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2015年10月

2015年10月31日 (土)

コスモス寺花だより 4・31

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

10月は今日で終わります。お天気は上々の行楽日和、奈良も大勢の人でにぎわっています。最近当寺にも外国からの観光客が増えてきました。きのうはベトナムの学生さんが10人ほど、皆さん日本語を勉強しておられます。一昨日は中国の寧波(ニンポー)市の文化交流団の方が20人見えられました。目的は鎌倉時代に寧波から東大寺再建にやってきて般若寺の十三重石塔を建てた伊行末(イギョウマツ)伊行吉(イギョウキチ)の故地を訪ねてでした。日本文化はアジア各国の恩恵を受けてはぐくまれました。奈良は昔から国際都市でした。これからますます交流が盛んになるでしょう。

「コスモスの 花吹きしなひ 立もどり」高濱虚子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「勝声(かちごえ)や 花咲爺(はなさかぢぢ)が 菊の花」一茶

・訳:勝声が響くよ。これぞ花咲かせ爺の菊の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》584

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆但、斯の作法を見るに、財宝衣物に於いて、誰人か貧貯(ひんちょ①)の意を起こすべき哉。是の故に如来教誡の旨を察し、いよいよ無常苦空(むじょうくくう②)の観解(かんげ③)に通達(つうだつ④)せしむ。然れば則ち過去聖霊頓証菩提(かこしょうりょうとんしょうぼだい⑤)、乃至法界平等利益(ないしほうかいびょうどうりやく⑥)、敬って白す。

 

 貧貯=貯えのとぼしいこと。

 無常苦空=諸行無常の苦しみも空であること。

 観解=観念し解了すること。

 通達=事理に通じてさえぎることのないこと。

 過去聖霊頓証菩提=亡くなった聖霊がすみやかに菩提を証さんことを。

 乃至法界平等利益=乃至、法界の一切衆生を平等に利益せんことを。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2015年10月30日 (金)

コスモス寺花だより 10・30

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

今年はほぼ毎日国宝楼門を開くことができました。かつての廻廊門で寺中を貫く京街道に面して立っているこの門が700年の歴史をへて現存しているのは奇跡的です。門をくぐれば正面にはコスモスの花に埋もれた十三重石塔が目に入り一幅の絵を見るようだと言われています。花も南を向いて咲いているのでこちらから見れば大きく豪華に見えます。これから寒くなるのでいつまで続けられるかはわかりませんが、素晴らしい景色を見ていただけるよう努力します。

「コスモスの 花吹きしなひ 立もどり」高濱虚子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「片隅(かたすみ)や 去年勝たる 菊の花」一茶

・訳:片隅に置かれているよ。去年(の品評会で)勝った菊の花が。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》583

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆其の故に、百年蓄うる所の資具も、忽ちに十方に散じ、一期(いちご①)に受用の衣物は悉く他の有するところと成る。身は空しく朽ちるに依りて荒原(こうげん②)の苔となる。神魂(しんこん③)は独り本覚(ほんがく④)の都に帰り、珍宝及び王位は命終の時に臨みても隨わざるものなり。唯だ戒及び施は放逸ならずして今世後世に伴侶たり。此の言、誠なる哉。

 

 一期=一生。

 荒原=荒れ果てた野原。荒野。

 神魂=こころとたましい。精神。

 本覚=現象界を超えた究極のさとり。人間に本来備わっている仏のさとり。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

 

 

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コスモス寺花だより 10・30

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

今年はほぼ毎日国宝楼門を開くことができました。かつての廻廊門で寺中を貫く京街道に面して立っているこの門が700年の歴史をへて現存しているのは奇跡的です。門をくぐれば正面にはコスモスの花に埋もれた十三重石塔が目に入り一幅の絵を見るようだと言われています。花も南を向いて咲いているのでこちらから見れば大きく豪華に見えます。これから寒くなるのでいつまで続けられるかはわかりませんが、素晴らしい景色を見ていただけるよう努力します。

「コスモスの 花吹きしなひ 立もどり」高濱虚子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「片隅(かたすみ)や 去年勝たる 菊の花」一茶

・訳:片隅に置かれているよ。去年(の品評会で)勝った菊の花が。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》583

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆其の故に、百年蓄うる所の資具も、忽ちに十方に散じ、一期(いちご①)に受用の衣物は悉く他の有するところと成る。身は空しく朽ちるに依りて荒原(こうげん②)の苔となる。神魂(しんこん③)は独り本覚(ほんがく④)の都に帰り、珍宝及び王位は命終の時に臨みても隨わざるものなり。唯だ戒及び施は放逸ならずして今世後世に伴侶たり。此の言、誠なる哉。

 

 一期=一生。

 荒原=荒れ果てた野原。荒野。

 神魂=こころとたましい。精神。

 本覚=現象界を超えた究極のさとり。人間に本来備わっている仏のさとり。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

 

 

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2015年10月29日 (木)

コスモス寺花だより 10・29

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

今、奈良国立博物館での正倉院展が大盛況です。博物館のある奈良公園周辺は人であふれかえっています。天平文化の粋を集めた御物はいつの世も人気があります。この時期にコスモスの花が見られるなんて初めてのことです。今年は絶好の天気まわりになっているからでしょう。

「コスモスの 花吹きしなひ 立もどり」高濱虚子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「菊さくや 我に等しき 似せ隠者」一茶

・訳:菊が咲いているよ。私と同じように菊を愛する偽物の隠者。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》582

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆又、跋難陀(ばつなんだ①)死して、衣物は直(あたい)四十万両金に当たる。国王刹利種(せつりしゅ②)及び諸の親里はおのおの収取せんと欲す。仏言(のたまわ)く、俗人は不合(ふごう③)なり。此れ僧物(そうもつ④)に属す〔云々〕。乃ち今、如来の教勅(きょうちょく⑤)に任せ、此の分衣法(ぶんえほう⑥)を致すは、聖霊(しょうりょう⑦)をして行願(ぎょうがん⑧)を円満せしめ奉らんと欲する者也。又仏、布を分かたしむるの意は、衆生をして貧惜(ひんせき⑨)を息(やす)めしめんが為なり。

 

 跋難陀=梵・ウパナンダ。仏弟子の中で悪行で知られた六人の比丘(六群比丘)の一人。その行跡によって種々の制誡のもとを作った僧。仏の涅槃を聞いて歓喜したという。

 刹利種=刹帝利(せつていり・クシャトリア)の種姓。印度の四姓の一つで婆羅門の次に位する王族、士族。

 不合=適合しない。

 僧物=僧伽の所有物。

 教勅=おしえいましめること。

 分衣法=衣を分配する作法。

 聖霊=過去聖霊。興正菩薩のこと。

 行願=修行と誓願。

 貧惜=貧しさを悲しむこと。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

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2015年10月28日 (水)

