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2016年2月

2016年2月29日 (月)

般若寺花だより  2・29

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

〇沈丁花:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「せなみせへ 作兵衛店(だな)の 梅だんべへ」一茶

・訳:さあお兄さん見なさい。これこそ作兵衛の店の梅だぞよ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》684

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆太子曰く、某、仏牙を宝掌に有(も)つこと久しと雖も、頭目は猶捨つるがごとし。敢えて奉献せず。俄かに宣に授く。宣、保録供養す。之を久しうして密かに弟子文綱をして護持せしめ、崇聖寺東塔を去る。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年2月28日 (日)

般若寺花だより  2・28

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「銭からから 敬白(つつしんでまうす) んめ(梅)の花」一茶

・訳:銭がからから音をたてている。謹んでお祈り申し上げます。天神さんの梅の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》683

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆少年曰く、某(それがし)常人(じょうじん①)に非ず。即ち毘沙門天王の子、那吒(なた②)なり。護法の故、和尚を擁護する。旹(とき)に之(ゆ)くこと久し。宣曰く、貧道修行(ひんどうしゅぎょう③)の無事は太子を煩わす。太子の威神(いじん④)は西域に自在なり。仏事を作すべき者有らば、願って之を致さんとす。

 

 常人=普通一般の人。

 那吒=毘沙門天王の太子、三面八臂大力鬼王なり。

 貧道修行=仏道は貧道なり。

 威神=人知では測り知りえない霊妙不思議なちから。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月27日 (土)

般若寺花だより  2・27

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「梅さけど 鶯なけど ひとり哉」一茶

・訳:梅が咲いても鶯が鳴いてもひとりぽっちだなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》682

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆宋の高僧伝を按ずるに、「道宣律師は西明寺に在りて夜道を行くに、足、前の階に跌(つまづ)く。物ありて扶持(ふち①)し空を履(ふ)むに害なし。熟(つらつら)之を顧視(こし②)するに、乃ち少年なり。宣、遽(にわ)かに問う。何人(なにびと③)か中夜(ちゅうや④)に、此に在るや。

 

 扶持=身を支えるために物につかまること。

 顧視=ふりかえって見ること。

 何人=いかなる人。何者。

 中夜=夜中。亥の刻(午後九時)から丑の刻(午前三時)までの間。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年2月23日 (火)

般若寺花だより  2・23

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「やぶ入りの 顔にもつけよ 梅の花」一茶

・訳:やぶ入りの黒い顔にも梅の花をつけなさいよ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》681

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆京兆報恩仏牙院はかつて一仏牙を蓄う。長二寸ばかり。牙端に紋あり、梵字の如し。その色は常に変じ、或は青、或は黄、或は白、種々にして一に非ず。そのよる所を考えるに、即ち終南山道宣澄照大律師の奉る所は、蓋し真の仏牙にして偽妄に非ざる也。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

Dsc06359

 

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2016年2月22日 (月)

般若寺花だより  2・22

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪終り近し≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「梅さくや 地獄の門も 休み札」一茶

・訳:梅が咲いているなあ。地獄への門も休み札がかかっている。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》680

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆所有の設利(せつり①)歯牙は一切人天龍鬼、天上人間龍宮海蔵に於いて  おのおの塔を起て供養す。それ恭敬供養礼拝讃嘆ありて所得功徳勝利。未だ筆舌を以って陳ぶるべからず。必竟して無上菩提の道に至り、豈、人天の福報を止むるのみ哉。

 

 設利=設利羅。舎利のこと。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年2月21日 (日)

般若寺花だより  2・21

 

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪終り近し≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「梅咲や せうじに猫の 影法師」一茶

・訳:梅が咲いて良い香が漂っているなあ。障子に映るのは猫の影法師。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》679

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆人と法は同じきことを示す。化縁(けえん①)に云う。畢れば則ち涅槃有るの説を免れず。既に涅槃已むで、三昧の火を以って金躯(こんく②)を闍維(じゃい③)す。

 

 化縁=衆生を教え導く因縁。

 金躯=金色の身体。仏身。

 闍維=梵・ジャーピタ。荼毗。梵焼と訳す。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年2月18日 (木)

般若寺花だより  2・18

 

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「そら錠と 人には告よ 梅の花」一茶

・訳:みせかけの錠だと人に告げなよ。梅の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》678

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆仏は形相(ぎょうそう①)無くして、方便に生を受く。故に曰く、淨らかな法界身(ほっかいしん②)は、本より出没(しゅつぼつ③)無し。大悲願力(だいひがんりき④)により受生を示現し、仏は既に生を受く。

