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2016年3月

2016年3月31日 (木)

般若寺花だより  3・31

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪三分咲き≫

〇山吹:≪咲きはじめ≫一重咲きが咲いています。八重咲きと白山吹は蕾。

〇蔓日日草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「夕暮れや 親なし雀 何と鳴」一茶

訳:夕暮れの淋しさよ。親がいない雀は何と鳴くのだろう。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆そもそも大会光明真言は、文永元年の始行。思円上人の誓約に云う。且つは当寺の大檀那(①)、再会を淨仏道に期さんが為、且つは六道四生(ろくどうししょう②)は皆是れ劫々(こうごう③)の父母、鉄囲砂界(てっちしゃかい④)は世々(せぜ⑤)の明(朋ヵ)友ならざるはなし。彼の楚痛(そつう⑥)を思い、我が殷憂(いんゆう⑦)と為す。

 

 当寺の大檀那=西大寺を創建された称徳天皇。

 六道四生=六道は衆生が生前の業因によって生死を繰り返す六つの迷いの世界。地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天上。四生は生物をその生れ方で分類。胎生・卵生・湿生・化生。

 劫劫=きわめて長い時間。

 鉄囲沙界=須弥山を囲む九山八海(くせんはっかい)の一つで最も外側の鉄でできた山を鉄囲山という。沙界はインドの恒河(ガンジス)にある砂の無量無数なように、宇宙にちらばっている多くの世界

 世々=多くの世。代々。「せせ」とも。

 楚痛=いたみ苦しむこと。「楚」も痛むこと。

 殷憂=大きな憂い、悲しみ。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年3月30日 (水)

般若寺花だより  3・30

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「開帳に 逢ふや雀も おや子連」一茶

訳:善光寺のご開帳に回り逢えたなあ。雀さえも親子連れ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》710

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆誠に仏法の寿命を続けん。是を以って九十年の化儀は、四八相(しはっそう①)の妙果を弾ず。遂につらつら其の遺跡を思うに、更に直人(ただびと)に匪(あら)ず。故に寵輝(ちょうき②)を贈り、宜しく崇飾(すうしょく③)を加う。故に興正菩薩と号す。贈号はかくの如く下される。彼の上人は、釈迦文殊両聖の化身、春日五社の第一の御殿(④)、云云。

 

 四八相=仏陀の瑞相である三十二相。

 寵輝=はえある輝き。栄誉。

 崇飾=尊び飾ること。立派にかざること。

 第一の御殿=祭神はタケミカヅチ、本地仏は不空羂索観音。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月29日 (火)

般若寺花だより  3・29

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「春の風 草にも酒を 呑ますべし」一茶

訳:心地よく吹く春の風、なびく草にも酒を飲ますべきだね。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》709

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆正安二年、持明院の御宇(じみょういんのぎょう①)、忝(かたじけな)くも菩薩の勅号に預かる。その文に云う。伝灯大法師位(でんとうだいほっしい②)叡尊は、一天四海の大導師、濁世末代の生身仏なり。済度衆生を己が任と為し、大悲闡提(だいひせんだい③)を我が願と為す。すなわち王侯脇(卿ヵ)士の智行に帰するや、皆現当(げんとう④)の値遇を約す。勇猛精進の住い堅固なり。

 

 持明院の御宇=当時は大覚寺統と持明院統が交互に天皇位を継いでいた。興正菩薩号は持明院統の後伏見天皇が勅諡されたことをいう。

 伝灯大法師位=奈良時代に置かれた僧の位階の一つ。四位九階の僧位の最高位。

 大悲闡提=菩薩は大慈悲心により一切衆生を済度するまでは成仏しないことをいう。

 現当=現在と未来。現世と来世。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月28日 (月)

般若寺花だより  3・28

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「春風や 黄金花咲く むつの山」一茶

訳:春風よ。黄金が花咲くという陸奥の山が思われる。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》708

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆鏑目より光を出だし、雷響の如し。同じく幡三流(はたみながれ①)、西を指して飛行す。即時に異賊破滅し畢る。右の鏑矢は上人ご所持の愛染明王の御矢なり。思圓(しえん②)御誓願に云う。来生に我異国の太子と成り、異国襲来の難を止むべし。云々。

 