コスモス寺花だより 10・28

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

昨夜は久しぶりの雨でした。花にも恵みの雨となり、今朝の花はみずみずしさがよみがえり一段とあでやかさが増したようです。

「コスモスの 花吹きしなひ 立もどり」高濱虚子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「朝涼(あさすず)に 菊も一艘(そう) 通りけり」一茶

・訳:朝の涼しい内に出る川船。茄子やささげなどの積荷のほか、菊の花を摘んだ一艘が通ったよ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》581

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆そもそも亡僧の遺財(いざい)においては、仏の言(のたま)わく、仏法には入らず、俗人もあずからず。十方僧を集めて、非時(ひじ②)に准じて僧が施を得る。功徳は十方に遍し〔云々〕。故に陳如(ちんにょ③)林中に涅槃するに、牧牛人、衣物を王に送る。王は法に依り断りて沙門に還す。仏は僧に属すという。

 

 遺財=遺した私財。衣や鉢など。

 非時=日中から翌日の日の出前までの間。僧が食事をしてはならない時。

 陳如=憍陳如、憍陳那とも。仏成道後、最初の弟子。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

 

 

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2015年10月27日 (火)

コスモス寺花だより 10・27

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

秋まっ盛り、今朝も青空が見えています。日中は良いお天気ですが、天気予報では夜には雨となっています。北の地方からは紅葉が終わり雪の便りが届いています。秋は黄昏に似て、移ろいやすくものがなしい季節です。お出かけしてゆく秋を楽しみましょう。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「里犬の 尿(ばり)をかけけり 菊の花」一茶

・訳:里の犬が小便をかけたぞ。菊の花に。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》580

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆そもそも又、白衣(はくい①)の福田(ふくでん②)を失うこと、ああ痛ましいかな。出家の五衆は悲涙を拭(ぬぐ)い葬礼の儀に隨がう。在家の諸輩は哀喪(あいそう③)を含み、結縁の志を運(めぐ)らす。西天沙羅林の二月十五夜(④)に五十二類(ごじゅうにるい⑤)叫喚(きょうかん⑥)の声を想像し、今、西大寺八月五日(⑦)夕の七衆弟子の悲泣の粧を見る。古今の時は異なると雖も、感懐(かんかい⑧)は是れ同じ。

 

 白衣=インドでは一般の人は白い衣服を着るところから、俗人・在家衆をいう。

 福田=福を生ずる田の意。仏や僧などを敬い供養すれば福徳、功徳が得られるところから恭敬福田(敬田)という。

 哀喪=かなしみで喪に服す。

 二月十五夜=釈尊涅槃の夜。

 五十二類=釈尊入滅の際、仏弟子以下、鳥、獣、虫、魚から毒蛇にいたる五十二種の生き物。一切の衆生。

 叫喚=大声で泣き叫ぶこと。

 八月五=正しくは八月二十五日。興正菩薩叡尊師御入滅の日。

 感懐=心を動かされる思い。感慨。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

 

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2015年10月26日 (月)

コスモス寺花だより 10・26

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

けさは寒い朝でした。冬型の気圧配置で一気に秋が深まりました。しかし今年のコスモスはまだ咲いています。まだ秋ですよとがんばっています。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わりました。810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「芭蕉忌に 先(まづ)つつがなし 菊の花」一茶

・訳:芭蕉忌を迎えて、まずは無事、菊の花がめでたく咲いている。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》579

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆爰に病根(びょうこん①)漸く萠(きざ)し、命葉(めいよう②)早くも落つ。化度(けど③)を他方界(たほうかい④)に移すを知ると雖も、猶お忍び難きは閻浮国(えんぶこく⑤)を離別(りべつ⑥)すること。ああ法灯既に消ゆ。何を以って四生(ししょう⑦)の迷闇(めいあん⑧)を照らす。慈舟(じしゅう⑨)は早くも摧(くだ)けたり。誰を憑みて三界の苦海を渡らんや。啻(ただに)緇門の指南(しもんのしなん⑩)に迷うに非ずや。

 

 病根=根深い病気。

 命葉=いのちの葉。

 化度=人々を教え導き、迷いから救うこと。教化、済度。

 他方界=この現実世界以外の世界。仏の浄土。

 閻浮国=閻浮提(梵・ジャンブドゥビーパ)。須弥山の南方にあるとされる島、人間世界、現世。

 離別=離れ別れること。

 四生=生物の生れ方四種類。胎生、卵生、湿生、化生。

 迷闇=迷いの闇。執着の苦しみを生む迷妄をくらやみに例える。

 慈舟=慈悲の舟。

 緇門の指南=僧の教え、指導。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

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2015年10月25日 (日)

コスモス寺花だより 10・25

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

今日も晴れてコスモス日和です。

今、大きな花が盛り上がるように豪華に咲いています。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わってきました。どちらも810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

*奈良公園が大渋滞を起こしています。お車の場合、遠回りでも北へ廻っていただいた方が動きやすいです。

〔俳句〕

「魚どもの 遊びありくや 菊の花」一茶

・訳:魚たちが珍しいと遊び歩くのだろうか、水中には菊の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》578

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆一一の徳行(とくぎょう①)は勝計(しょうけい②)すべからず。之を上古(じょうこ③)に訪(とぶら)うに、上古の様は少なし。これを異朝(いちょう④)に尋ぬるに、異朝にもいまだ聞かず。是れ大権(だいごん⑤)の化現(けげん⑥)を疑うか。又即身の頓証(そくしんのとんしょう⑦)を恠(あや)しむか。誠に色(しき⑧)を直す人に匪ざるものか。世に住すること九十箇年、奈何(なんぞ)釈尊の寿命に恐(かしこま)るものかな。生を利すること(⑨)五十歳、又仏世の事(ぶっせのおうじ⑩)に相似たり。

 

 徳行=すぐれた徳と行い。功徳行。

 勝計=一つ一つ上げて数えること。

 上古=大昔

 異朝=外国。中国のこと。

 大権=大権現。仏菩薩が衆生済度のために、仮の姿をとってこの世にあらわれたものをいう。

 化現=仏菩薩が衆生を救うため姿をかえて現れること。

 即身の頓証=真言密教の即身成仏。この身のままですみやかに悟りを得ること。

 色=形にあらわれた全てのもの。

 生を利する=衆生、群生を利益すること

 仏世の往事=仏陀在世の昔の事。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

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2015年10月24日 (土)

