界。

 楚痛=いたみくるしむ。

 慇憂=いたみうれえる。

 昭々乎=明らかなさま。

 六度=六波羅蜜多。(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智恵)

 游々焉=うかびながら。

 三覚=仏におけるさとりの三つのあり方。自覚(自らさとること)、覚他(他をしてさとらしめること)、覚行究満(さとりが完成すること)。

 廻施=布施の功徳を法界衆生に廻向(廻らせ向かわせる)すること。

 出離=迷いの世界、煩悩の束縛を離れること。生死を繰り返す輪廻を脱け出ること。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月 6日 (金)

コスモス寺 花だより  2・6

般若寺 水仙花だより

~春寒き 寒暖計や 水仙花  正岡子規~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ありなしの 水仙の香の ただよへる

暗き座敷に 君おもひぬる」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「氷切りて 漁(と)りたる魚は 生きてあり

       山の我が家(や)に くばりて持て来(く)」

        島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「春立や 弥太郎改め 一茶坊」一茶

・訳:立春の日よ。弥太郎の幼名を改め、今春から一茶坊主。

〔和歌〕

「風わたる 池の氷も とけそめて

       うち出(いづ)る波に 春や立(たつ)らん」

         後村上院御製・新葉和歌集3 

「春風が吹き渡る池の氷も解け始めて、ほとばしり出る波とともに春が立つのだろうよ。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》330

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆夫然(かくのごとくならば)則ち、法界智(ほっかいち①)の所依と為る也。月は大円鏡の輝きを添え、平等性の無垢を得る也。露は摩尼珠(まにしゅ②)の色を瑩(みが)く。大悲観自在尊、此の真言を説いて、以て白毫を眉間に耀かす。毘廬遮那如来、又此の真言を説いて、以て宝光を頂上に灌(そそ)ぐ。

何ぞ況や衆罪悉除す。朝日の霜露を消すに相同じ。巨富に飽き足りて、還って暁雲の虚空に浮ぶを咲(わら)ふ。凡そ厥(そ)の利益、勝って図るべからず。是を以て、青丘(せいきゅう③)元暁大師(がんぎょうだいし④)の問答を肝に銘じ、西方須摩題国(しゅまだいこく⑤)の往生に憑(たの)み有り。十悪五逆(じゅうあくごぎゃく⑥)の群類、三途八難(さんずはちなん⑦)の衆生、悉く土砂加持の徳を蒙って、宜しく金刹(きんさつ⑧)安養(あんよう⑨)の境に託すべし。

 

 法界智=大日如来の智である法界体性智。五智の一つ、ほかに大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智。

 摩尼珠=梵語マニは宝石、宝玉のこと。濁水を清らかにする不思議なはたらきがあるとされる。如意宝珠。

 青丘=朝鮮新羅の異称。

 元曉大師=ゲンギョウとも。新羅の学僧。華厳の祖師。

 須摩題国=梵語、スカーヴァティー。極楽浄土。

 十悪五逆=十悪は身口意の三業から生じる十の悪業。殺生、偸盗、邪淫、妄語、綺語、両舌、慳貪、瞋恚、邪見。五逆は五逆罪、犯せば無間地獄に堕ちるとされる。殺母、殺父、殺阿羅漢(聖者)、出仏身血(仏身を傷つけ血を出だす)、破和合僧(教団の和合を破壊する)。

 三途八難=三途は三悪道(地獄、餓鬼、畜生)の苦しみ。八難は三悪道に、四に長寿天、五に辺地、六に盲聾など身体障害、七に世智弁聡、八に仏前仏後を加え八とす。

 金刹=コンセツとも。刹は旗を立てる柱、僧が一法を悟ると一つの旗をたてて遠方に知らせた。それから寺そのもの或いは塔を指す。金色に輝く伽藍。

 安養=アンニョウとも。阿弥陀の浄土、西方極楽世界。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

 

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2015年2月 5日 (木)

コスモス寺 花だより  2・5

般若寺 水仙花だより

~清浄な 葉のいきほひや 水仙花  岩田涼菟~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「ありなしの 水仙の香の ただよへる

暗き座敷に 君おもひぬる」前田夕暮

雪中花。水仙の花は寒空のもとで美しさが増し、いま見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音の石仏さまの足もとを純白の花が飾りたてています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産の花です。球根がシルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。伝説では、美少年ナルキッソスが泉の水面にうつる自分の顔に恋をして、毎日見とれているうちに、とうとう入水して命絶え水の精霊になりました。そしてその水辺に白い花が咲いたと言います。その花は少年が泉を覗き込んでいるようにうつむいて咲いていました。中国名もナルキッソスの話をうけつぎ「水の仙人」となりました。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「山の中に 爪もて我の たたき見る

        堅き氷に 日のあたりをり」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「あつさりと 春は来にけり 浅黄空」一茶