 幡三流=白い旗にはそれぞれ、「妙法蓮華経」、「大般涅槃経」、「唯識三十頌」の五字が書かれ、金の光を放っていたという。

 思圓=興正菩薩は思圓房叡尊が仮名実名。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月27日 (日)

般若寺花だより  3・27

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「ぼた餅や 地蔵のひざも 春の風」一茶

訳:うまそうなぼた餅よ。地蔵のひざにも春の風。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》707

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆然れば弘安四年七月廿日、異賊降伏の御祈祷の為、後宇多院の勅使光泰卿、当寺に至り、下向は再三に及ぶ。然れば先師上人、男山八幡宮に参籠在ること七日七夜。七壇(しちだん①)を構える。伴僧七百人精誠(せいせい②)を抽(ひ)く処、七日〔八日朔日也〕満夜の戌の刻(いぬのこく③)、八幡宮玉殿振動して鏑箭(かぶらや④)を放つ。

 

 七壇=七壇護摩秘法。中壇は愛染明王尊勝法(叡尊師)、不動法(性瑜師)、軍荼利法(信空師)、降三世法(玄基師)、大威徳法(雙円師)、金剛夜叉法(禅海)

 精誠=純粋で誠実なこと。まごころをこめること。

 戌の刻=午後七時頃から九時頃まで。

 鏑箭=矢の先に鏑をつけ、その先に鏃をつけたもので、射ると鏑の穴から空気が入って大きな音響を発して飛ぶ。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月26日 (土)

般若寺花だより  3・26

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「春風や 牛に引かれて 善光寺」一茶

訳:春風が心地よく吹いているよ。「牛に引かれて善光寺参り」。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》706

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆殺生を禁断するところ一千三百七十箇所、菩薩戒を受くるの貴賎は九万七千六百余人。関東鎭西の諸末律寺は一千五百箇余寺に及ぶ。凡そ厥の徳行は勝計すべからず(しょうけいすべからず①)。唯、一天泰平、五穀成就、衆生快楽、興法利生の外に他念無し。

 

 勝計すべからず=数えきれないこと。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月25日 (金)

般若寺花だより  3・25

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「春雨に 大欠(おおあくび)する 美人哉」一茶

訳:春雨に大きなあくびをする美人だなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》705

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆五戒八戒(ごかいはっかい①)の淨法を受け、近事近住(ごんじごんじゅう②)の内道(ないどう③)に入る。これ則ち播(うつ)り、園塵を摂(とら)ずして清浄説法す。剰(あまつさ)え後嵯峨院等五朝の国師を陪(かさ)ね、大乗の戒珠(だいじょうのかいしゅ④)を授け奉り、六十余州戒律の棟梁と崇めらる。

 

 五戒八戒=五戒は在家信者が守るべき五つのいましめ。不殺生、不偸盗、不邪婬、妄語、不飲酒。八戒は八斎戒ともいう。月に六日間八戒を守るので六斎日と云う。五戒に⒍不着華瓔珞、不香油塗身、不歌舞観聴。⒎不坐高広大牀。⒏不非時食。を加える。

 近事近住=近事は三宝に近づき仕える者の意。近住は三宝に親近して住すの意。五戒を受けた在家信者。

 内道=仏道。

 大乗の戒珠=大乗菩薩戒。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月23日 (水)

般若寺花だより  3・23

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪つぼみ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「しんしんと しんらん松の 春の雨」一茶

訳:しんしんと親鸞松に降り注ぐ春の雨。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》704

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆誠に是れ木刄(叉ヵ。もくしゃ①)は日(ひび)に正法練行の戒場を新たにす。抑(そもそ)も又、慧灯(けいとう②)は既に密教修行の霊地を挑げる也。爰に西明寺禅閣(さいみょうじぜんかく③)、仰いで鎌倉に召請せんとす。叡尊上人は東土に利生に趣く。然れば則ち禅儀(ぜんぎ④)圍鐃(いにょう⑤)して恭敬帰依渇仰は斜め(ななめ⑥)ならず。

 

 木叉=波羅提木叉(はらだいもくしゃ)。戒本と訳される。比丘、比丘尼が守らねばならない条項をまとめたもの。

 慧灯=智慧のともしび。

 西明寺禅閣=禅閣は禅宗の寺のこと。北条時頼を指す。

 禅儀=僧侶。

 圍鐃=とり囲む。

 斜め=ひととおり。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月22日 (火)

