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2017年2月

2017年2月28日 (火)

コスモス寺花だより  2・28

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チャフルネス」

    株数:2万本

 

「白鳥が生みたるもののここちして

    朝夕めづる水仙の花」与謝野晶子

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:初夏咲=3万本 12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

     秋咲=15万本 78月 種まき  9~11月 開花

 

〔俳句〕

「壁の穴 幸(さひはひ)春の 雨夜(あまよ)哉)」一茶

訳:壁の穴がぽかり。幸いにも春雨が降る甘美な夜だなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》864  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【爰病根漸萌。命葉早落。雖知移化度於他方界。猶難忍離別於閻浮國。於戯法灯既消。以何照四生之迷闇。慈舟早摧。慿誰渡三界之苦海。非啻迷緇門指南。

 

〔爰に病根(びょうこん①)漸く萠(きざ)し、命葉(めいよう②)早くも落つ。化度(けど③)を他方界(たほうかい④)に移すを知ると雖も、猶お忍び難きは閻浮国(えんぶこく⑤)を離別(りべつ⑥)すること。ああ法灯既に消ゆ。何を以って四生(ししょう⑦)の迷闇(めいあん⑧)を照らす。慈舟(じしゅう⑨)は早くも摧(くだ)けたり。誰を憑みて三界の苦海を渡らんや。啻(ただに)緇門の指南(しもんのしなん⑩)に迷うに非ずや。〕

 

 病根=根深い病気。

 命葉=いのちの葉。

 化度=人々を教え導き、迷いから救うこと。教化、済度。

 他方界=この現実世界以外の世界。仏の浄土。

 閻浮国=閻浮提(梵・ジャンブドゥビーパ)。須弥山の南方にあるとされる島、人間世界、現世。

 離別=離れ別れること。

 四生=生物の生れ方四種類。胎生、卵生、湿生、化生。

 迷闇=迷いの闇。執着の苦しみを生む迷妄をくらやみに例える。

 慈舟=慈悲の舟。

 緇門の指南=僧の教え、指導。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月27日 (月)

コスモス寺花だより  2・27

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「笹鳴の 羽風やふれし 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「草山の くりくりはれし 春雨(はるのあめ)」一茶

訳:草の山だけくりくり晴れた。さきほどまでは春の雨。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》863  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【一一徳行不可勝計。訪之上古。上古様少。尋之異朝。異朝未聞。疑是大権之化現歟。又恠即身之頓証歟。誠匪直色人者乎。住世九十箇年。恐奈何釈尊之寿命。利生五十歳。又相似仏世之徃時。

 

〔一一の徳行(とくぎょう①)は勝計(しょうけい②)すべからず。之を上古(じょうこ③)に訪(とぶら)うに、上古の様は少なし。これを異朝(いちょう④)に尋ぬるに、異朝にもいまだ聞かず。是れ大権(だいごん⑤)の化現(けげん⑥)を疑うか。又即身の頓証(そくしんのとんしょう⑦)を恠(あや)しむか。誠に色(しき⑧)を直す人に匪ざるものか。世に住すること九十箇年、奈何(なんぞ)釈尊の寿命に恐(かしこま)るものかな。生を利すること(⑨)五十歳、又仏世の事(ぶっせのおうじ⑩)に相似たり。〕

 

 徳行=すぐれた徳と行い。功徳行。

 勝計=一つ一つ上げて数えること。

 上古=大昔

 異朝=外国。中国のこと。

 大権=大権現。仏菩薩が衆生済度のために、仮の姿をとってこの世にあらわれたものをいう。

 化現=仏菩薩が衆生を救うため姿をかえて現れること。

 即身の頓証=真言密教の即身成仏。この身のままですみやかに悟りを得ること。

 色=形にあらわれた全てのもの。

 生を利する=衆生、群生を利益すること

 仏世の往事=仏陀在世の昔の事。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月26日 (日)

コスモス寺花だより  2・26

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「笹鳴の 羽風やふれし 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「草山の くりくりはれし 春雨(はるのあめ)」一茶

訳:草の山だけくりくり晴れた。さきほどまでは春の雨。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》862

  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【三台九棘。悉帰慈心之深。華夷朝野受彼化。五畿七道仰其恩。至東関境。携毗尼木刃西海嶋。翫禁戒浮嚢。加之。任孝謙天皇叡慮。再興西大寺旧基。依聖徳太子納受。紹隆天王寺聖跡。】

 

〔三台九棘(さんだいきゅうきょく①)は、悉く慈心の深きに帰す。華夷(かい②)の朝野(ちょうや③)は彼の化を受け、五畿七道(ごきしちどう④)は其の恩を仰ぐ。東関(とうかん⑤)の境に至り、毗尼木叉(びにもくしゃ⑥)を携え、西海の島に禁戒の浮嚢(ふのう⑦)を翫(もてあそ)ぶ。加之(くわうるに)、孝謙天皇の叡慮(えいりょ⑧)に任せ、西大寺の旧基(きゅうき⑨)を再興し、聖徳太子の納受(のうじゅ⑩)に依り天王寺の聖跡(せいせき⑪)を紹隆(しょうりゅう⑫)す。

 

 三台九棘=官吏、公卿を指す。三台は古代中国の官職名。司馬、司徒、司空の三公。九棘は九卿の位置を示すために植えられた棗。

 華夷=中国と外国。都と地方。

 朝野=朝廷と民間。世間、天下。

 五畿七道=日本全国の意。律令制下の地方区分で、五畿は山城、大和、河内、和泉、摂津の国。七道は東海、東山、北陸、山陰、南海、西海の七道。

 東関=関東のこと。

 毗尼木叉=毗尼は梵・ビナヤ。毘奈耶。律蔵。木叉は梵・プラーティモークシャ、波羅提木叉。戒本。

 浮嚢=うきぶくろ。

 叡慮=天子のお考えやお気持。

 旧基=もとの伽藍。

 納受=祈願を受け入れること。

 聖跡=聖徳太子の事跡。

 紹隆=昔の人の事業を継承し、さらに盛んにすること。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月25日 (土)

