コスモス寺花だより 3・10
般若寺 春の花だより
〇水仙:≪おわり近し≫
〇白梅:≪見ごろ≫
「近づけば 向きあちこちや 梅の花」三橋敏雄
○紅梅:≪咲きはじめ≫
「紅梅の 満を持しをる 蕾かな」下村梅子
〇わびすけ:≪見ごろ≫
○椿:≪咲きはじめ≫
○れんぎょう:≪咲きはじめ≫
〇春咲きコスモス
コスモス苗の植え付けを始めました。
苗は10センチほどで霜よけのシートで覆っています。
・花期:4月末~6月、新しい品種なので春から初夏にかけて咲きます。
満開は5月から6月上旬ごろ。
・本数:3万本
・種類:赤白ピンクのセンセーションを主として12品種
*当寺のHPに紹介されている『弥勒の道プロジェクト』さんが、奈良市のごみ焼却場を中ノ川地区へ移転した場合、古都の景観がいかに壊されるかをシミュレートした写真を公開されました。いちどご覧ください。
それから中川寺跡・弥勒道と焼却場問題に関する詳しく美しいチラシを作成されたので当寺にて配布しています。
〔短歌〕
〈紅梅〉
「紅梅の 一重の花の 色の濃さ
幹細くして 老木(おいき)なりけり」
岡麓・庭苔
〔俳句〕
「湖を 風呂にわかして 夕がすみ」一茶
・訳:湖の水を風呂の湯にわかして、眺める夕霞。
〔和歌〕
「にほひくる 風をしるべに 尋ねばや
梅咲く宿の 花のあるじを」
前大納言実為・新葉和歌集35
「匂ってくる風を道案内にして尋ねたいものだ、梅が咲いている家の花の持ち主を。」
〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕
〈浄瑠璃寺〉
「ならさかを じやうるりでらに こえむひは
みちのまはにに あしあやまちそ」
・ならさか=大和と山城を隔てる東西の丘陵地、奈良山を越える坂道。
・じやうるり=浄瑠璃。薬師如来のお浄土、東方薬師瑠璃光浄土のこと。
・まはに=真埴。赤土。
〈奈良坂にて〉
「ならさかの いしのほとけの おとかひに
こさめなかるる はるはきにけり」
・いしのほとけ=京街道の千坊坂に面して立つ夕日地蔵。
・おとかひ=頤。したあご。
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
・あをによし=青丹よし。一説には奈良山に産出した顔料(絵具)の青丹をならす(馴熟)という言葉に由来するという。奈良、奈良山にかかる枕詞。
・さかる=離る。遠ざかる。
〈東京にかへりて後に〉
「ならやまを さかりしひより あさにけに
みてらみほとけ おもかげにたつ」
・あさにけに=朝に日に。け(日)は朝に対して昼間をいう。
「夢にまで見える若草山」「面影にたつ御寺御仏」はいつまでもたいせつに残しておきたいものです。
《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》358
『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻中
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
◆【法華寺舎利縁起
南都法華寺に仏舎利在り。屡(しばしば)奇異の神変を現し、普く道俗の信心を催す。其の根源を尋ぬれば、一人の禅尼あり。其の名を空如(くうにょ①)と曰う。〔本は高倉局と号す〕天性を敏聡(びんそう②)に禀(う)け、少年より仏道に入る。顕密の学、和漢の才、世の知る所、人の嘆ずる所なり。老年の後、本願(光明皇后)の昔の蹤(あと)を慕い、法華寺安居房(あんごぼう③)に隠居して、偏に事理(じり④)の行業を積む。或る時、当寺長老慈善(じぜん⑤)比丘尼〔本は彼の禅尼の弟子為り〕並びに釈念(しゃくねん⑥)比丘尼等を相伴い、釈迦念仏(しゃかねんぶつ⑦)結縁の為、招提寺に参籠す。其の間に、禅尼の云わく、吾れ東寺の舎利一粒を感得すること有り。試に真偽を決して浄信を取らんと欲す、云々。即ち舎利を石上に安んじて、自ら鉄鎚を執り、力を励まして三たび打つに、敢えて損斫(そんしゃく⑧)せず。五たび打つの時に及んで、砕けて微塵の如し。其の一々の碎(さい⑨)毎に、皆光明を放つ。