般若寺花だより  3・22

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪つぼみ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「一ツ舟に 馬も乗けり 春の雨」一茶

訳:一つの舟に馬も乗り合わせたよ。春の雨が降っている。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうじょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》703

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆同二年、表無表章(ひょうむひょうしょう①)の全文に依り、自誓受具(じせいじゅぐ②)の軌則を設け、正法興行の曩願(のうがん③)を遂ぐ。忽ちに南山事鈔(なんざんじしょう④)等律部を学び、已に大賢古迹(たいけんこしゃく⑤)等の菩薩戒を談じ、顕密の諸藉典を撰集し、三聚圓備受具(さんじゅうえんびじゅぐ⑥)の戒法を再興し、七聚(衆ヵ。しちしゅう⑦)成満如法の徳行を開発す。

 

 表無表章=慈恩大師窺基の著作、『大乗法苑義林章』の中の戒律に関する一章。自誓受戒の根拠とされた。

 自誓受具=自誓受戒に依り具足戒

 曩願=前からの誓願。

 南山事鈔=南山大師道宣作の『四分律行事鈔』

 大賢古迹=八世紀の新羅の学僧太賢の著作、梵網経の注釈書「梵網経古迹記」

 三聚円備受具=菩薩戒(三聚浄戒)を円満に備えて四分律の具足戒(満分戒)を受戒すること

 七衆=僧伽を構成する出家、在家の仏教徒。比丘、比丘尼、沙弥、沙弥尼、式叉摩那、優婆塞、優婆夷。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月21日 (月)

般若寺花だより  3・21

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇桜:≪つぼみ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「かすむ日や しんかんとして 大座敷」一茶

訳:かすむ日よ。静まりかえった大座敷。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「済度群生(さいどぐんじょう①)を修行の根源となすべき事。 弘安七年七年四月晦日(②)。

利生(りしょう③)の願を堅固にすべき事、授戒の時のお説法に云う。八地(はっち④)已前はなお利生の障(さわ)りを断ずることあたわず。九地に至りて之を断つ。何ぞいわんや下凡の初発心の人は、利生に於いて障り多し。いずれにしても唯はげむべきなり。三聚浄戒(さんじゅうじょうかい⑤)は上求下化(じょうぐげけ⑥)の二心を以って本となす。詮ずるところは、ただ利生なり。この心を堅固にして摂律儀戒(しょうりつぎかい⑦)を堅く守らば、摂善摂生(しょうぜんしょうしょう⑧)は自ずから利益あるべきなり、云々。」

 済度群生=群生は衆生と同義、全ての人びと。広くは生きとし生けるもの生命の全てをいう場合もある。済度するとは、精神的にも物理的にも苦を除き、楽を与えて、悟りの世界へ導くこと。

 弘安七年四月晦日=興正菩薩の『感身学正記』には、「四月二十八日。内裏の女房達十人に菩薩戒を授く。」との記事がある。菩薩八十四歳。

 利生=利益衆生。利益は済度と同義。

 八地=菩薩地に至るために十の修行段階があるうち、第八番目。

 三聚浄戒=大乗戒。菩薩が衆生済度のために守り実行すべき戒。三種類の浄戒のあつまり。

 上求下化=上求菩提、下化衆生。あおいでは菩提を求め、ふりかえっては衆生を利益すること。

 摂律儀戒=一切の律儀を悉く摂(おさ)めている戒のこと。具体的には、四分の二百五十戒、梵網の十重四十八軽戒。身口意の三業の悪を制することを誓う。止悪門、止持戒ともいう。

 摂善摂生=摂善法戒は一切の善を行うことを戒としたもの。作善戒・作善門をさす。摂衆生戒は一切の衆生を摂取して、あまねく利益を施すこと。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆然りと雖も、星霜(せいそう①)年旧(ふ)り、生住異滅(しょうじゅういめつ②)の理(ことわり)盛んなれば、必衰の名のみ之れ在り。然れば草創より四百六十九年を経て、嘉禎二年正月十六日に至る。興正菩薩三十五歳にして、当寺宝塔院に移住し、三町四面の寺内を搆(かま)う。聖皇(しょうこう③)鋳造の四天を金堂に安置せしめ、丈六の十一面観自在尊を中尊と為す。

 