コスモス寺花だより  2・25

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「高原や 水仙咲ける 石の中」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「春雨や はや灯のとぼる 亦打山(まつちやま)」一茶

訳:静かに降る春雨よ。早くもともしびがともる待乳山。待乳山は江戸浅草、隅田川べりにある小さな丘。ここに聖天宮(浅草寺の支院、金龍山本龍院)がある。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》861  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【入両部密壇之輩幾多何人。何况於一尊一契之伝受乎。凡化教日域。名播唐國。上為一人之師範。下為万民之依怙。爰以鳳闕月下恭傾十善之頂。仙洞風前屢屈万乗之姿。都龍楼象薗。皆仰戒徳之高。】

 

〔両部の密壇(りょうぶのみつだん①)に入るの輩は幾多何人(いくたなんにん②)なるや。何ぞ況や一尊一契(いっそんいっけい③)の伝授(でんじゅ④)に於いておや。凡そ日域(にちいき⑤)を化教(けきょう⑥)し、名は唐国(とうこく⑦)に播(あが)る。上は一人の師範(しはん⑧)となり、下は万民の依怙(えこ⑨)たり。爰を以って鳳闕(ほうけつ⑩)は月下に、恭しく十善の頂(じゅうぜんのいただき⑪)を傾け、仙洞(せんとう⑫)は風前に、屢(しばしば)万乗(ばんじょう⑬)の姿を屈す。都の龍楼象薗(りゅうろうしょうえん⑭)、皆な戒徳の高きを仰ぐ。〕

 

 両部の密壇=金剛界と胎蔵界の灌頂壇

 幾多何人=あまた多くの人数。

 一尊一契=一仏尊、一印契(いちいんげい)の修法。

 伝授=手法を授け伝えること。

 日域=日本。

 化教=教化。

 唐国=からの国、中国。

 師範=教え導く人、手本

 依怙=頼りとなる人。

 鳳闕=宮城(きゅうじょう)。天皇。

 十善の頂=十善の君(十善戒をまもり仏道にはげむ帝)である天子の頭。

 仙洞=太政天皇の御所(ごしょ)。上皇(治天の君、院)。

 万乗=一万台の車。古代中国で一万両の兵車をもつ天子をいう。

 龍楼象薗=龍象は高徳の人物をたとえて云う。龍楼は宮殿の楼門、皇太子の異称。皇族。象薗は不詳、朝廷の要職にある公家をいうか。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月24日 (金)

コスモス寺花だより  2・24

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「高原や 水仙咲ける 石の中」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「けふ植し 槇(まき)の春雨 聞く夜哉」一茶

訳:今日植えた槇の木にふりしきる春雨を聞いている静かな夜だよ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》860  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【三密四曼之教風。遠扇扶桑之國。依之七衆䡄則盛于斯時。三聚浄戒弘於我朝。既而受大苾蒭戒之類不知其数。何况於五戒八戒之結縁哉。】

 

〔三密四曼(さんみつしまん①)の教風は、遠く扶桑(ふそう②)の国に扇(あお)ぐ。之に依り七衆の軌則(しちしゅうのきそく③)も斯の時に盛んなり。三聚浄戒(さんじゅじょうかい④)は我が朝(わがちょう⑤)に弘まり、既に大苾蒭戒(だいびっしゅかい⑥)を受くるの類は其の数を知らず。何ぞ況や五戒八戒(ごかいはちかい⑦)の結縁に於いてかな。

 

 三密四曼=真言密教。三密は身口意の三業。仏の身体と言語と心によってなされる不思議なはたらき。四曼は四種の曼荼羅(大曼荼羅、三昧耶曼荼羅、法曼荼羅、羯磨曼荼羅)

 扶桑=中国で太陽の出る東海の中にあると言われた葉が桑の木に似た神木。また、その地の称。日本のこと。

 七衆の軌則=仏教僧伽を構成する七衆(比丘、比丘尼、沙弥、沙弥尼、式叉摩那、優婆夷、優婆塞)の戒律。

 三聚浄戒=菩薩戒である三種戒(摂律儀戒、摂善法戒、摂衆生戒)

 我が朝=我が国。日本。

 大苾蒭戒=比丘の守るべき大戒、具足戒(二百五十戒)

 五戒八戒=在家衆の守る五戒(不殺、不盗、不淫、不妄語、不飲酒)と八斎戒(五戒に化粧や歌舞に接しない、高く大きな床で寝ない、昼を過ぎて食事しない、の三戒を加える)

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月23日 (木)

コスモス寺花だより  2・23

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

○福寿草:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙や 雪をへだてて 松の幹」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「鍋の尻 ほし並(ならべ)たる 雪解哉」一茶

訳:鍋の尻を干して並べてある、雪解けの春だなあ。雪国の長い冬の生活が終わり、春の到来を思わせる風景。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》859  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【爰過去聖霊思円尊上人。発闡提悲願。憐愍一切衆生。企菩薩大行。依学八万法蔵。紹絶跡。興廃跡。五篇七聚之戒香。普薫若木之卿。崇化教。主制教。】

 