コスモス寺花だより 10・24

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

今朝の空は少し雲が浮かんでいましたが青空です。花は満開状態が続いています。今日もコスモス日和です。

今、大きな花が盛り上がるように豪華に咲いています。参詣の皆さん、だれもが感嘆の声を上げておられます。この、花が大きく咲いた理由には、いろいろ考えられますが、何が決定打かはわかりません。種子の品質、天候、土壌、肥料、植え付け時期、などすべての条件が良かったのでしょうか。今年は最高の花が見られます。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へ入れ替わってきました。どちらも810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色でいずれも色鮮やか。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「鳴(なく)しかも 母や恋しき 小夜ぎぬた」一茶

・訳:鳴く鹿も母が恋しいのだろうか、秋の夜中に砧を打つ音を聞いている。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》573

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆三台九棘(さんだいきゅうきょく①)は、悉く慈心の深きに帰す。華夷(かい②)の朝野(ちょうや③)は彼の化を受け、五畿七道(ごきしちどう④)は其の恩を仰ぐ。東関(とうかん⑤)の境に至り、毗尼木叉(びにもくしゃ⑥)を携え、西海の島に禁戒の浮曩(ふのう⑦)を翫(もてあそ)ぶ。加之(くわうるに)、孝謙天皇の叡慮(えいりょ⑧)に任せ、西大寺の旧基(きゅうき⑨)を再興し、聖徳太子の納受(のうじゅ⑩)に依り天王寺の聖跡(せいせき⑪)を紹隆(しょうりゅう⑫)す。

 

 三台九棘=官吏、公卿を指す。三台は古代中国の官職名。司馬、司徒、司空の三公。九棘は九卿の位置を示すために植えられた棗。

 華夷=中国と外国。都と地方。

 朝野=朝廷と民間。世間、天下。

 五畿七道=日本全国の意。律令制下の地方区分で、五畿は山城、大和、河内、和泉、摂津の国。七道は東海、東山、北陸、山陰、南海、西海の七道。

 東関=関東のこと。

 毗尼木叉=毗尼は梵・ビナヤ。毘奈耶。律蔵。木叉は梵・プラーティモークシャ、波羅提木叉。戒本。

 浮曩=うきぶくろ。

 叡慮=天子のお考えやお気持。

 旧基=もとの伽藍。

 納受=祈願を受け入れること。

 聖跡=聖徳太子の事跡。

 紹隆=昔の人の事業を継承し、さらに盛んにすること。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた松尾剛次先生(山形大学教授:日本中世史・仏教史学)のメッセージ。

「浄瑠璃寺は、その周辺環境とともに、セットで守られるべきです。」

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2015年10月23日 (金)

コスモス寺花だより 10・23

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

花は満開状態が続いています。今日も快晴のコスモス日和です。

奈良では明日から「正倉院展」が始まります。これから古都の秋は最高潮になります。正倉院展までコスモスの花が満開ということは今までになかったことです。ことしは珍しいです。お天気がいいからでしょうか、それとも花をめでる人の心が花を支えているのでしょうか。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主役が「センセーション」から「秋咲大輪美色」へうつり替わってきました。どちらも810センチの大きな花です。背丈は低いのから高いのまで三段になっています。色はピンク色、白、赤の三色ですが、いずれも鮮やかです。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパス」などです。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「姨捨(をばすて)は あれに候と かがし哉」一茶

・訳:姨捨はあちらでございますと案山子(かがし)が立っているよ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》572

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆両部の密壇(りょうぶのみつだん①)に入るの輩は幾多何人(いくたなんにん②)なるや。何ぞ況や一尊一契(いっそんいっけい③)の伝授(でんじゅ④)に於いておや。凡そ日域(にちいき⑤)を化教(けきょう⑥)し、名は唐国(とうこく⑦)に播(あが)る。上は一人の師範(しはん⑧)となり、下は万民の依怙(えこ⑨)たり。爰を以って鳳闕(ほうけつ⑩)は月下に、恭しく十善の頂(じゅうぜんのいただき⑪)を傾け、仙洞(せんとう⑫)は風前に、屢(しばしば)万乗(ばんじょう⑬)の姿を屈す。すべて龍楼象薗(りゅうろうしょうえん⑭)、皆な戒徳の高きを仰ぐ。

 

 両部の密壇=金剛界と胎蔵界の灌頂壇

 幾多何人=あまた多くの人数。

 一尊一契=一仏尊、一印契(いちいんげい)の修法。

 伝授=修法を授け伝えること。

 日域=日本。

 化教=教化。

 唐国=からの国、中国。

 師範=教え導く人、手本

 依怙=頼りとなる人。

 鳳闕=宮城(きゅうじょう)。天皇。

 十善の頂=十善の君(十善戒をまもり仏道にはげむ)である天子の頭(こうべ)。

 仙洞=太政天皇(治天の君、院)の御所(ごしょ)。上皇。

 万乗=一万台の車。古代中国で一万両の兵車をもつ天子をいう。

 龍楼象薗=龍象は高徳の人物をたとえて云う。龍楼は宮殿の楼門、皇太子の異称。象薗は不詳。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月22日 (木)

コスモス寺花だより 10・22

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

花は満開状態が続いています。今日も快晴のコスモス日和です。

今年のコスモスは近年になく美しい花を咲かせています。その理由は夏の終わりに雨が多かったのと、何よりも台風が来なかったからでしょう。おかげさまで人も満開、毎日静かなにぎわいを見せています。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力は背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、ダズラ、ラディアンスに類別されます。珍しい品種は花数が少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」などが咲いています。

秋桜の最後を飾るのは「秋咲大輪美色」という種類です。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク(満開)は10月中旬~下旬。

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「先の人も 何も諷(うた)はぬ 秋の原」一茶

・訳:先人たちもどんな風にも歌わなかった秋の原。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》571

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

◆三密四曼(さんみつしまん①)の教風は、遠く扶桑(ふそう②)の国に扇(あお)ぐ。之に依り七衆の軌則(しちしゅうのきそく③)も斯の時に盛んなり。三聚浄戒(さんじゅじょうかい④)は我が朝(わがちょう⑤)に弘まり、既に大苾蒭戒(だいびっしゅかい⑥)を受くるの類は其の数を知らず。何ぞ況や五戒八戒(ごかいはちかい⑦)の結縁に於いてや。

 

 三密四曼=真言密教。三密は身口意の三業。仏の身体と言語と心によってなされる不思議なはたらき。四曼は四種の曼荼羅(大曼荼羅、三昧耶曼荼羅、法曼荼羅、羯磨曼荼羅)

 扶桑=中国で太陽の出る東海の中にあると言われた葉が桑の木に似た神木。また、その地の称。日本のこと。

 七衆の軌則=仏教僧伽を構成する七衆(比丘、比丘尼、沙弥、沙弥尼、式叉摩那、優婆夷、優婆塞)の戒律。

 三聚浄戒=菩薩戒である三種戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)