 星霜=(星は一年に天を一周し、霜は毎年降るところから)年月。歳月。

 生住異滅=すべての物が生じ、住〈とど〉まり、変化し、なくなってしまうという四つの相。

 聖皇=称徳天皇。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年3月19日 (土)

般若寺花だより  3・19

 

〔花ごよみ〕

〇色々な椿:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

〇山吹:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「笠でする さらばさらばや 薄がすみ」一茶

訳:笠で仰いでする、さらばさらばの別れよ、薄霞がたなびいている。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》701

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

 

◆加うるに、本願聖主(ほんがんしょうじゅ①)は手づから自ら七尺の四王の霊像を鋳彰(ちゅうしょう②)し、異賊の防禦を擬(なぞら)え、国土豊楽(こくどほうらく③)を祈る。茲に繇(より)ていよいよ顕密(けんみつ④)の碩徳(せきとく⑤)踵(きびす)を継ぎ、大小の鑚仰(だいしょうのさんぎょう⑥)、肩を並べ、八宗(はっしゅう⑦)は世に興り、三学(さんがく⑧)は国に崇めらるるもの也。

 

 本願聖主=西大寺を開基の本願主となった仏教に篤く帰依し徳の高い天皇、称徳天皇。

 鋳彰=鋳造して仏像のお姿をあらわすこと。

 国土豊楽=国に物資が豊かで、人々が暮らしを楽しむこと。

 顕密=顕教と密教。

 碩徳=高徳の僧。学徳ともにすぐれた僧。

 大小の鑚仰=大乗と小乗の仏教を深く研究しとうとぶこと。

 八宗=奈良時代に伝来の俱舎・成実・三論・法相・華厳・律の南都六宗と平安時代に新たに伝わった天台・真言の二宗。

 三学=仏教の学問、戒律・禅定・智慧の三学。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年3月18日 (金)

般若寺花だより  3・18

 

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「我里は どうかすんでも いびつ也」一茶

訳:おれの住む里はどんなに優雅に霞がかかっても、いびつだなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》700

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『西大寺光明真言会縁起』

(さいだいじこうみょうしんごんええんぎ)

◆夫れ当寺は、称徳天皇(しょうとくてんのう①)の御願にして、天平神護元年(てんぴょうじんごがんねん②)草創、南都七大寺の隨一なり。寺中三十二町(ちょう③)、四面に建立の四十九院の伽藍は三百余宇の紺殿(こんでん④)たり。東西両塔の楼閣藍院(ろうかくらんいん⑤)は甍を磨き、ならびに丈六等身の弥勒慈尊を造立し、四十九重(しじゅうくじゅう⑥)の摩尼上生(まにじょうしょう⑦)を誓約す。

 

 称徳天皇=聖武天皇の第一皇女。はじめ天平勝宝元年(七四九)即位して孝謙天皇となり、のち淳仁天皇に在位十年で譲位したが、天平宝字八年(七六四)重祚して称徳天皇となる

 天平神護元年=西暦七六四年。

 町=面積の単位。平城京時代は四百尺平方。

 紺殿=紺宇。紺色の軒・屋根。仏寺をいう。

 楼閣藍院=楼閣はたかどの。高層な建物。藍院は伽藍、僧伽藍摩(そうがらんま)。寺の建物の総称。

 四十九重=弥勒菩薩の居所、兜率天(とそつてん)の内院にある四十九の宮殿。

 摩尼上生=摩尼宝珠で飾られた弥勒の兜率天にのぼって生まれかわること。

(つづく)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(1217-1303.後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県磯城郡三宅町の「屏風の里」(びょうぶのさと)で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年3月17日 (木)

般若寺花だより  3・17

 

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「かすむやら 目が霞やら ことしから」一茶

訳:かすんでいるのだろうか、目が霞んでいるのだろうか、今年から。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》699

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『宇治紀事幷序』(出『艸山集』)

(うじきじ ならびにじょ)(しゅつ「そうざんしゅう」)

 

・『艸山集』=『草山集』。江戸時代前期の漢詩人・歌人・日蓮宗の僧である元政(げんせい、1623-1668)の漢詩文集。元政は山城深草に住し、厳しい戒律生活を送った。その戒律復興運動を「草山律」「元政律」「法華律」という。

 