〔爰に過去聖霊の思円尊上人(しえんそんしょうにん①)は、闡提の悲願(せんだいのひがん②)を発し、一切衆生を憐愍(れんびん③)し、菩薩の大行(ぼさつのたいぎょう④)を企つ。八万法蔵(はちまんほうぞう⑤)を学ぶに依り、絶えたる跡を紹(つ)ぎ、廃れたる跡を興す。五篇七聚(ごひんしちじゅ⑥)の戒香(かいこう⑦)は、普(あまね)く若木の卿(わかぎのけい⑧)を薫(くん⑨)ず。化教(けきょう⑩)を崇(あが)め、制教(せいきょう⑪)を主(とうと)ぶ。〕

 

 思円尊上人=思円は房名、仮名(けみょう)。尊は叡尊の略で、戒名、法名、実名(じつみょう)。上人は智徳を備え、仏道の修行に励み深大な慈悲心をそなえている高僧。とくに官僧を離脱して宗教活動をした遁世僧に与えられる尊称。

 闡提の悲願=一闡提は梵・イッチャンティカの音写で断善根、信不具足と訳。成仏の素質、縁を欠くものをいう。大乗の行者である菩薩は大慈悲故に、衆生済度のため不成仏を誓う。

 憐愍=あわれむこと。

 菩薩の大行=衆生済度の大いなる菩薩行。

 八万法蔵=八万は多数。法蔵は仏の教えの蔵。八万四千の法門。

 五篇七聚=具足戒を犯戒の罪の軽重により類別したもの。波羅夷、僧残、波逸提、波羅提提舎尼、突吉羅の五篇に偸蘭遮と悪説を加えて七聚とする。

 戒香=戒を受持することを香にたとえる。

 若木の卿=若い人材。

 薫=徳の力で善導、感化する。

 化教=律宗の教相判釈で、精神的素養に応じて衆生を教化する教え。禅定と智慧の二学をいう。

 制教=身口意の三業の過誤を制止する教法のこと。律をまもる教え。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月22日 (水)

コスモス寺花だより  2・22

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙や 雪をへだてて 松の幹」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「と(疾)くとけよ 貧乏雪と そしらるる」一茶

訳:早く解けなさいよ。いつまでも残っていると、貧乏を招く雪と叱られる。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》858  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩分衣表白』

(こうしょうぼさつぶんえひょうはく)

 

◆【敬白。現前大衆而言。夫以如来影三菩提之月也。必隠憍恣猒怠之夜雲。羅漢翫八解脱之華也。終伴灰身滅智之夕煙。上聖猶示有為之相。下界誰免無常之理乎。】

 

〔敬って現前(げんぜん①)の大衆に白(もう)して言(もう)さく。夫れおもんみるに、如来の影(かげ②)は三菩提(さんぼだい③)の月なるも、必ずや憍恣厭怠(きょうしえんたい④)の夜雲に隠れる。羅漢(らかん⑤)は八解脱(はちげだつ⑥)の華を翫(もてあそ)ぶも、終に灰身滅智(かいしんめっち⑦)の夕煙を伴う。上聖(じょうせい⑧)は猶お有為の相(ういのそう⑨)を示し、下界(げかい⑩)は誰か無常の理(ことわり)を免れんや。〕

 

 現前=目の前。まのあたり。

 影=光のこと。

 三菩提=阿耨多羅三檬藐三菩提の略。完全な悟り。

 憍恣厭怠=おごり気ままなこと、飽きて怠けること。

 羅漢=阿羅漢の略。小乗の最高のさとりに達した聖者。

 八解脱=八背捨(はちはいしゃ)。山界の貪愛を遠離する八つの出世間の禅定。

 灰身滅智=死して身体は灰となり知恵も滅すること。

 上聖=天上界の聖人。

 有為の相=絶えず生滅して無常な存在のすがた。

 下界=欲界、とくに人間界。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月21日 (火)

コスモス寺花だより  2・21

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙や 雪をへだてて 松の幹」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「雪とけて 村一ぱいの 子ども哉」一茶

訳:雪がとけて、家々から出て来た村いっぱいの子どもたちよ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》857  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【在々処々 如影隨形 奉助化儀 二利円満】

 

〔在々所々(ざいざいしょしょ①)にて影の如く形に随(したが)い、化儀(けぎ②)を助け奉り、二利(にり③)の円満せんことを。〕

 

 在々所々=ここかしこ。

 化儀=仏が衆生を教導し感化する形式、方法。

 二利=上求菩提下化衆生。自利利他。興法利生。

(終わり)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月20日 (月)

コスモス寺花だより  2・20

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「ころげある 鉢の後ろの 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「子守唄 雀が雪も とけにけり」一茶

訳:子守唄が聞こえ、雀が遊んでいた雪も解け出したよなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》857  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【頂礼菩薩 道体遺身 生前御願 一々成就】

 

〔菩薩の道体遺身(どうたいいしん①)を頂礼す。生前の御願(ごがん②)が一々成就せんことを。〕

 

 道体遺身=興正菩薩が仏道を体現された身体の遺れるお姿、すなわち肖像。

 生前の御願=興法利生の誓願。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月19日 (日)

コスモス寺花だより  2・19

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「ころげある 鉢の後ろの 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「雪とけて クリクリしたる 月よ哉」一茶

訳:雪がとけてぼんやり曇っていた月もクリクリと明るく輝く夜になったなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》856  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【影像瞻礼頌文】

 

〔影像(えいぞう①)瞻礼(せんれい②)頌文(じゅぶん③)〕

 

 影像=興正菩薩叡尊上人が八十歳の時、弟子たちが造った寿像。大仏師善春作、国宝。西大寺の愛染堂にまつられている。

 瞻礼=仰ぎ見て礼拝すること。

 頌文=韻文体の詩句。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月18日 (土)

コスモス寺花だより  2・18

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「立つ霜と 夕焼けてゐる 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「雪解て 嬉しさう也 星の顔」一茶