 我が朝=我が国。日本。

 大苾蒭戒=比丘の守るべき大戒、具足戒(二百五十戒)

 五戒八戒=在家衆の守る五戒(不殺、不盗、不淫、不妄語、不飲酒)と八斎戒(五戒に化粧や歌舞に接しない、高く大きな床で寝ない、昼を過ぎて食事しない、の三戒を加える)

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月21日 (水)

コスモス寺花だより 10・21

〇コスモス:≪満開つづく≫ 

花は満開状態が続いています。今日も快晴のコスモス日和です。

まだ苗が残っているので植え付けをしています。これは11月のラストシーンを演じる花たちです。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。主力の背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、ダズラ、ラディアンスに類別されます。珍しい品種の花は少なくなってきましたが、まだ見られます。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲いています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク(満開)は10月中旬~下旬。

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「今迄は 踏れて居たに 花野かな」一茶

・訳:今まで踏みつけられていたのに、秋になって花が咲く野となったことだよ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》570

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆爰に過去聖霊の思円尊上人(しえんそんしょうにん①)は、闡提の悲願(せんだいのひがん②)を発し、一切衆生を憐愍(れんびん③)し、菩薩の大行(ぼさつのたいぎょう④)を企つ。八万法蔵(はちまんほうぞう⑤)を学ぶに依り、絶えたる跡を紹(つ)ぎ、廃れたる跡を興す。五篇七聚(ごひんしちじゅ⑥)の戒香(かいこう⑦)は、普(あまね)く若木の卿(わかぎのけい⑧)を薫(くん⑨)ず。化教(けきょう⑩)を崇(あが)め、制教(せいきょう⑪)を主(とうと)ぶ。

 

 思円尊上人=思円は房名、仮名(けみょう)。尊は叡尊の略で、法名、実名(じつみょう)。上人は智徳を備え、仏道の修行に励み深大な慈悲心をそなえている高僧。とくに官僧を離脱して宗教活動をした遁世僧に与えられる尊称。

 闡提の悲願=一闡提は梵・イッチャンティカの音写で断善根、信不具足と訳。成仏の素質、縁を欠くものをいう。大乗の行者である菩薩は大慈悲故に、衆生済度のため不成仏を誓う。

 憐愍=あわれむこと。

 菩薩の大行=衆生済度の大いなる菩薩行。

 八万法蔵=八万は多数。法蔵は仏の教えの蔵。八万四千の法門。

 五篇七聚=具足戒を犯戒の罪の軽重により類別したもの。波羅夷、僧残、波逸提、波羅提提舎尼、突吉羅の五篇に偸蘭遮と悪説を加えて七聚とする。

 戒香=戒を受持することを香にたとえる。

 若木の卿=若い人材。

 薫=徳の力で善導、感化する。

 化教=律宗の教相判釈で、精神的素養に応じて衆生を教化する教え。禅定と智慧の二学をいう。

 制教=身口意の三業の過誤を制止する教法のこと。律をまもる教え。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

 

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2015年10月20日 (火)

コスモス寺花だより 10・20

〇コスモス:≪満開です≫ 

花は満開状態が続いています。毎日がコスモス日和で、平日でも多からず少なからずの静かなにぎわいを見せています。花をめで花とたわむれる人の様子はなごやかです。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク(満開)は10月中旬~下旬。

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「稲妻や 一もくさんに 善光寺」一茶

・訳:稲妻が光ったよ。一目散に向かって行く、先は善光寺。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》569

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩分衣表白』(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆敬って現前(げんぜん①)の大衆に白(もう)して言(もう)さく。夫れおもんみるに、如来の影(かげ②)は三菩提(さんぼだい③)の月なるも、必ずや憍恣厭怠(きょうしえんたい④)の夜雲(やうん)に隠れる。羅漢(らかん⑤)は八解脱(はちげだつ⑥)の華を翫(もてあそ)ぶも、終(つい)に灰身滅智(かいしんめっち⑦)の夕煙を伴う。上聖(じょうせい⑧)は猶お有為の相(ういのそう⑨)を示し、下界(げかい⑩)は誰(たれ)か無常の理(ことわり)を免れんや。

 

 現前=目の前。まのあたり。

 影=光のこと。

 三菩提=阿耨多羅三檬藐三菩提の略。完全な悟り。

 憍恣厭怠=おごり気ままなこと、飽きて怠けること。

 羅漢=阿羅漢の略。小乗の最高のさとりに達した聖者。

 八解脱=八背捨(はちはいしゃ)。山界の貪愛を遠離する八つの出世間の禅定。

 灰身滅智=死して身体は灰となり知恵も滅すること。

 上聖=天上界の聖人。

 有為の相=絶えず生滅して無常な存在のすがた。

 下界=欲界、とくに人間界。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月19日 (月)

コスモス寺花だより 10・19

〇コスモス:≪満開です≫ 

花は満開状態が続いています。今日も晴れてコスモス日和になりそうです。10月に入って参詣の人出も順調にのびて、平日でもお祭りのようなにぎわいを見せています。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク(満開)は10月中旬~下旬。

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「露の世ハ 露の世ながら さりながら」一茶

・訳:露のようにはかない身の上だと思ってはいるが、しかしそうは言っても。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》568

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●在々処々 如影隨形 奉助化儀 二利円満

〔在々所々(ざいざいしょしょ①)にて影の如く形に随(したが)う。化儀(けぎ②)を助け奉り、二利(にり③)円満せんことを。〕

 

 在々所々=ここかしこ。

 化儀=仏が衆生を教導し感化する形式、方法。

 二利=上求菩提下化衆生。自利利他。興法利生。

(以上にて略頌は終り)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

 

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2015年10月18日 (日)

コスモス寺花だより 10・18

〇コスモス:≪満開です≫ 

今日の催し《コスモス花あかり》はマリンバ演奏です。咲き誇るコスモスの花の中、音と灯かりで秋の風情をお楽しみください。あかりは午後5時から7時まで。演奏は5時半からです。

「コスモスを 離れし蝶に 谿(たに)深し」水原秋桜子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

・開花時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク(満開)は10月中旬~下旬。

《秘仏公開》白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

《御朱印》絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉〈白鳳仏〉〈天平仏〉など五種類あります。

〔俳句〕

「我庵(いほ)は 露の玉さへ いびつ也」一茶

・訳:わが住む庵では丸い露の玉さえいびつだなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》567

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●頂礼菩薩 道体遺身 生前御願 一々成就

〔菩薩の道体遺身(どうたいいしん①)を頂礼す。生前の御願(ごがん②)が一々成就せんことを。〕

 