◆菩薩の願心は深く、高行は攀(よ)じるべからず。漁舟は水底に沈み、仏塔は波間に湧く。橋寺は度たび存没し、茶房は往還に接す。今に到るも曝布の地なり。河上の白雲は閑(しずか)なり。

(終わり)

 

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。


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2016年3月15日 (火)

般若寺花だより  3・15

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「ほくほくと かすみ給ふは どなた哉」一茶

訳:ほくほくとかすんでいらっしゃるのはどなた様ですかなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》698

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『宇治紀事幷序』(出『艸山集』)

(うじきじ ならびにじょ)(しゅつ「そうざんしゅう」)

 

・『艸山集』=『草山集』。江戸時代前期の漢詩人・歌人・日蓮宗の僧である元政(げんせい、1623-1668)の漢詩文集。元政は山城深草に住し、厳しい戒律生活を送った。その戒律復興運動を「草山律」「元政律」「法華律」という。

 

◆夫れ感身記は興正自ら一生の事業を録し、八十五歳に至り筆を絶つ。然れば興正、年九十にして卒す。則ち其の舟を埋め塔を造るなど種々の事は、ことごとく後の五年の間に在り。其の伝える所は妄(いつわり)ならず。賦詩(ふし①)の記に因りて云う。

 

 賦詩=詩歌。

(つづく)

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月14日 (月)

般若寺花だより  3・14

 

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「かすむ日の 咄(はなし)するやら のべの馬」一茶

訳:春霞の日の話をしているのだろうか。野辺の馬は。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》697

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『宇治紀事幷序』(出『艸山集』)

(うじきじ ならびにじょ)(しゅつ「そうざんしゅう」)

 

・『艸山集』=『草山集』。江戸時代前期の漢詩人・歌人・日蓮宗の僧である元政(げんせい、1623-1668)の漢詩文集。元政は山城深草に住し、厳しい戒律生活を送った。その戒律復興運動を「草山律」「元政律」「法華律」という。

◆その願力は測るべからざる也。余、宇治に遊ぶの日、偶々此の事を聞く。嘗て興正の感身記(かんじんき①)を按じて云う。弘安七年(こうあんしちねん②)正月、奏して宇治の網代(あじろ③)を破す。蓋し是の年、宇治橋を始め、未だ成らざる時、年は八十四。

 

 感身記=『感身学正記』。興正菩薩が自らの活動事績を日記風に記したもの。

 弘安七年=西紀1284年。

 網代=魚を取る設備。川の浅瀬に数百の杭を打ち並べ、竹の経緯(縦横に編んだもの)を構え、魚を呼び込む簗(やな)のようなもの。

(つづく)

*〔忍性(にんしょう)菩薩御生誕八百年〕

今年は興正菩薩の高弟、忍性菩薩(後醍醐天皇により菩薩号を諡される)が奈良県三宅町の「屏風の里」で誕生されてから八百年という記念の年に当たります。真言律宗にとっては宗祖に次ぐ祖師であり、日本の社会救済事業の巨人と言える僧です。現代仏教が忘れてしまった衆生済度、菩薩行の実践を再興するためにも先達として学びたいお方です。真言律宗(本山西大寺)としては慶賛の事業は予定されていませんが、生誕地の屏風では、浄土宗の浄土寺さん(藤田能宏住職)が菩薩の尊像を造立中です。そして奈良国立博物館では、菩薩が活動された鎌倉極楽寺から一山を挙げての『忍性展』(7月―9月)が行なわれます。般若寺としても、菩薩が若きころハンセン病者救済活動をされた地であり、その業績や御遺徳を世に広めて行きたいと思っています。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月13日 (日)

般若寺花だより  3・13

 

*本ブログに連載しています『行実年譜』の主人公、興正菩薩(叡尊師)の肖像彫刻が「国宝」に指定されました。現在、御尊像は東京にお出ましになられ、これから指定記念として東京国立博物館で特別公開される予定です。(公開日時は現在未定ですがわかり次第お知らせします)。お像は菩薩が八十歳のとき、御弟子たちが寿像として造立されたものです。お像内の納入文書の豊富さは類を見ないもので、単に彫刻だけではなく祖師信仰の有り様が詳細にわかる貴重な宗教遺産と言えるでしょう。菩薩の偉大さは、『感身学正記』『御教誡聴聞集』『関東往還記』、そして『行実年譜』などの著作物から詳細を知ることができます。「興法利生」(こうぼうりしょう。釈尊の教えである正法を興隆し、衆生を利益すること)を生涯の活動の原点とされ、僧のあるべき姿をしめされた興正菩薩が、この国宝指定を期に再評価されることを願うものです。