訳:雪が解けて嬉しそうにしているねえ。星の顔。 

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》856  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【影像瞻礼頌文】

 

〔影像(えいぞう①)瞻礼(せんれい②)頌文(じゅぶん③)〕

 

 影像=興正菩薩叡尊上人が八十歳の時、弟子たちが造った寿像。大仏師善春作、国宝。西大寺の愛染堂にまつられている。

 瞻礼=仰ぎ見て礼拝すること。

 頌文=韻文体の詩句。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

 

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2017年2月17日 (金)

コスモス寺花だより  2・17

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「立つ霜と 夕焼けてゐる 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「紫の 袖にちりけり 春の雪」一茶

訳:紫の袖に散ったよ。春の淡雪が。 

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》855  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●廻施一切廻真海 皆願隨修得菩提 建武四七二十五 遺孫苾蒭信尊記

 

〔一切(いっさい①)に廻施(えせ②)し真海(しんかい③)に廻らす。皆な隨修(ずいしゅう④)して菩提を得んことを願う。建武四年七月二十五日。遺孫苾蒭(ゆいそんびっしゅ⑤)信尊(しんそん)記す。〕

 

 一切=一切衆生。

 廻施=己が功徳を衆生に施与する。

 真海=仏界、仏土。

 隨修=教えに随って修行すること。

 遺孫苾蒭=孫弟子である比丘。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月16日 (木)

コスモス寺花だより  2・16

2・16

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「立つ霜と 夕焼けてゐる 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「温石の さめぬうち也 わかなつみ」一茶

訳:温石が冷めない間だけの若菜摘み。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》854  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【持彼教者多散滅 哀願遺法至三会 我今畧讃薩埵行 於徳高山一塵数】

 

〔彼の教えを持する者も多くは散滅す。遺法の三会(さんね①)に至らんことを哀願し、我今、薩埵行(さったぎょう②)を徳高の山において畧讃すること一塵(いちじん③)の数。〕

 

 三会=弥勒菩薩の龍華三会。

 薩埵行=菩薩行と同じ。菩薩は梵語・ボーディサットバの音写語、菩提薩埵(ぼだいさった)を略した語。

 一塵=一つの塵。転じて、きわめてこまかいこと、わずかなこと。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月15日 (水)

コスモス寺花だより  2・15

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「立つ霜と 夕焼けてゐる 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「出序(でついで)に ひんむしつたる わかな哉」一茶

訳:新年の挨拶に出るついでに、ひんむしった若菜であるなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》853  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【如是福智利楽人 男女得益宝籌余 興正法已一百二 世眼已閉六八廻】

 

〔是の如く福智(ふくち①)をもって人を利楽(りらく②)す。男女は宝籌(ほうちゅう③)余にて得益す。正法を興して(④)已に一百二年、世眼已に閉じて(⑤)六八廻り(⑥)〕

 

 福智=福徳と智慧。菩薩が積む自利利他の善行による福徳と、悟りのための智慧。

 利楽=利益と安楽。衆生にそれを与えしあわせにすること。

 宝籌=籌は数を数える棒。布薩などで人数を数えるのに用いる。

 正法を興して=嘉禎二年(一二三六)に自誓受戒をして正式の比丘が誕生したこと。

 世眼已に閉じて=正応三年(一二九〇)に入寂されたこと。

 六八廻り=四十八年。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月14日 (火)

コスモス寺花だより  2・14

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「立つ霜と 夕焼けてゐる 水仙花」原石鼎

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「きのふ迄 毎日見しを 若菜かな」一茶

訳:きのうまで毎日見ていたのに気づかなかったが、今日は若菜の出番だなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》852  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【撰集顕密諸藉典 再興聖跡建寺塔 治提橋梁理国政 門輩諸方利群生】

 

〔顕密の諸藉典(けんみつのしょせきてん①)を撰集し、聖跡(せいせき②)を再興し寺塔を建つ。堤橋梁(つつみきょうりょう③)を治め国の政を理(り④)し、門輩は諸方に群生(ぐんじょう⑤)を利す。〕

 

 顕密諸藉典=顕教である戒律と真言密教の典籍。興正菩薩は戒律の書籍に関しては梵網経の注釈をはじめ多くを著わされたが、密教の分野では次第類に限られる。

 聖跡=由緒ある名刹寺院。

 堤橋梁=築堤と架橋。橋は宇治橋の修造、堤も宇治川か。

 理=おさめる。

 門輩=一門の弟子たち。

 群生=衆生。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月13日 (月)

コスモス寺花だより  2・13

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「春鳥や 軒去らぬ事 小一日」一茶

訳:春鳥よ。軒端を立ち去らないまま、ほぼ一日過ごしたね。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》852  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【後嵯峨等五朝師 貴賎受衣戒印言 興絶菩薩七衆行 開顕三学相因致】

 

〔後嵯峨等の五朝(ごさがとうのごちょう①)の師たり。貴賎(きせん②)に衣戒印言等(いかいいんごん③)を受(授ヵ)く。絶えたる菩薩七衆(ぼさつしちしゅう④)の行を興す。三学の相因致(そういんち⑤)を開顕す。〕

 

 後嵯峨等五朝=御嵯峨天皇、後深草天皇、亀山天皇、後宇多天皇、伏見天皇の五代の帝。

 貴賎=上は天皇から下は一般庶民まで、地位の上下なく平等に。

 衣戒印言=衣はころも。三衣また衣鉢。戒は菩薩戒。印言は密教の教え。

 菩薩七衆=仏教を志す者は、それぞれの立場での菩薩戒を受けて僧伽(そうぎゃ)の構成をする一員となる。七衆は出家衆(比丘、比丘尼、沙弥、沙弥尼、式叉摩那)と在家衆(優婆塞、優婆夷)の構成。

