コスモス寺花だより 6・30
〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ寄せられた
瀬戸内寂聴さんの言葉。
「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」
〇初夏咲きコスモス:≪終り近し≫
・花の開花:7月上旬まで
・本数:3万本
・種類:センセーション、シーシェル、サイケ、ピコティ、ソナタ、ベルサイユ、ローズボンボン、スノーホワイト、ビッキー、ピンキーなど
〇紫陽花:≪終り近し≫
〇ヒツジ草、姫スイレン:≪見ごろ≫
〇秋のコスモス(予告)
・花の時期:9月~11月上旬
・種類:30品種
・花数:15万本
・花のピークは9月下旬から10月中旬ごろ
・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は10月17日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。
〔俳句〕
「通し給へ 蚊蠅の如き 僧一人」一茶
・訳:お通し下さいな。蚊や蠅のような僧侶の一人でございますから。
〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕
〈東大寺〉
「おほてらの ひるのおまへに あぶらつきて
ひかりかそけき ともしびのかず」
(大寺の昼の御前に油尽きて 光幽き灯火の数)
〈東京にかへるとて〉
「あをによし ならやまこへて さかるとも
ゆめにしみえこ わかくさのやま」
(青丹よし奈良山越えて離るとも 夢にし見えこ若草の山)
・あをによし=奈良にかかる枕詞。
・さかる=離る。遠ざかる。
*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩の生誕800年、慈眞和尚没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。
《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む・改訂版》461
『西大勅謚興正菩薩行実年譜』 巻下
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷ)
◆諡号綸旨を賜るを謝し奉るの状、
【謹んで菩薩号を稟け奉るの事
右、菩薩の勝号は、大士の極名なり。凡庶(ぼんしょ①)、未だ其の位を蹈(ふ)まざるに、聖主輙(すなわち)此の称を授く。而るに今、興正菩薩は忝(かたじけな)くも、五朝の国師となって陪(したが)い、剰(あまつさ)え薩埵の名字を黷(けが)す。幸いに聖朝の明時(あかとき②)に逢い、忽ちに仏日の光輝を増し、先師の名誉を啻(ただ)翹(あ)ぐるのみに匪(あら)ず。而も亦、遺弟の眉目(びもく③)を開き、弥(いよいよ)大悲闡提の誓心を励まし、禁中(きんちゅう④)万代の宝祚(ほうそ⑤)を祈り奉るべし。仍て稟ける所、件の如し。
遺弟等、誠惶誠恐謹言(せいこうせいきょうきんげん⑥)す。
正安二年閏七月九日 西大寺一門遺弟等謹んで状す。】
① 凡庶=なみの人。凡人。
② 明時=あかつき。暁。
③ 眉目=面目。ほまれ。
④ 禁中=禁闕(きんけつ、皇居・内裏)の中
⑤ 宝祚=天皇の位。皇位。
⑥ 誠惶誠恐謹言=まことにおそれかしこまって謹んでもうす。
(つづく)
《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》
日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。
*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点
1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。
2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。
3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。
❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。
〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので、毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。
中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員の先生方の見識が疑われますね。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。