 

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「湖を 風呂にわかして 夕がすみ」一茶

訳:湖の水を風呂の湯にわかして、眺める夕霞。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『宇治紀事幷序』(出『艸山集』)

(うじきじ ならびにじょ)(しゅつ「そうざんしゅう」)

 

・『艸山集』=『草山集』。江戸時代前期の漢詩人・歌人・日蓮宗の僧である元政(げんせい、1623-1668)の漢詩文集。元政は山城深草に住し、厳しい戒律生活を送った。その戒律復興運動を「草山律」「元政律」「法華律」という。

◆乃(すなは)ち漁人に教え曝布(ばくふ①)を活業と為す。又橋寺(はしでら②)を修して茶房(さぼう③)を置き、存亡(そんぼう④)を恵し、来往(らいおう⑤)に接す。

 

 曝布=布をさらすこと。麻布の生産。

 橋寺=橋を維持管理する寺、その由緒を伝える真言律宗末寺、橋寺放生院が現存する。

 茶房=喫茶や食事を提供する施設。

 存亡=飢えに苦しむ人々。

 来往=京都へ往還する旅人。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月12日 (土)

般若寺花だより  3・12

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「かすむ日や 夕山かげの 飴の笛」一茶

訳:春霞の日よ。夕日のさす山かげから聞こえる飴売りの笛の音。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》695

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『宇治紀事幷序』(出『艸山集』)

(うじきじ ならびにじょ)(しゅつ「そうざんしゅう」)

 

・『艸山集』=『草山集』。江戸時代前期の漢詩人・歌人・日蓮宗の僧である元政(げんせい、1623-1668)の漢詩文集。元政は山城深草に住し、厳しい戒律生活を送った。その戒律復興運動を「草山律」「元政律」「法華律」という。

◆興正菩薩、宇治橋(うじばし①)を新たにす。悉く漁舟を取り、之を水底に埋(うづ)み、石の大塔(だいとう②)を造り、その上に建つ。

 

 宇治橋=大化二年(646)、僧道登が勅を受けて初めて架橋。以後洪水や戦乱によって壊れ架け替えが行なわれた。弘安七年(1284)に興正菩薩が橋を新たにされた。

 石の大塔=宇治川の浮島(塔の島)に現存する十三重大石塔。興正菩薩が弘安九年(1286)に造立され、塔供養を行われた。高さ十五メートルの日本一の大石塔。初重の四方仏は密教四仏を梵字で表す。台石には千字をこえる銘文が刻まれるも、現在判読不能である。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。


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2016年3月11日 (金)

般若寺花だより  3・11

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「よい程の 道のしめりや 朝霞」一茶

訳:ちょうど適当なほどに道がしめっているよ。今朝の霞に。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆永く世の福田(ふくでん①)と為し、毎歳涅槃の辰(しん②)に必ず大法会を修せよ。普く都人を傾けしめ、男女等を論ずること無く、一瞻一礼(いっせんいちれい③)するものは均しく福慧の根を植うる。是を以って功徳勝り、上は恩有に勗(つと)める。我は此の伽陀を述べ、真実にして虚妄ならず。仰ぎ願わくは諸仏陀現前して我が証しと為らんことを。

 

 福田=福を生ずる田。仏を敬い布施を行うことにより世の人々に多くの福徳を生むことができる。「恭敬福田」「敬田」

 辰=とき。日。

 一瞻一礼=ひとたび仰ぎ見て、ひとたび礼拝すること。

(終わり)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月10日 (木)

般若寺花だより  3・10

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇連翹:≪見ごろ≫

〇矢車草:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「今さらに 別(わかれ)ともなし 春がすみ」一茶

訳:今更に別れというだけでも辛い。おぼろにたなびく春霞。

解釈:若き一茶を温かく迎えて衣食住の援助をしてくれた立砂(りゅうさ)との別離の悲しみ。涙も手伝ってぼんやりとした春霞が、旅の行く手ばかりかわが悲しみもつつみこんでいる。立砂を深く思い、永遠の別れとなることを悲しむ気持ちが伝わってくる。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》693