 相因致=相はすがた、様相。因は原因。致はおもむき、意趣。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月12日 (日)

コスモス寺花だより  2・12

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「壁の穴や 我初空も うつくしき」一茶

訳:壁の穴よ。そこからのぞく我が家の初空もうつくしい。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》852  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【秘密瑜伽薫習行 四万二千二百八 禁断殺生大慈行 一千三百六十所】

 

〔秘密瑜伽の薫習行(ひみつゆがのくんじゅうぎょう①)は、四万二千二百八座。殺生を禁断の大慈行(だいじぎょう②)は一千三百六十所。〕

 

 秘密瑜伽の薫習行=密教の諸の修法、行法。薫習は香気が衣服にしみ込み香りを発するように、修法行法を積み重ねると人の心に影響を及ぼすことを言う。

 大慈行=大慈悲の行。殺生を禁ずれば生類への慈悲行となる。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

 

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2017年2月11日 (土)

コスモス寺花だより  2・11

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「まん六の 春と成りけり 門の雪」一茶

訳:満六十歳の春となったなあ。門に残る春の雪。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》851  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【授菩薩戒利人衆 九万七千七百十 別受僧尼八百余 入壇受明七十二】

 

〔菩薩戒(ぼさつかい①)を授けて人を利するところの衆は九万七千七百十人。別受(べつじゅ②)の僧尼は八百余人。受明(じゅみょう③)に入壇せしめること七十二たび。〕

 

 菩薩戒=大乗の菩薩が受持すべき戒。止悪・修善・利他の三つの面を持つ。梵網経による戒で僧俗に共通する。

 別受=三聚浄戒(さんじゅじょうかい)の摂律儀戒のみを受ける。単受とも。四分律に規定の具足戒を受ける。比丘は二百五十戒、比丘尼は三百四十八戒。

 受明=受明灌頂。真言行者として深く密教を学ぼうとする灌頂で、これに依って弟子の資格を得るので弟子灌頂とも言う。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月10日 (金)

コスモス寺花だより  2・10

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙の 円光に似る 水仙よ

亡き親めきて こひしき花よ」与謝野晶子

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「目出度さも ちう位也 おらが春」一茶

訳:めでたさも、あなた任せでちょうど良い。わが春は。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》850  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【惣計法壽九十年 興法利人五十五 開演三学正法日 一万八百八十六】

 

〔惣ての計数は、法寿(ほうじゅ①)は九十年。法を興し人を利すこと、五十五年。三学(さんがく②)の正法を開演する日、一万八百八十六日。〕

 

 法寿=出家得道してからの年数。法﨟。ここは保寿(ほうじゅ、寿命を保つこと)の方が相応しいか。

 三学=戒学、禅定学、慧学。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 9日 (木)

コスモス寺花だより  2・9

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「老が身の 直(ね)ぶみをさるる けさの春」一茶

訳:老人としてナンボの価値があるかと値踏みされて迎えた新春。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》849  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【起立石塔聚碎身 同年中冬二十七 没後十一菩薩号 同皇帝時正安二】

 

〔石塔(せきとう①)を起立し砕身(さいしん②)を聚むは、同年中冬(ちゅうとう③)二十七日。没後十一年にして菩薩号(ぼさつごう④)をたまう。同皇帝(どうこうてい⑤)の時、正安二年。〕

 

 石塔=西大寺奥ノ院(体性院)に現存する大五輪石塔。

 砕身=石塔の立つ場所で荼毘に付されたので、遺骨を拾い集め何らかの舎利容器に納め塔内部又は塔の下に納められたと推測される。

 中冬=仲冬。陰暦の十一月。

 菩薩号=興正菩薩号。「正法を興隆」したと云う意味の菩薩号。

 同皇帝=後伏見天皇。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月 8日 (水)

コスモス寺花だより  2・8

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「貧乏神 愛(めで)たき春に 逢にけり」一茶

訳:貧乏草、お前にもめでたい春がめぐってきたなあ。。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》849  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【起立石塔聚碎身 同年中冬二十七 没後十一菩薩号 同皇帝時正安二】

 

〔石塔(せきとう①)を起立し砕身(さいしん②)を聚むは、同年中冬(ちゅうとう③)二十七日。没後十一年にして菩薩号(ぼさつごう④)をたまう。同皇帝(どうこうてい⑤)の時、正安二年。〕

 

 石塔=西大寺奥ノ院(体性院)に現存する大五輪石塔。

 砕身=石塔の立つ場所で荼毘に付されたので、遺骨を拾い集め何らかの舎利容器に納め塔内部又は塔の下に納められたと推測される。

 中冬=仲冬。陰暦の十一月。

 菩薩号=興正菩薩号。「正法を興隆」したと云う意味の菩薩号。

 同皇帝=後伏見天皇。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 7日 (火)

コスモス寺花だより  2・7

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「わが春や タドン一つに 小菜一把(こないちは)」一茶

訳:わが春が来たよ。タドン一つに小菜一把の貧者ぶり。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》848  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【雲外天楽降化(花)等 奇瑞叵言誰可量 道俗號慟亡慈父 哀哉迷倫其奈何】

 

〔雲外(うんがい①)より天の楽あり花を降す等。奇瑞(きずい②)は言うこと叵(は③)にして、誰か量(はか)る可し。道俗は慈父を亡くすがごとく号慟(こうどう④)す。哀れなるかな、倫(りん④)に迷えること、其れ奈何(いかん)せん。〕

 

 雲外=雲の上。はるかかなたの空。

 奇瑞=めでたいことの予兆に現れる不思議な現象。

 叵=可の字を反対にしてできた字。不可、できない。

 号慟=悲しくて泣き叫ぶ。

 倫=人のふみ守るべき道。人倫。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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コスモス寺花だより  2・7