 

 形相=すがた。かおつき。

 法界身=真理そのものとしての仏。

 出没=出たり隠れたりすること。

 大悲願力=大悲心をもって衆生を救う仏の誓願の力。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年2月17日 (水)

般若寺花だより  2・17

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「烏帽子(えぼし)きた 馬士(うまかた)どのや 梅の花」一茶

・訳:烏帽子をきて正装した馬方どのよ。梅の花も芳しい。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》677

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆同二年、辱(かたじけな)くも御書の額を賜わる。是より例年、仏涅槃日に当り、舎利会を執行せしめ、国家安全宝祚延長を祈り奉る。余、偶(たまたま)彼の舎利を拝するの序で、現住暁誉演説する所の趣、此くの如し。後代の亀鏡と謂うべきか、感歎に堪えず。子細を記すもの也。

 

  延宝六年二月十五日   前天台座主二品〔在判〕親王之を記す。

(終わり)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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般若寺花だより  2・17

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

〇福寿草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「烏帽子(えぼし)きた 馬士(うまかた)どのや 梅の花」一茶

・訳:烏帽子をきて正装した馬方どのよ。梅の花も芳しい。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》677

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆同二年、辱(かたじけな)くも御書の額を賜わる。是より例年、仏涅槃日に当り、舎利会を執行せしめ、国家安全宝祚延長を祈り奉る。余、偶(たまたま)彼の舎利を拝するの序で、現住暁誉演説する所の趣、此くの如し。後代の亀鏡と謂うべきか、感歎に堪えず。子細を記すもの也。

 

  延宝六年二月十五日   前天台座主二品〔在判〕親王之を記す。

(終わり)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月15日 (月)

般若寺花だより  2・15

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「大御代(おおみよ)や 野梅(のうめ)のばくち 野雪隠(のぜつちん)」一茶

・訳:大いなる平和の世の中だなあ。野に咲く梅、野でする博打、野でする用便。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》675

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆報恩寺の仏牙は、室町院、興正菩薩に寄附せられる。其の後、葉室淨住寺に安置せしむる所也。後醍醐天皇の御宇、癸酉年の乱(みずのととりどしのらん①)に、凶徒葉室衣笠の霊宝を掠奪す。随って散失し畢る。其の後、暦応三年、重ねて之を求得し、金闕(きんけつ②)に鎮座せられ代々の聖主、之を尊崇す。〔云々〕

 

 癸酉年の乱=元弘三年(一三三三)、後醍醐帝が隠岐より帰京され、幕府の六波羅探題が天皇方の手で滅ぼされ、鎌倉の幕府が滅亡する。

金闕=禁闕。皇居、御所、禁中のこと。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月14日 (日)

般若寺花だより  2・14

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「月よ梅よ 酢よこんにやくのと けふも過ぬ」一茶

・訳:月よ梅よ酢よ蒟蒻のと言って今日も過ぎてしまったなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》674

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆後、高倉法皇。〔承久三年奉請供養〕北白河院、安嘉門院、室町院、興正菩薩、〔弘安十年丁亥八月、之を相伝し奉る御書、之在り。〕淨住寺に安置供養す。〔興正菩薩安置の状、之れ在り。〕

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月13日 (土)

般若寺花だより  2・13

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「幼子(おさなご)や 摑々(にぎにぎ)したり 梅の花」一茶

・訳:幼い子のいとおしさよ。にぎにぎしている梅の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》673

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆遂に使いして日本延喜年中に至り、吉野日蔵上人、夢想に依り海を渡り唐に入り、我が朝に相伝し奉る。而して承仕供養す。次に淨乗上人に付授す。次第に伝来し、白河法皇、祇園女御、鳥羽法皇、美福門院、八條院、俊成卿。〔承安元年八月二十五日奉請供養〕

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月12日 (金)

般若寺花だより  2・12

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「梅咲て 身のおろかさの 同(おなじ)也」一茶

・訳:梅が咲いても、わが身の愚かさは変わりませんなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》672

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆行状に云う。会昌年中、復た西明寺に還入し奉る。〔祖師入滅より以来一百六十余年〕その後昭宗朝代に至り、〔日本寛平年中に当たる〕天空寺に安置し奉る。その後五季の乱に渉(わた)り、亦その縁を晦(くらく)す。〔日本延喜年中に当たる〕