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆故に世主(せいしゅ①)も嘗て観礼す。其れ世の常ならざるが如し。滄桑(そうそう②)は互いに変革し、長(とこ)しえに保護すること能わず。大日国(だいにちこく③)に伝え至り、国王処(こくおうしょ④)にて奉持せられ、展転(てんてん⑤)して十代に及ぶ。以って今寺に賜わるに至る。

 

 世主=国王。

 滄桑=「滄海桑田」の略。「蒼海変じて桑田となること。世の中の変遷が激しく予測がつかないこと。」をいう。

 大日国=大日本国。「大日の本国」と読み、日本が仏の本国であることをいう。

 国王処=天皇の住まう宮中。

 展転=ころがること。人から人へ伝わること。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

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2016年3月 9日 (水)

般若寺花だより  3・9

〔花ごよみ〕

〇椿、侘助:≪見ごろ≫

〇紅梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花、山茱萸、樒:≪見ごろ≫

 

〔俳句〕

「旅笠を 小さく見せる 霞かな」一茶

訳:旅の笠を遠く小さく見せる、どこもかしこも春霞だなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》692

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆天上及び人間は分を争いて供事す。唐に大梵刹(だいぼんせつ①)あり。厥の号は西明と曰う。澄照大律師(ちょうしょうだいりっし②)の安禅行道する処。一昔たまたま失足するに、天神もっぱら護衛し、神を感じて仏牙を奉り、勤め捧げて行道す。厥の後、弟子文綱に付して密かに掌護(しょうご③)するに、仏の威神(いじん④)を以ってす。

 

 大梵刹=大きな伽藍。寺院。

 澄照大律師=南山律宗の祖、道宣。

 掌護=たなごころにて護る。

 威神=人知では測り知ることができない霊妙不思議な力。

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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2016年3月 8日 (火)

般若寺花だより  3・8

〔花ごよみ〕

〇椿:≪見ごろ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇山茱萸、樒:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「鶯や 今に直らぬ 木曽訛(きそなまり)」一茶

訳:うぐいすよ、おまえさんは今も直らないね。木曽訛が。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》691

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆仏は大悲願(だいひがん①)を以って諸の群生(ぐんじょう②)を愍念(みんねん③)し、閻浮提(えんぶだい④)に示現(じげん⑤)し、広く三乗の法(さんじょうのほう⑥)を演(の)ぶ。化儀(けぎ⑦)は既に已に周(同ヵ)、即ち泥垣(桓ヵ。でいかん⑧)に入る。自ら三昧の火を現わし金色の身を闍維(じゃい⑨)すれども歯牙は堅くして壊れず、設利羅(せつりら⑩)に及ぶ。

 

 大悲願=仏菩薩が大慈悲から発する誓願。

 群生=多くの生き物。衆生。

 愍念=あわれむ思い。

 閻浮提=人間世界。現世。

 示現=仏菩薩が衆生救済のために、種々に身を変えてこの世に現れること。

 三乗の法=縁覚乗、声聞乗(小乗)と菩薩乗(大乗)の教え。

 化儀=仏が衆生を教導し感化する形式、方法。

 泥桓=涅槃。

 闍維=荼毘(だび)。梵焼と訳される。

 設利羅=舎利。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

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2016年3月 7日 (月)

般若寺花だより  3・7

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「鶯や 此(この)声にして 此山家(やまが)」一茶

訳:美しい声で鳴く鶯よ。この声だからこそこの山家に似合う。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》690

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆公、已むを得ず。其の法友専誉公と仏牙等を奉り、仏の国に至る。予の記に属す。以って諸後に貽(のこ)す。予、辞を克(よ)くせず。但、文無きを恨み、微妙言句を以って之を発揮すること能わず。唯直に其の始末因縁書すのみ。覧者、宜しく難遭の想いを生じ、無上心を発すべし。予の不文を以ってすべからずして、この莫大の勝利を失うなり。既に之を紀し、また之を系(つな)ぐに詞を以って曰く。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月 6日 (日)

