コスモス寺花だより 2・28
般若寺 水仙花だより
~水仙の 世におくれたる 姿かな 佐々木文山~
〇水仙:≪見ごろ≫
「冷たくも 底びかりする わが春に
さきのこりたる 水仙の花」岡橙里
雪中花。二月も後半に入りずいぶん春めいてきました。梅やわびすけの花が咲きだし、鶯も鳴いています。水仙の花は盛りをこえましたが例年より長もちしています。まだしばらくは咲き続けそうです。
・種類:単弁花の日本水仙(寒咲水仙とも言う)、複弁花の匂い水仙(チャフルネス)。
〇ロウバイ:≪見ごろ≫
〇侘助(わびすけ)、福寿草:≪見ごろ≫
〇梅:≪咲きはじめ≫
〇春咲きコスモス
・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。
満開は5月から6月上旬ごろ。
・本数:3万本
・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として9品種ていど
〔短歌〕
〈家うつり〉
「雨気もつ 春の夕ばえ 洋館の
窓あきたりと 子らのよろこぶ」
岡麓・庭苔
〔俳句〕
「春雨に 大欠(おほあくび)する 美人かな」一茶
・訳:春雨に大きなあくびをする美人だなあ。
〔和歌〕
「又うへも あらじとみえし 富士の嶺の
霞の底に いつなりにけん」
入道前右大臣
「これ以上高いものはあるまいと思えた富士山の頂上が、いつの間に霧の底になってしまったのだろう。」
〔秋艸道人会津八一の奈良愛惜の歌、『鹿鳴集』より〕
〈奈良坂にて〉
「ならさかの いしのほとけの おとかひに
こさめなかるる はるはきにけり」
・いしのほとけ=京街道の千坊坂(せんぼうのさか)に立つ夕日地蔵。室町時代の作。歌碑は般若寺境内にあります。
・おとかひ=おとがい(頤)。下あご。
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。
・さかる=離る。遠ざかる。
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいです。
《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》351
『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
般若寺丈六文殊像開眼供養幷無遮大会願文
◆抑(そもそも)人の世に在るや、只一旦の名利(いったんのみょうり①)に耽着(たんちゃく②)し、更に永劫の沈淪(えいごうのちんりん③)を顧みず。東に趨(はし)り、西に趨(おもむ)き、悪業は山嶽と積み、朝に営(いとな)み、夕に営(いそし)んで善根は涓塵(けんじん④)も無し。矧(いわんや)漁猟(ぎょりょう⑤)を業(なりわい)として、鎮(つね)に山水の生(さんすいのしょう⑥)を殺す。艶色(えんしょく⑦)を衒(てら⑧)ひて、常に衆庶の心を迷わす。加うるに、或いは盲聾(もうろう⑨)の報いを受くるの者あり。或いは疥癩(かいらい⑩)の病に嬰(かか)る者あり。彼の前業(ぜんごう⑪)を謂うに、則ち誹謗大乗(ひぼうだいじょう⑫)の罪あり。泥梨(ないり⑬)を歷(ふ)ると雖も、猶未だ尽きず。其の現報(げんぽう⑭)を見れば、また乞匈孤独(きっきょうこどく⑮)の苦、ただ衣食を望みて他念無し。解脱は何れの日ぞ。流転(るてん⑯)の絆、弥(いよいよ)纏(まと)う。出離(しゅつり⑰)は何(いず)れの期ぞ。牢獄の捷(しょう⑱)、堅く鏁(とざ)す。悲しい哉、悲しい哉。為何(いかんせん)為何(いかんせん)。偏(ひとえ)に文殊の威神(いしん⑲)を仰いで、以て済度(さいど⑳)の導師と為すにはしかじ。
① 一旦の名利=旦は朝。一日。一時の名誉や利養、利益。
② 耽着=心を注ぎ執着すること。
③ 永劫の沈淪=永久に迷界に沈みこむこと。
④ 涓塵=ちり、ほこりのように僅かなこと。
⑤ 漁猟=魚や鳥獣を獲ること。
⑥ 山水の生=野山や河海の生き物、衆生。
⑦ 艶色=つややかな美しい容色。色っぽい顔つき。
⑧ 衒=見せびらかす。売る。歩きながら売る。
⑨ 盲聾=視覚障害者と聴覚障害者。
⑩ 疥癩=疥は疥癬。ヒゼンダニの寄生によって生じる伝染性皮膚病。ひどいかゆみをもつ。癩はハンセン病。ライ菌の感染によって起る慢性の伝染性感染症。ハンセン病は特効薬プロミンにより治癒するようになったが、いまだに社会の一部には無知と偏見による差別が残っている。
⑪ 前業=前世における善悪の業(行為)。
⑫ 誹謗大乗=誹謗正法(ひぼうしょうぼう)、謗法とも。邪見と不信によって仏法(大乗)をそしる者は地獄に落ち、永久にさとりを得ることができないとされる。
*この箇所についてはむつかしい問題を含んでいます。歴史研究者の間では否定的な評価が下されることが多いですが、まだ定まってはいません。
⑬ 泥梨=梵語・ニラヤ。地獄。
⑭ 現報=現世に業因を作って現世にその報いを受けること。
⑮ 乞匈孤独=乞食をなりわいとし、疎外されて孤独なくらしをする人。
⑯ 流転=流転輪廻。衆生が無明の惑いのため、生まれかわり死にかわりして迷界を流転してきわまりないこと。
⑰ 出離=出離生死。
⑱ 捷=「トザシ」と振り仮名あり、「鎖」の間違いか。「捷」ならは、はやい、すみやかの意。
⑲ 威神=つよくおごそかで霊妙ふしぎな働き。たましい、こころ。
⑳ 済度=衆生済度。菩薩が苦海にある衆生を済(すく)い出してさとりの世界に度(わた)らせること。
(つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。