 道体遺身=興正菩薩が仏道を体現された身体の遺れるお姿、すなわち肖像。

 生前の御願=興法利生の誓願。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

 

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2015年10月17日 (土)

コスモス寺花だより 10・17

〇コスモス:≪満開です≫ 

今日は《コスモス花あかり》があります。咲き誇るコスモスの花の中で、行燈の明りに照らされてヴィオラとピアノの演奏会があります。あかりは午後5時から7時まで。演奏は5時半からです。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

御朱印が人気です。絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉など五種類があります。

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。

〔俳句〕

「身の上の 露ともしらで ほたへけり」一茶

・訳:身の上ははかない露に等しいのに、いい気になってつけ上がっているよ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》566

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●影像瞻礼頌文

〔影像(えいぞう①)瞻礼(せんれい②)頌文(じゅぶん③)〕

 

 影像=興正菩薩叡尊上人が八十歳の時、弟子たちが造った寿像。大仏師善春作、重要文化財。西大寺の愛染堂にまつられている。

 瞻礼=仰ぎ見て礼拝すること。

 頌文=韻文体の詩句。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月16日 (金)

コスモス寺花だより 10・12

〇コスモス:≪満開です≫ 

今朝のお天気は、うす曇りの中から日ざしが見えています。秋晴れが続きそうでコスモス日和です。今が一番すごしやすい季節です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされている天平薬師仏が拝めます。

御朱印が人気です。絵入りの〈ぼさつの寺めぐり〉など五種類があります。

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。

〔俳句〕

「世〔の〕中よ でかい露から 先おつる」一茶

・訳:世の中の常だよ。でかい露から先ず落ちるのだ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●廻施一切廻真海 皆願隨修得菩提 建武二七二十五 遺孫苾蒭信尊記

(四)

〔一切(いっさい①)に廻施(えせ②)し真海(しんかい③)に廻らす。皆な隨修(ずいしゅう④)して菩提を得んことを願う。建武四年七月二十五日。遺孫苾蒭(いそんびっしゅ⑤)信尊(しんそん)記す。〕

 

 一切=一切衆生。

 廻施=己が功徳を衆生に施与する。

 真海=仏界、仏土。

 隨修=教えに随って修行すること。

 遺孫苾蒭=孫弟子である比丘。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月15日 (木)

コスモス寺花だより 10・13

〇コスモス:≪満開です≫ 

今日も秋晴れで絶好のコスモス日和。今年のコスモスはお天気に恵まれています。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「玉になれ 大玉になれ けさの露」一茶

・訳:まるい玉になれ、大玉になれ、今朝の露。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》564

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●持彼教者多散滅 哀願遺法至三会 我今畧讃菩薩(薩埵)行 於徳高山一塵数

〔彼の教えを持する者も、多くは散滅す。遺法の三会(さんね①)に至らんことを哀願し、我今、菩薩行を徳高の山において畧讃すること一塵(いちじん②)の数。〕

 

 三会=弥勒菩薩の龍華三会。

 一塵=一つの塵。転じて、きわめてこまかいこと、わずかなこと。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月14日 (水)

コスモス寺花だより 10・14

〇コスモス:≪満開です≫ 

秋晴れのもと、コスモスの花は透き通るような花びらが風にそよいでいます。

コスモスをコスモスらしくするは風、という俳句にぴったりの季節です。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「いざさらば 露と答(こたへ)よ 合点(がつてん)か」一茶

・訳:いざさらば。露と答えなよ。合点したか。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》564

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●如是福智利楽人 男女得益宝籌余 興正法已一百二 世眼已閉六八廻

〔是の如く福智(ふくち①)をもって人を利楽(りらく②)す。男女は宝籌(ほうちゅう③)余にて得益す。正法を興して(④)已に一百二年、世眼已に閉じて(⑤)六八廻り(⑥)〕

 

 福智=福徳と智慧。菩薩が積む自利利他の善行による福徳と、悟りのための智慧。

 利楽=利益と安楽。衆生にそれを与えしあわせにすること。

 宝籌=籌は数を数える棒。布薩などで人数を数えるのに用いる。

 正法を興して=嘉禎二年(一二三六)に自誓受戒をして正式の比丘が誕生したこと。

 世眼已に閉じて=正応三年(一二九〇)に入寂されたこと。

 六八廻り=四十八年。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月13日 (火)

コスモス寺花だより 10・13

〇コスモス:≪満開です≫ 

秋冷、秋らしい気候になりコスモス(秋桜)は今を盛りと咲き誇っています。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした花姿。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「白露や 茶腹で越(こえ)る うつの山」一茶

・訳:白露がおりているよ。茶腹で不風流に越える宇津の山。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》563

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●撰集顕密諸藉典 再興聖跡建寺塔 治提橋梁理国政 門輩諸方利群生

〔顕密の諸藉典(けんみつのしょせきてん①)を撰集し、聖跡(せいせき②)を再興し寺塔を建つ。堤橋梁(つつみきょうりょう③)を治め国の政を理(り④)し、門輩は諸方に群生(ぐんじょう⑤)を利す。〕

 

 顕密諸藉典=顕教である戒律と真言密教の典籍。興正菩薩は戒律の書籍に関しては梵網経の注釈をはじめ多くをものされたが、密教の分野では次第類に限られる。

 聖跡=由緒ある名刹寺院。

 堤橋梁=築堤と架橋。橋は宇治橋の修造、堤も宇治川か。

 理=おさめる。

 門輩=一門の弟子たち。

 群生=衆生。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月12日 (月)

コスモス寺花だより 10・12

〇コスモス:≪満開です≫ 

今日のお天気は曇り時々晴れだそうです。日に日に秋が深まって行きます。

コスモス(秋桜)はいよいよ満開になりました。まだ蕾が残っている枝がたくさんあるので見ごろは長く続きそうです。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感あるかっちりとした花姿。

(休日は駐車場が混み、お昼前後は入場できない時間帯もあるかと思います。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「越後馬 夜霧払(はらひ)て 通りけり」一茶

・訳:越後から来た馬が夜霧を払って通って行く。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=動物のつの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》562

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●御嵯峨等五朝師 貴賎受衣戒印等 興施菩薩七衆行 開顕三学相因致

              (言) (絶)

〔後嵯峨等の五朝(ごさがとうのごちょう①)の師たり。貴賎(きせん②)に衣戒印言等(いかいいんごん③)を受(授ヵ)く。絶えたる菩薩七衆(ぼさつしちしゅう④)の行を興す。三学の相因致(そういんち⑤)を開顕す。〕

 