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年2月11日 (木)

般若寺花だより  2・11

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「梅さくに 鍋ずみとれぬ 皺手哉」一茶

・訳:梅が咲く季節なのに、相変わらず鍋の墨がとれないままの皺の手よ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》671

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆文綱律師は既に此の仏牙を以って、崇聖寺東塔に葬す。代宗の大暦二年に至り、〔祖師入滅より以来一百一十年〕之を出だし奉る。僧伝に云う。代宗の大暦二年に至り、この寺の三綱(さんごう①)に勅して、聞くが如く彼の寺に大徳道宣律師有り。伝授して釈迦仏牙及び肉舎利を得る。宣すなわち右銀台門に詣し進来(しんらい②)す。朕は瞻礼(せんれい③)を要す。

 

 三綱=寺院の管理運営や僧尼の統括にあたった役職。上座(じょうざ)、寺主(じしゅ)、都維那(ついな)から構成される。

 進来=来たれることをたてまつる。

 瞻礼=あおぎ礼すること。

(つづき)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年2月10日 (水)

般若寺花だより  2・10

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「膝の児の 指始(ゆびさすはじめ) 梅の花」一茶

・訳:膝に抱いた子どもが指をさし始めた。その先に咲く梅の花。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》670

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆汝、斯の仏牙を知ると言うこと勿れ。宋朝の法献三蔵、烏長国の仏牙を得るが如し。唯だ友頴律師の久しく知ると同じ。綱問うに何の故なるや。師曰く、ひそかに時人の信根浅薄なるを以って、疑謗(ぎぼう①)多かるのみ。唯だ吾れ汝と之を知り、再三に嘱付(しょくふ②)す。

 

 疑謗=うたがいそしること。

 嘱付=ゆだねさずけること。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年2月 9日 (火)

般若寺花だより  2・9

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「梅がかや どなたが来ても 欠茶碗」一茶

・訳:梅の香がして来るよ。梅見にどなたが訪ねてくれても、おもてなしは欠けた茶碗。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養のねだん。名誉欲と金銭欲のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》669

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆如来入滅の周穆王五十四年癸酉より、大唐高祖感得の顕慶五年庚申に至るまで、一千六百八年に当たる〔日本斉明天王治しめす代六年〕也。行状に云う、大師(だいし①)は既に霊牙(れいが②)を獲たり。昼は地の穴に蔵(しま)い、夜、行道せんとす。後、歳を経るの余り、乃ち弟子文綱律師に被(およ)びて語りて曰く。

 

 大師=澄照大師道宣律師。

 霊牙=仏の歯の舎利。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月 8日 (月)

般若寺花だより  2・8

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「我もけさ 清僧の部也 梅の花」一茶

・訳:私も新年の今朝ばかりは清らかな僧侶の仲間入りだ。芳しい匂いの梅の花

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》668

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆唐の穆宗恵孝皇帝、御製の賛に曰く。代わりに覚人有り、如来の使と為す。龍魔は帰り降り、嶽神に事(つか)え奉る。声は五天(ごてん①)に飛び、辞(じ②)は万古(ばんこ③)を驚かす。金鳥は西に沈み、仏日は東に挙がる。稽首して律宗を肇(はじ)めし主に帰依す。〔已上〕

 

 五天=五天竺。

 辞=ことば。

 万古=遠い昔。久しい間。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月 6日 (土)

般若寺花だより  2・6

 

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「長閑(のどか)さや 浅間のけぶり 昼の月」一茶

・訳:のどかさよ。遠く浅間の煙がたなびき、昼の月が出ている。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》667

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆次に高宗、顕慶五年に至り、勅令により舎利を岐州法門寺に送る。舎利が塔に入るの日、師乃ち合掌して端立し瞻仰(せんごう①)す。通霄(つうしょう②)に涕泣悲恋(ていきゅうひれん③)し、晨旦(しんたん)に至り舎利を感得するに、大光明を放つ。此の時に当り、道俗咸(み)な覩(み)る。終にその年、此の仏牙を感得す。

 

 瞻仰=仰ぎ見ること。

 通霄=夜通し。

 涕泣悲恋=涕泣は涙を流して泣く。悲恋はひたすら思い慕うこと。

 晨旦=夜明けがた。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年2月 5日 (金)