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「わが春や タドン一つに 小菜一把(こないちは)」一茶

訳:わが春が来たよ。タドン一つに小菜一把の貧者ぶり。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》848  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【雲外天楽降化(花)等 奇瑞叵言誰可量 道俗號慟亡慈父 哀哉迷倫其奈何】

 

〔雲外(うんがい①)より天の楽あり花を降す等。奇瑞(きずい②)は言うこと叵(は③)にして、誰か量(はか)る可し。道俗は慈父を亡くすがごとく号慟(こうどう④)す。哀れなるかな、倫(りん④)に迷えること、其れ奈何(いかん)せん。〕

 

 雲外=雲の上。はるかかなたの空。

 奇瑞=めでたいことの予兆に現れる不思議な現象。

 叵=可の字を反対にしてできた字。不可、できない。

 号慟=悲しくて泣き叫ぶ。

 倫=人のふみ守るべき道。人倫。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 6日 (月)

コスモス寺花だより   2・6

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「明ぼのの 春早々に 借着(かりぎ)哉」一茶

訳: 明るい春早々に借り着をしているよ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良坂にて〉

「ならさかの いしのほとけの おとがひに

       こさめながるる はるはきにけり」

(奈良坂の石の仏の頤に 小雨流るる春は来にけり)

*おとがい=下あご。

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「ならさかを じやうるりでらに こえむひは

       みちのまはにに あしあやまちそ」

(奈良坂を浄瑠璃寺に越えむ日は 道の真埴に足過ちそ)

*まはに=埴の美称。粘土質の黄赤色の土。奈良山一帯に多い。

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》848  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【雲外天楽降化(花)等 奇瑞叵言誰可量 道俗號慟亡慈父 哀哉迷倫其奈何】

 

〔雲外(うんがい①)より天の楽あり花を降す等。奇瑞(きずい②)は言うこと叵(は③)にして、誰か量(はか)る可し。道俗、慈父を亡くすがごとく号慟(こうどう④)す。哀れなるかな、倫(りん④)に迷えること、其れ奈何(いかん)せん。〕

 

 雲外=雲の上。はるかかなたの空。

 奇瑞=めでたいことの予兆に現れる不思議な現象。

 叵=可の字を反対にしてできた字。不可、できない。

 號慟=悲しくて泣き叫ぶ。

 倫=人のふみ守るべき道。人倫。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 5日 (日)

コスモス寺花だより   2・5

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「春立(たつ)や 愚の上に又 愚にかへる」一茶

訳: 生き延びて新年を迎えたなあ。愚かに生きてきた上に、また愚に戻って行く。

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良より東京なる某生へ〉

「あかきひの かたむくのらの いやはてに

       ならのみてらの かべのゑをおもへ」

(朱き日の傾く野良の弥果てに 奈良の御寺の画を想え)

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「のこりなく てらゆきめぐれ かぜふきて

       ふるきみやこは さむくありとも」

(残りなく寺行き巡れ風吹きて 古き都は寒くありとも)

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》848  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【造供宇川橋石塔 八十六歳弘安九 入滅遷化満九十 伏見治天正応三】

 

〔宇(治)川に橋、石塔(はし、せきとう①)を造り供えるは、八十六歳、弘安九年。入滅遷化せらるるは、満九十歳。伏見(ふしみ②)の治天、正応三(③)。〕

 

 橋、石塔=宇治川にかかる大橋と中洲(塔の島)に立つ本邦随一の十三重石塔。

 伏見=伏見天皇。後深草天皇の子息。持明院統。

 正応三=しょうおう。一二九〇年。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月 4日 (土)

コスモス寺花だより   2・4

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「ことしから まふけ遊ぞ 花の娑婆(しゃば)」一茶

訳:生きながらえて、今年からいのちのもうけと思ってあそびくらすことになったよ。花のような俗世間を。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良より東京なる某生へ〉

「あかきひの かたむくのらの いやはてに

       ならのみてらの かべのゑをおもへ」

(朱き日の傾く野良の弥果てに 奈良の御寺の画を想え)

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「のこりなく てらゆきめぐれ かぜふきて

       ふるきみやこは さむくありとも」

(残りなく寺行き巡れ風吹きて 古き都は寒くありとも)

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》848  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【宝生護国長日供 年八十三弘安六 補任天王破網代 八十四歳弘安七】

 

〔宝生護国(ほうしょうごこく①)にて長日供(ちょうにっく②)する、年八十三、弘安六。天王(てんのう③)に補任(ぶにん④)せられ、網代(あじろ⑤)を破すは、八十四歳、弘安七。〕

 

 宝生護国=西大寺宝生護国院。本照房性瑜が長老となる。この年二月上棟、十二月、亀山上皇の行幸あり。

 長日供=長期間毎日仏を供養すること。

 天王=四天王寺。

 補任=職に補し官に任ずること。四天王寺別当に任ぜられる。代々の別当は天台宗僧であった。

 網代=川で魚を捕る道具。網代を破壊させて宇治川を殺生禁断とした。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 3日 (金)

コスモス寺花だより   2・3

今日は節分です。旧暦(太陰暦)ではお正月に当たり、明日が立春で春の始まりです。旧の春は一月二月三月となりますが、今の暦とは一か月ほどずれています。

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「あつさりと 春は来にけり 浅黄空」一茶

訳:あつさりと 春がきたなあ。元旦の浅黄空。。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良より東京なる某生へ〉

「あかきひの かたむくのらの いやはてに

       ならのみてらの かべのゑをおもへ」

(朱き日の傾く野良の弥果てに 奈良の御寺の画を想え)