 後嵯峨等五朝=御嵯峨天皇、後深草天皇、亀山天皇、後宇多天皇、伏見天皇の五代の帝。

 貴賎=上は天皇から下は一般庶民まで、地位の上下なく平等に。

 衣戒印言=衣はころも。三衣また衣鉢。戒は菩薩戒。印言は密教の教え。

 菩薩七衆=仏教を志す者は、それぞれの立場での菩薩戒を受けて僧伽(そうぎゃ)の構成をする一員となる。七衆は出家衆(比丘、比丘尼、沙弥、沙弥尼、式叉摩那)と在家衆(優婆塞、優婆夷)の構成。

 相因致=相はすがた、しるし。様相。因は原因。致はおもむき、ありさま、意趣。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

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2015年10月11日 (日)

コスモス寺花だより 10・11

〇コスモス:≪見ごろ・7~8分咲き≫ 

コスモス(秋桜)は満開に近づいています。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

秋桜の最後を飾る「秋咲大輪美色」という種類も咲き出しています。この花は遅咲きで大輪、存在感のあるかっちりとした姿。コスモスの花は満開の一歩手前がいちばんきれいです。

(休日は駐車場が混みますので有料駐車券を発行します。ご協力お願いします。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「露ちるや むさい此世に 用なしと」一茶

・訳:霧が散って行くよ。この世で役にたたないものと。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者は動物の角がそむき離れているのと同じで間違ったあり方だ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》561

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●秘密瑜伽薫習行 四万二千二百八 禁断殺生大慈行 一千三百六十所

〔秘密瑜伽の薫習行(ひみつゆがのくんじゅうぎょう①)は、四万二千二百八座。殺生を禁断の大慈行(だいじぎょう②)は一千三百六十所。〕

 

 秘密瑜伽の薫習行=密教の諸の修法、行法。薫習は香気が衣服にしみ込み香りを発するように、修法行法を積み重ねると人の心に影響を及ぼすことを言う。

 大慈行=大慈悲の行。殺生を禁ずれば生類への慈悲行となる。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月10日 (土)

コスモス寺花だより 10・10

〇コスモス:≪見ごろ・7~8分咲き≫ 

秋たけなわ、晴天つづきでコスモス(秋桜)は満開に近づいています。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

コスモスの花は満開の一歩手前がいちばんきれいです。今がおすすめです。

(休日は駐車場が混みますので有料駐車券を発行します。ご協力お願いします。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスの 揺れ返すとき 色乱れ」稲畑汀子

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「露はらり はらり大事の うき世哉」一茶

・訳:露がはらりはらりと散って行く。一大事の憂世だなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞なり。

〔このような修行者のあり方は動物の角がそむき離れているのと同じだ。〕」

・学=まなび。

・行=おこない。

・角=つの。

・法=おしえ、仏法。

・大乗=大きな乗り物。大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教え。

・小乗=小さな乗り物。自分の悟りを求めるだけの教え。

・菩薩=利他(衆生利益)のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自利(自分の悟り)のためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》560

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●授菩薩戒利人衆 九万七千七百十 別受僧尼八百余 入壇受明七十二

〔菩薩戒(ぼさつかい①)を授けて人を利するところの衆は九万七千七百十人。別受(べつじゅ②)の僧尼は八百余人。受明(じゅみょう③)に入壇せしめること七十二たび。〕

 

 菩薩戒=大乗の菩薩が受持すべき戒。止悪・修善・利他の三つの面を持つ。梵網経による戒で僧俗に共通する。

 別受=三聚浄戒(さんじゅじょうかい)の摂律儀戒のみを受ける。単受とも。四分律に規定の具足戒を受ける。比丘は二百五十戒、比丘尼は三百四十八戒。

 受明=受明灌頂。真言行者として深く密教を学ぼうとする灌頂で、これに依って弟子の資格を得るので弟子灌頂とも言う。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では主要伽藍である「灌頂堂」(かんじょうどう)の指図(さしず、図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月 9日 (金)

コスモス寺花だより 10・9

〇コスモス:≪見ごろ・7~8分咲き≫ 

晴天つづきでコスモス(秋桜)は満開に近づきました。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲いています。

コスモスの花は満開の一歩手前がいちばんきれいです。今がおすすめです。

(週末三連休は混みあいます。駐車場は満車になるおそれがあります。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「白露に ざぶとふみ込む 烏哉」一茶

・訳:しらつゆがおりているよ。ざぶと踏み込むのは烏だなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学と行が角(かく)を乖(そむ)くこと。

法は大乗にして行いは小乗。詞(ことば)は菩薩にして心は声聞(しょうもん)なり。

(このようなあり方は動物の角がそむき離れているのと同じだ。)」

・学=仏教の学問。

・行=仏道修行。菩薩の行い

・法=仏法。学ぶべき仏の教え、人に説く仏の教え。

・大乗=大乗仏教。一切衆生が仏になり救われる教えを大きな乗り物に例える。すぐれた教え。

・小乗=自分の悟りのために学び修行する教え。劣った教え。

・菩薩=衆生利益のために仏道修行する人。大乗の行者。

・声聞=自分の悟りのためだけに修行する人。小乗の行者。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》559

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●惣計法壽九十年 興法利人五十五 開演三学正法日 一万八百八十六

〔惣ての計数は、法寿(ほうじゅ①)は九十年。法を興し人を利すこと、五十五年。三学(さんがく②)の正法を開演する日、一万八百八十六日。〕

 

 法寿=出家得道してからの年数。法﨟。ここは保寿(ほうじゅ)の間違いか。寿命を保つこと。

 三学=戒学、禅定学、慧学。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では主要伽藍である「灌頂堂」(かんじょうどう)の指図(さしず、図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

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2015年10月 8日 (木)

コスモス寺花だより 10・8

〇コスモス:≪見ごろ・5~7分咲き≫ 

コスモス(秋桜)が見ごろになってきました。般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。

コスモスの花は満開の一歩手前が見ごろです。咲き終わった花ガラが少なくてつぼみが残っている状態が一番きれい。今がおすすめです。

(週末三連休は混みあいます。駐車場は満車になるおそれがあります。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「白露は 康(やす)よりどのの 宝かな」一茶

・訳:はかなく消えてしまうがうつくしく結ぶ白露よ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》558

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●起立石塔聚碎身 同年中冬二十七 没後十一菩薩号 同皇帝時正安二

〔石塔(せきとう①)を起立し砕身(さいしん②)を聚む。同年中冬(ちゅうとう③)二十七日。没後十一年にして菩薩号(ぼさつごう④)をたまう。同皇帝(どうこうてい⑤)の時、正安二年。〕

 