① 空如=八条院高倉。(1176‐?)。細川氏の研究によると、母は鳥羽天皇と美福門院の娘である高松院姝子(二条天皇の后)であるが、父は安居院澄憲(唱導の元祖)であり不義の子として生まれた。母の死去もあって、伯母である八条女院(暲子)が近臣の歌人藤原俊成に猶子として預け、成長するに及んで八条院に女房として出仕させた。八条院が建暦元年(1211)に死去したことにより出家したようだ。最初は下醍醐の勝俱胝院(しょうぐていいん)という尼寺に入り、のち法華寺に入寺。
② 敏聡=聡明で俊敏なこと。明敏。
③ 安居房=夏安居に供された僧房か、位置など不明。
④ 事理=事は個別的具体的な事象・現象をいい、理は普遍的な絶対・平等の真理・理法を指す。有為法と無為法。密教では事即理、すなわち消滅差別のありのままの相(すがた)に即して真実があるという(当相即道、即事而真)。
⑤ 慈善=聖恵房慈善(1187‐?)。法華寺中興第一世長老。もと春華門院に宮仕えした女房、春華門院新右衛門督殿と呼ばれた。春華門院昇子(後鳥羽天皇の皇女)の死去をきっかけに出家し法華寺に入り空如の弟子となる。建長元年(1249)に叡尊師から比丘尼戒を受け、法華寺を律宗の尼寺として復興した。
⑥ 釈念=敬妙房。「さい初に心ざしをおなじくして大願をおこし身命をすてて律法興行之尼衆」の十六聖尼に入り、「法華寺第三番長老、文永六年念仏往生」と記載される(『法華滅罪寺縁起』)
⑦ 釈迦念仏=唐招提寺の僧坊東室に祀られた釈迦如来像(清凉寺式)の前で行われる「釈迦念仏会」。解脱貞慶師によって始められた。教団所属をこえて律衆が参集した。
⑧ 損斫=そこない切りはなす。
⑨ 碎=くだけた細片。
(つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。移転推進者はこれだけあっても「なにもないところ」と言うのでしょうか。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。
*仲川げん奈良市長の第一期目の選挙マニフェストは、「大型ハコもの公共事業をゼロベースで見直す」でした。これは窮乏逼迫した奈良市財政の立て直しを目指すものではなかったのでしょうか。何百億円もの巨費を要する「ごみ焼却場移転計画」を見直し、将来の市民負担を軽減する施策を期待させるものだったはずです。
そして二期目の選挙公約、政策ビジョンは
「世界から尊敬される国際観光経済都市NARA」です。
さらに『ならしみんだより9月号』には「二期目の就任にあたって」というあいさつ文で抱負が述べられています。その結びは、
「 新たな4年間では、歴史や文化・自然環境にも恵まれた、奈良市の素晴らしい魅力や資源を最大限に引き出し、世界の中における奈良の価値向上に取り組みたいと思いますので、市民の皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
仲川げん」
という文章になっています。
立派な「お言葉」です。「世界から尊敬される」「世界の中における奈良の価値向上」、と高いこころざしが示され、古都奈良の現在と将来を託す市長にふさわしく、たのもしい限りです。仲川市長には御祝儀として「言行一致」という言葉を御進呈いたします。この政治モラルを守って市政に邁進していただきたいですね。
しかし、歴史ある名刹寺院のすぐそばにゴミ焼却場をつくって、はたして「世界から尊敬される観光都市奈良」と言えるのでしょうか。もう一度、移転が必要かどうかの出発点に戻って考えていただきたいですね。仲川市長さん、おねがいします。
*現候補地へのごみ焼却場建設反対を表明した団体
「奈良市東部地区自治連合協議会」「東里地区自治連合会」「鼓阪校区自治連合会」「青山町自治会」「木津川市当尾区五ヶ寺連合会」「真言律宗三ヶ寺連合会」「奈良市ごみ焼却場建設問題を考える会」
*この問題を詳しく知りたい方は、
ホームページ『奈良市クリーンセンターの課題と新しい奈良の創造』をご覧ください。本計画の問題点が的確にまとめられています。HP「般若寺」にリンクあり。現地の事については『弥勒の道プロジェクト』が大変参考になり、また貴重な動画が見られます。人の歩かないような道を自転車で踏破しておられます。
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