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「のこりなく てらゆきめぐれ かぜふきて

       ふるきみやこは さむくありとも」

(残りなく寺行き巡れ風吹きて 古き都は寒くありとも)

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》847  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【進経天照内外宮 満八十歳弘安三 異朝飜軍神風現 八十一歳弘安四】

 

〔経(きょう①)を天照(てんしょう②)の内外宮に進ず、満八十歳、弘安三(③)。異朝(いちょう④)、軍を飜すに神風(しんぷう④)現る、八十一歳、弘安四。〕

 

 経=一切経。『行実年譜』には「勅願によって徒僧百余人を率いて伊勢に参詣し内外両宮に一切経各一蔵を安鎮し、異賊退散、国家安全、正法久住、利益無尽を祈り経を転読供養した。」と記載される。

 天照=天照大神(あまてらすおおみかみ)。内宮の御神体。ここでは伊勢神宮全体を指す。

 弘安三=こうあん。一二八〇年。

 異朝=元国(蒙古)。

 神風=弘安の役。『行実年譜』記載では、菩薩は八百余人の比丘僧を率いて石清水八幡で愛染明王を祀り外敵降伏の祈祷をされたところ、明王所持の鏑矢が西にむかって飛び去り、その時刻に北九州に猛風が起こり博多湾上の敵の兵船が海の藻屑と消えたという。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

 

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2017年2月 2日 (木)

コスモス寺花だより   2・2

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

○わびすけ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「風を聞きをり 水仙の香ほのかなる」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「あつさりと 春は来にけり 浅黄空」一茶

訳:あつさりと 春がきたなあ。元旦の浅黄空。。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良より東京なる某生へ〉

「あかきひの かたむくのらの いやはてに

       ならのみてらの かべのゑをおもへ」

(朱き日の傾く野良の弥果てに 奈良の御寺の画を想え)

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「のこりなく てらゆきめぐれ かぜふきて

       ふるきみやこは さむくありとも」

(残りなく寺行き巡れ風吹きて 古き都は寒くありとも)

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》847  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【文殊造供無遮行 六十七歳文永四 仁王始行七十七 後宇多院建治二】

 

〔文殊を造供(ぞうく①)して無遮(むしゃ②)を行ず、六十七歳、文永四(③)。仁王(にんのう④)を始行す、七十七、後宇多院の建治二(⑤)。〕

 

 文殊を造供=文永四年に般若寺丈六文殊菩薩像の造立供養したこと。

 無遮=無遮大会。文永六年に般若寺西南の野において遮りなく布施をする法会。数千人、あるいは数万人に食料、衣類、生活必需品などを支給したという。受者を生身の文殊として供養した。

 文永四=ぶんえい。一二六七年。

 仁王=仁王会。天下泰平鎮護国家を祈願するため『仁王般若経』を講讃する法会。この経には「国土が乱れたり災害や賊の難があった時、この経を受持読誦すると五穀が豊かにみのり、人民が栄える」と説かれる。

この年は国難であった蒙古襲来の「文永弘安の役」のはざまに当たる。

 建治二=けんじ。一二七六年。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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2017年2月 1日 (水)

コスモス寺花だより   2・1

 

〔花ごよみ〕

○ロウバイ:≪見ごろ≫

水仙:≪名残りの花≫

    満開は過ぎましたが花はまだ十分に咲いています。

種類:一重咲「日本水仙」、「寒水仙」とも言います。

        八重咲「チヤフルネス」

    株数:2万本

 

「水仙ほのと 藪凪げる真昼 歩くとり」山頭火

 

○今年のコスモスは初夏(6~7月)と秋(9~11月)に咲きます。

栽培計画:12月 土づくり  3月 種まき  

45月 苗植え付け  67月 開花 

 

〔俳句〕

「門々の 下駄の泥より 春立ぬ」一茶

訳:新年の挨拶にやってくる人々の下駄の泥から春がやって来たなあ。

 

〔秋艸道人会津八一歌集『鹿鳴集』。奈良愛惜の名歌〕

〈奈良より東京なる某生へ〉

「あかきひの かたむくのらの いやはてに

       ならのみてらの かべのゑをおもへ」

(朱き日の傾く野良の弥果てに 奈良の御寺の画を想え)

 

〈奈良を去る時大泉生へ〉

「のこりなく てらゆきめぐれ かぜふきて

       ふるきみやこは さむくありとも」

(残りなく寺行き巡れ風吹きて 古き都は寒くありとも)

 

《真言律宗の祖、叡尊(えいそん)興正菩薩一代記を読む》846  

『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の上

(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)

如意輪精舎後裔苾芻慈光 編録

 

『興正菩薩行状畧頌』

(こうしょうぼさつぎょうじょうりゃくじゅ)

附 影像瞻礼頌文

(ふ えいぞうせんれいじゅぶん)

 

〔興正菩薩行状の略頌(①)

附 影像(えいぞう②)瞻礼(せんれい③)頌文〕

 

 頌=ショウとも。梵・ガーターの意訳、音訳は偈。仏徳や教理を賛嘆する文体の一つ。詩。

 影像=御影像。興正菩薩八十歳の寿像。

 瞻礼=仰ぎ見てうやまい礼する。

*この行状畧頌は西大寺に所蔵され、原題は「興正菩薩成徳年記(せいとくねんき)略頌」となっている。建武四年(一三三七)七月、菩薩の法孫信尊(西大寺第十三代長老)の作。西大寺に現存の国宝・興正菩薩御影像の御前法要にて読頌されたものであろう。なお、西大寺刊行(平成二十七年)の『祖師のおすがた』(佐伯俊源編)に掛軸装の『興正菩薩成徳年記略頌』現物の写真と解説、活字化された本文が紹介されている。 

 

●【帝王勅請崇国師 年六十三弘長三 光明大会六十四 文永元年季秋四】

 

