コスモス寺花だより
8・31
〔般若寺とお茶〕
⑩ 寺田先生の2013年刊の論考(3)で扱われる元興寺極楽坊は、現在は元興寺と名称され世界文化遺産に登録された名刹です。奈良町の中心寺院で、奈良時代の大伽藍を構成した僧房遺構をを中心に、「智光曼荼羅」を本尊として奈良の極楽浄土信仰の拠点でありました。中世には真言律宗に所属しますが、興福寺大乗院とも密接なつながりも持ちます。
茶に関しては、大乗院第十八世門跡経覚の日記、『経覚私要抄』〈別名『安位寺殿自記』(あんいじどのじき)ともいう〉には、「宝徳3年(1451)2月の条に〈八峯山茶薗〉の掃除を元興寺領の人夫に命じたことや、この作業が数日にわたって行われた様子が記されており、同様の記事が享徳2年(1453)にも見られることから、作業が年中行事となっていたことが推定される。」、「このことは、茶薗管理に堪能な人材が、元興寺郷に所属していたことを示しており、元興寺に茶業技術者が発生していたのではないかと思われる。」と指摘され、また『大乗院寺社雑事記』(だいじょういんじしゃぞうじき)では、「長禄2年(1458)から8回にわたって新茶を進上しており、その時期も3月から4月に限られている。これは、新茶製造直後の進上となり、商人からの購入品ではなく、元興寺自身が茶園所持し、茶の製造を行っていた結果ではないかと思われる。」、と産業としての茶園、商品としてのお茶の萌芽を指摘されています。さらに元興寺には中世の茶の普及に重要な役割を持った「闘茶」の記録(1407頃)が残っていることも紹介されます。(つづく)
〔いま咲いている花〕
◇ひつじぐさ(未草):≪見ごろ≫
日本の睡蓮の原生種、小さな白い花がかわいいです。未の刻(午後1時から3時)に咲くのが名前の由来です。
花期:6月~9月上旬
「二時の陽を鋭角に受けひつじ草」上野紫泉
◇秋海棠(秋海棠):≪見ごろ≫
◇さるすべり(百日紅):≪見ごろ≫
花期:8月~9月
「百日紅あはき眩暈をおぼえけり」阿波野青畝
◇秋のコスモス:≪育成中≫
花期:今年は残暑が長引くそうですから、開花は遅れて10月になり、満開は10月後半になるかもしれません。
20種類、10万本。
〔四季の花暦〕
・春:山吹(4月)
・夏:初夏のコスモス(6月)
紫陽花(6月)
・秋:コスモス(9月下旬~11月上旬)
・冬:水仙(12月中旬~2月上旬)
《真言律宗の祖、叡尊興正菩薩(えいそんこうしょうぼさつ)
一代記を読む》1185
『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』巻の下
(さいだいちょくしこうしょうぼさつぎょうじつねんぷふろく)
京都葉室浄住寺沙門 慧日房慈光 編録
(休止中)