〔和歌〕

「関守の うちぬるひまに 年越て

       春は来にけり 逢坂の山」

         中務卿宗良親王・新葉和歌集2

「逢坂関の関守がちょっと寝ている間に年が越えて、東から春はやってきたのであった、逢坂の山に。」

〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

         こさめなかるる はるはきにけり」

・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。

・いしのほとけ=奈良坂の南入口、「千坊坂」(せんぼうのさか)と呼ばれる急な坂道の東側に、西を向いて夕日を顔にうけるように立つ大きな石のお地蔵様。「夕日地蔵」と通称される。室町時代の作。かつて「般若野」と呼ばれた奈良の三昧所(墓地)の迎え地蔵として立てられた。

・歌碑は般若寺境内にある。

〈東京にかへるとて〉

「あをによし ならやまこへて さかるとも

         ゆめにしみえこ わかくさのやま」

・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。

・さかる=離る。遠ざかる。「やまとをも遠くさかりて・・・」(万葉集15

〈東京にかへりて後に〉

「ならやまを さかりしひより あさにけに

         みてらみほとけ おもかげにたつ」

・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。

 「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》329

『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中 

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)

◆文永二年、菩薩、六十五歳

【 西大寺光明真言会(こうみょうしんごんえ①)願文

南部州(なんぶしゅう②)大日本国西大寺、臥雲の沙門(がうんのしゃもん③)叡尊等、至心に合掌して異口同音に、一切の仏宝に帰依し、一切の法宝に帰依し、一切の僧宝に帰依して言(もう)さく。夫れ、不空羂索毘廬遮那大灌頂光明真言は、我が本師釈迦如来、因位の昔、持念の時、無量無数の光明を放ち、三千大千の世界を照らし、一切の魔軍を降伏し、一切の衆生を濟度し、玆の神呪の力を藉(か)りて、純(もっぱ)ら佛果の位を証す。

(つづく)

 光明真言会=光明真言は「不空羂索毘盧遮那仏大灌頂光真言」、略して光言とも。「オン・アボキャベイロシャノウ・マカボダラマニハンドマジンバラ・ハラバリタヤ・ウン」。真言の意味は「不空遍照の大印は宝珠・蓮華・光明諸徳を具有し、これを転じて行者の身に満たさせん」。この真言を受持する者は、生死の重罪を滅し、宿業病障を除き、智恵弁才長寿福楽を得、この真言で加持した土砂を死者に散ずれば離苦得脱するという。

 南部州=南贍部洲(なんせんぶしゅう)。閻浮提(えんぶだい、梵語ジャンブ・ドゥビーパ)の異称。仏教の世界説で、須弥山の南方にあるとされる島(洲)。人間の住む世界。四洲の一つで、閻浮樹の茂る島を意味する。諸仏に出会い仏法を聞くことが出来るのはこの洲のみとされる。人間世界全体、を意味し、現世の称ともなる。。

 臥雲の沙門=臥雲は仕官しないで隠者生活をすること。沙門は梵語シュラマナで、出家して仏道修行する人。鎌倉時代、僧綱制度(官僧の組織)を離れ自由な宗教活動をした遁世僧(とんぜそう)の称となった。

(つづく)

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。

そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは

「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。

さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、

「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

仲川げん」

という文章になっています。

立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。

しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。

*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体

「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」

*この問題を詳しく知りたい方は、

ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。

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2015年2月 4日 (水)

コスモス寺 花だより  2・4

般若寺 水仙花だより

~清浄な 葉のいきほひや 水仙花  岩田涼菟~

〇水仙:≪見ごろ・満開≫

「水仙を 氷の花と いひし人

      その青ざめし 唇(くち)をおもへる」金子薫園

雪中花。水仙の花は寒くなるほど美しさが増します。きびしい寒さのなか見ごろをむかえています。本堂をかこんで立たれる三十三番札所観音石仏の足もとが純白の花で飾られています。花はこれから二月いっぱい咲きつづけます。

水仙は地中海が原産地です。シルクロードを通って中国へはこばれ、さらに遣唐使によって日本へもたらされました。壮大な旅をした花です。名の起こりはギリシャ神話の「ナルキッソス」に由来します。泉の精霊です。それゆえ中国名も「水の仙人」となったそうです。

・花期:12~2月 ・花数:1万本。

・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花のチャフルネス(匂い水仙)。

春咲きコスモス 

・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。

満開は5月から6月上旬ごろ。春咲は夏の暑い日照りや大風がないので花が傷められることがありません。適度な草丈、瑞々しい葉の中で咲く花に、石ぼとけさまがほほえまれます。濃い緑の中のあざやかなピンク・白・赤。秋とはまた違う風情がたのしめます。

・花数・3万本

・種類はセンセーションを主として9品種ていど

〔短歌〕

〈氷湖〉

「磯の田に いく日にかならむ 積みてある

        氷の群れの とくることなし」

          島木赤彦・氷魚

〔俳句〕

「春立(はるたつ)や 菰(こも)もかぶらず 五十年」一茶

・訳:立春を迎え