 石塔=西大寺奥ノ院(体性院)に現存する大五輪石塔。

 砕身=石塔の立つ場所で荼毘に付されたので、遺骨を拾い集め何らかの舎利容器に納め塔内部又は塔の下に納められたと推測される。

 中冬=仲冬。陰暦の十一月。

 菩薩号=興正菩薩号。「正法を興隆」したと云う意味の菩薩号。

 同皇帝=後伏見天皇。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では主要伽藍である「灌頂堂」(かんじょうどう)の指図(さしず、図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月 7日 (水)

コスモス寺花だより 10・7

〇コスモス:≪見ごろ・5~7分咲き≫ 

コスモス(秋桜)が見ごろになってきました。般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。

コスモスの花は満開の一歩手前が見ごろです。咲き終わった花ガラが少なくてつぼみが残っている状態が一番きれい。今がおすすめです。

(週末三連休は混みあいます。駐車場は満車になるおそれがあります。)

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りされた天平薬師仏が仲良く並んで参詣の皆様をお迎えしておられます。

《ぼさつの寺めぐり》など御朱印(5種類)が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「露の世の 露の中にて けんくわ哉」一茶

・訳:はかなく消えてしまう露のような世の中、其の中で喧嘩しているとはなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》557

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●雲外天楽降華等 奇瑞叵言誰可量 道俗號慟亡慈父 哀哉迷倫其奈何

〔雲外(うんがい①)より天の楽あり華を降す等。奇瑞(きずい②)は言うべからず、誰か量(はか)る可し。道俗、慈父を亡くするを號慟(こうどう③)す。哀れなるかな、倫(りん④)に迷えること、其れ奈何(いかん)せん。〕

 

 雲外=雲の上。はるかかなたの空。

 奇瑞=めでたいことの予兆に現れる不思議な現象。

 號慟=悲しくて泣き叫ぶ。

 倫=人のふみ守るべき道。人倫。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では主要伽藍である「灌頂堂」(かんじょうどう)の指図(さしず、図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

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2015年10月 6日 (火)

コスモス寺花だより 10・6

〇コスモス:≪見ごろ・5~6分咲き≫ 

コスモス(秋桜)が見ごろになってきました。花にはおだやかなお天気が何よりです。

般若寺のコスモスは多種多彩。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、黄色の「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りの天平薬師仏が仲良く並んでお出迎えしておられます。

そして《ぼさつの寺めぐり》など御朱印が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「おく露や おのおの翌(あす)の 御用心」一茶

・訳:露がおりたよ、おのおの方、明日の身の上にご用心あれ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》556

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●造宇治川橋石塔 八十六歳弘安九 入滅遷化満九十 伏見治天正応三

(供宇川)

〔宇治川に橋、石塔(はし、せきとう①)を造る。八十六歳、弘安九。入滅遷化せらる、満九十。伏見(ふしみ②)の治天、正応三。〕

 

 橋、石塔=宇治川にかかる大橋と中洲(塔の島)に立つ本邦随一の十三重石塔。

 伏見=伏見天皇。後深草天皇の子息。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では主要伽藍である「灌頂堂」(かんじょうどう)の指図(さしず、図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた安本義正先生(京都文教短期大学学長)のメッセージ。

「歴史を語る貴重な中川寺跡の破壊を許してはなりません。美しい自然と歴史・文化の宝庫の中に生かされている私たちは、その自然と歴史・文化を後世に伝える責任があります。」

 

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2015年10月 5日 (月)

コスモス寺花だより 10・5

〇コスモス:≪見ごろ・5~6分咲き≫ 

コスモス(秋桜)が見ごろになってきました。般若寺のコスモスは多種多彩です。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。満開は1010日頃からになると思われますが、今年は台風が多発しています。お早めにお出かけください。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りの天平薬師仏が仲良く並んでお出迎えしておられます。

そして《ぼさつの寺めぐり》など御朱印が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〔俳句〕

「白露に 気の付(つく)年と 成にけり」一茶

・訳:白露が結んだことに気がつく年齢になったものだなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》555

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●宝生護国長日供 年八十三弘安六 補任天王破網代 八十四歳弘安七

〔宝生護国(ほうしょうごこく①)にて長日供(ちょうにっく②)する。年八十三、弘安六。天王(てんのう③)に補任(ぶにん④)せらる。網代(あじろ⑤)を破す。八十四歳、弘安七。〕

 

 宝生護国=西大寺宝生護国院。本照房性瑜が長老となる。この年二月上棟、十二月、亀山上皇の行幸あり。

 長日供=長期間毎日仏を供養すること。

 天王=四天王寺。

 補任=職に補し官に任ずること。四天王寺別当に任ぜられる。代々の別当は天台宗僧であった。

 網代=川で魚を捕る道具。網代を撤去させて宇治川を殺生禁断とした。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代実範上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張る建設策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた小嶋一郎先生(京都感動案内社代表役員、仏像ソムリエ)のメッセージ

「〈守るは難く、壊すは易し。〉千年の保全を、数十年の開発の犠牲にしてしまうのは、誠にもって忍び難いことです。先人の守り伝えてきた日本の原風景を、開発という名の津波にさらすことは出来ません。」

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2015年10月 4日 (日)

コスモス寺花だより 10・4

〇コスモス:≪見ごろ・5~6分咲き≫ 

コスモス(秋桜)がようやく見ごろとなってきました。般若寺のコスモスは多種多彩です。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。満開は1010日頃からになると思われますが、今年は台風が多発しています。お早めにお出かけください。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りの天平薬師仏が仲良く並んでお出迎えしておられます。

そして《ぼさつの寺めぐり》など御朱印が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〇紫苑(しおん):≪満開過ぎ≫

〔俳句〕

「ちち母は 夜霧うけよと なでやせめ」一茶

・訳:父や母が冷たい夜露を受けさせるために撫でて子どもを育てたのだろうか。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*今日は真言律宗総本山西大寺の「光明真言土砂加持大法会」(こうみょうしんごんどしゃかじだいほうえ)のお中日です。鎌倉時代に宗祖興正菩薩叡尊上人によってはじめられた、奈良では最大規模の伝統ある法要です。西大寺の本願である称徳天皇をはじめ、有縁の僧俗の追福を祈り、「光明真言」という短いご真言を三日間唱え昼夜不断に「お砂」を加持します。このお砂は先祖供養だけでなく現世の諸願を成就させてくれるという霊験のある「聖なるお砂」です。ご参詣してお砂のおかげをこうむってください。昼の法会は午後2時からです。夜は午後7時からです。早朝もありますが午前4時。5日の昼が結願(正午より)。

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》554

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●進経天照内外宮 満八十歳弘安三 異朝飜軍神風現 八十一歳弘安四