般若寺花だより  2・5

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「春の日や 暮ても見ゆる 東山」一茶

・訳:春の日よ。日が暮れても見えるよ。東山。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》666

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆衆は聞き得ること莫し。智聖寺仏牙記を按ずるに、云う。宣大師獲る所のものは、即ち羅刹盗むところのもの也。凡そ大師は、大業十一年、まさに受戒せんとする時、生所の懇(ねんごろ)なるに預(あず)け、宝凾(ほうかん①)を頂に戴し塔を遶(めぐ)り行道す。舎利を宝函に得んことを願い、方に法事を崇め、果を感じ誠をいたす、七日の晨旦(しんたん②)に至り舎利、函に降り、便ち具戒(ぐかい③)を受く。

 

 宝凾=たからをいれるはこ。

 晨旦=夜明け方。

 具戒=具足戒。大戒。比丘二百五十戒、比丘尼三百四十八戒。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年2月 4日 (木)

般若寺花だより  2・4

 

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「出序(でついで)に ひんむしつたる わかな哉」一茶

・訳:新年の挨拶に出るついでに、ひんむしった若菜であるなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》665

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆答えて曰く、弟子は是れ何天王下の捷疾(しょうしつ①)の使者なり。また問いて曰く、左右はまた是れ何人ぞ。答て曰く、弟子は是れ北方毘沙門天王の子、那吒太子(なたたいし②)なり。父王は我に勅し、常に待衛(じえい③)せしむ。因りて仏牙を授けて曰く、捷疾に身を荼毘処に蔽い、亦其の二を得。今、一つを以って師に奉る。師、静密戒を持し、即ち心を境と為す。乃ち是れ親しく如来を見る。師は得て之を宝とす。

 

 捷疾=すばやいこと。

 那吒太子=毘沙門天王の太子。三面八臂大力の鬼王。

 侍衛=貴人のそば近く仕えて護衛すること。

(つづき)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています

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2016年2月 3日 (水)

般若寺花だより  2・3

 

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「きのふ迄 毎日見しを 若菜かな」一茶

・訳:昨日まで毎日見ていたのに気づかなかったが、今日は若菜の出番だなあ。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭の欲望のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》664

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆礼拝迎請して送り上ぐ。此の寺の製置は皆な師の模範なり。同五年に至り、却りて西明寺に廻る。因りて夜行の道次(どうじ①)、足を前の階に跌(つまづ)く。乃ち聖者の足に接するを感じ、殊には損する所無し。師、遽(にわか)に問いて云う。汝は是れ誰ぞ。

 

 道次=道すがら。道の途中。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年2月 1日 (月)

般若寺花だより  2・1

〔花ごよみ〕

〇ロウバイ:≪満開≫

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪咲きはじめ≫

〇水仙:≪終り近し≫ 

 

〔俳句〕

「春駒の 歌でとかすや 門の雪」一茶

・訳:新年を祝う春駒の歌で、家々の門に積もった雪をとかしてくれるね。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈春日野にて〉

「かすがのに ふれるしらゆき あすのごと

       けぬべくわれは いにしへおもほゆ」

(春日野に降れる白雪明日のごと 消ぬべく我は古しえ思ほゆ)

 

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

 

*興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡

「悦ぶべきは、如来の聖教(しょうぎょう①)に遇(あ)えること。正法(しょうぼう②)世に住するは、すなわちこれ在世(ざいせ③)なり。悲しむべきは、仏前仏後に生まるること。如来の正法を以って、名利の価(みょうりのあたい④)となして妻子を養うこと。」

 

 聖教=釈尊の教え。仏の教えを記した経典。

 正法=釈尊の正しい教法。

 在世=釈尊が生きて衆生を教化されていること。

 名利の価=名聞利養の値段。名誉と金銭のあたい。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》663

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京師報恩教寺佛牙舎利縁起』

(けいしほうおんきょうじぶつげしゃりえんぎ)

◆凡そ処胎十二月、隨文帝開皇十六年四月八日に至りて誕生す。大唐乾封二年十月初三日、天請を受け都支多天(としたてん①)に帰る。高宗皇帝顕慶元年、西明寺を造る。同二年に至り、勅して西明寺上座を授くるに、懇ろに辞して受けず。勅して鴻臚卿劉躬(こうろけいりゅうしんきゅう)を遣り、終南山(しゅうなんざん)に往く。

 

 都支多天=兜率天。弥勒菩薩の住処。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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