般若寺花だより  3・6

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「鶯や くらまを下る 小で(ぢや)うちん」一茶

訳:鶯が鳴く季節になったなあ。鞍馬山を下る小さな提灯(ちょうちん)。

:鞍馬山で修行したという源義経が闇に紛れて鞍馬を下って行くのだろうか、と物語を想起させる趣向。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆嗟(ああ)夫れ世方は利の已むを以って□(穏)と為し、爭いて之を図す。泉、独り然らず。人より賢きこと遠し。貞享五年、当代の寺主、証誉公恪祖命に遵(したが)い、方に法会を設く。広く陳ぶるに供養の者、約五十。日特に延べ、予、観礼す。予は事を以って不果の行を阻む。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月 5日 (土)

般若寺花だより  3・5

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「鶯や とのより先へ 朝御飯」一茶

訳:鶯よ、お殿様より先に朝御飯。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》688

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆泉、仏恩の報い難きを念じ。逓年の仏涅槃日に必ず法会を設くことを命じ、国中の道俗男女をして皆、散華作礼を得せしむ。此の殊勲に藉(か)りて、上は聖天子の聖寿万安を、大将軍の叡算千春、天下の昇平、万民の楽業を祝う。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月 4日 (金)

般若寺花だより  3・4

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪咲きはじめ≫

 

〔俳句〕

「武士(さむらひ)や 鶯に迄 つかはるる」一茶

訳:さすがお武家さま。鶯にまで使われている。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》687

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆現に御書有り、存す。後醍醐帝癸酉歳、国変に丁(あた)り、淨住寺災す。其の仏牙他人の為に獲られる。帝、之を聞き勅して取り御府に蔵す。後柏原皇帝に至り、仏乗を欽信し、益ます尊崇を加う。乃ち仏牙と興正僧伽梨衣千地蔵像黒金燈並びに珍異宝物等とを以って、今の報恩開山明泉上人に賜う。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月 2日 (水)

般若寺花だより  3・2

 

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「鶯も なまりを直せ 猫の恋」一茶

訳:鶯よお前もなまりを直しな。懸命に鳴く猫の恋にならって。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》686

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆日蔵上人、淨乗上人に伝与し、乗は白河法皇に伝え、祇園皇后、鳥羽上皇、以って室門皇后に至る。凡そ十伝は皆な内苑に在り。十たび襲いて蔵す。人識ること無ければ、弘安十年、室門皇后勅して葉室山淨住寺大菩薩僧興正に付し、守護供養す。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

 

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2016年3月 1日 (火)

般若寺花だより  3・1

〔花ごよみ〕

〇椿:≪咲きはじめ≫

〇侘助:≪見ごろ≫

〇梅:≪見ごろ≫ 

〇福寿草:≪見ごろ≫

〇沈丁花:≪つぼみ≫

 

〔俳句〕

「鶯が 呑んでから汲む 古井哉」一茶

訳:鶯が水を飲んでから汲む古井戸の水よ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈猿沢池にて〉

「わぎもこが きぬかけやなぎ みまくほり

       いけをめぐりぬ かささしながら」

(吾妹子が衣掛け柳見まく欲り 池を廻りぬ傘さしながら)

・わぎもこ=わぎも(吾妹)は自分の妻や恋人である女性、または広く女性を親愛の気持ちをこめて呼ぶ語。「こ」は親愛の意を表す。

・みまくほり=見たいと思う、会いたいと思う。

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとかひに

       こさめなかるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

・おとがひ=下あご。あご。

 

〔興正菩薩(こうしょうぼさつ)の御教誡〕

「無想にして執心を忘るべき事

菅原寺に於いて大般若結願の御説法に云う。只この経の本意は、無所得を方便と為し、無住所を住所と為す。詮ずるところ、衆生が生死に輪廻するは、如幻の法に於いて実執を成ずる故。当時物騒の折節、長く語り申すは機嫌無き事にてそうらへども、一言の述懐によって無量の妄執をとどめしむ、云々。」

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》685

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

『京兆報恩寺佛牙記』(出『洗雲集』)

(けいちょうほうおんじぶつげき)(しゅつ「せんうんしゅう」)

 

・京兆=都のある郡または府。広く首都の意。

・洗雲集=黄檗山万福寺の高泉禅師の作。

◆代宗大暦二年。帝、勅令して右銀台門に進め観礼す。会昌年中、復西明寺に還り奉る。昭宗朝に至り、天宮寺に置き奉る。其の後、五季の乱に因り、伝えて日本に至る。乃ち延喜年中、吉野の日蔵上人、夢感に因り唐に入りて得る也。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

 

 

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