〔経(きょう①)を天照(てんしょう②)の内外宮に進ず。満八十歳、弘安三。異朝(いちょう③)、軍を飜すに神風(しんぷう④)現る。〕

 

 経=一切経。『行実年譜』には「勅願によって徒僧百余人を率いて伊勢に参詣し内外両宮に一切経各一蔵を安鎮し、異賊退散、国家安全、正法久住、利益無尽を祈り経を転読供養された。」と記載される。

 天照=天照大神。内宮の御神体。ここでは伊勢神宮を指す。

 異朝=元国(蒙古)。

 神風=弘安の役。菩薩は八百余人の比丘僧を率いて石清水八幡で愛染明王を祀り外敵退散の祈祷をされたところ、明王所持の鏑矢が西にむかって飛び去り、その時刻に北九州に猛風が起こり博多湾上の敵の兵船が海の藻屑と消えたことをいう。

(前日と同文)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員の先生方の見識が疑われますね。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた小嶋一郎先生(京都感動案内社代表役員、仏像ソムリエ)のメッセージ

「〈守るは難く、壊すは易し。〉千年の保全を、数十年の開発の犠牲にしてしまうのは、誠にもって忍び難いことです。先人の守り伝えてきた日本の原風景を、開発という名の津波にさらすことは出来ません。」

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2015年10月 3日 (土)

コスモス寺花だより 10・3

〇コスモス:≪5~6分咲き≫ 

今日はようやく秋晴れが戻りそうです。天候異変が開花に影響していますが、漸く見ごろとなってきました。まだ蕾がたくさんあるので11月まで見ごろは続きそうです。

古都奈良の秋を彩るコスモスは多種多彩です。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花。ピンキー、ホワイト、レッド、ダズラ、ラディアンスに類別されます。いま珍しい品種の花も咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。満開は1010日頃からになると思われますが、今年は台風が多発しています。お早めにお出かけください。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りの天平薬師仏が仲良く並んでお出迎えしておられます。

そして《ぼさつの寺めぐり》など御朱印が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〇紫苑(しおん):≪満開過ぎ≫

〔俳句〕

「生残る 我にかかるや 草の露」一茶

・訳:父に死なれて生き残ったわれにふりかかって、草の露が。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》554

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

●進経天照内外宮 満八十歳弘安三 異朝飜軍神風現 八十一歳弘安四

〔経(きょう①)を天照(てんしょう②)の内外宮に進ず。満八十歳、弘安三。異朝(いちょう③)、軍を飜すに神風(しんぷう④)現る。〕

 

 経=一切経。『行実年譜』には「勅願によって徒僧百余人を率いて伊勢に参詣し内外両宮に一切経各一蔵を安鎮し、異賊退散、国家安全、正法久住、利益無尽を祈り経を転読供養された。」と記載される。

 天照=天照大神。内宮の御神体。ここでは伊勢神宮を指す。

 異朝=元国(蒙古)。

 神風=弘安の役。菩薩は八百余人の比丘僧を率いて石清水八幡で愛染明王を祀り外敵降伏の祈祷をされたところ、明王所持の鏑矢が西にむかって飛び去り、その時刻に北九州に猛風が起こり博多湾上の敵の兵船が海の藻屑と消えたことをいう。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

日本全国の古都奈良を愛する人たちは、奈良市クリーンセンター(ごみ焼却場)を「中ノ川・東鳴川」地区に建設することに反対しています。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の不空羂索観音さまです。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

*〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉へ賛同を寄せられた小嶋一郎先生(京都感動案内社代表役員、仏像ソムリエ)のメッセージ

「〈守るは難く、壊すは易し。〉千年の保全を、数十年の開発の犠牲にしてしまうのは、誠にもって忍び難いことです。先人の守り伝えてきた日本の原風景を、開発という名の津波にさらすことは出来ません。」

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2015年10月 2日 (金)

コスモス寺花だより 10・2

〇コスモス:≪5分咲き≫ 

昨夜の雨は台風並みの低気圧がもたらしたもので少し風も吹いたようです。背の高いコスモスは傾いています。倒れないように支柱に固定してあげたいと思います。

古都奈良の秋を彩るのはコスモスです。背が高い「センセーション」は810センチの大きな花です。ここ数日で花数がずいぶん増えました。いま珍しい品種の花が咲いています。花の中心から複弁を出す「サイケ」、ピンク色の花びらに白や赤で縁取りを付ける「ピコティ」、菊かダリアのような豪華な複弁花である「ダブルクリック ローズボンボン」、花弁が筒状になる「シーシェル」、「イエローガーデン」「キャンパスシリーズ」も咲きはじめました。満開は1010日頃からになると思われますが、今年は台風多発していますからお早めにお出でください。

《秘仏公開》では白鳳阿弥陀仏と一時里帰りの天平薬師仏が仲良く並んでお出迎えしておられます。

そして《ぼさつの寺めぐり》など御朱印が大人気です。

「コスモスを コスモスらしく するは風」蔦三郎

・花の時期:9月~11月上旬 

・花数:15万本

・花のピーク、満開は10月中旬から下旬ごろ。(少し遅れています)

・花と灯りと音の祭典「コスモス花あかり」は1017日(土)と18日(日)午後5時から7時まで。

〇紫苑(しおん):≪満開過ぎ≫

〔俳句〕

仇野(あだしの)

「夕霧や いつもの所に 灯のみゆる」一茶

・訳:夕べの霧よいつもの所に人を焼く火が見える。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂から浄瑠璃寺へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えん日は 道の真埴に足過ちそ)

・まはに=真埴。赤土。

〈浄瑠璃寺の秋〉

「みだうなる 九ぼんのひざに ひとつづつ

       かきたてまつれ ははのみために」

(御堂なる九品の膝に一つづつ 柿たてまつれ母の御為に)

*来年(西暦2016年平成28年)は真言律宗の祖師、忍性菩薩(にんしょうぼさつ)の生誕800年、信空慈眞和尚(しんくうじしんわじょう)の没後700年に当たります。お二人は叡尊師の高弟。忍性さんは鎌倉極楽寺に、慈真信空さんは西大寺奥ノ院に御廟塔があります。どちらも菩薩行に生涯をささげられた高僧です。

*興正菩薩の御教誡

「学問は韻(いん)に入るべき事。

修行(しゅぎょう)せずして学問するをば学匠(がくしょう)という。少しも修行のために学問するを智者(ちしゃ)というなり。」

・修行=仏道修行。菩薩行。

・韻=ひびき。音の調子。

・学匠=学問にすぐれた人。学者。

・智者=智慧のすぐれた人。

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》553

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『興正菩薩行状畧頌』(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文(ふ えいぞうせんれいじゅぶん