〔帝王勅請(ちょくせい①)して国師(こくし②)と崇(あが)む、年六十三、弘長三(③)。光明大会(こうみょうだい④)をはじむ、六十四、文永元年季秋四(⑤)。〕

 

 勅請=天皇の召請。

 国師=天皇に仏法を伝え師範の役を勤める僧。

 弘長三=一二六三年。

 光明大会=光明真言土砂加持大法会。この真言を唱えると一切の罪業が除かれ、この真言で加持した土砂は亡くなった人の罪障を滅するとされる。

 文永元年季秋四=ぶんえい。一二六四年。季秋は秋の季節の終わりの月で、九月四日。

(つづく)

 

《古都奈良と浄瑠璃寺・岩船寺の文化財、歴史的自然環境を守るために》

 

瀬戸内寂聴さんは〈浄瑠璃寺と当尾の里をまもる会〉に次のような賛同のことばを寄せられました。

「はじめて、歩いて浄瑠璃寺を訪れた時の感激を忘れません。寺を包みこむように静かに息づいていた美しい環境にも感動したものです。それらを守り続けるのは日本人としてのつとめです。」

 

日本中の、世界中の古都奈良を愛する人たちは、奈良市ごみ焼却場(クリーンセンター)を浄瑠璃寺南隣の「中ノ川・東鳴川」地区に移設することに怒りをもって反対しています。奈良市は非常識だと。

*奈良市クリーンセンター建設計画の問題点

1.奈良市クリーンセンター建設計画について、現環境清美工場からの排ガス等による科学的に立証される健康影響がなかったこと、公害調停に至る経過と公害調停自体に問題があること、候補地選定過程において歴史的・文化的遺産の保全等についての重要な議論がいっさいなされていないこと。

2.平安期の高僧、中ノ川実範(じつはん)上人開基の中川寺成身院跡など中ノ川地域の歴史的文化的、及び宗教的観点からの重要性を認識せず、その保全を全く考慮していないこと。

3.石仏の里として有名な当尾、平安時代の浄土式庭園(特別名勝及び史跡)、九体阿弥陀仏堂(本尊九体仏と本堂ともに国宝)、三重塔(国宝)など多数の国宝重要文化財を有する浄瑠璃寺、平安時代の丈六阿弥陀仏(重文)、木造三重塔(重文)、石造十三重塔(重文)、石龕不動明王(重文)など豊富な文化財を残す岩船寺を保存し後世に伝えるためには、周辺の自然生態系を含め、焼却施設からの有害ガス等による影響からこれらを保全する必要があること。

❍奈良市クリーンセンター建設予定地に隣接する当尾地区、数百メートルの距離にある浄瑠璃寺・岩船寺は、京都府の条例で「歴史的自然環境保全地域」に指定され、大切に保護されています。かつてこの地は南都仏教の奥ノ院的な聖地で山間修行の場でした。今も自然豊かな野山に巡礼者が歩いた石仏の道が残っています。

〇中ノ川町の山林には、平安時代の高僧実範(じっぱん)上人開基の「中川寺成身院」(なかがわじじょうしんいん)址があります。この寺は奈良における最古の本格的な密教寺院でありました。最近の研究では「灌頂堂」の指図(図面)が発見され高野山に匹敵するものであったことが判明。

またここは仏教音楽、声明(しょうみょう)の発祥の寺です。現在、高野山をはじめとする全国の真言寺院で唱えられる「南山進流」(なんざんしんりゅう)声明の流祖、大進(だいしん、宗観)上人は実範の弟子でした。さらに中世を通じて宗派を超えた総合的な仏教研究機関の役割を担っていました。浄土真宗の学僧、存覚上人(親鸞聖人のひ孫、覚如の長男)もここで修学されています。日本文化史上有数の、重要なお寺があったのです。

このような貴重な日本の歴史遺産を消滅させる権利が奈良市民(一部の)に許されているのでしょうか。

〇予定候補地の地元、東鳴川町には浄土真宗大谷派の「応現寺」があり、平安時代の重要文化財・木造不空羂索観音菩薩座像が安置されています。奈良県企画「巡る奈良 祈りの回廊」によると、興福寺南円堂御本尊の摸刻といわれ、地元観音講の方々により大切に守られてきたもので日本最古の尊像です。毎月第1日曜日(9時~16時)に特別公開されています。奈良はどんな山の中にも宝物が残されています。

中ノ川寺址、応現寺、浄瑠璃寺、岩船寺。ごみ焼却施設の移転推進者たちはこれだけの歴史文化遺産があっても「なにもないところ」と言い張るのでしょうか。策定委員会の先生方の見識が疑われます。応現寺は奈良市のHPでも、奈良市トップページ>観光>文化財>お知らせ>東鳴川町「木造不空羂索観音坐像」の公開、として出ています。

○膠着状態にある奈良市のゴミ焼却工場建て替えについて、最近よく聞く市民の声は、「今あるゴミ工場で建て替えるのがベストです。便利のいい場所だし、安上がりですよ、全市民の利益になるのでは。」という意見です。

もともと現工場には建て替え用地(4.5ha.)も確保されているそうです。

またこんな声も聞こえてきます。「工場周辺の土地はたいへん安く売りだされていたんですよ。工場があることを承知で後から来た人が立ち退きを求めるのは住民エゴではないのか、公害もないのに。」という、辛辣な意見を述べる人も多

数あります。

いずれにしても浄瑠璃寺の文化財と歴史的自然環境、中川寺跡の遺構を破壊するような開発行為を公共の名においてすることは許されないことです。

中川市長さん、移転を求める一部住民の皆さん、奈良市は歴史観光都市、古都奈良であることを忘れておられませんか。

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